黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』── ⑦

より


『〝マエリベリー・ハーン〟』
【夕方 16:28】C-3 紅魔館 地下道


 八雲紫とメリーが見ていた『夢』。二人はそこから目覚め、すぐに行動を始めた。
 目覚めたその部屋には、待機させていた筈のホル・ホースの姿は無かった。薄情な男とは思ったが、微睡みの最中に何かされた形跡も見当たらず、結果的には支障はない。
 二人は足早に館を出た。まずはジョルノと鈴仙への合流が先決。程なくして、館を揺らしていた犯人のジョルノらと再会出来た。
 彼らに作戦を伝え、宇佐見蓮子の救出を最優先事項とさせ。快い協力のもと、蓮子とメリーの二人は無事に地下へと落とされ───


 そして今。
 少女は、邪悪の根源となっていた親友の『芽』を、とうとう摘んだ。
 宇佐見蓮子は、親友の腕の中で支配から解放されたのだ。



 ───『肉の芽』と云う名の、支配から“は”。










「……………………れ、ん……こ…………、?」









 妖刀が、メリーの心臓を真っ直ぐに貫いていた。


「……………………ぁ、」


 メリーの腕の中で、〝宇佐見蓮子〟は再び嗤っていた。
 刀を握り、口角を大きく釣り上げながら。
 “嗤い”は次の瞬間、“笑い”となって、ひっそりと寝入っていた地下に木霊する。



「クク…………ギャーーーーーハッハッハッハ!!! バァーーーカッ!! まんまとしてやったりのつもりだったのかァーーー!?」



 声は蓮子そのもの。しかし『意思』は蓮子とは別人。勿論たった今消し去ってやった肉の芽が生んだ意思でも無い。
 串刺しにされたメリーは胸を襲う痛覚よりも、自分の失態に絶望する後悔の気持ちが全ての感情を凌駕する。

 この蓮子の正体を、自分は知っている。
 どうしてそこに考え至らなかったのか、何もかもを後悔する。


「そーーーだよオレは蓮子じゃあねーぜッ! 喋ってんのは蓮子嬢ちゃんが握ってる『刀』の方だよボケ! 『アヌビス神』のスタンドさァ!!」


 癪に障る声など、耳に入らない。少女にとっては、全くそれどころではない。
 DIOの肉の芽を解除出来たのは確かだ。手に残った感覚が、邪悪の消滅を完全に証明している。
 じゃあ目の前で高らかに笑う『コイツ』はなんだ?

(違う……私はコイツを知っていた。何故、今までその事を失念していた……!?)

 蓮子の腕の中で不気味に光る妖刀がどれだけに厄介な得物かは、身を以て理解していた。
 だが肉の芽への対策に気を取られ過ぎていた。芽さえ取り除けば、蓮子を蝕む全ての『魔』はすっかり祓い清められるのだと。

 支配は『二重』に掛けられていた。今になって気付かされた真実。
 肉の芽の呪いが強烈過ぎたが為に、触れただけで意識を乗っ取られるアヌビス神の支配力すらも上書きされていた。アヌビスの呪いを上から更に抑え付け、蓮子の全意識を支配していた悪魔の芽。
 それが今、消滅した。するとどうなる?

「すると『こうなる』って事だよォ〜〜ン! お前には礼を言っとくゼェ〜メリーちゃんよォー!」

 DIOからセーブされていたアヌビス神を結果的に蘇らせたのは、皮肉にもメリー。

 しかし、それの比ではない過酷な運命がこの時……二人を包んだ。

 メリーは、高笑いする妖刀に胸を貫かれたから動けないのではない。

 メリーは、自らの失態に唇を噛んでいたから痛みが無いのではない。

 メリーは、自身に訪れる死を悟ったから顔を歪めているのではない。

 逆だった。





「─────────あ?」





 妖刀は馬鹿笑いから一転、停止する。
 ツツーと、赤黒い血が唇から漏れた。

 敵を抉った側である筈の、蓮子から。


「…………ブ、ふっ……ぅ、あ」


 醜く歪められていた蓮子の顔色は、一瞬にして青ざめていく。
 直後、絶望的な量の血飛沫が、蓮子の口から勢いよく吐かれた。
 蓮子を上から繰っていた邪悪の糸は最後の最後、その全てをぷつりと途切らせて。
 今度こそ少女はメリーの腕の中へと倒れ込んだ。


「───ぁ、……蓮、子?」


 メリーの命を穿つ軌跡であった妖刀の切っ先は。

 彼女の胸のリボンに飾り付けられた『ブローチ』ごと、相手を串刺しとした。

 ジョルノが『ゴールド・エクスペリエンス』の力を込めて紫に渡しておいたそれは、『御守り』の加護を受けたままメリーの衣装に紡がれた。

 皮肉にもその『加護』は、メリーの肉体を凶刃から確かに護り抜き、


 ───全ての攻撃を蓮子自身に『反射』させた。



「蓮子ォォーーーーーーーーーー!!!」



 絶叫が、少女達の身体を揺さぶる。
 飛び散る血痕と共に抜き取られたアヌビス神が、カランカランと金属音を立てて転げ落ちた。

『れ、蓮子嬢ちゃん!? どうしたってんだよ突然!? オイ!!』

 突如として血を吐き倒れた宿主の異常。その真実に、アヌビス神は辿り着けない。
 DIOの支配から解放されるやいなや、人斬り衝動にただ身を任せて斬りつけただけ。それが何を意味するかも知らずに。

 メリーは悲劇の根源である妖刀の喚き声に目もくれず、朽ち果てる友の身体をぎゅうと抱きしめ続ける。
 どくんどくんと高まる動悸は、果たしてどちらの肉体が伝えているのか。

 走馬灯のように思い出されるのは、あの時のこと。


───『その〝ナナホシテントウ〟のブローチは御守り。身に付けておけば、きっと貴方を護ってくれるわ』


 虫の知らせでも働いたのか。ブローチは八雲紫からメリーへと受け継がれた。
 御守りとして身に付けられた装飾は、与えられた機能を十全に発揮してくれた。それは間違いない。

 もしもこのブローチが無ければ……間違いなくここに倒れていたのは宇佐見蓮子ではなく、もう片方の少女だったのだから。

『オイ! ちょっと待ってくれよ今のはオレのせいじゃねーぜ!? てかなんでお前刺されたのに生きてんだよオイ!!』

 慌てふためく妖刀。そこから浮かぶジャッカルを模したスタンド像が、事の無実を証明しようと言い訳がましく捲し立てる。そのあまりに愚昧な姿を視界の端に入れていたメリーは、絶望の脇で『別の感情』を沸かせていた。

 倒れ込んだ蓮子を無い腕で胸に抱いたままに、一本となった腕を地面の刀へと向ける。

 アレはこの世に在ってはならないモノだ。
 この世界にどうしようもない不幸を齎す呪物だ。
 元を辿れば西行寺幽々子の従者、魂魄妖夢を悪鬼に陥れたのもアレの仕業だったのだろう。そして彼奴は今また、蓮子の身体を使って悲劇を繰り返した。


「お前は……私の〝大切な人〟が〝大切にしている人〟を『二度』も奪った」


 アレはこの世に在ってはならないモノだ。
 この世界にどうしようもない不幸を齎す呪物だ。
 メリー本来の姿と意思から著しく乖離した少女の姿が、底の無い怒りを伴って殺気を沸かし始める。

『ちょちょちょ!! オイ待て落ち着けって! だからオレじゃねーだろ今のは! お前も見てたろ!? 突然血ィ吐いてブッ倒れたのは嬢ちゃんで、オレが殺そうとしたのはお前の方……あ、いやいやいや違う違うッ! 違うからまずは話を聞けっての!!』

 柄を握り、力を奮ってくれる宿主はもう居ない。そこに転がる刀は、今や魑魅魍魎にも劣る無力な雑物に等しい。
 本体の手から離れたアヌビス神に出来る精一杯の抵抗は、唯一動かせる仮初の口でみっともない弁明を説き、目の前の凶悪な人間の怒りを何とか鎮めるだけだ。
 相手は、友人の命を奪った仇敵を破壊せんとする怒りに身を任せており。
 刀に向けて翳された右手には、彼女の肉体に残った全ての妖力が集約しつつあった。


『だから待て! 頼むオレの話を聞いてくれよッ! そ、そもそもアンタら二人が戦う羽目になったのは……そ、そう! DIOのせいだ! だろ!? 諸悪の根源はあのバカみてーに真っ黄色な変態服着て王様気取ってやがるアイツだ!! オレは悪くねーってだからその右手下ろせって! なっ!? なっ!? あ、そうだ良ーこと考えた! 妙案を閃いたぜッ! お前……い、いや、お嬢ちゃん! オレと一緒に仇を討とうじゃねーかあのDIOのクソッタレによォ! オレは役に立つぜェーーマジで! う、嘘だと思うならよ! ちょっとだけ! ちょっとだけお試しで握ってみなよオレの柄を! ホント信じてくれ! 絶対にお買い得品だからよオレは! い、今ならこのアヌビス神を買ってくれたお客様にはもう一本同じアヌビス神が付いてきま───』


「去ね」





 『彼』は──アヌビス神の名を賜ったそのスタンドは、世に蔓延るスタンドの中においても特別に異色である。
 本体の意識を越えてスタンドそのものに意思が宿り、自己と知性を手に入れる事例は珍しいものでもない。
 しかしこの妖刀が産んだ意思は、『自己の消滅』を過剰な程に恐れた。元来のスタンドの使い手であった刀鍛冶が遥か500年前に死して尚、スタンドの意思のみが現代にまで生き続けている程に。
 自己の消滅───即ち『死』という現象をこうまで恐れるスタンドは本当に稀だ。あるいは、DIOが彼に興味を抱いた一番の点はその自己心なのかもしれない。

 彼は最後の最後まで妖刀としてこの世に生を受けた本懐を遂げたかっただけ。
 人斬りというアイデンティティが失われる事あれば、妖刀としては死と同義。
 まるで妖怪。アヌビス神は、自己の消滅に恐怖する妖怪となんら変わらない。
 〝彼女〟が生きた妖刀を手に掛ける理由に、同族意識もあったかもしれない。
 憐憫。同情。そういった気持ちが、ゼロとは言わない。言わないが、しかし。

 この妖刀は遊びが過ぎた。
 故に、弾幕ごっこという名の『遊び』の境界を逸脱した、この本気の弾幕で“消す”に相応しい。



「───『深弾幕結界-夢幻泡影-』」



 夢、幻、泡、影とはそれぞれ淡く壊れやすく儚いもの。
 人の世も人の生も、またそれと同じくとても儚いもの。
 スタンドとて、然り。

 自慢の太刀で肉を喰う快感は、まるで夢みたいに。
 思うがままに刃を振う興奮は、まるで幻みたいに。
 純潔な少女の血を吸う至福は、まるで泡みたいに。
 自由奔放なる道を味う人生は、まるで影みたいに。
 アヌビス神の死を厭う最期は、まるで夢幻泡影を謳うみたいに。



 淡く、儚く、呆気なく、壊れた。



【アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 第3部】破壊

            ◆


 これまでの何もかもが、あたかも儚き『夢』だったかのように。
 別れは、突然に降ってきた。

 蓮子の傷は致命傷。即死では無かったが、救う術は皆無。弱体化を受けた『境界を操る程度の能力』では、心臓を穿いた傷は塞げなかった。
 地上には傷を治せるジョルノがいる。もしかしたら合流の為、すぐ近くにまで来ているのかもしれない。

(……駄目。間に合わない)

 自分でも恐ろしいくらい冷静に蓮子の現状を認識し、悲劇の回避は叶わないと悟っていた。死に堕ちゆく少女の瞼は閉ざされ、止めどなく流れ続ける赤い水溜まりの中心が、二人の世界であった。

 なんて、無力。
 メリーはここに至って、自らの力の無さをこれ迄になく痛感する。
 聡明な彼女であるからこそ、蓮子の死はどう足掻いたって避けられないと理解した。
 そして、だからこそ。
 自分の心の内には、こんなにも冷静でいられる自分が存在するのかと自虐する。
 その冷静さが、彼女にある行動を促した。

