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十珠伝について
- 原作は曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」。基本的に原作準拠。マイリストはこちら
- タイトルの読みは「とおじゅでん」。他にもいろいろ呼ばれているが、分かれば何でもいいらしい。現在連載されている「肇輯」の読みは「じょうしゅう」で、第一集の意味。
- 時代背景や設定は以下のとおり。
- メインとなるのは文明十年(1478)。室町時代後期で、応仁の乱終結直後。
- 服装は当時の時代衣装。
- 年齢は数え年。漢数字で表記する。
- 日付は旧暦を使用し、漢数字で表記する。アラビア数字の場合は西暦。
- 男女の地位はほぼ同じ。子どもは男女とも十二歳で元服する。
- 地名や人名は、史実と原作双方から都合のいいものを使用。
- 主な参考資料は以下のとおり
- 原文「南総里見八犬伝」曲亭馬琴作・小池藤五郎校訂 岩波文庫
- 漫画「八犬伝」碧也ぴんく
- サイト「白龍亭」
- サイト「伏姫屋敷」
- 解説書「完本 八犬伝の世界」高田衛
人物-アイマスキャラ
年齢は文明十年(1478)時点。
高木順一朗
- 五十六歳。応永二十九年(1422)七月六日生まれ。
- 安房国国主。居城は館山城。
- 物語の発端となる人物。二十歳の時に結城合戦で敗れ、安房に落ち延びてきた。紆余曲折を経たのち、若くして安房の国主となる。
- 若い頃から宝珠を探している。その理由は彼が安房に来てからの出来事と関係があるらしい。
- 原作では里見義実(さとみ よしざね)及び義成(よしなり)に相当。義実は架空説もあるがおそらくは実在した人物で、史実でも安房には白浜から上陸したらしい。一方義成は里見成義(さとみ しげよし。または義成・よししげ)に相当するが、実在した裏づけが取れないため架空の人物とされている。
+ | 高木順一朗の詳細 |
安房で出会った金碗孝吉に進言されて山下定包を討ち、平郡と長狭の長となる。しかし定包の家臣を裁いた際、玉梓に対して一度許すと言いながらもすぐに撤回し処刑を命じたため、彼女から呪いを受けてしまう。娘の伏姫が三年にわたり言葉を話さず感情も表さなかったのは、この呪いによる。(第十四回)
十六年後、安西景連から攻められた際、犬の十房に「景連の首をとれば伏姫を嫁にやる」と戯言を言うが、十房はそれを信じて本当に景連の首をとってきた。うやむやにしようとするが十房は大いに怒り、伏姫からも説得されるに及び、娘を犬に嫁がせることになってしまった。(第十五回)
原作では伏姫のあとに息子・義成(よしなり)をもうけており、三十七歳で家督を譲り隠居した。よって十珠伝でアイドルたちが登場する時代の高木順一朗は義成のパートを演じていることになる。
原作第四回(十珠伝第十二回)で安西景連から鯉を獲るよう要求されたが、このときの安房に鯉は生息していないことになっている。しかし原作巻之一巻頭には巨大な鯉に乗った義実の挿絵がある。これは義実が絶望的な状況から家の再興を成し遂げた、つまり「不可能を可能にした」ということを表しているらしい。また鯉という文字も「魚+里」と分解できることから「里見の魚」の意味を付すことができる。(高田衛 著「八犬伝の世界」より)
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天海春香
- 十七歳。寛正三年(1462)四月三日生まれ。上総国天羽郡関村出身。
- 宝珠の模様は「L」。あざは背中の左側。
- 高木家が探している、宝珠を持つ人物の一人。安房にて一年の訓練を受けた後、他の宝珠を持つ者を探す主命を受け、亜美・真美とともに旅をしている。
- 宝珠は幼少の頃、花飾りを作って遊んでいるときにたまたま見つけた。あざは生まれつき。
- 原作では 丶大法師(ちゅだいほうし)に相当。八犬士ではないため、珠もあざも持っていない。
双海亜美・真美
- 十三歳。文正元年(1466)五月二十二日生まれ。安房国出身。
- 宝珠の模様は「T」。あざは太もも(亜美が右で真美が左)。
- 高木家が探している、宝珠を持つ人物の一人。元服を迎えた少年少女の中から有望な者として見出され、宝珠を持っている事も確認されたため、特別な訓練を受けた。訓練は順一朗の予想を上回る成果を上げ、一年で他の宝珠を持つ者を探す主命を受ける事になった。春香とともに旅をしている。
- 宝珠は父が取り寄せた丸薬の中に、二つに割れた形で混ざっていた。かけらを合わせるところ一つになり模様が浮かび上がった。二人で変わりばんこに所持している。あざは生まれつき。
- 原作では蜑崎十一郎照文(あまさき じゅういちろう てるぶみ)に相当。八犬士ではないため、珠もあざも持っていない。
小鳥
- 年齢出身すべて不明。
- 宝珠を探し始めた春香一行の前に突如現れた女性。「高木家の姫君の意思を伝える」と言い、結城へ向かうよう伝えた。一行の前に現れたのが今のところこの時のみである。他にも何らかの情報を持っているようだが、宝珠を持つ者が誰か、どこにいるのかなどはわからないと言っている。(第二回)
- 原作では……?
