「僕が翼竜達に持ち運ばせた『発信機』は、この上から感じています。地下なので地理感覚は殆どありませんが、紅魔館はここから潜り込める筈です」
ジョルノが頭上を指差しながら、紫と鈴仙に説明していく。薄暗いトンネルの壁に掛かった錆一つ見当たらない鉄梯子が、冴えない存在感と共に上へと伸びていた。
入口は一つ。このエリアに進入した時に見かけた『C-3』と書かれたプレート以外、ジョルノらに入手出来る位置情報は本来ならば著しく限られている。
以前、翼竜に持ち運ばせた果実が教えてくれるのは、この場所が
ディエゴ・ブランドーの根城だという確たる証明。ほんの少し前にもジョルノらが大人数で突撃し、霊夢と承太郎を連れ出したばかりの由縁ある土地だ。
ジョルノは軽く周囲を見渡す。隅々に闇が渡り歩く地下の世界であるが、自分達以外には一切の気配が見られない。やはりディエゴの翼竜は、地下までは網を張っていないらしい。あくまで今の所は、であるが。
先程必死にアジトから逃げ出して行ったネズミが、こうも早くUターンしてくるとは敵方も思いはしまい。完全に相手の虚を突く潜入作戦……と行きたいところなのだが。
「原理は不明だけど、ジョルノ君は首元にある『星型のアザ』によって、特定の人物の居る位置が大雑把に分かる……のよね?」
ジョルノと同じく、暗い地下においても輝かしい光の存在感を発する黄金の髪を靡かせながら、何処から取り出したのか自前の扇子を口元に宛てがう紫が訊く。
「はい。僕はそのシグナルを受け取れる様ですが、相手の方からも同様のシグナルを感じ取れると考えられます」
「何だか私の能力に似てるなあ。でもそれ、DIOとかいう吸血鬼からはジョルノ君の存在が分かっちゃうって事でしょ?」
改めて自装備の点検を行いながら、鈴仙が呑気に確認を取ってくる。
名目上は『潜入』であり、この作戦の最優先事項は紫の受け取ったSOSを出した謎の人物の保護となる。となれば、いくら隠密行動に徹していても、この余計なシグナルのせいで敵に侵入が即バレとなり得る。即ち、作戦の成功率が大きく低下する事は明白だった。
「その辺はもう割り切るしかないわね。まさかジョルノ君だけ作戦から外すわけにもいかないし」
「……って事は、館に侵入した途端、下手すれば私達一斉放射喰らっちゃいません?」
「少なくとも戦闘の一つや二つは覚悟しておいた方がいいわね。無論、全滅の危険性を減らす策は講じてあるわよ」
頭脳明晰で知られる
八雲紫の作戦とやらを、保身に揺さぶられる鈴仙は期待の眼で問い質す。期待半分、不安半分の輝きを放つ狂気の瞳から見つめられ、紫は勿体ぶるような咳をわざとらしく行って笑顔にて答えた。
「隊を分けます」
鈴仙の瞳の半分ほどを占めていた期待の視線が、100%不安の色に染まり尽くされた。しおしおと力を失い傾いてゆく海底のワカメの様なウサ耳は、まるで彼女が辿る絶望の未来を予期するような衰退模様である。
「……え〜っと。ゴメンなさい紫さん。私の耳、おかしくなっちゃったかなあ。確認しますけど、いま『隊を分ける』って言」
「分けるのよ。そのしおしおになった耳、取り外してお漬物にでもしちゃう?」
「これは食べ物ではありません。いえ、それより隊を分けるんですか!? ていうかたかだか三人の、分隊以下のしょっぱい人数なのにここから更に!?」
幻想郷を影で牛耳る(※イメージ)、かの八雲紫様が提案した策とはなんともシンプルな立案であった。確かに一瞬で全滅するのだけは避けられそうな作戦ではあるが、うっかりこの法案を可決してしまえば、最悪鈴仙一人がデコイの役割として敵陣真っ只中に放り込まれかねない。
「しないわよそんな酷い事。貴方、私の事をそんな風に見てたの?」
鈴仙の脳裏に浮かび上がった光景は、地霊殿の一室にて鈴仙消滅を口にした紫のおぞましい冷気。(演技だったが)
どうにもこの御方は、いざとなれば非常食としてウサギ鍋に自分を笑顔で突っ込みかねない行動力を備えていそうで恐ろしい。何気に今、心を読まれたし。
「そう怯えなさんな。安心しなさい、私が単独で侵入(はい)る」
呆れ顔と共に紫が上空に指で弧を描いた。いつもの様にスラスラと、空気に文字を書くように。
得意とするスキマ空間のお披露目だ。梯子に繋がった入口とは別に、紫単独で別口からの侵入を試みるクチのようだ。
「紫さんが一人で? しかし、単独という事はそれだけ危険が増すという事ですが……」