 メリーの一番の友達である宇佐見蓮子は、これから死ぬ。
 残された時間は一分と無いだろう。夥しい血の量が、全てを物語っている。
 少女の視覚が、聴覚が、意識が、ギリギリの所で肉体にしがみ付いているよう胸の中で願いつつ。

 〝彼女〟は、今自分が最も優先して行うべき行動を、迷いなく選択した。


「蓮子!! お願い、目を覚まして!! 私よ蓮子! メリーよ!!」


 傷を塞ぐ為に殆ど力の残っていない境界の能力を、悪足掻きだと理解しながらも使うか。
 傷付いた蓮子の肉体を強引に背負い、地上への昇降口でも探してジョルノに引き渡すか。
 どれも違う。メリーの選ぶべき行動は、成就の見込みが極めて薄っぺらい神頼みではない。


「肉の芽は消えたのよ! アヌビス神も壊したわ!
 貴方(蓮子)はここに居て、私(メリー)もここに居る!!」


 最後になってもいい。たった一言でもいい。
 証明が、欲しかった。


「秘封倶楽部(私たち)……やっと『再会』できたのよ! だから……死なないでよぉ……っ!」


 “私たちの愛した秘封倶楽部は、ここにいる”
 その証明には、二人の言葉が不可欠。
 〝メリー〟と〝蓮子〟……この二人が揃って言葉を交わし合う。
 死を免れない親友への、せめてものレクイエム。
 たった一言でも、それ以上は望まない。望んではいけない。

 それが秘封倶楽部にとっては───これ以上にない最高のように思えたからだ。


「起きてよ、蓮子……もう一回、秘封倶楽部……一緒に、やり直そうよぉ……」


 〝彼女〟は、そう考えた。

 そして、その相方である少女も───同じことを思ったのかもしれない。


「………………ぁ、…り、が…………ううん……、」


 小さな言葉は、今まさに交わされようとしていた。
 あまりにもか細い声だったが、メリーの耳には確かに届いたのだ。

 本当に、ただ一言の為。
 蓮子は薄らと瞼を開け、自分を抱きながら涙を流す親友の姿を仰ぎ……もう一度だけ、口を開かせた。



「秘封倶楽部(私たち)は、ずっと一緒だよ。───〝メリー〟」



 最期の言葉は、ハッキリと聴こえた。
 そして、蓮子はメリーの片腕の中で。
 嬉しそうな表情で───眠りについた。
 夢見る少女のままで。親友の腕の中で。

















「……………………ごめんなさい。本当に……ごめんなさい……蓮子」



 私は、独りになっていた。
 何故、こんなにも涙を流しているのだろう。
 何故、こんなにも謝っているのだろう。
 蓮子を救えなかったから?
 違う。そんなわけがない。
 私の心は、何も失われていない。
 宇佐見蓮子など、所詮は人間の少女。死んだところで心は大して痛まない。

 じゃあ、止めどなく頬を流れるコレは、何処から溢れだしているものなのだろう。
 これは〝私〟の涙なんかじゃない。
 これはマエリベリーの涙に過ぎない。
 友達を喪った哀しみが、あの子の心を通して〝私〟へと流れて来ている。


 ただ、それだけ。
 そうに、違いなかった。


「ごめん、……なさぃ…………蓮子…………っ」


 じゃあ、絶え間なく喉から転がる謝罪は、何処から溢れだしているものなのだろう。
 これは〝私〟自身の言葉だ。
 これは宇佐見蓮子を最期まで偽った負い目から溢れる言葉だ。
 死にゆく少女に〝メリー〟だと偽って嘘を吐いた……〝私〟自身の罪だ。


(私は……一体何故、〝あの娘〟に成りきろうとしていた……?)


 秘封倶楽部の活動は世界の『真実』を解き明かし、『謎』を暴くこと。
 では、蓮子は今際の際にどうしただろう?
 腕の中で眠るこの少女は何を想い、最期の一言を発したのだろうか?
 蓮子は。本当は……気付いていたのかもしれない。


 死にゆく自分へと懸命に声を掛け続ける親友の正体が。
 マエリベリー・ハーンの姿を借りた〝八雲紫〟という偽者。その『真実』に。


 少なくとも蓮子は。目の前の友の姿がメリーではないという事には気付いていたに違いない。
 いつからだろうか? それすら、もう分からなくなってしまった。
 真実に気付いていながら、彼女はその『謎』を無理に暴こうとしなかった。暴くべきでない謎も、この世には在ると理解していたのだろう。
 蓮子は「ありがとう」と、最期にそう言い掛けて……止めた。
 すぐに言い直して、メリーの名をしっかりと呼んで、死んだのだ。

 何が「ありがとう」なのか。
 自分を騙したつもりでいる相手に掛ける言葉ではないというのに。
 その言葉は、何故最後まで紡がれなかったのか。

 八雲紫はずっとメリーに扮してきた。メリーの殻を着たままに、親友である宇佐見蓮子を偽ってきた。
 それは蓮子の視点から見れば、悪趣味な演技以外の何物でもない筈なのに。
 どうして彼女は、気付いてない『フリ』をしたままに、笑いながら逝ったのか。

 ああ。それは凄く簡単な事だ。
 蓮子は、紫の『優しい嘘』がとても嬉しかった。
 紫の演技が悪意や打算などではなく、もう助からないと悟った蓮子へ魅せる、秘封倶楽部という名の『最期の夢』なんだと分かり、心から嬉しく思ったのだ。心優しい嘘に、咄嗟に「ありがとう」と言い掛けてしまい、気付かないフリで誤魔化した。

 何もかも、蓮子の為。紫の嘘は、蓮子を想うが為にあった。
 蓮子もそれを分かっていたから、何も言わず、〝メリー〟の名を呟いて……逝った。

 要は、紫は気遣われたのだ。
 それは蓮子が紫の嘘に対して嬉しく思ったからこそだった。
 優しい嘘を優しい嘘で返すような、意趣返し。
 本当に、とても単純な話。


 出来ることなら……彼女を『本当』のメリーに会わせてあげたかった。
 今はもう、叶わぬ夢だと分かってはいても。


「私はただ……『必要』だからあの娘と入れ替わった。それだけなのにね?
 …………蓮子」


            ◆

『八雲紫』
【夕方 ??:??】?-? 荒廃した■■神社


「───蓮子を救い出す『作戦』を説明します。よく聞いて、マエリベリー」


 七色と七星の見守る、一筋の夢の狭間。
 この素晴らしき夢幻が醒める前に、紫はメリーへと策を伝えた。
 メリーの大切な友達、宇佐見蓮子を救い出す最善の策を。


「───以上。外にはジョルノ君と鈴仙が居ると思うから、二人への合流がまず先ね。まあ、彼らが無事だったらの話だけど」


 凡そ完璧な作戦とは言えない、リスクという名の穴も幾らか見え隠れする凡策。それでも今、この場で蓮子をどうしても助け出すというのなら、これが最善だと紫には思えた。

「……作戦は理解しました。でも、あの……紫さん」
「分かってるわよ、貴方の言いたい事は」

 メリーは、紫の話した作戦の『ある一部分』においてだけ引っ掛かっていた。
 その内容というものは……


「『私と紫さんが入れ替わる』……っていうのは?」
「そのまんまよ。私が貴方に。貴方が私に『成りすます』って意味よ」


 入れ替わる。
 確かにメリーと紫の容姿は酷似しているが、衣装など交換したところで髪の長さや雰囲気など諸々の点では異なっている。
 成りすましなど可能かどうか分からないし、そもそもその行為に何の意味があるのかがメリーには理解に及ばなかった。

「まず『入れ替わり』の可否だけども、一言で言えば『可能』です」
「どうやって入れ替わるんですか? 身長とか、その……体つき、とかもちょっと違うように見えるんですけど。……主に私の体が足を引っ張る方向で」
「別に変装しようって意味じゃあないわよ。見た目に関しては私の境界を操る能力で何とかします。幸いにも容姿の方は殆ど同じだから、『夢』から醒める過程でスムーズに肉体を交換出来るでしょう」

 紫はあたかも服のサイズが合うかどうか程度のように軽く言ってみせたが、果たしてそう簡単にいくものだろうか。
 肉体を他人の物と交換するという、ただの少女が経験するには些か常識外れのイベント。それはそれでちょっと面白そうかもと、不謹慎ながらメリーは少々胸を高まらせた。なにせ目の前の大人かつ妖艶な美女の姿に変身できる様な話なのだから。

「少し難しいのは『中身』の方ね。私の方はともかく、貴方の演技力で〝八雲紫〟を完璧にトレース出来るとは……まあ、ちょっと思えないわねえ」

 何ですかそれ……と抗議しようとしたが、止めた。
 全くその通りであり、ハッキリ言ってメリーには紫のような独特の艷らしい空気を出せる自信などない。悲しいことに。

「そこでマエリベリー。貴方には、私の『記憶』や『能力』を分け与えます。“ちょっとだけ”ね」
「記憶と能力、ですか……?」
「ええ。私の持つ記憶や意思、スキマの力の使い方とか……『八雲紫』の持つ全てを一時的に貸すという意味よ。同時に、貴方の記憶も私と同調──つまり『共有』させて貰う。ひとえに演技するといっても限界があるからね。
 貴方自身は難しい事なんて考えずに、貸与された『私の意志』へ自然に肩を寄せてればいい。記憶と意思さえ共有すれば、貴方もありのままの〝八雲紫〟を振る舞える筈ですわ」
「えっと……よく分からないんですけど、そんな事まで出来るんですか?」
「普通は無理ね。ただ、貴方はやっぱり『特別』みたいだから」

 メリーと紫の間には、通常存在する『個の境界』が特別に薄いのだと言う。それは人格だとか、人間性だとか、人や妖怪の全てを形成する無二のアイデンティティ。それらを潜り抜け、メリーが紫に、紫がメリーの器に潜り込み、あたかも本人そのものの様に振る舞うことは難儀ではないと。
 鏡に映った互い同士を、鏡界を超えて交換するようなものだという。なにぶん初めての体験であるので、メリーにはいまいちピンと来ない。しかし賢者が可能だと断言する以上、それはやっぱり夢物語なんかじゃなくて。

 メリーは紫の提唱した肉体トレード策に、力強く頷いた。これも蓮子を救う方法ならば、何だってやってやると。

「全部DIOを『騙す』為よ。あの男は貴方の能力に相当固執している。作戦の過程で何らかのアクシデント……つまりは『失敗』して、貴方が再び囚われないとも限らない」

 DIOを騙す。つまりはそれこそが入れ替わる目的だと紫は説明する。
 あの男の執念は末恐ろしく、相当なものだというのはメリーとて存分に味わっている。それへの対策として、予めこの方法を取るのだと。

「……つまり、それって」

 恐る恐る、メリーは不安を口に出すようにして問う。

「そう。もしもの時は、私が『身代わり』になる」
「そんなっ!」

 籠から逃げ出した小鳥が戻ってくる。そうなればDIOは大喜びでメリーを籠に閉じ込め、本格的な支配に身を乗り出すだろう。
 その時、捕らえた小鳥の中身が全く別の物──レプリカであったなら、男は怒りに顔を歪ませ、計画はおじゃんとなる。一泡食わせてやれるのだ。

「だ、駄目ですよそんな……!」
「駄目? それはどうしてかしら?」
「だってそれって、もしも入れ替わってる事がDIOにバレたら……」
「始末されるって? 貴方ねえ、私のこと見くびってるでしょう?」

 賢者の見せる余裕は、メリーの不安を払拭させ切るには至らない。紫の妖力が絶大なモノである事は理解し始めてきているが、DIOの恐怖を骨の髄まで伝えさせられたメリーにとっては、紫よりもDIOの悪意が更に強大なそれだと認識している。そして『悪意』に関してなら、その認識は決して的外れではなかった。