萩原雪歩
- 十七歳。寛正三年(1463)十二月二十四日生まれ。武蔵国豊島郡大塚出身。
- 宝珠の模様は「R」。あざは左の二の腕。
- 大塚に一人で暮らしている。祖父から父に委ねられた源氏の宝刀「村雨丸」を受け継いでおり、いずれ機を見て古河公方・足利成氏に献上するよう告げられている。大塚の長は伯父夫婦であり、二人に村雨を狙われている。
- 幼い頃は犬も平気だったが、ある出来事(第五回)をきっかけに苦手になった。
- 宝珠は生まれる前に母が神女から授かり、同時に雪歩を授かった。あざは生まれつき。
- 原作では犬塚信乃戍孝(いぬつか しの もりたか)に相当。「孝」の珠を持つ。あざは左腕。
+ | 萩原雪歩の詳細 |
母の死後、父と二人で暮らしていた。九歳の時、雪歩に叱られて驚いた与四郎が村長の屋敷に飛び込み、屋敷の者に半殺しにされてしまう。さらに村長は与四郎が御教書を破ったため責任を取れと言いがかりをつける。父は嘘と見抜きつつも罪をかぶり自刃。気が触れた雪歩は自害しようとするが、瀕死の与四郎に気づき介錯。すると与四郎の体内から宝珠が現れた。宝珠は母が犬に乗った神女から渡されたときに受け取りそこねてしまい、そのまま行方が分からなくなっていた。そのとき足元にいたのが子犬の与四郎だった。雪歩は宝珠を投げ捨てるが、飛び返ってきて雪歩の顔に衝突、雪歩は正気を取り戻した。(第五回)
原作では父と死別するまで女装で育てられた。母の体が弱いこと、信乃の前に三人死産していること、そして「性別を逆にして育てれば丈夫に育つ」との言い伝えにあやかったことが理由。
十珠伝では父の死後も自宅に住んでいたが、原作ではすぐに長の屋敷に引き取られ八年余り共に暮らしている。また十珠伝では勝手に川に落ち気絶して村雨丸をすりかえられてしまったが(第七回)、原作では誤って川に落ち溺れそうになったふりをした蟇六を助けるために川に飛び込み、その隙に船にいた左母二郎に村雨丸をすりかえられている。
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高槻やよい
- 十四歳。寛正六年(1465)三月二十五日生まれ。
- 宝珠の模様は「E」。あざは背中の右側。
- 大塚の村長屋敷の使用人。長夫婦は雪歩の様子を探るためにやよいを遣わしたが、本人はよく分かっていない。
- 雪歩から避けられ気味であったが、同じ宝珠とあざを持っている事が分かってからは姉妹のような関係となる。(第三、四回)
- 原作では犬川荘助義任(いぬかわ そうすけ よしとう)に相当。「義」の珠を持つ。あざは背中の右側。
+ | 高槻やよいの詳細 |
生まれは伊豆国北条。父は 堀越公方・ 足利政知に仕えていたが、公方を諌めたため怒りを買い自刃。使用人も離散し、やよいと母も命からがら北条をあとにした。親戚を頼って安房に向かう途中、大塚において村長の屋敷に宿を求めるも断られ、体が弱かった母は倒れて息絶えてしまう。長は捨てるように母を埋葬し、その「恩」を着せてやよいを使用人とした。しかし翌朝、母を埋葬したところにあった榎にしめ縄がかけられており、驚いた村人が祀るための祠を設けた。それがさまざまな噂を呼び、いつしか母の墓は「行婦塚(たびめづか)」として信仰を集めるようになった。(第八回)
原作で荘助が使用人だった時の名は額蔵(がくぞう)。母の墓にしめ縄をかけたのは荘助自身。陣代を討ったのも荘助であり、道節(伊織)は大塚に来ていない。当初信乃(雪歩)からは警戒されていたが、宿縁を知って義兄弟となる。しかしその後も表向きは不仲を装い、自分以外の監視が信乃につかないようにしていた。
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水瀬伊織
- 十五歳。寛正六年(1465)五月五日生まれ。武蔵国豊島郡練馬出身。
- 宝珠の模様は「i」。現時点であざは不明。
- 水瀬監物定知入道道策(みなせけんもつさだともにゅうどうどうさく)の一人娘。一年前の江古田・沼袋原の戦いで父を喪い、下野。水瀬家当主を名乗っている。
- 近郊では名の知れた剣豪であり、遁法(忍術)の使い手。火遁の術を極めている。(第十回)
- 原作では犬山道節忠与(いぬやま どうせつ ただとも)に相当。「忠」の珠を持つ。あざは左肩。