「お構いなく。どれだけ落ちぶれても、私は大妖怪八雲紫。そう何度もいい様にされたりしませんわ」
ジョルノの心配に対し平然と答える紫の態度に、強がりや虚栄といった矮小な本音は見当たらない。
かつてトリッシュを暗殺チームから護衛しながらヴェネツィアまで走ったジョルノだったが、その際にもチームの分断は何度か講じた策であるし、事実効果はあった。今回の目的は人物捜索・保護であるから、人海戦術の点においてもチーム分けという判断は頷けるものではある。
「安心なさい。敵がジョルノ君を探知出来るというなら、寧ろ囮はそっちだから。スキマの能力もあるし、私は一人でこっそりぬけぬけと裏方仕事に就くとするわ。
こういうの、人間社会では『隙間産業』って言うんだっけ? 私にはピッタリよね〜」
上手いことを言えたものだと、上品な笑みを零して紫は扇子をパタパタと扇いだ。
実際の所、彼女の能力は潜入捜査には適任であるし、一方の鈴仙の能力とて同様の探知・隠密効果も果たせる。各々の適材適所をしっかり考えられた無駄のない考案ではあった。
「おさらいするわね。私は私の、常識を疑うような身勝手で、紅魔館に捕えられてるであろう籠の鳥を外に飛ばしてあげたい。今回の目的はそれ」
「その『籠の鳥』さんがドコのドナタなのかは存じない、と」
「今の所はね。でも鈴仙。それはきっと、必要な事なのよ」
「そんな不明確な目的の為に、たった三人でこんな恐ろしい敵陣のお膝元に出て行こうってんですか〜……? 割に合わないなあ」
「虹が見たいなら、ちょっとやそっとの雨は我慢しなくちゃね」
今まで散々いいように扱われてきた彼女だが、ここに来て更なる苦難を選ぶのだという。それほどに気高い決意を、ジョルノは『無駄』にしたくないと思った。
夢とは魅るものでなく、飛び翔け、掴み取るものだ。紫の謳う夢を、ジョルノは応援していきたい。
彼は自らの服に手をかけ、その装飾であるブローチを外した。
「紫さん。……これを預けておきます」
「あら素敵。てんとう虫型ブローチかしら?」
「そんな所です。てんとう虫は太陽の虫。『幸運』の象徴なんです」
「願掛けという訳ね。……有難く受け取っておきますわ」
そうして掌に収まる大きさのブローチを、紫は丁寧な手つきで自らの衣服に装着する。黄金を反射させる天道の装身具は、高位を表す純色の紫(むらさき)を彩る服飾によく映えていた。
「うん。気に入ったわ、ありがとうジョルノ君」
別にあげたわけではないのだが、本人はいたく気に入ったようだ。ちゃんと返してくれるかは少々怪しい。
「いいなあ紫さん……」
「鈴仙。君は今回、僕と相棒(バディ)だ。波長を操る能力……頼りにしてますよ」
「そ、そう? ……まあジョルノ君にそこまで言われるのもやぶさかじゃないわね」
鈴仙は元来、調子に乗りやすいタイプの性格だ。若いながらも組織を運営する身であるジョルノは、彼女の才を埋まらせないよう、基本的に飴と鞭を使い分けて伸ばしていこうかと構想を立てる。
「それじゃあ、そろそろ準備はいい? お二人さん」
紫が頭上のスキマ空間に手を伸ばした。その先は紅魔館内部に繋がる、未知の領域。
「はい。僕達はこちらの梯子から侵入を試みます。紫さんも、どうかお気を付けて」
紫は至上の笑みを振り撒く事で、ジョルノの心遣いへの返答とした。そうして掴み所の無かったスキマ妖怪は、自らが繋げたトンネルの奥へと消えていく。
「……行っちゃったわね」
「不思議な人です。子供の様な奔放さと、賢者の様な達観思考の両方の性質を併せ持った女性……今までに会った事の無いようなタイプです」
「結構多いわよ、幻想郷(ここ)にそういう人」
「土地の持つ魅力が、彼女の様な人々を形成していくのでしょうか」
「魅力……というより、もはや魔力かも。私からしてみればジョルノ君も不思議な人間だけどね」
「よく言われますが、そんなに自覚は無いですけどね」
こんな他愛もない会話も、今の内。
二人は気持ちを切り替え、氷のように冷たい鉄梯子を握り昇っていく。
夢を見るように仰ぎ、夢へと手を伸ばすように、一歩一歩。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
『八雲紫』
【午後 15:07】C-3 紅魔館 吸血鬼フランドール・スカーレットの部屋
一瞬にして、空気が変貌した。
肌にひりつくのは、凍てつく様な寒々とした───悪の大気。
(……誰も、居ないわね)