「それに私の力を貸すといっても、最低限の範囲よ。たとえ器を違えても、大妖怪の力は充分に残す。もし囚われても、尻尾を巻くぐらいの力はある」
「でも! 私の身代わりにさせるなんて、そんな事が……!」
「聞き分けなさいマエリベリー。何の為にこんな『夢』の中まで貴方を救出しに来たと思ってるの。それにこれは起こり得る最悪のアクシデントが発生した場合の予防線。そうならない為にも、貴方は館の外で祈ってなさい」

 紫の話した作戦の内容。それはメリーに扮した紫と、紫に扮した『サーフィス』の人形が二人でDIOに接近し、蓮子を分断させるというものだ。
 所詮はコピー人形のサーフィスが弾幕やスキマの力を発揮出来るかは怪しいものなので、傍に付いたメリー(紫)が“あたかも紫(サーフィス)がスキマを使った”かのように見せればこの問題はクリアでき、DIOすら騙し通せるだろう。
 そしてその頃には当然、本物のメリーはDIOから離れた安全な館外へジョルノと共に身を隠している……というのが、紫の作戦の全貌である。

「私と貴方の『入れ替わり』についてはジョルノ君達にも秘密よ。少なくとも完璧な安全を確保出来るまでは、ね」

 地下道には見当たらなかったが、外にはまだディエゴの翼竜が目を光らせている。余計な漏洩を防ぐ為の処置でもあった。特に鈴仙辺りが事前に知ってしまえば、うっかり口漏らすくらいやってもおかしくはない。


「そしてこれは作戦の性質上、蓮子の芽を解除する役目は私が就くことになる」


 力を貸しておくとはいえ、メリーでは荷が重い。敵組織の正確な数も分からないし、あの厄介なディエゴだってまだいるのだから。それにメリーの姿形に応えて蓮子の意識が元に戻る、というのも考えられない話ではない。であるならば、半ば蓮子をも騙す形とはなるが試す価値はあるというもの。


 以上が、二人の肉体を交換する理由。
 紫がメリーを想うが故に、リスクは全て紫が請け負う。
 これは『必要』な事なのだ。


「さあ、そろそろ本当に『夢』から目醒めましょう。
 さっき渡した『ブローチ』も身に付けておいてね。ただの装飾品じゃないんだから」


 紫の指差した鳥居の奥では、現実世界の『部屋』が歪んだ形で渦巻いている。
 ここを潜れば、メリーと紫の意思は互いの肉体へと交換される。
 そして。
 すぐにも宇佐見蓮子はメリーの元へと帰ってくるだろう。
 親友同士とは、そういうものだ。
 だから。


「だから……蓮子は、私が必ず元に戻します」
「紫さん……」
「そして───『秘封倶楽部』をやり直す。……でしょ?」
「……はい! 蓮子のこと……お願いします!」


 メリーの為に、蓮子を救うと。
 そう決心し始めていた。

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
『マエリベリー・ハーン』
【夕方 16:25】C-3 紅魔館 玄関前


「……マエリベリーに付けていた『ブローチ』の反応が地下に移動しました。どうやら作戦は成功したようです、紫さん」
「それは良かった。後は〝マエリベリー〟が蓮子ちゃんを元に戻して私たちと合流すれば撤退。
 さ、鈴仙が帰ってきたら、こんな目に悪い赤赤しい館からはさっさと退散しましょう」


 紫さんと私の肉体はどうやら本当に入れ替わる事が出来ているらしい。今や私の体は『八雲紫』そのもので、不思議な事にあの人の持つ『記憶』すらも私の中にある。それが私の口調や所作を八雲紫の振る舞いとして映るよう、ごく自然に動かしていた。

 その事が、私にとっては少し怖い。

 私と紫さんが肉体を交換した理由──その『表向き』の理由は、DIOを騙す目的。あの人は困惑する私へと、笑みすら交えながら説明した。
 嘘ではない。でも……『本当の理由』が、言葉の裏側には隠されていた。あの人と記憶を共有した私には、それが分かってしまった。

 分かっていながらあの人を行かせたのは、きっと。
 紫さんの抱えた『覚悟』や『想い』が、彼女と同調を遂げた私にも理解出来てしまったから。

 何故あの人が、わざわざ〝マエリベリー〟へ代わったのかも。
 何故あの人が、『夢』の中で『七色の虹』の話を語ったのかも。

 〝八雲紫〟の意思と記憶、力を受け継いだ私には……全部、理解出来る。

 だから私は……今がとても怖い。
 紫さんは先にこの場を離れろと指示した。後から二人で追い付くから、と。
 それは私の安全を思っての事なんでしょう。ここはまだ、敵の陣地内なんだから。

 早く……早く二人に逢いたい。逢って、安心したい。
 未来なんてものは結局、誰にも分からないから。
 もしひどい未来を知ってしまったなら、人はそれを回避しようと躍起になる。
 そうなれば……もっと悲しい結末になるかもしれないのに。
 だから『覚悟』なんて出来ないし、するべきでないと思う。


 そして───だからこそ人は『今』を精一杯に生きようとするに違いないもの。




「……鈴仙が慌てふためきながら帰ってきたわ。DIOの足止めにも成功したようだし、すぐにここを離れるわよ、ジョルノ君」

 見れば、鈴仙さんが涙目でこっちに走ってくる光景を確認できた。
 良かった。私は囮役を引き受け(させられ)た鈴仙さんの無事に心から安堵する。
 ジョルノ君も私と同じように彼女の無事を認め、安心して。
 私へ確認するように、唐突に言った。


「……紫さんは、それでいいのですか?」
「……え?」


 彼が私をじっと見つめる。空気が少し、重くなった。

「いえ……杞憂かもしれませんが、僕はやはり〝マエリベリー〟が心配です。さっき初めて彼女と会話を交わした僕ですらそう思うのですから、貴方はもっと心配なのではないですか? 彼女の事が」
「……マエリベリーの事なら、私は信頼してますので」

 気丈に振る舞う言葉とは裏腹に、心中ではジョルノ君の言葉に大きく揺さぶられていた。
 心配。そんなの、当たり前だ。紫さんは今、たった一人で蓮子と向き合っている。
 あの人は私の『身代わり』になってまで、戦っているのだから。

「信頼というのは……とても重要です。僕自身も貴方のことは信頼してます。しかし、今回ばかりは……貴方の判断に首を傾げています。
 ハッキリ言いますよ。僕は今からでも、地下のマエリベリーの元に向かうつもりです」
「ジョルノ、君……」

 強い意思を持った人だと感じた。とても年下の男の子とは思えないくらい『気高い覚悟』を持つ人だなと。

 彼の言葉を聞いて、私も決心できた。
 ごめんなさい、紫さん。
 私もジョルノ君と一緒。貴方を残して行けません。

「……ふう。分かったわ。共に地下へ降りましょう。私だって二人が心配だもの」
「ありがとうございます。……それとは別件なのですが」

 軽く礼をしたジョルノ君は、すぐに私を訝しむような顔つきへと変わった。


「───紫さん。もしかして〝貴方〟は…………いえ、何でもありません」


 思い詰めた表情を切り替えるようにして、彼は私から視線を逸らした。
 私も何となく、彼が『私の正体に気付いているのかも』とは感じていたけども。
 でもジョルノ君はそれ以上何を言うこともなく、駆け寄ってくる鈴仙さんに労いの言葉を掛けて気付かない『フリ』をしてくれた。


 今は、私もそれでいいと思って。
 紫さんの『フリ』を続けて、クタクタの鈴仙さんを労わってあげた。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
『八雲紫』
【夕方 16:30】C-3 紅魔館 地下道


 もしも。
 未来に起こるひどい出来事を、知ってしまったなら。
 確定された末路を、事前に知らされてしまったなら。
 人は、どうするだろう。

 抗うか。
 受け入れるか。
 更に絶望するか。

 柄にもなく、そんな無意味を考えてしまう。
 記憶の層が在る限り、未来が予定されているという事象は有り得ないのだから。
 明日何が起こるのか判らない。それこそが、私たちの暮らす当たり前の世界なのだから。




 どうしてこんな事になってしまったのか。
 大妖怪・八雲紫ともあろう賢人が、呆けから立ち直るまでに手間取っている。
 だから、だろうか。こんな無意味を考えてしまうのは。

 もしも。
 眼前で起こった悲劇の未来を、知ってしまったなら。
 確定された末路を、事前に知らされてしまったなら。
 私は、どうしただろう。

 …………。

 …………きっと、私は。

 ────…………いえ。


「本当に、無意味……ね。……〝私〟らしくもない」


 〝私〟か。
 今の〝私〟は、一体〝どっち〟なのかしら。

 〝八雲紫〟?
 それとも、〝マエリベリー・ハーン〟?

 宇佐見蓮子と向き合った時の私は、きっと〝マエリベリー〟に成りきろうとしていた。
 それは純粋に、蓮子の……ひいてはマエリベリーの為になると信じていたから。

 死にゆく蓮子の前でさえ、私は〝マエリベリー〟に成りきろうとしていた。
 だって、秘封倶楽部の二人は最後まで『再会』する事が叶いませんでした、なんて。


「───そんなの…………哀しすぎるじゃない」


 血で穢れた蓮子の口元を綺麗に拭い、冷たくなった身体をそっと横にした。
 蓮子の亡骸は、幸せそうな顔だった。
 まるで『夢』を見ているような。
 夢の中で秘封倶楽部の活動を再開し、いつもの日常に戻っているような。

 ……この娘の身体を、このまま暗い地下の底に置いて行く訳にはいかない。こんな血の滲み渡った仮初の箱庭などではなく、この娘の故郷へと還してあげたい。
 今の状況では難しいだろう。せめて、地上へ運んで土に埋めてあげるくらいはしなくては、マエリベリーに会わせる顔がない。彼女の顔を借りている身だけに、余計に心苦しい。

 本当に、私の心を占める人格が判らなくなってきた。
 マエリベリーには「八雲紫の力と記憶を少し分ける」と言ったが……実の所、元ある殆ど全ての力も、意思も、記憶も、彼女に与えていたのだから。
 最低限残していたのは、蓮子を肉の芽から救い出せる程度の力だけ。
 それすら叶わなかった今の私は、本当に───『普通の女の子』のようなもの。

 入れ替わりを著明にする為にマエリベリーから借り受けた記憶や意思が、現在の私を大きく構成する要素になりつつある。
 蓮子の前で披露した『演技』は……もはや演技とは言えなかった。私の中に渦巻く〝マエリベリー〟の意思が表に露出し、リアルな感情となって蓮子に吐き出されたのだ。
 そうであるなら、今となっては寧ろ〝八雲紫〟の意思の方が演技なのかもしれない。


 白状しましょう。
 マエリベリーに〝八雲〟の力を全て託す……これこそが、私たちの肉体を入れ替えた『本当の理由』、だった。
 罪深いことなのは承知している。これであの娘は、本当の意味でただの『人間』では無くなってしまった。
 けれどもそれは、きっと必要なこと。これからの未来で、必要になること。
 幻想郷の為? 私の為? マエリベリーの為?
 いずれにしろ私は近い将来に訪れる、自らの『滅亡』を予感していたのかもしれない。
 ずっと前から、こうなる事が分かっていたのかもしれない。
 罪無き少女に妖怪の力を託すことは、苦渋の選択であった。


「あ。……蝶」


 私の胸に添えていた、ナナホシのブローチが。
 蓮子の命を、結果的には奪ってしまって───違う。
 私の命を/マエリベリーの身体を、護ってくれたブローチが。

 この世のものとは思えない程に色鮮やかな『虹』を、その翼に彩って。
 まるで蛹から羽化したみたいに……『蝶』へと変わって、空を翔んだ。


「ジョルノ……」


 彼が発動させたのだろうか。
 それとも、これは私が見ている幻想か。
 蝶にはあの世とこの世を行き交う力があるとされ、輪廻転生の象徴とも呼ばれている。
 虹の翼を羽ばたかせる蝶は、蓮子を弔うかのように彼女の周りを飛び続け。