+ | 水瀬伊織の詳細 |
代々公方方武蔵練馬家の家老として仕えており、江古田・沼袋原の戦いでは 太田道灌の軍を部下の十条力二郎・尺八郎と共に突破。打倒扇谷上杉家を志し、当主 扇谷定正を打つべく力二郎と尺八郎に人材集めをさせていた。自らも別行動でそうするといいながら、実際は異母姉の浜路を探していた。(第八回)
剣の腕はかなりのものであり、戦場で男と一対一で戦ったり、逆上した簸上宮六を返り討ちにしたりしている。
原作の道節は浜路の異母兄だったが、こちらの伊織は異母妹になる。実兄がいたが、浜路の母により殺害されている。
力二尺八とは原作でも別行動をとっているが、こちらでは修験者に姿を変え、ひたすら仇討ちのための人材や資金集めに奔走している。「君父の讐を後にして、私事を先にはしがたし」として浜路の今際の願いより仇討ちを優先するほどであった。なお修験者に変装しているのは、「火定」を行なったように見せて民衆に銭を投げさせ、実際は火遁の術で消えた後にその金を回収するためである。火遁の術は「奇字隠語」で書かれた書が家に伝わっており、十五でそれを発見した道節は三年の独学により極めるに至った。
荘助(やよい)と大塚へ行き陣代を討ったのは十珠伝の創作であり、原作では浜路を火葬した直後に荘助と切り結び火遁で逃走している。その際に双方の宝珠が入れ替わっている。
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菊地真
- 十七歳。寛正三年(1462)八月二十九日生まれ。
- 宝珠の模様は「D」。あざは右目の下。
- 原作では犬飼現八信道(いぬかい げんはち のぶみち)に相当。「信」の珠を持つ。あざは右目の下。
三浦あずさ
- 二十一歳。長禄二年(1458)七月十九日生まれ。
- 宝珠の模様は「M」。あざは左の尻。
- 原作では犬田小文吾悌順(いぬた こぶんご やすより)に相当。「悌(てい)」の珠を持つ。あざは左の尻。
人物-原作キャラ
伏姫 (ふせひめ)
- 順一朗の娘。
- 嘉吉二年(1442)九月九日生まれ。安房国滝田出身。
- 産まれてから一度も声も出さず表情も変わらない日々が続き、順一朗による医師の招聘や加持祈祷も効果がなかったが、謎の老人から数珠を授かった後に豊かな表情を浮かべ、以後は才女として近隣に名を馳せる。
- 顔グラは小鳥さん(プラス幼いモード)だが、上記の小鳥との関係は不明。
+ | 伏姫の詳細 |
金碗大輔に嫁ぐことになっていたが大輔が行方不明となり、加えて十房が順一朗の戯言を信じて安西景連の首をとってきたため、十房に嫁ぐことになってしまった。当然ながらそれを拒否する両親に理を説き、国と家を救うため自ら嫁入りした。このとき十六歳(第十五回)。その後十房と共に富山(とみさん)で生活していた。しかし一年後、突如現れた子供から「伏姫を愛する十房の気により子を宿している」と告げられる。さらに十房が玉梓の気を受けていることから、その子らは呪いの子となるだろうと言われ絶望。十房と心中しようとするが、十房を狙った金碗大輔の銃撃により気絶。すぐに意識を取り戻すが、懐刀を取り腹を斬ってしまう。すると子を宿したはずの腹からは光が飛び出し、首にかけていた数珠の大珠もその光を受けて元の模様を取り戻し、空へ飛び去っていった。伏姫は「呪いは全て祝福に変えてみせる。珠が子らへ導き、自らも珠となって子らを導く」と言葉を残して絶命した。享年十七歳(第十七回)。
原作では夏の末、「三伏の時節」に生まれたことから「伏」と名づけられた。しかしこれが「人にして犬に従う」という名詮自性となってしまった。役行者(左慈グラの老人)が述べた「伏姫という名から悟れ」というのはこのこと。富山では法華経を読んで過ごしていた。宿した子が八人であることは、八房の名と、法華経の巻数が八であることによる。最期は子など宿していないことを証明するために自ら腹を切り、白気と数珠が飛び去るのを見た後「歓しや我が腹に、物がましきはなかりけり。神の結びし腹帯も、疑いもやゝ解たれば、心にかゝる雲もなし。浮世の月を見残して、いそぐは西の天にこそ。導き給へ弥陀仏」と言葉を残して絶命した。
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玉梓 (たまつさ)