ジメジメとした地下トンネルとはうって変わり、隔離された地下部屋ながらもここの室温は幾分か肌に馴染む。だというのに、体感では地下道よりも更に気温が低下した様な錯覚を紫はすぐさま知覚した。
寒気、である。
幻想郷のヒエラルキーとしては実際の所、最上位に位置する程の権威と妖力を蓄える彼女にとって、寒気を覚えるなどという現象はまず、日常の中には無い。
寒いのが苦手なのか、紫は冬季が訪れると棲み家に引っ込む性質があるが、いま肌に訴えかけている寒気は、彼女が嫌いとしている寒暖による類ではない。
(妖気……それも鼻を突くような『悪』の気配ね)
以前に対峙した時よりもその気配が膨らんで感じるのは気のせいではないだろう。腐っても大妖である紫をして、警戒心を最大値まで引っ張りあげざるを得ない程の圧力。
単に妖気が膨大であるだけなら、幻想郷にもこの程度の力を持つ大物は幾らか居る。紫が珍しく冷や汗を流すワケとは、妖気に混ざる悪意の巨大さにあった。
どれだけ人外的な大物が集まろうとも、幻想郷に生粋の『邪』を持つ者など皆無に等しい。もしもそんな輩が外から進入すれば全勢力を以て排除するし、内から育つのであれば花咲かせる前に摘むか、芽である内に対処する。
そういう意味では、幻想郷はとても平和な場所なのであった。
本当の悪が今、模倣世界とはいえこの幻想郷を根城とし力を蓄えている。こういった外在的かつ未知なる脅威に、この土地及びここの住人は対処の経験が殆どない。
それは無論、八雲紫を含めての事でもある。土地を、ではなく己自身を直接陥れる敵。そんな相手と殺し殺されなどという真の窮地に対し、彼女は抗う術を模索する。
「紅魔館の地下……、部屋の様相から推論するに、ここはスカーレット姉妹の『妹』の方の部屋か……息苦しいですこと」
495年間をこんな狭苦しい場所で暮らしたとかいう、憐れな吸血鬼。なるほど、随分と子供っぽい精神性の現れた部屋だった。
ここに勿論その吸血鬼は居ないが、それ以外の誰の姿も見当たらない。どこまでもシンとした、究極の孤独を具現した様な一室だ。
「……“既に”もぬけの殻。一手、遅かったみたいね。DIOも馬鹿ではないという事か」
部屋の片隅にポツンと転がる『傘』を手に取りながら、若干の無力感と共に表情を苦く歪める。
「愛用の傘……『貴方』が持っていてくれたのかしら。
私の知らない誰かさん? それとも、知っている誰かさんかしら?」
まだ見ぬその少女へと、想いを巡らすように。
紫はそっと傘を開き。弄ぶようにクルクルと回した。
視線は部屋の唯一なる出入口に向けられている。
上へ上へと続く階段の先に、囚われの姫はきっと居る。
「お礼、言わなきゃあね」
敵地かつ単身という背水の陣。その渦中にありながらも不安をものともせず、微塵たりとも焦慮すら見せず。
女は優雅に、艶美な靴音を楽しむように奏でながら……扉を抜け、上方に広がる闇の中へと潜って行った。
【C-3 紅魔館 吸血鬼フランドール・スカーレットの部屋/午後】
【八雲紫@東方妖々夢】
[状態]:全身火傷(やや中度)、全身に打ち身、右肩脱臼(スキマにより応急処置ずみ)、左手溶解液により負傷、 背中部・内臓へのダメージ
[装備]:八雲紫の傘@東方妖々夢、ジョルノのブローチ
[道具]:星熊杯@東方地霊殿、ゾンビ馬(残り5%)、基本支給品(メリーの物)
[思考・状況]
基本行動方針:幻想郷を奪った主催者を倒す。
1:『声の主』を救う。
2:幻想郷の賢者として、あの主催者に『制裁』を下す。
3:DIOの天国計画を阻止したい。
4:大妖怪としての威厳も誇りも、地に堕ちた…。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手の方に任せます。
※放送のメモは取れていませんが、内容は全て記憶しています。
※太田順也の『正体』に気付いている可能性があります。
※真昼時点での
マエリベリー・ハーンのSOSを、境界を通して聞きました。
【ジョルノ・ジョバァーナ@第五部 黄金の風】
[状態]:スズラン毒・ヤドクガエル・マムシを無毒化
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品×1(ジョジョ東方の物品の可能性あり、本人確認済み、武器でない模様)
[思考・状況]
基本行動方針:仲間を集め、主催者を倒す。
1:『声の主』を救う。
2:
ディアボロをもう一度倒す。
3:あの男(ウェス)と徐倫、何か信号を感じたが何者だったんだ?