 幻想的な七色の鱗粉を舞わせ……やがて闇の奥へと姿を消した。


「まるで……幽々子の蝶みたい」


 力無く笑った紫は、自身の“傷付いた胸”を押さえながら、ゆったりと立ち上がった。
 右腕だけとなったその手には、べっとりと血がこびり付いている。
 蓮子の血ではない。斬り飛ばされた自分の左腕から流れ出るモノでもない。
 ゴールド・Eの反射は……アヌビス神の刀を全て防ぎ切った訳ではなかったらしい。

 物体透過能力。
 妖刀はブローチの盾を僅かだが『貫通』し、紫の心臓にそのまま損傷を与えていた。

 この反射が100%作用していたならば蓮子は〝メリー〟と再会出来ず、最期の言葉を交わす暇なく即死していただろう。
 この反射が全く作用していなければ紫は死に絶え、蓮子は妖刀に支配されたままに哀しき人斬りを繰り返していただろう。

 偶然にしては出来すぎだ。
 仮初の姿を通してではあったが。一瞬限りではあったが。
 秘封倶楽部の二人が『再会』出来たのは、この偶然が成した結果であった。


(この傷は……私が受容すべき戒めの傷。甘んじて、受け入れましょう)


 受け入れるべきは肉体への傷でなく、紫の心への傷。
 今の身体はマエリベリーの物。何に代えてでも癒すべきなのは当然だった。
 決して浅いものではないし、左手の欠損も重傷。ここでもジョルノの力を借りなければならない無様に、本当に嫌気がさす。


 悔やまれるが、少しの間だけ蓮子の亡骸は置いて行くことになる。
 あの蝶の先にジョルノは居る。マエリベリーも一緒だ。先に脱出しろとは指示しておいたが、こんな自分を心配してそこまで来ているのかもしれない。

 心から情けない事ではあるが。
 まず許される失態ではないことも承知しているが。
 マエリベリーに、謝ろう。
 目を背けたりせず、共に蓮子を弔おう。


「すぐに、戻ってくるから。だから……少しだけ、待ってて───蓮子」


 血で穢れた唇から漏れ出た、その言葉は。
 果たして〝八雲紫〟の言葉か。
 それとも〝マエリベリー〟の言葉か。
 それを考えることなど、やはり無意味だ。
 世界でただ一つの秘封倶楽部に、穢れた自分などが入り込む事は……許されないのだから。

















 ひた。


 ひた。




 蝶を追おうとした彼女の…………その背後から。
 つまりは、横たわった蓮子の身体を挟んだ、その向こう側の闇から。
 “それ”は響いてきた。

 暗闇に木霊する、雫の落ちる音とでも形容しようか。
 どうしようもない終焉の足音。自らの破滅を予感させる楔(くさび)が、床を嘗めずるように近付いてくる。


 コツ。


 コツ。


 足音は、靴の音色へと変わっていた。
 裸足で闇を踏むようなさっきの音は、錯覚だったらしい。
 この不吉な錯覚を認識した紫は、全てを観念したように……背後へと振り返った。



「女の勘……とでも言いましょうか」



 聴く者によってその声は『聖女』とも『悪女』とも呼べる、しんしんとした柔らかな奏で。
 真っ暗闇の会場でただ一人の観客となってしまった紫にとって、その声がもたらす調律は後者を予期させた。


「何となく……分かってしまうものですの。同じ女である貴方様にも、ご理解頂けるかと。


 ────ねえ。〝八雲紫〟サマ?」


 霍青娥
 邪仙の忌み名を冠する彼女が、当たり前のようにそこへ立っていた。
 浮かべる笑みは、驚くほど静かに波打っており。
 涼やかな感情の内に渦巻くほんの僅かに混ぜられた『怨恨』に、対面する紫は気付く事が出来ずそのまま会話を続ける。

「……よく、分かったわね。蓮子ですら、“私”だと気付けなかったのに」

 この言葉は戯言だ。
 蓮子は、目の前の親友の姿が嘘っぱちだと気付いていた。

「だから女の勘ですよ。それに……蓮子ちゃんだって、まだまだ子供とはいえ立派な女。本当に貴方が“メリーではない”って気付く事なく逝ってしまわれたのかしらね?」

 “メリー”に扮した八雲紫は、青娥の知った風な疑念に言葉を詰まらせる。
 そんな言葉を、よりによってこの女から聞きたくはない。不快だ。

 宇佐見蓮子は“どうして”最期に笑ってくれたのか。
 それは彼女の優しさだったのだろうという都合の良い解釈が、自分の中にあるのは事実。
 かもしれない。そうに違いない。そんなあやふやな解釈で宇佐見蓮子を“知った気でいる”紫には、彼女を真に測る資格など無いというのに。
 少女の胸に抱えられたまま眠りについた真実は、結局……彼女にしか分からない。
 永久に、分からないのだ。
 それはもう、終わったこと。

 ここにいる紫は、事実はどうあれ結果的に蓮子を騙した事になる。
 たとえそれが、秘封倶楽部を慮った行動だとしても。
 思い遣りから生まれた行動が、巡り回って真実を遠ざけてしまったとしても。

 紫の心からは罪悪感は拭えない。
 そして。
 だからこそ紫には、蓮子を偽り、彼女を看取った責任がある……と、そう感じている。
 本来の“八雲紫”の姿を与え、別行動を促したメリーに対し、すぐにでも伝えるべき言葉は多くある。
 あの子にとって、きっと……とても辛いことになるが、全ての責は紫にある。その事も含め、話さなければならない。
 こうなってしまった以上、メリーが大きく傷付く未来は避けようもない。
 そんな彼女の手を取り、導く者が必要となる。
 当事者である紫自身では、きっとない。恐らくは───


 紫は首を振り、目の前の事象に目を向けた。


「……いつから、見ていたの?」
「初めから、ですわ。それはそれは、第三者が踏み入れる雰囲気でないことは瞭然だった故に。少し空気を読んで、敢えてお声は掛けませんでした」


 あれを見られていたという知りたくもなかった事実が、紫の心に更なる不快感を植え付けた。
 邪仙はこう言うが、その実態など、人間が生む最期の欲を観察したいが為、などといった利己的な理由に決まっている。闇の片隅で、心底純真な眼でそれを眺めている青娥の姿を想像すると、途方もない怒りすら湧き出てくる。

 しかし……今の紫には、この性悪な女を潰す力など一切残っていない。
 改めて、思う。
 ここに来たのが〝マエリベリー〟でなく〝私〟で、本当に良かったと。



「───時に紫サマ? 貴方の式神が何処でどうやって死んじゃったか……ご存知ですか?」



 紫の内が抱え始めた不安と、青娥の切り出しは同時だった。
 動揺は決して表に出さず、急な話題の中心に現れた我が式神の姿を紫は追想する。

「藍かしら? それとも橙を言ってるの?」
「んー。ま、ここでは優秀な方の式神ちゃんの事ね。どうせ知らないんでしょ?」

 何故、ここでその名前が邪仙の口から出てくるのか。
 突如として安易に触れられた八雲紫の地雷。その爆弾が爆発するより先に、紫はどうしようもなく嫌な予感が脳裏を掠めた。


 きっとこの先。青娥の口から聞かされる言葉は。
 私にとって、凶兆となる。


「青娥。今、貴方と遊んでる暇は無いの。3数える内に、視界から消えなさい」

 これが虚勢であると、目の前の邪仙は気付いているのだろうか。
 どちらにしろ、コイツは『目的』を果たすまで消えようとしないだろう。

「あーでも。別に貴方の式神がどこで野垂れ死んだのかは、この際どうだってよくってよ」

「3」

「重要なのは……『貴方の式神』である『八雲藍ちゃん』が、とうに舞台から御退場してしまったっていう事実なのよね〜」

「2」

「私としては『ザマーミロおほほ』って感じではあるんですが、それはそれでちょっと消化不良といいますか……煮え切らない気持ちもあるっていうか。死ぬくらいじゃ生温いと思ってるんですよ」


 もう、我慢ならない。

 紫はとうに枯渇している妖力の残りカスを井戸から何とか引き揚げ、目前の道化へと翳した。



「───だから、私の大事な大事な『芳香ちゃん』をバラバラにしてくれちゃったあの女狐への『仕返し』は、主人である貴方が代わりに受けて頂きます」



 零に等しくも、あらん限りの力を放出する瞬間……その言葉が耳に入り。

 愛する従者への侮蔑に怒りを抱いているのは自分ではなく、青娥の方であったと。

 不出来な式神がしでかした行為の因果が星回って、今。己を喰い尽くす禍へと変貌したのだと。

 八雲紫が、それを理解したのは。



 ───青娥の右腕が胸から潜り込み、心臓を引き裂きながら背中まで穿いた、一瞬の後であった。



「ディエゴ君から予め伺っておいたのです。『芳香ちゃんを殺した輩は誰?』って。
 ……まさか、貴方の式神の仕業だなんて思いもよりませんでしたよ」


 近いようで、遠い場所。
 すぐ傍なのに、ガラスで遮られた境界の向こう側。
 隔壁の先から響き渡る青娥の、一字一句を刻み付けるかのようにじわじわとした呪言が耳元から這いずって駆け下り、裂かれた心臓をきゅうと締め付けた。

 邪仙の吐き出した、如何にも取って付けたような戯言。信用に値しないのは今までの行いからも明白。
 藍への侮蔑を「ふざけるな」と斬って捨て、愚かな虚言の報いを与える。そうあるべきだと、沸騰を迎えた感情が胸倉を掴んでいるというのに。

 何故だか紫の心は、青娥の言葉に偽りは無しと、あっさり受け入れられている。
 藍が、同郷の仲間達を傷付け回っていると。
 そしてその行為は、全て私を想ってのこと。
 汚れ仕事を、率先して行使しているのだと。

 今ではもう、叱りつけたくても出来ない。
 抱擁で諭したくても、この腕は届かない。


(馬鹿……ね。あの子も……私も……、みんなみんな、空回り)


 青娥の毒牙は、正当なる報復でしかない。
 こんな時、どんな表情をすれば良いのか。
 紫にはもう、分からなかった。
 ただ、靄のかかる意識の中。

 家族のように愛した、もう既にいない式神たちの事とか。

 最後の最後に生まれた、目の前の女に対しての贖罪のような馬鹿げた気持ちとか。

 同じく従者の命を奪う結果となってしまった、今はまだ何処かにいる亡霊の友達の安否とか。

 何もかもを押し付ける形でバトンを渡してしまった、我が写し鏡であるメリーへの罪悪感とか。

 そういった負の一切を帳消しなどには出来ない、してはいけない、どこまでも落ちぶれた『大妖怪・八雲紫』の、惨めったらしい絶望の只中であるべき貌(かお)は。


 不思議と、大いなる希望を灯すように安らかなモノへと移り変わっていた。


 それは、朧気に成りゆく光景に映り込んだ、一匹の蝶々。
 ジョルノが紫の為に与え、宇佐見蓮子を滅ぼした一因となってしまった筈の、虹色の蝶々。
 闇の奥に輝く蝶が、消え入る紫にとって……まるで『夢』へと導く希望の象徴に見えたからであった。


 赤黒い飛沫が、喉をせり上がって噴かれた。
 貸してもらっていたメリーの身体と、容赦なくその肉体を抉った青娥の肩が血で穢れる。
 心のどこかでは、このような悲劇的な末路が訪れる事も予感していた。
 自己嫌悪の混ざった血の海で溺れながら、八雲紫は自らの元に帰って来た虹色の蝶へと腕を伸ばした。

 震える腕には、もう力の一片だって籠らない。
 そんな非力な大妖怪の手を取るかのように、フワフワと漂うばかりであった蝶が降りてきて。

 紫の伸ばした人差し指の先へ、止まり木に絡むように……そっと留まった。

 蝶は全てのしがらみから解き放たれたようにして、元のブローチの形……


 ───『ナナホシテントウ』の姿へと時間を逆行させて、静止する。


 それは、この醜悪なる催しの演者として降り立った紫が初めに見た光景。
 夜空に浮かんだ『七つの星』と、同じ模様を背に描いたアクセサリー。
 ナナホシのブローチを血塗れの胸に引き入れて抱くと、あの満天の星空を仰いだ夜に感じた『希望』と同じ気持ちが、紫の中で生まれた。