- 山下定包と共に平郡と東条郡を治めている女性。前の支配者・神余光弘の妾。
- 年齢出身共に不明。
- 玉梓に惚れ込んだ光弘が国の全てを彼女に任せていたため、神余家臣のほとんどが彼女に取り入ろうとした。定包と共に光弘を謀殺し、支配者となった。
- 顔グラは音無小烏(こがらす)。cx0101P提供。
+ | 玉梓の詳細 |
順一朗の軍に包囲された際、それ利用して安房四郡全てを手に入れる策を進言し、実行に移されたが、順一朗の運任せの策により破られてしまった。裁かれる際には自らの行動を悔いる発言をして国許へ帰る許しを求めた。順一朗はそれを許そうとしたが、金碗孝吉の猛反発にあって撤回、処断されることとなった。玉梓は順一朗に対して「子孫を畜生道に導き、煩悩の犬としてやる」と呪いを述べ、孝吉に対しても「程なく刀の錆となるだろう」と述べた。
処刑から数ヵ月後、孝吉は自害。その際、順一朗だけが玉梓の姿を目にした。さらに玉梓の怨恨は狸の姿をとり、母がいなくなった子犬の十房を育ててこれに怨みを委ねた。狸の和名が「玉面」であり、これの訓読み「たまつら」が「たまつさ」に通じるという名詮自性となった。十四年後には十房に景連の首を獲らせ、伏姫を犬に嫁がせた。伏姫と十房が富山に入ったときにはまだ霊が存在していたが、伏姫の歌によって徐々に浄化され、一年後に消滅した。しかし玉梓の気を受けた十房の恋慕の情が伏姫の中に宿ったことから、伏姫には「その子たちは玉梓の子ら」と告げられた。伏姫自害の際に腹から光が飛び出し、数珠の大珠に宿って飛散した。伏姫は「玉梓の呪いは全て祝福に変えてみせる」といい、玉梓の呪いと伏姫の祝福の対立が始まった。
ほぼ原作どおりだが、原作でも玉梓が直接悪事を指揮したり根回ししたりしたというはっきりとした記述はなく、その辺を深読みしてみるのも面白い。詳しくは 「伏姫屋敷」や 「白龍亭」の考察をご覧頂きたい。ちなみに滝田が包囲されたときの作戦は、原作では定包自身によるもの。
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十房 (とふさ)
- 高木家の飼い犬。
- 嘉吉三年(1443)生まれ。安房国犬懸(いぬかけ)の里出身。
- 生まれてまもなく母犬が狼に食い殺されたが、狸に乳をもらい成長。翌年高木家にもらわれる。
- 白の体毛に十ヶ所の黒い房模様があることから名づけられた。体は人が乗れるほど大きい。
- 原作では八房(やつふさ)に相当。顔グラはekaoP提供。
+ | 十房の詳細 |
十房を育てた狸は玉梓の怨霊であり、その怨みを果すべく高木家へ来ることになった。狸の和名「玉面(ぎょくめん)」を訓読みすると「たまつら」となり、これが「たまつさ」に通じる名詮自性であった。
滝田城が安西に攻められた際、「大将首を獲れば伏姫を嫁にやる」という順一朗の戯言を信じて、本当に首を獲ってきた。しかし義実が別の褒賞でごまかし続けたことに怒り、伏姫に襲い掛かって義実から刃を向けられた。結局伏姫が両親を説き伏せ、彼女を妻として迎えることになった(第十五回)。二人が富山に入ると深い霧が立ち込めるようになったが、十房は山を自由に行き来でき、伏姫のため食料を確保していた。洞穴ではずっと伏姫の歌を聞いており、それによって玉梓の怨霊は浄化された。しかし伏姫を愛する気持ちと、伏姫が十房を慈しむ気持ちが交わり、結果が伏姫の中に子として宿ることになった。死を決意した伏姫により殺されようとしたところを大輔に狙撃され絶命した(第十七回)。
原作では伏姫が十二三歳の頃(1452,3年)に生まれた。飼われていた小屋に狸が鬼火の形で通っていたことが目撃されている。生まれて十日で目を開き、四五十日で自ら餌をとるようになる。里見家にはその年の内に貰われてきた。富山に入るまで玉梓の怨霊が宿っていたが、伏姫が法華経を読むのを聞き続けたことで怨霊は成仏した。景連を殺したときに数珠の八文字が「如是畜生発菩提心」に変わったことはこれを示唆するものであった。死を決意した伏姫と共に川へ身を投げようとしたところを大輔に狙撃され絶命した。