4:DIOとはいずれもう一度会う。
[備考]
※参戦時期は五部終了後です。能力制限として、『傷の治療の際にいつもよりスタンドエネルギーを大きく消費する』ことに気づきました。
他に制限された能力があるかは不明です。
※星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※ディエゴ・ブランドーのスタンド『スケアリー・モンスターズ』の存在を上空から確認し、内数匹に『ゴールド・エクスペリエンス』で生み出した果物を持ち去らせました。現在地は紅魔館です。
【
鈴仙・優曇華院・イナバ@東方永夜抄】
[状態]:全身にヘビの噛み傷、ヤドクガエル・マムシを無毒化
[装備]:ぶどうヶ丘高校女子学生服、スタンドDISC「サーフィス」
[道具]:基本支給品(地図、時計、懐中電灯、名簿無し)、綿人形、
多々良小傘の下駄(左)、不明支給品0~1(現実出典)、鉄筋(数本)、その他永遠亭で回収した医療器具や物品(いくらかを魔理沙に譲渡)、式神「波と粒の境界」、鈴仙の服(破損)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ、紫らを手助けしていく。
1:『声の主』を救う。
2:友を守るため、ディアボロを殺す。少年の方はどうするべきか…?
3:
姫海棠はたてに接触。その能力でディアボロを発見する。
4:ディアボロに狙われているであろう
古明地さとりを保護する。
5:柱の男、姫海棠はたては警戒。
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※波長を操る能力の応用で、『スタンド』に生身で触ることができるようになりました。
※能力制限:波長を操る能力の持続力が低下しており、長時間の使用は多大な疲労を生みます。
波長を操る能力による精神操作の有効射程が低下しています。燃費も悪化しています。
波長を読み取る能力の射程距離が低下しています。また、人の存在を物陰越しに感知したりはできません。
※『
八意永琳の携帯電話』、『
広瀬康一の家』の電話番号を手に入れました。
※入手した綿人形にもサーフィスの能力は使えます。ただしサイズはミニで耐久能力も低いものです。
※人間の里の電子掲示板ではたての新聞記事第四誌までを読みました。
※八雲紫・ジョルノ・ジョバァーナと情報交換を行いました。
『
聖白蓮』
【午後 14:27】C-3 霧の湖 周辺
霧の湖、とは読んで字の如く、普段は白い霧に包まれた湖である。紅魔館を守るかのように館の周囲をグルッと囲む湖面は、常に発生している霧による地理効果もあり、館への侵入を非常に困難とする地形であった。
悪魔の城、紅魔館へと入城するルートはたった一本掛けられたアーチのみ。(大体の侵入者は決まって空を渡り歩いてくるが)
その先に立ち塞がる巨大な門を通る資格を主より得た者だけが、初めて館へ招き入れられる客人として認められる。(大体の侵入者はそんな体裁の過程をスっ飛ばして勝手に入ってくるが)
聖白蓮は、湖の畔から紅の館をじっと望んでいた。
(間違いない。プッチ神父達はあの場所へと向かっている)
神父の乗った飛空石を一直線に追い、彼女は魔法の森の深部にて大きな『クレーター』を発見した。それが飛空石の着陸跡によるものだと判断した白蓮は、周囲に乱雑して踏まれた足跡をも同時に見付ける。
オマケにというべきか、まるで「付いてきてらっしゃい♪」と言わんばかりに目立った、直線の浅い溝まで地面を走っていた。それは邪仙がウキウキドライブ気分で土に刻んでいったバイクのタイヤ跡であり、正確には紅魔館からこの森までを片道一直線に走らせてきた証である。
悲しい事にその跡は、猿が見たって神父らの行き先が紅魔館であると即座に理解できる程に、ハッキリしっかりこれ以上ないくらい大っぴらに道案内の役目を果たしていた。
とはいえ時間が経てば、積もった雪がこのタイヤ跡を隠していただろう。神父を追うという白蓮の即決が、思わぬ形で功を奏したのだった。