 気掛かりは、数え切れないくらい沢山ある。
 夢半ばで朽ちる事への恐怖が、無いと言えば嘘になるだろう。
 けれども。
 世に生まれ出で、今まで多くの躓きと挫折を反復し。
 永い夢でも見るような、悠久の刻を積み重ね。
 やっと、幻想郷はこの形を得た。
 ここまでは、私の成すべき仕事。
 そして、ここからは若者たちの作り上げる『夢』。

 名残惜しくもあるけれど、私の見てきた永い永い『夢』はここで終い。
 黄昏を超えた境界。その向こう側に、真のフロンティアが在る。


 (……あぁ、瞼が重くなってきたわね。また、少しだけ……眠ろうかしら)


 私の見る夢は終わっても、幻想の見る夢は終わらない。
 受け継ぐ者たち。語り継ぐ者たちがいるなら。
 少年少女は空を辿り、光り輝く虹の先へと到達できる筈だもの。



 ───……リー。

 ……マエリベリー。

 ごめんね、マエリベリー。

 蓮子のこと、救ってあげられなかった。

 その上、まだ子供の貴方にまで、色んな重荷を背負わせてしまった。

 大人の自分勝手なエゴで、貴方から色んなものを奪ってしまった。

 本当に、ごめんなさい。

 でも、マエリベリー。貴方はとても、強い子。

 冷たい殻の中でうずくまる蛹なんかじゃあない。

 殻を破り、自分の意志で空を翔び、七色の虹の先へと辿れたなら。

 そこにはきっと、貴方にとっての黄金郷が見付かるわ。

 仲間を見付けて。

 貴方の手を取ってくれる仲間たちが、此処には居るはず。

 マエリベリー・ハーン。

 貴方が宇宙を輪生し、一枚の境界を超えて『八雲紫』へと成った。

 紫鏡のあっち側で育った、私の半身。

 せめて私は……貴方が辿る旅の、幸福を祈っております。












「何か、最期に残したい台詞でもおありですか?」


「…………そう、ね」


「仙人とは慈悲深いもの。たとえ怨敵であろうと、かの大妖怪・八雲紫様の今際のお言葉とあれば……耳を傾けてさしあげましょう」


「………………あなたの、欲の……興味本位って、だけでしょ」


「うふふ」


 最期の言葉、か。
 邪仙にとっては、さぞ興味あるのでしょうね。大妖怪が世に遺す、辞世の句は。
 でも……この闇に遺すべき言葉など、私には無い。
 全ての『意志』は既に、夢と共に託してきた。
 なので御期待のところ、申し訳ないのだけれど。


 八雲紫の遺す“最期”は、やはり戯言こそが相応しい。



「───夢」


「……なんと?」


「貴方、『夢』って……ある?」


「……そう、ですね。敢えて言うなら、貴方のような方の欲を見届ける事こそが、私の『夢』……って所かしら」


「…………そ。良かった、じゃない。夢、叶って」


「叶うのはこれから、ですわ。私、貴方様の『夢』とやら……興味ございます」


「………………わたしの、夢……か」






「───うん。わたし、『普通の女の子』になりたかったの」






「……それはそれは、素敵ですわ。おめでとうございます。お互い、夢が叶って何よりですね」


 今の貴方は、かよわい普通の女の子も同然の体たらくですから。



 ───失望の念を、心より禁じ得ません。八雲紫。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
ディエゴ・ブランドー
【夕方 16:34】C-3 紅魔館 一階廊下


(フーン……。あの女の能力が『宇宙を超える』、ねぇ)


 まるで『大統領』のヤツが得意な能力みたいだな、とディエゴは口漏らす。
 かのD4Cは物と物との間に挟まる事で『隣の世界』へ行ける。そしてそれは、周囲の人物も巻き込む事で同様の現象を与えられる。
 ヤツの場合はあくまで『少しだけ違う世界』というものだ。それですらブッ飛んだ能力には違いないし、ディエゴ自身も隣の世界へ飛ばされて死に掛ける、といった体験は記憶に新しい。
 片やメリーの能力とは、複合的な条件こそ必要であるらしいものの、宇宙の輪廻をも飛び越えて扉を開くというもの。謂わば、完全なる別世界へ入門出来るようなものだ。
 宇宙を越える、という新仮説をDIOも紫も同意見として導いていた。それはつまり、何十億、何百億年単位で『時空』を飛び越える事になる。

 DIOのように『時間操作』タイプの能力者、という見解も出来るのだ。


「面白くなってきやがったな。あの女、是非ともモノにしたいところだ」


 大袈裟に裂けた唇が三日月型に歪み、恐竜の牙が覗いた。ディエゴの肩には通常索敵に使用する翼竜型ではなく、屋内潜伏に適したトカゲ型の小型恐竜が乗っており、DIOと紫の会話内容を盗み聞いたのは彼の功労だった。
 翼竜よりは目立たないが、それでも屋内だと不便はある。が、館内の諜報役としてはこれくらいで充分。お陰で貴重な話が聞けた。

「それにしたって翼竜共の集まりが悪いな。低温気候のせい……というより、あの『フード男』の仕業か」

 外の雪のせいで、斥候の招集率が悪化してきた。そしてこの『雪』が、自然現象による気候ではないという事もディエゴは既に勘付いている。

 ウェザー・リポート。いや、ウェス・ブルーなんたら、だったか? とにかく、その男がスタンドによって雪を降らしている。
 意図的だろうがなんだろうが、ヤツの行為によってこっち側の『足』がどんどん潰されているのだ。

「ウザったいな……早めに始末しておくべきか」

 戦うとなれば苦戦は必須。現状を見ても分かるように、ディエゴの『スケアリーモンスターズ』とあの天気男は相性がすこぶる悪い。湖の前でゴミ屑にしてやった『傘』も雨を操り固めていたが、相性はというと同様に悪かった。
 出来れば他の人間……相性で決めるなら、文句なくヴァレンタイン大統領に向かわせるべきか。


「……っと。この場所も流石に崩れてきそうだ。オレも地下に潜るか」


 さっきから建物を伝わる振動がディエゴを小刻みに揺らしている。ジョルノの一計でこの紅魔館もオシマイの運命という訳だ。アジトの移動は余儀なくされるだろう。
 取り敢えずウェスの始末と、ホル・ホースの持ち去った『DISC』が目下の優先事項か。

 そういえば、メリーと蓮子を追跡させた恐竜がまだ戻らない。
 あそこには青娥も向かった筈だ。つい先程、そこの廊下で出くわしたのだから知っている。
 あの女に渡しておいたDISC──翼竜が会場のどこかから一枚だけ拾ってきた奴だ──は、果たして有効活用されてるだろうか。

「まあ、あの悪女が素直にオレの言うことなど………………聞くかもなあ」

 特別、反抗心がある女ではない。ただ、あの頭花畑女は如何せん自分に正直すぎる。
 己が認めた人間は無礼が付くほど持ち上げ、自分は全く別の次元から眼下の光景を俯瞰して楽しむような女だ。
 つまり結局、奴は周囲の人間全てを見下しているのだ。DIOだろうが、オレだろうが、誰だろうが。

 だからオレは、あの女が本当に嫌いなんだ。

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

【C-3 紅魔館 一階廊下/夕方】

【ディエゴ・ブランドー@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:右目に切り傷、霊撃による外傷、全身に打撲、左上腕骨・肋骨・仙骨を骨折、首筋に裂傷(微小)、右肩に銃創
[装備]:なし
[道具]:幻想郷縁起、通信機能付き陰陽玉、ミツバチの巣箱(ミツバチ残り40%)、基本支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る。過程や方法などどうでもいい。
0:地下に避難する。
1:ウェスとホル・ホースの動向を注視。
2:幻想郷の連中は徹底してその存在を否定する。
3:ディオ・ブランドー及びその一派を利用。手を組み、最終的に天国への力を奪いたい。
4:同盟者である大統領を利用する。利用価値が無くなれば隙を突いて殺害。
[備考]
※参戦時期はヴァレンタインと共に車両から落下し、線路と車輪の間に挟まれた瞬間です。
※主催者は幻想郷と何らかの関わりがあるのではないかと推測しています。
※幻想郷縁起を読み、幻想郷及び妖怪の情報を知りました。参加者であろう妖怪らについてどこまで詳細に認識しているかは未定です。
※恐竜の情報網により、参加者の『16時まで』の行動をおおよそ把握しました。
※首長竜・プレシオサウルスへの変身能力を得ました。
※名簿のジョースター一族をおおよそ把握しました。
※プッチ、静葉と情報交換をしました。
※DIOと紫の話した、メリーの能力の秘密を知りました。
※現時点ではメリーと紫の入れ替わりに気付いておりません。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
『霍青娥』
【夕方 16:35】C-3 紅魔館 地下道


 柄にもなく、霍青娥は苛立っていた。
 いや、苛立つという表現は些か大袈裟かもしれない。
 面に出るほど気を立てているという自覚は少なくとも彼女に無いし、へそを曲げるといった可愛げのある表現ですらまだ言い過ぎだ。

 精々、なんか面白くないですわ程度の、蚊に刺された様な不機嫌。
 どうしてだろうか。

 愛しのキョンシー・宮古芳香をあんな酷い目に遭わせた式神風情の清算として、その保護者には死を以て償わせた。八雲紫はこうして無様な屍体へと成れ果て、報復は無事に終えることが出来たのだ。


 めでたしめでたし。


「……ち〜っとも、めでたくないですわね」


 孤独となった場所で、ため息と共に独りごちる。めでたくない理由など、とうに分かっている。
 それはひとえに、想像していた以上に紫がつまらない女だったからだ。


 青娥は別に、戦うことが大好きな戦闘狂ではない。力のある者は好きだが、その相手と競り合いを演じる事に至上の幸福を得るタイプではない。全然ない。太古より地上で猛威を奮っていた鬼たちを筆頭に、幻想郷にはその手の自信家や熱血漢は案外多いが、そいつらと同類にされても困る。
 青娥とて厳しい修行、秘術の研究を積み重ねて体得した仙術の数々を相手に見せ付けるのが趣味であるが、それもあくまで自慢が目的である。
 寧ろ、戦うのはキライだ。慣習的に襲撃を続けて来る死神連中を適度にあしらうだけで充分だと内心ウンザリしているくらいだし、他人のファイトを観戦するくらいが一番性に合っている。


(それなりに、期待してたんですけどねえ)


 冷たい床の上には、仲良く手を握り合う様にして倒れた二つの死体。
 形だけを見るのなら、メリーと蓮子の息絶えた姿。
 青娥はもう一度、ため息混じりに二人の亡骸を眺めた。


 “他人の欲を覗く”
 このバトルロワイヤルで邪仙の狙う目的らしい目的はと問えば、つまるところそれに終始する。DIOに仕えるのも、彼女の目的を叶える上で最も近道足り得る手段だから。
 何故なら彼は、人の心に澱む欲を引き出すのが非常に達者なのだ。秋静葉が強引に振舞っていた、本来には備わっていない貪欲さを彼はそっと抑え込み、心にすっかり沈澱させていた安息への欲求を逆に掬い上げた。
 彼女は秋の神だが、敢えてこう表現しよう。

 DIOは秋静葉を、人間へと戻した。
 戻した上で、更なる深みの〝悪〟の道へ誘った。

 また一見怪物の様に見えたあのサンタナの、内に燻る渇欲や名誉欲といった血生臭い欲求を手玉に取り、コントロールするといった老獪なやり口を披露したのには舌を巻いた。
 蚊帳の外から見ていた限りではこの上なく凶悪なあの鬼人を口八丁手八丁で丸め込み、何だかんだ懐刀に迎え入れようと画策したのだ。奴を本気で潰すつもりなら出来ていたろうに、感心を通り越して寒気を覚えるくらいの口巧者なのがよく分かる。