名詮自性は「狸といふ文字は、里に従ひ、犬に従ふ。これすなわち里見の犬なり」。乳母の「狸」の字を分解すると犬と里になるから「里見の犬」であるという意味。また「八房」を分解すると「八一尸方」となり、これが「一つの屍(しかばね・尸)八方に散る」の意味となり、数珠の大玉が散ることを示唆している。
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役行者 (えんのぎょうじゃ)
- 洲崎明神の近くにある岩窟に祀られている神。
- 5世紀に実在した人物で神格化されている。詳しくはWikipediaの「役小角」の項を参照。
- 七日間の参拝を終えた伏姫一行に現れ、大珠に模様の入った数珠を伏姫の首にかけると、それまで全く消えなかった伏姫の異常がすぐに回復した。その際、「禍福は糾える縄の如し。一人の子を失うても、後に数多の助けを得ば、その禍は禍ならず」と述べ、「あとは伏姫という名から悟れ」と言い残して姿を消した。
- 顔グラは「三国志11」から左慈。
+ | 役行者の詳細 |
伏姫と十房が富山に入ってから一年後、順一朗の夢に現れて伏姫がいる場所へ行く方法を伝えた。貞行には順一朗の使者と名乗って、順一朗の文と印がある御教書を手渡した。翌日順一朗が御教書を見ると、中身は人の影に変わっていた。また伏姫には「洲崎の師から遣わされた」という少年が現れ、伏姫の懐妊や十房や玉梓の関係を伝えた。
原作世界の最高神。「八犬伝の世界」によれば、役行者は 一言主の上位神であり、馬琴は一言主について「古事記」に書かれている「言離之神」という表現を「言の咎」を治める神と解釈した。伏姫の身の上に生じていた出来事は、義実の言の咎によって生じたことだったため、上位神の役行者は容易にそれを取り払うことが出来た。また富山に発生した霧が大輔の祈りに応じて消えた場面の挿絵には、神変大菩薩つまり役行者が描かれている。
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萩原番作一戍 (はぎわら ばんさく かずもり)
- 故人(享年四十五)。応永三十三年(1426)生まれ。武蔵国豊島郡大塚出身。
- 雪歩の父。亀篠の異母弟。父は大塚匠作で、元の姓は大塚。
- 父と共に永享の乱や結城合戦に公方方として参加、結城陥落の際に父から村雨丸を託された(第二回)。しかし戦の傷で脚が不自由になり、すぐに大塚へ戻ることができなかったため、姉夫婦に長の立場を奪われてしまった。大塚に戻っては姉夫婦とのいさかいを避けるため、姓を妻の出身地に因んで萩原と改めた(第四回)。
- 匠作の代から大塚家は住人からよい評価を得ており、番作自身も大塚に戻ってからは村のために尽くしていたため、死後も人々から高い評価を受けている。
- 原作では萩原ではなく「犬塚」と姓を改めている。
+ | 萩原番作の詳細 |
飼い犬の与四郎が蟇六の屋敷に飛び込んだ際、蟇六は「犬が御教書を破いた責任を取れ。御上の怒りを解くには村雨丸を差し出すほかない」と伝えてきた。番作はそれを嘘と見抜いたが、自分の命が短いことや、病死してしまえば長が村雨を奪って雪歩を捨てるであろうこと、罪をかぶって死ねば雪歩を無碍にはできなくなるであろうことを考え、雪歩に村雨丸を託し、それを用いて自害した。(第五回)
原作では八犬士の一人・犬塚信乃の父で、信乃(しの)の名は手束と夫婦になった信濃(しなの)にも由来している。手束は筑摩の出身で、萩原は創作の地名。大塚に戻ってからは手跡の師範をしたり農業の知識を本にして広めたりして村人たちに喜ばれた。村人の方も恩に報いるため、彼の存命中も死後も食料の支援などを行なっていた。
結城合戦直後は父の後をひそかに追い、父が討たれたところに村雨丸で単身斬り込み、春王丸・安王丸の首と父の首を奪い取って脱出した。逃げ込んだ先の寺にいたのが手束で、自分の父と手束の父・井丹三直秀が自分たちを結婚させるつもりであったことを聞かされて夫婦となった。(第七回の人物紹介)
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浜路 (はまじ)
- 十七歳。寛正三年(1462)正月生まれ。
- 長夫婦の娘。雪歩の従姉。
- 贅沢三昧わがまま放題で育てられたがまっすぐに成長した良い娘。長夫婦を嫌う村人たちも浜路には好意的だった。