 一方で、あの『肉の芽』は青娥的には頂けない。あれは人の持つ欲を完全に上から抑え付け、似非忠義を強制させる様な代物だ。忠実なる下僕を作るには最適だろうが、傍から観察する分には勿体ないとさえ思う。だから蓮子の芽が解除された時は、彼女本来が最期に見せた欲を静かに見守る事を我が使命としたのだが。
 河童のスーツにより透明化を図り、わざわざ暗がりから観戦していたのが先の二人の交錯。DIOから彼女たちの確保を命じられはしたが、勿体ないと感じ取り敢えず傍観に徹していた。お陰様で優先して確保する対象の蓮子は死んでしまったが、それでもいいと青娥は満足する。

 実に人間らしい、お涙頂戴の物語。
 人と人の紡ぎ出す『絆』は、かくも美しいものか。
 弱者には弱者なりの、生きた証が見られた。
 『欲』を言うなら、彼処には〝八雲紫〟などという紛い物なのでなく、本物の〝マエリベリー・ハーン〟を用意して欲しかったという希望はあったが。


 だから青娥は、二人の邪魔をしようとは最初から最後まで考えなかった。


 深い欲も、浅い欲も。
 高尚な欲も、凡庸な欲も。
 個々人によって大小の差はあれ、その差別こそを楽しむのもまた一興。それが青娥の、普遍的な価値観。
 勿論、欲にも彼女なりの嗜好が出る。傾向としては、強者であるほど欲に深みが現れ、観察する楽しみも格段に増す。
 強い相手を好むという彼女の性質は、身を焦がすほどの欲を愛し、耽溺し、自分を満足させてくれる割合が破格だからという本意的な部分を基点としている。

 故に、八雲紫ほどの大妖怪ともなれば、最期に醸し出す欲の度量──肝に当たる部分は、さぞや美味なる品質に違いないと期待していた。
 他者から見れば『嘘っぱち』の秘封倶楽部を最後まで見届け。ようやくメインディッシュの八雲紫を、報復と共に突き崩すチャンスが訪れた。彼女の欲はそんじょそこらの凡夫とは一味違う筈だから。
 舌舐めずりを抑えながら開いてみたディッシュカバーの中身は……期待に反し、青娥の興味欲を一層削いでしまった。

 蓋の中から飛び出した紫の欲は、深いようであり、浅いようでもあり。
 高尚なようであり、凡庸なようでもあり。
 早い話が、欲ソムリエである青娥をして“よく分からない”であった。

 何故なら彼女の最後の抵抗は、想像以上に『普通』だったのだから。
 いや、抵抗と呼べる行動すら起こさなかった。本当に、普通の女の子そのものの力だった。

 ガッカリ。
 面白くない。
 つまんない。
 ビミョー。

 さっきから青娥の頭をグルグル回るのは、それらの単語ばかり。口先をアヒルみたいに尖らせながら、何をするでもなく、こうして二つの亡骸をトボトボと見比べてはションボリと項垂れる。

 こちらが勝手に、一方的に期待していただけ。紫を愚痴るのはお門違いというものだ。
 その実態を理解しているだけに、何とも遣りようのない萎縮が肩透かしの形となって、青娥の口から「はぁ〜」と吐き出されていく。


「ねえ、紫さま〜……。貴方は最期に何を思い、何を見ていたのかしら」


 紫が天を仰ぎながら零した、最期の言葉。
 あの大妖怪が遺す最期の言葉というのだから、青娥も内心胸を高鳴らせていたのに。
 その末路は、どうにも解せない。


『───うん。わたし、“普通の女の子”になりたかったの』


 言葉の意味はこの際、重要とはならない。表面のみを捉えれば紫の遊び心とも言える。
 戯言も同然の台詞。それは裏を返せば、遊べるだけの余裕があの瞬間の紫に発生した。
 その余裕の根源が青娥にはよく分からない。わざわざ直前に、式神の暴走行為まで示唆してやったというのに。
 いや、少なくともあの瞬間までの紫は相応の──青娥の期待通りの反応を見せてくれたのは確かだ。

 その直後。
 『夢』を語る最中の彼女に、理解し難い変貌が訪れたのだ。


「満足……? ちょっと、違うわね」


 感覚としては近いが、紫は決して全てに満足を覚えながら逝ったようには見えなかった。
 賢者を冠する彼女にも、幾つもの心残りを憂うような顔の相は垣間見えた。
 満足というよりは、妥協と呼んだ方が更に近い。


「恐怖……? それこそ似合わない」


 自身の消滅を怯えない妖怪などいない。大妖であろうと、例外は無く。
 少なからず彼女に恐怖はあったろうが、存在を脅かす敵へと震え上がるような弱音ではなく、この世に憂いを残すことによる無念さが際立っているようだった。


「諦観……? だとしたら、一番不愉快なパターンだけど」


 何もかもの敵対事象に対し、両手を上げながら諦める。それは言うなら、青娥の最も毛嫌いする、マイナス方面での無欲だ。紫に限ってそれは無いと断じたいものだが、少なくともあの時の彼女は、ある種の諦めも見えた。
 仏教において『諦め』とは、物事への執着を捨てて悟りを開く事とも云う。自分などより数倍胡散臭いあのスキマ妖怪に悟りが開けるなどとは全く思わないが、『執着を捨てる』という線はかなり近いように思える。
 その線で考えたなら、執着を捨てたというのはつまり、『執着を持つ必要がなくなった』とは言い換えられないだろうか?


(執着…………『何』への?)


 ───夢。


 確かにその賢者は、『夢』などというお子様じみた言動を繰り返していた。
 夢が叶ったから、執着を持つ必要はなくなった?
 または……夢が叶う展望が開けたから、胸に残った未練を捨て切れた?

 そうとでも考えなければ……あの時。
 夢を語る瞬間、あの女が『微笑んだ』理由が分からない。

 あの八雲紫が、夢? ……馬鹿馬鹿しい。
 そもそも彼女の願う『真の夢』とはなんだったのだろう。
 まさか本当に『普通の女の子』になりたかったとでも言うのか。今際の際に発した渾身のジョークとしか思えないが。

 だが、とはいえ。
 そのジョーク通りに、この紫は正しく普通の女の子に極めて近い。
 含めた意図は不明だが、見た目には完全にマエリベリー・ハーンの容姿へと偽装出来ているし、妖力の方も通常の八雲紫と比べればあまりに微小。話にならない力だった。


 ───何故?


 容姿の入れ替わりについては、周囲を欺くという一応の建前は推察できる。いわば隠れ蓑として機能させる事も可能な、小賢しい一芝居だ。
 が、その中身……大妖としての力までが極めて縮小されていたのはどういう訳だ? 戦闘による衰弱には見えなかった。
 事前に何事かあったのか。その“何事”という要素が、紫の欲の謎に迫るイレギュラーなのか。

 泥水の中に埋もれた失せ物を、目隠しでまさぐって探すような不快感すら覚えてくる。


「……はあ。ま、終わった事はもういいか」


 お手上げだった。
 青娥も元々、尽くすタイプであると同時に飽きやすいタイプでもある。
 八雲紫が期待を裏切る『大ハズレ』であった事実は大いにモチベーションを削る結果となって終わったが、それに見合う『収穫』だってちゃっかりゲットした。
 それで良しとしよう。この『土産』は、DIOを満足させるに足る代物であるはずだ。


「ディエゴ君の予想、ドンピシャだったわねん。
 ───八雲紫の『精神DISC』、入手完了っと」


 先程から事も無げに、青娥の手の中で弄られていた円盤の正体。
 八雲紫の精神DISCとの呼称を与えられたその円盤は、正確には『ジャンクスタンドDISC』という名で配られた支給品。

 メリーに扮装した八雲紫を追う過程で、青娥はディエゴとすれ違っていた。その際に受け取った物が、この一見使い道の見えないジャンクDISC。
 無能力のカス円盤であることから、あのノトーリアス・B・I・Gの円盤以上に価値観が薄い物品。

 故に青娥のお眼鏡にかなう事は無いと思ったが。


 ──
 ─────
 ─────────


『DISCとは元々、魂やスタンドを封じ込めておく器の役割があるようだ。こいつはオレの翼竜が一枚だけ拾ってきた物だが……お前にくれてやる』

『あら珍しい。でもディエゴ君? 私が欲している円盤っていうのは、素晴らしいオモチャが詰まっている枕元の靴下に限りますわ。こんなゴミDISC一枚押し付けられたってねえ』

『確かに、この円盤は“空っぽ”のようだ。支給品としては最下層に位置するハズレ中のハズレ、だな』

『えぇ〜…………かえす』

『まあ聞けよ。第二回放送終了後、オレ達があの神父との接触を優先させたのは何故だ?』

『神父様のスタンド能力による、大妖や神に並ぶ強大な魂の収集ですね』

『そうだな。そしてその手段はエンリコ・プッチの生存が大前提となる。そして今、オレたちが連れて来たプッチは早くもくたばっちまったってワケだ。さあ、困った事になったぜ』

『……もしかして、ディエゴ君』

『別の方面から考えようって話だよ。ジャンクDISCとはいえ、これもホワイトスネイクから生み出された能力の残滓だ』

『ふ〜〜ん。……読めましたわ。ま、そうであるというなら一先ず、コレは預かっておきましょうか』

『その円盤は会場内に多く振り分けられているらしいが、オレたちの手元には現状、それ一枚きりだ。無くすなよ』

『はいはい。ディエゴ君はどうするの?』

『どうもしない。今回は情報整理ついでに身体を休めておくさ。これでもスポーツ選手なんでね。……お前は?』

『逃げた小鳥が戻ってきたようですので。少し、お迎えと……“仕置き”を』

『そうかい。あまり好き放題にやるなよ』

『お互い様、ですわ』


 ─────────
 ─────
 ──


 結論から述べれば、『実験』は大成功に収めた。
 青娥は紫を殺害する間際、彼女の頭にこの『空のDISC』を差し込んでいた。挿入した上で、そのまま殺した。
 通常ならDISCを埋め込んだまま本体が死に至ると、DISCは『死』に引っ張られて消滅するらしい。その性質ゆえ、この実験は一種の賭けではあったが、失敗しても失うのはゴミ円盤一枚。ローリスクハイリターンの実験だったと言える。

 死亡し肉体から剥がれ落ちた紫の魂は天国へと昇らず、このDISCの中へと吸い込まれていった。
 これはホワイトスネイクの行使する能力を、そのまま擬似的に応用した形である。かつ、本来なら作用するDISCの消滅は免れたまま、こうして青娥の手の中で無事形を保っている。

 この謎の解答を持つプッチが死亡してしまった為、青娥なりに仮説を立ててみた。
 本体が死ぬとDISCもそれに引き摺られて消える、というのはDISCの中身が入っている場合の話だ。GDS刑務所にて青娥自身ヨーヨーマッから聞き出した情報だし、裏付けとしてプッチ本人からも聞いておいたので真実味のある内容だった。
 秋静葉が殺害した寅丸星にもスタンドDISCが挿入されていたらしいが、寅丸死亡後にDISCの生存は確認されなかったと聞いている。まあ、これは寅丸の肉体自体が消滅したからDISCも一緒に、という考えも出来るが。

 対して青娥の使用したジャンクDISCは、ディエゴが話した通りに『空っぽ』の物だ。念の為、事前に自分の額に差し込んでみたが、一度目は失敗した。既に『オアシス』のDISCが入っていた為か、バチンと弾かれて放出されたのだ。
 それならと、一度オアシスDISCを外しジャンクの方を差し込むと、“このDISCでスタンド能力は得られません”といった旨の音声が、ご丁寧に脳内で流れてくる始末。
 正真正銘の空っぽDISC。通常のDISCとの違いはその点であるという事は明白。本当にただの『器』である故に、DISCの崩壊は起こらなかった。代わりに、死にゆく紫の魂を空のDISCに取り込んだ。

 DISCについてはまだまだ未知数な所がある為に手探りだが、ステップとしては

 『空DISCを挿入する』
→『本体の殺害』(魂を剥がす)
→『DISCを取り出す』(魂の取り込み完了)

 この一連の流れで、恐らく魂は収穫可能だ。
 ホワイトスネイクとは違い、ジャンクDISCの消費と、相手本体の直接的殺害というステップが加わるが、この発見によりプッチ以外の人物による魂回収作業がグンとやり易くなった。


「ともあれ、これでやっと『一つ目』ですわ。八雲紫ほどの大妖怪サマであれば、魂の質量というハードルは余裕綽々の棒高跳びでしょう」


 集めるべき『三つ』の魂には、大妖怪・神に相当する強大なモノであるというハードルがある。
 言うまでもなく、八雲紫とは幻想郷を代表する大妖怪だ。これ程の魂であれば、もはや青娥の勲章は大金星。


「DIO様、きっと喜んでくれますわよね〜♪」


 先程までの不満顔は、手にした戦果によって一気に吹き飛んだ。
 勢いよく立ち上がり、鼻歌すら歌いながら青娥はこの場を上機嫌で後にする。

 いまや彼女の頭には、八雲紫への失望や、愛するキョンシーを奪われた怒りなど消え失せていた。報復の達成によって不満や憎悪が消化された──ワケではない。
 魂の確保という収穫により、渦巻いていた怨恨が、戦果を挙げた高揚へと上書きされたに過ぎなかった。元々大した怒りなど無かったような気がしてならない。
 芳香を喪った事については本当に、ホンット〜〜に悲しく辛い経験だったが、キョンシーなら“また”どこかで良さげな死体でも見繕い、産み出せば済む話なのだから。

 長年、愛用していた大好きな玩具が壊れた。
 邪仙にとって宮古芳香の死とは、その程度の喪失。
 “替えのきく”、大切な大切な家族だったのだ。



 その時、視界の端の闇に、俊敏な動きで這う生物の影を邪仙の視力が拾った。
 光量の微少な地下道であるゆえ見過ごしかけたが、そいつは確かに青娥の荷物から飛び出したように見えた。正体には凡そ予想がつく。

「……トカゲ? ディエゴ君ね、どうせ」

 仕込まれたのはさっきだろうか。中々のスピードで走る輩であったが、青娥はそれを難無くとっ捕まえた。ディエゴの下僕は例の翼竜だけかと思っていたが、トカゲタイプも居たのか。

「どこまでも食わせ者ねえ、あの子も」

 邪仙・霍青娥は、マエリベリー・ハーン(紫)と宇佐見蓮子の乳繰り合いを蚊帳の外からニヤついて観ているだけでした。そんな報告がDIOに渡っても面倒臭い。
 青娥はほとほと苦笑しながら、尻尾を掴まれオロオロするトカゲを空いた手でグチャと握り潰し、泥団子の様に丸めて隅っこへと棄てた。





「あ、そういえば『良さげな死体』なら、此処にも二つあるじゃない」


 双輪に結った頭に一際明るい豆電球が点灯した。今更な閃きではあるが、蓮子とメリーの死体を使ってキョンシーを作り上げるというのも悪くない。

「……いや、流石に悪いわね。そこまでしちゃあ」

 妙案はすぐさま取り下げられる。常識的な倫理観など持たない彼女が“可哀想”とまで同情し、結局二人の死体は置いて行く事にしたというのだ。
 青娥にとってそれは、本当に、単純に、ただ『カワイソウ』だっただけ。
 形だけでもせっかく『再会』出来た秘封倶楽部のか弱い二人を、キョンシーにしてまで好き放題するなんて……


「───私の『良心』が痛みますわ。せめて安らかに眠ってね、秘封倶楽部のお二人さん♪」


 ああ……なんて不憫な子達なのかしら、と。
 少女の片側へは、自ら手に掛けたという事実も棚に上げて。

 邪仙は、心の底から薄っぺらな同情を掛けやり───少女達の死体には、もう見向きもせずに去り行く。


「〜〜〜♪ 〜〜♪」


 軽快な足音と耳に障る鼻歌の余韻のみが、誰も居なくなったこの場所に生きる最後の音。
 結局、邪仙には最後まで分からない。
 八雲紫の弱体化の裏側。最期に見せた笑み。


 その根源は、彼女が託した者達へと繋がっているという事に。


            ◆







 後に残ったのは、〖白〗と【黒】の衣装が対を成した、二つの屍。

 マエリベリー・ハーンに成りきろうと慟哭した骸と、宇佐見蓮子の物言わぬ骸のみ。

 〖モノクロ】に交わった彼女達を彩るかのように、赤いドレスが血溜まりを形成し、二人を中心に沈めた。



 〖白い少女〗の右手と
 【黒い少女】の左手は
 この宇宙から崩壊した〖秘封倶楽部】を
 いつまでも……いつまでも此処へ繋ぎ止めるように
 合わさったその手に『境界』なんか在りはしないと示すように



 ───固く結ばれ、絆いだ証をこの世に遺していた。



【八雲紫@東方妖々夢】死亡
【宇佐見蓮子@東方Project】死亡
【残り 47/90】
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

【C-3 紅魔館 地下道/夕方】

【霍青娥@東方神霊廟】
[状態]:衣装ボロボロ、右太腿に小さい刺し傷、右腕を宮古芳香のものに交換
[装備]:スタンドDISC『オアシス』、河童の光学迷彩スーツ(バッテリー30%)
[道具]:ジャンクスタンドDISC(八雲紫の魂)、針と糸、食糧複数、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:気の赴くままに行動する。
1:DIOの元に八雲紫のDISCを届ける。
2:会場内のスタンドDISCの収集。ある程度集まったらDIO様にプレゼント♪
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。
※名簿のジョースター一族をおおよそ把握しました。
※プッチ、静葉と情報交換をしました。
※ディエゴから譲られたDISCは、B-2で小傘が落とした「ジャンクスタンドDISCセット3」の1枚です。
※メリーと八雲紫の入れ替わりに気付いています。
※スタンドDISC「ヨーヨーマッ」は蓮子の死と共に消滅しました。

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

『マエリベリー・ハーン』
【夕方 16:41】C-3 紅魔館 地下道










「………………『メリー』って、ね。呼んでくれたの───蓮子が」


 寄り添い合うように眠る、〖秘封倶楽部】の番(つがい)を。
 〝八雲紫〟の姿で、しゃがみ込んだままじっと見つめる少女。

 気遣うように距離を置いたジョルノと鈴仙は、彼女の背後に無言で立ち尽くしている。
 掛ける言葉も見当たらない、という言葉がよく似合っていた。

 ただただ目の前の現実を歯噛み、自分の力の無さを実感する。


「最初に『メリー』ってあだ名で呼んでくれたのは、蓮子だったわ。『マエリベリーじゃあ呼びにくいから』って……」


 蓮子。宇佐見蓮子。
 マエリベリー・ハーンの、大切な友達で。
 秘封倶楽部の、たった一人の相棒。

 それだけ。
 それだけ、だった。
 メリーにとっては、それだけで充分だった。
 ただそれだけの……何処にでもいるような、元気一杯の少女だった。


「『どうしてメリーなの?』って、その時の私は困惑しながら訊いたわ。そしたら『“マエリベリー”って発音しにくいし、語感の良い感じに縮めた』って。
 縮めたんならメリーじゃなくて“マリー”じゃない。ほんと……可笑しいわよね」


 本当に可笑しそうな様子で、メリーは背を向けたままに連ねる。
 震えを我慢する声に染み込んだ悲壮が、ジョルノにも鈴仙にも、沈痛に伝わる。


 貴方は〝マエリベリー〟なのですか。
 それとも〝八雲紫〟なのですか。

 先程ジョルノは彼女へそう尋ねようとした。交わされた握手を通して、ゴールド・Eが彼女の生命力に『違和感』を感じたからだった。それでも紫とマエリベリーの意を汲んで……やはり尋ねなかった。
 姿形は八雲紫そのものだが、この少女の本質は間違いなく〝マエリベリー〟というジョルノもまだ知らぬ人間だ。
 彼女の独白と今の光景を見れば、それは嫌でも理解してしまう。


「……私、此処に飛ばされてから。この世界に来てから。まだ、あの子と『再会』出来てない。
 〝宇佐見蓮子〟とは、何一つ、会話も……会話、すらも……してない」


 邪悪に支配された蓮子に蹂躙されたメリーは、彼女を『宇佐見蓮子』とは見れなかった。
 芽の呪いから蓮子を解き放ち、初めて二人が『再会』を果たせると。
 そう、信じて頑張ってきた。


 メリーは、とうとう『宇佐見蓮子』に逢えず───今生の別れを突きつけられたのだ。


 こんな辛い不幸は誰のせいだ、と怒りを燃やすことも。
 あの時こうしていれば、と我が身を責め立てることも。
 愕然として夢から覚める様な現実を、見つめることも。
 頭が麻痺して光景を受け入れられず、逃げ出すことも。
 拒絶したいほどの悲哀に屈し、大粒の涙を流すことも。

 そのどれもこれもの感情が、自分の中で上手く湧き上がらない。



「なんで、かな」



 一言、呟いた。


 少女の手の中には、いつの間にか。
 七つの星をその背に彩った、てんとう虫型のブローチが握られている。

「それは、僕の……」

 ジョルノがハッとして、思わず口に出す。
 それは繋ぎ合った〖秘封倶楽部】の握り合う手の中に守られていた物だ。
 それは蓮子を救出する前、紫の衣装からメリーへと継がれたブローチだ。


 そして、それは。
 妖刀に支配された蓮子から、八雲紫を守る為。
 ゴールド・エクスペリエンスの反射が働き、結果的に蓮子の命を奪い取ってしまったブローチ。


 ブローチの中心には刀で突き刺したような小さな痕跡。
 血溜まりの中に倒れる蓮子の胸にも、同じような刺傷。
 辺りには、刀だったモノの、最早欠片とも呼べぬ残骸。
 それが一体、何を意味するか。


 ほんの断片的な情報が顕とされ、ここで起こった『真実』をジョルノは可能な限り推測した。


 真実とは、時に残酷だ。
 かつて真実を求め、苦難の道を歩んできたジョルノにとって。
 未だかつて無いダメージが、彼の心を蝕もうとしていた。


「───貴方のせいじゃないわ。ジョルノ君」


 脳へと響くグラりとした衝撃に、よろめきかけるジョルノを救う声がメリーの口から漏れた。
 罪の自覚に動揺するジョルノを支えるような、その言葉は。
 ここで起こった悲劇が、彼女にも凡そ理解出来たということを証明していた。

 メリーはアヌビス神が持ち主を操る妖刀だという事も、ゴールド・Eが攻撃を反射するという事も知らない筈だ。
 だが“今のメリー”には、八雲紫の記憶・意志が受け継がれ、以前とは比較にならない情報量を得ている。
 現状を見れば、少なくとも宇佐見蓮子の死因がジョルノのブローチによる反射だ、という真実に辿り着くことは、メリーにとってもそう難儀な推理ではない。

 その真実を知ってなお。
 メリーは、ジョルノの胸中を労る言葉を掛けた。
 彼女の『聖女』のような優しさに、「なんて強い子なのだろう」とジョルノは思う。
 真に傷付いているのは、間違いなくメリーの方だというのに。

 彼女の優しさは、その未来に暗雲をもたらすかもしれない。
 ジョルノのよく知る、今はもうこの世にいない……あの勇敢なるギャングリーダーのように。


「……貴方の友人は、僕が死なせてしまったようなものです。本当に、なんと言えば……」


 だからジョルノは、メリーの優しさを軽率に受け取らない。
 簡単に受け入れては、誰の為にもならないと思った。

「ジョルノ君……」

 そんな悲痛な面持ちのジョルノは見たことがない。すぐ横で二人の顔を窺う鈴仙も、掛けるべき言葉を見い出せずに胸へと手を当てた。


「少なくとも、ここで眠っている蓮子の表情は……とても人間らしい顔をしているわ。
 DIOに支配されていた時よりも、遥かに穏やかな顔。……少し、哀しそうだけれども」