- 長関係の人々を避けている雪歩とも仲がよく、雪歩の姉のような存在。やや妄想癖がある。
+ | 浜路の詳細 |
武蔵国豊島郡練馬出身。水瀬家の生まれで伊織の異母姉。大塚家には二歳のときに養子としてもらわれてきた。
浜路の母と伊織の母はもともと妾で、伊織の母の方があとから水瀬家に来た。正妻が亡くなったあと、二人のうち先に男子を産んだほうを正室にすると言われおり、結局男児を生んだ伊織の母が正室とされた。浜路の母はそれを妬み、母子を殺害しようとする。男児は死んでしまったが、伊織の母は一命を取りとめ、逆に自分が処刑されるてしまった。浜路も殺されるところだったが、蟇六夫婦が養子を探している話が知らされ、生涯不通の約束、つまり事実上追放の形で養子に出された。浜路がこれを知ったのは陣代への嫁入りを聞かされた日である。(第八回)
当日になって陣代への嫁入りを聞かされたが、そのときに雪歩が献上しに出かけたはずの村雨丸を父が(偽物だが)持っていることに気づき、日が落ちてから雪歩を追って逃亡する。途中で賊に襲われたところを左母二郎に助けられたが、左母二郎もまた村雨丸(本物)を持っていることに気づく。これを奪って逃走するが追いつかれ斬られてしまい、とどめこそ伊織によって阻まれたが、傷はすでに手遅れであった。村雨丸を雪歩に渡すよう伊織に頼み、絶命する。「家族」に恵まれたとは言えなかったが、異母妹とはいえ血の繋がりのある伊織が善人であることを知り、笑顔で最期を迎えた。
原作では道節(伊織)の異母妹で、信乃(雪歩)の許婚。元の名は睦月(むつき)で、正月に生まれたことによる。母たちについては大体同じで、最初に生まれた男児が道節である。十珠伝の設定とは逆に道節の母が死んでしまうが道節が蘇生して悪事が発覚し、浜路の母が処刑された。
養子であることを浜路自身が知ったのは十二三歳の頃だが、この話を聞いたのは絶命する直前であった。村雨丸を信乃に届けるよう道節に頼んだが、道節は「君父の讐を後にして、私事を先にはしがたし」として村雨丸を仇討ちに使うと言い、浜路は悲しみのうちに最期を遂げた。
信乃が古河へ出立する前夜に彼の臥所へ入り、共に連れて行くよう涙ながらに訴えた場面は「浜路くどき」として知られており、八犬伝の名場面のひとつである。十珠伝ではあまり際立たせることができず残念である。
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網乾 左母二郎 (あぼし さもじろう)
- 二十六歳。享徳二年(1453)生まれ。
- 糠助亡き後、萩原家の隣家に引っ越してきた浪人。元は関東管領である扇谷(上杉)定正に仕えていた。
- 便佞利口の人物。上にへつらい周りを貶めて出世したが、恨んだ朋輩に強訴されて管領家を追われることになった。超美男子である上に、書・歌舞・楽器の扱いにも優れ、大塚では雪歩の父亡き後の「手跡の師匠」として教えていたこともあり、婦女子からかなりの人気を得ていた。
+ | 網乾左母二郎の詳細 |
浜路への婿入り及び次期村長の約束と引き換えに、「長の証たる太刀」を取り戻す手伝いをするよう持ちかけられる(第六回)。すりかえる際に刀が村雨丸であることに気づき、本物は自分のものにして蟇六には鞘に水を入れた なまくらの刀を差し出した。村雨をもって管領に帰参するつもりだったが浜路に気づかれてしまう。彼女を殺害しようとしたが、突如現れた伊織の手裏剣に急所を討たれ、女児に殺される恥を被るぐらいならと自害した(第九回)。
原作では陣代をもてなす宴の際に見た浜路に一目惚れしており、それに気づいた亀篠に語らわれて村雨奪還に加担する。浜路が陣代へ嫁ぎ自分との約束が嘘である事に気づくと、屋敷の庭で首を吊ろうとした彼女をさらって逃走する。逃走を手伝わせた三人の男を殺害し、抵抗した浜路をも殺そうとするが、現れた道節の手裏剣で深手を負い、最期は浜路を殺そうとした村雨丸で自らが殺された。なお村雨は室町将軍・ 足利義尚へ献上するつもりだった。管領に仕えていたことについては、亀篠に「食録五百貫を宛て行なわれ、しかも近習の上に」いたと話していた。
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十条力二郎・尺八郎 (じゅうじょう りきじろう・しゃくはちろう)