 メリーは膝を下ろし、蓮子と……片割れの紫の頬をそっと擦る。
 動かない蓮子の額に、肉の芽は無かった。きっと紫が約束を果たしてくれたのだろう。
 宇佐見蓮子を必ず元に戻す。そう交わして、邪悪の魅せる悪夢の中から蓮子を引き上げてくれたに違いなかった。


「ジョルノ君のブローチが、蓮子と……紫さんを『救って』くれた。
 私は、そう信じています」


 初めて、メリーが笑った。
 その微笑みはとても脆い形ではあったが、ジョルノの心を大きく清めてくれた。

 実際の所、ジョルノのブローチが八雲紫を守ったのは事実だ。
 結果としてそれは、蓮子の命を散らせた直接の出来事を生んでしまったが。
 もしもブローチが無ければ紫は殺され、蓮子は妖刀の呪いから解き放たれることも無かったろう。
 それでは、意味が無かった。
 それでは、『宇佐見蓮子』は永遠に戻ってこれなかったかもしれない。

 だからこれで良かった──だなんて、言えるわけが無いけども。

 七星のてんとう虫が、宇佐見蓮子を最後に『人間』へと戻し。
 彼女に『秘封倶楽部』を思い出させ。
 そして八雲紫も、『夢』を仰ぎながら眠った。
 自分は最後まで蓮子と再会出来なかったが。
 蓮子はきっと、最後に〝メリー〟と再会出来た。
 メリーには、そう思えてならない。


 状況証拠のみを検分し、都合の良い妄想に逃げ込もうとしているだけかもしれない。
 それこそ、夢見心地に浸りたくて。
 だとしても八雲紫の意志は、今やメリーに在る。一心同体なのだ。
 あの人を信じるという事は、自分を信じるという事に繋がる。

 蓮子を『救った』ジョルノには、感謝こそあれ。
 自分を責めることなど、しないで欲しかった。


「だから、ジョルノ君にはそんな表情をして欲しくないんです。
 私なら、大丈夫。……大丈夫、ですから」


 大丈夫なわけがなかった。
 大事な人を、一度に二人も喪ってしまったのだから。

 だからこそジョルノは固く決心する。自分には責任を果たす必要がある、と。
 彼女と───マエリベリーと共に『真実』に向かおう。
 色々な事が起こり、多くを喪い、傷付いた少女を『導ける』のは、ここに居る自分なのだ。
 自惚れかも知れなかったが、紫から受け継いだ物は正しい方向へと導かなければならない。


「───僕には、部下がいます」


 ジョルノは、マエリベリーと手を取り合える距離まで足を踏み出した。
 彼女は『護る対象』ではない。共に歩く相手として、正当なる関係をこれから築かなければいけないと思い、互いを知ろうと思った。


「組織のトップとして、多くの部下は居ますが……真に僕を慕う者は多くない。組織の構成上、仕方ないことではありますが。
 それでも命懸けで僕を慕ってくれている彼らに対し、僕は心から嬉しく思う。そして、掛け替えのない信頼を築いていこうと尽力もしている」


 ボスの娘を護る護衛チーム。ブチャラティを筆頭としたかつての少数チームが、ジョルノにとっては『始まり』であった。
 その始まりは、今となっては一人だけ──此処には居ないパンナコッタ・フーゴしか残っていない。だからこそ彼との間には、深い『絆』がある。


「その絆の証明……の様なものかも知れません。彼らの中には、僕を『ジョジョ』と呼ぶ者も居ます。そう呼ぶよう、僕の方から願ったのですが」
「ジョジョ……?」
「はい。ギャングのコードネーム……とかでは全然ないんですが。
 なんと言うか、そう呼ばれると安心するんです。ただそれだけ、ですけどね」


 ジョジョ。そのあだ名は不思議なことに、メリーにとっても奇妙な親しみがあった。


「マエリベリー。君が良ければだけど……どうかこれからは僕を『ジョジョ』と呼んで欲しい。組織とか部下とか関係なく……それでも。
 君の中に紫さんの意志が生きているとしても、僕と君との関係は『新たな信頼』からでなくてはならない。そう思うんです」


 『夢』から始まった物語。
 黄金のように気高い夢と、虹を見るようなささやかな夢。
 少年は少女の前へと、腕を差し出した。


「私の名前はマエリベリー・ハーン。“マエリベリー”の綴りを崩して、蓮子からは『メリー』と呼ばれていました。
 ジョルノ君───いえ、『ジョジョ』。そして鈴仙さんも、私の事は『メリー』と呼んで欲しいの」


 少女は、決起の瞳でそれを取る。
 そこに加わるのは、もう一人の少女の腕。


「もう! ジョルノ君、私のこと忘れてない!?」
「忘れてませんよ、鈴仙。……改めて、よろしく」
「……うん! よろしくね、ジョジョ!」


 その笑顔は、かつての鈴仙の『負』を微塵も感じさせないくらい快活だった。
 ジョルノと、メリーと、鈴仙。
 三人の輪が、様々な隘路を経て繋がった。



「これからよろしくお願いします。ジョジョ。鈴仙」




 子供の頃に見た『夢』が、大人の階段を上るにつれ。
 社会に歪められた価値観の底へ、ずるずると埋もれていく。
 人はそうやって大人へとなる。

 いつからだろう。
 それが嫌で私は、秘封倶楽部という名の永遠の殻に閉じ篭ろうとしていた……のかもしれない。
 だから、あの日常は楽しかった。
 子供のままでいることは、大人達の……一種の『夢』なのかもしれない。
 私も同じだ。
 いつまでも……いつまでも、今のままの秘封倶楽部で。
 私が永遠に……空を堕ちるように見ていたかった、平凡な夢。


 子供だった夢は、今日。
 唐突に、壊された。


 何も無い私。
 拙い蛹でしかなかった私。
 そんな私が、今日、この日。
 本当に叶えたい……叶えなければならない『夢』が、出来てしまった。

 気付かされた事もあります。
 虹色の翼を貰い、羽化し、蝶となって翔べたのは。
 蓮子。
 紫さん。
 いつもいつも、貴方たちが傍にいてくれたからだった。
 今までも。
 そして……これからも。

 私の掛け替えのない人たち。
 さようならなんて言わないけれど。
 私は、私なりの『操縦桿』を掴むことができました。
 私なりの『夢』も、見つけることができました。


 DIOが望み、手に入れようとする私の『力』。
この力が“何処から来た”力か。それは、もはや重要な事ではない。
この力が“何処に向かうべき”力か。本当に大切なのは、それなんだと思う。
 私自身が抱える『謎』。私はそれを、これから暴いていかなければならない。
 それはきっと、一人では難しい。
 ジョジョと鈴仙が手伝ってくれるというのなら、本当に嬉しい事だけども。

この世の謎を暴く道に、七色の『虹』が架かっているとしたなら。
 その先にある『真実』を見つけ出したい。


 私なりの、黄金の夢。
 真実に向かって歩き出す、新たな夢。



「だってそれが……この世の不思議を暴く〝私たち〟の秘封倶楽部、でしょう?
 ───蓮子」





 最後に落とした、ガラス玉みたいに綺麗な涙が、虹色の蝶に溶け。
 キラキラ光る鱗粉を落としながら、いつか夢見た虹の先へと、翔んで消えた。

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
【C-3 紅魔館 地下道/夕方】

ジョルノ・ジョバァーナ@第5部 黄金の風】
[状態]:体力消費(中)、スズラン毒・ヤドクガエル・マムシを無毒化
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品×1(ジョジョ東方の物品の可能性あり、本人確認済み、武器でない模様)
[思考・状況]
基本行動方針:仲間を集め、主催者を倒す。
1:紫と蓮子を弔う。
2:ディアボロをもう一度倒す。
3:あの男(ウェス)と徐倫、何か信号を感じたが何者だったんだ?
4:ジョナサン・ジョースター。その人が僕のもう一人の父親……?
[備考]
※参戦時期は五部終了後です。能力制限として、『傷の治療の際にいつもよりスタンドエネルギーを大きく消費する』ことに気づきました。
※星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※ディエゴ・ブランドーのスタンド『スケアリー・モンスターズ』の存在を上空から確認し、内数匹に『ゴールド・エクスペリエンス』で生み出した果物を持ち去らせました。現在地は紅魔館です。


【マエリベリー・ハーン@秘封倶楽部】
[状態]:八雲紫の容姿と能力
[装備]:八雲紫の傘
[道具]:星熊杯、ゾンビ馬(残り5%)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:『真実』へと向かう。
1:自分に隠された力の謎を暴く。
2:紫と蓮子を弔う。
[備考]
※参戦時期は少なくとも『伊弉諾物質』の後です。
※『境目』が存在するものに対して不安定ながら入り込むことができます。
 その際、夢の世界で体験したことは全て現実の自分に返ってくるようです。
※ツェペリとジョナサン・ジョースター、ロバート・E・O・スピードワゴンの情報を共有しました。
※ツェペリとの時間軸の違いに気づきました。
※八雲紫の持つ記憶・能力を受け継ぎました。弾幕とスキマも使えます。

「宇宙の境界を越える程度の能力」
マエリベリー・ハーンがもう一人の自分、八雲紫と遭遇した事により羽化したと思われる能力。スタンドなのか、全く別の次元の力なのかも不明。
彼女はこの力を幼少の頃より潜在的に発揮していた節もあり、八雲紫との関連性は謎。
要検証。


鈴仙・優曇華院・イナバ@東方永夜抄】
[状態]:心臓に傷(療養中)、全身にヘビの噛み傷、ヤドクガエル・マムシを無毒化
[装備]:ぶどうヶ丘高校女子学生服、スタンドDISC「サーフィス」
[道具]:基本支給品(地図、時計、懐中電灯、名簿無し)、綿人形、多々良小傘の下駄(左)、不明支給品0~1(現実出典)、鉄筋(数本)、その他永遠亭で回収した医療器具や物品(いくらかを魔理沙に譲渡)、式神「波と粒の境界」、鈴仙の服(破損)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノとメリーを手助けしていく。
1:紫と蓮子を弔う。
2:友を守るため、ディアボロを殺す。少年の方はどうするべきか…?
3:姫海棠はたてに接触。その能力でディアボロを発見する。
4:ディアボロに狙われているであろう古明地さとりを保護する。
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※波長を操る能力の応用で、『スタンド』に生身で触ることができるようになりました。
※能力制限:波長を操る能力の持続力が低下しており、長時間の使用は多大な疲労を生みます。
 波長を操る能力による精神操作の有効射程が低下しています。燃費も悪化しています。
 波長を読み取る能力の射程距離が低下しています。また、人の存在を物陰越しに感知したりはできません。
※『八意永琳の携帯電話』、『広瀬康一の家』の電話番号を手に入れました。
※入手した綿人形にもサーフィスの能力は使えます。ただしサイズはミニで耐久能力も低いものです。
※人間の里の電子掲示板ではたての新聞記事第四誌までを読みました。
※八雲紫・ジョルノ・ジョバァーナと情報交換を行いました。

※紅魔館が崩壊しつつあります。




192:雨を越えて 投下順 194:寒地GUYDance
時系列順 197:雪華に犇めくバーリトゥード
191:奈落論 ディオ・ブランドー :[[]]
191:奈落論 ディエゴ・ブランドー :[[]]
191:奈落論 霍青娥 205:一世の夢と名も無き鳥
191:奈落論 秋静葉 199:紅の土竜
183:鬼人サンタナ VS 武人ワムウ サンタナ 199:紅の土竜
191:奈落論 ジョルノ・ジョバァーナ 206:宇宙一巡後の八雲紫
191:奈落論 鈴仙・優曇華院・イナバ 206:宇宙一巡後の八雲紫
191:奈落論 マエリベリー・ハーン 206:宇宙一巡後の八雲紫
191:奈落論 宇佐見蓮子 死亡
185:魔館紅説法 八雲紫 死亡
191:奈落論 聖白蓮 死亡
191:奈落論 エンリコ・プッチ 死亡
191:奈落論 ホル・ホース :[[]]

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最終更新:2021年02月14日 02:03