- 二十歳。長禄三年(1459)生まれ。武蔵国豊嶋郡練馬出身。
- 双子で力二郎が兄。顔グラは力二郎が太史慈、尺八郎が甘寧。名前はたいてい力二と尺八に略される。
- 伊織に仕えている。母が伊織の乳母で幼い頃から一緒にいたため友達関係に近く、伊織からも対等な口を利くことを許されている。
- 数値設定はないが、武力は力二郎、智謀は尺八郎がそれぞれやや上。
物品
村雨丸 (むらさめまる)
- 源家の宝刀で、鎌倉公方(後の古河公方)足利家の宝物。
- 「殺気をもって抜き放せば刀身から露が滴り、人を斬って刀身が血塗られればますます露がほとばしり血を洗い流す」という奇特をもつ。
- 架空の刀。八犬伝にて初めて登場した。妖刀と言われている「村正」とは別物で、八犬伝原作における村雨に呪いはかけられていない。
- 蟇六は大塚の長・匠作が死に、番作も死んだと考えて、匠作の娘・亀篠と結婚し、その縁によって鎌倉公方から長の地位を認められた。しかし番作は生きていたうえ、持氏から伝わる村雨丸を持っていたため、正当な長は番作ということになる。そのため自らの地位を危ぶみ、番作や雪歩から村雨を奪おうと画策していた。
+ | 所持した人物の履歴 |
足利持氏:家に代々伝えられていた。
春王丸:持氏の次男。護り刀として渡された。
大塚匠作:永享の乱において春王丸と共に守るよう持氏から託された。
大塚番作:結城合戦において匠作から託された。(第二回)
萩原雪歩:番作自害の際、いずれ古河公方に献上するようにと託された。(第五回)
網干左母二郎:蟇六から摩り替えるよう依頼されたが、そのまま自分のものに。(第七回)
水瀬伊織:逃亡する左母二郎を討ち、浜路から雪歩へ渡すよう託された。(第九回)
|
役行者の数珠 (えんのぎょうじゃの-)
- 役行者に七日間参拝した伏姫に、役行者自らが授けた数珠。108の珠から成り、10の大玉には模様が浮かんでいる。
- 模様は彫ったのでも書いたのでもなく、珠の中に浮かび上がっている。
- 模様はアルファベットだが、時代柄だれもそれとは気づかない設定。
+ | 数珠の詳細 |
伏姫が受け取ってからずっと模様が浮かんでいたが、十房が安西景連を討ったときに全て消滅。一年後、懐妊を伝えられた伏姫が腹を斬ったときに現れた光を受けて模様が復活した。模様のある10の大玉は空に浮かび、飛散した。
原作での大珠の数は8で、「仁義礼智忠信孝悌(じん・ぎ・れい・ち・ちゅう・しん・こう・てい)」の一文字ずつが浮かんでいる。八房が景連を討ったときに「如是畜生発菩提心(にょ・ぜ・ちく・しょう・ほつ・ぼ・だい・しん)」に変化した。伏姫に懐妊が伝えられると「仁義礼智忠信孝悌」の文字に戻った。
また、信乃が庭の梅の木の下に与四郎の死骸を埋め、木の幹を削って「如是畜生発菩提心 南無阿弥陀仏」と書き付けていた。後日その木を見ると文字も木の傷もなくなっており、一度も実をつけたことのなかった梅の木に実が生じていた。一房に八つの実が付いており、一つ一つに「仁義礼智忠信孝悌」の文字が現れていた。
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模様の入った宝珠
- 元は役行者の数珠を成していた大珠。諸国に飛散しており、それぞれに持ち主がいる。
- 雪歩が手にしたときには、投げ捨てても戻ってきた。
- 模様はアルファベットだが、時代柄だれもそれとは気づかない設定。
人物・宝珠・あざの対応表
名前 |
宝珠 |
あざ |
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春香 |
L |
左の背中 |
子供のころ花飾りを作って遊んでいるときに偶然見つけた |
亜美 |
T |
右の太もも |
父が取り寄せた丸薬の中に割れて入っていた。合わせると一つになり模様が浮かんだ。 あざの位置は髪を結んでいる側 |
真美 |
左の太もも |
雪歩 |
R |
左の二の腕 |
生まれる前に母が神女から授かったが取り落とし消滅。 後に与四郎の首を落としたときに体内から飛び出した。聞かれたときには隠している |
やよい |
E |
右の背中 |
生まれたときに胞衣を埋めるために敷居の下を掘ったら出てきた |
伊織 |
i |
不明 |
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真 |
D |
右目の下 |
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あずさ |
M |
左の尻 |
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年表(ネタばれ)
(西暦)和暦 |
月日 |
出来事 |
十珠伝 |
原作回 |
(1441)嘉吉元年 |
四月十六日 |
結城落城(史実)。順一朗と番作それぞれに脱出 |
第二、十二回 |
1 |
四月十九日 |
順一朗、安房に到着 |
第十二回 |
3 |
四月二十四日 |
順一朗軍、玉下城を包囲 |
5 |
五月二日 |
妻立・岩熊が謀叛、定包討たれる |
第十三回 |
五月三日 |
妻立・岩熊処刑。玉梓処刑、直前に呪いを語る |
第十四回 |
6 |
七月七日 |
高木家褒賞。孝吉自害 |
7 |
(1442)嘉吉二年 |
九月九日 |
順一朗の娘誕生。伏姫と名づけられる |
8 |
(1444)嘉吉四年 |
某日 |
伏姫、老人から模様の入った数珠をもらう。十房が滝田城にもらわれてくる |
第十五回 |
(1449)文安六年 |
夏 |
蟇六、鎌倉公方から大塚の長を賜る |
第四回 |
16 |
(1457)康正三年 |
秋 |
高木領凶作。安西勢が高木領に侵攻 |
第十五回 |
8 |
七日後 |
順一朗、十房に戯言を語る。十房が安西景連を討つ。 |
9,10 |
数日後 |
十房、伏姫に襲い掛かる。伏姫、十房に嫁ぐ。両者富山に入る。 |
(1458)長禄二年 |
秋 |
貞行と順一朗の夢に老人が現れる。 |
第十六回 |
11 |
伏姫に懐妊が知らされる。十房死亡。伏姫自刃。数珠の大珠に文字が戻り飛散 |
第十七回 |
12-14 |
(1469)文明元年 |
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やよいの父自害、家断絶。放浪の末、やよいは大塚に |
第八回 |
20 |
(1470)文明二年 |
三月 |
番作自害。与四郎死亡。雪歩、宝珠と村雨丸を得る |
第五回 |
19 |
(1477)文明九年 |
四月十三日 |
江古田・沼袋原の戦い(史実)。伊織は姉を探しに出る |
第八回 |
22 |
三月 |
春香と亜美真美、主命を受けて安房を出発 |
第一回 |
一行に小鳥接触、結城へ向かうよう勧める |
第二回 |
四月 |
やよいが雪歩の手伝いを始める。互いの宝珠とあざを知る |
第三、四回 |
20 |
五月 |
大塚の屋敷で陣代をもてなす。蟇六、左母二郎に協力を求める |
第六回 |
23 |
六月十六日 |
長夫婦、雪歩に古河行きを勧める |
六月十七日 |
雪歩、村雨丸をすりかえられる。浜路、雪歩に自らの出自を話す |
第七回 |
24,25 |
六月十八日 |
雪歩とやよい、大塚を発つ。 |
第八回 |
25 |
六月十九日 |
雪歩とやよい別れる。やよいは大塚へ向かい、雪歩は同日中に古河へ到着 |
昼 浜路、輿入れを知らされる。夕方に逃亡 |
26,27 |
夜 左母二郎死亡。浜路、伊織に言葉を残し死亡。 |
第九回 |
28,29 |
夜 古河から戻る途中のやよいが伊織と出会う。村雨丸は伊織に。 |
第十回 |
29 |
六月二十日 |
深夜(午前) 長夫婦死亡。陣代、伊織に返り討ち。伊織は逃亡。やよい捕縛 |
春香亜美真美と雪歩遭遇。互いの宝珠とあざを知る。雪歩に宝珠の過去が語られる |
第十一回 |
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六月二十二日 |
雪歩、古河公方に拝謁するも気がふれ芳流閣へ。捕り手として真が派遣されるが両者屋根から川へ落下 |
第十八回 |
30,31 |
雪歩と真、行徳に漂着。文五兵衛とあずさの家に匿われる。真とあずさに宿縁が告げられる 真が糠助の娘と判明。翌朝、雪歩が高熱を出す |
第十九回 |
31-33 |
最終更新:2009年03月19日 01:32