現在、彼女は既に神父の籠る場所の見当がついている。が、その場所が紅魔館となれば少々面倒だ。
先述した地の利により、あの館は籠城に適した地形。堂々と正面から侵入するには少し無謀だ。森の中という、自然の生んだ環境は追う側にとって有利にも働く地形だが、ここからは違う。
あの館には……この距離からでもはっきり感じ取れるほど、悪の気が充満している。恐らく、神父や秋の神以外にも何者かが潜んでいると考えた方が良い。
多勢に無勢。積極的な行動は抑え、極力敵に発見されずに奥まで進む事が理想だ。戦力がこの身一つである事を考慮すると、出来れば戦闘を回避しながら目的の遂行───DISC奪還を遂げたい。
すなわち『スニーキング・ミッション』に近い業前を求められる。
元々、外面に似合わず勇み肌な一面を持つ彼女は、この手の任務を得意とはしてない。下手に実力を備えた積極派の白蓮が、どこまで潜って行けるものか。その見通しは不明である。
バサッ
「──────ハッ!」
大気中へと地震が引き起こされた。
白蓮の得意とする、喝による衝撃波によって周辺の敵や弾幕を圧する技───『ヴィルパークシャの目』である。
次いで、湖に向かって何かが着水する音。プカリと浮かんできたその生物は、翼竜の形を取ったディエゴが斥候の一匹。それは次第に変貌していき、最終的にミツバチの姿となってその生を静かに終えた。
「……斯様な虫一匹とはいえ、尊すべき生命の在り方を歪に捻じ曲げ、独裁者の様に振る舞う所業。人間もここまで来ると誠に勝手で、頑陋至愚ね」
法力を纏った白蓮の五感は超人にも比肩するレベルで鋭い。数を数えればキリがない程に会場を暗躍する翼竜の数々。その存在に彼女は、とうの昔に気付いていた。
彼らの殲滅など論外、というより不可能であると早々に開き直り、敢えて放置していたが……今、我が位置が敵に漏れると非常に困る。
従って……不本意ではあったが、主への報告の為に木々の間から飛んだ今の者だけは攻撃させてもらった。幸い一匹だけだったようだが、一介の住職として出来ることなら殺生など行いたくない。
白蓮は帰依の念をその魂に送り、悲哀と情の眼差しを閉じて死骸に手を合わせた。
紅魔館に潜む不届き者は、この翼竜達を従えた王のつもりでいるらしい。元ある生命を全くの別形態に作り替えるのみに留まらず、意のままに操作し束ねるなど、もはや心清き者の所業ではない。
支給品の類による代物か、それともあれもスタンドとやらのまやかしか。後者であれば、スタンドについて未知のエネルギーという認識を持つ彼女にとっては少々対処し辛い。
心痛しながらも、厄介な新手の存在に眉をひそませる。こんな見張り役の目を切り抜けながら、本当に目的の達成など可能なのか、と。
「とはいえ、この深い霧と湖という環境。潜入という一点においては、こっちの利にも傾くわね」
短い瞑想を終えた白蓮は、周囲に気を配りながら自分の荷と装束に手を掛けた。
極みに至った法力の恩恵か。揺るがぬ手つきと洗練された可動速により、彼女を縛っていた全ての衣服は、摩擦という摩擦を奪われたかの如く、重力に誘われてするりと地に落ちていく運命を辿る。
白蓮の柔和な首の曲線に反し、美しいながらも無骨な印象を受ける翠色の数珠。一つ一つの大きさが饅頭並のサイズを誇るそれらが、まずは解かれた。大切な商売道具、勿論無下に扱ったりはしない。
鈴の音を連想させるしゃらんとした響きと共に、持ち主の美貌との調和を完璧に成立させたその法具は、ひとまず草葉の腹へと丁寧に寝かせられる。
次いで、黒のドレスに手を掛ける。一見すれば、純潔を義務付けるべき僧正服にはとても見えない彼女の服装は、無駄に誂えられたフリルも手助けして、どちらかと言えばお城の舞踏会に招かれた淑女の着飾る正装だと言われてしまえば頷ける。
偉大なる胸部を中心に、交差する形で両端の留め具に結われた前面の掛け紐を、淀みない仕草で全て外していく。何故か至る箇所にラインで束縛を施した、見る者が見れば不埒なイメージをも生みかねない黒の装いを寺の僧正服として選んだ彼女のセンスは、天然より生まれたそれなのだろう。
さて、本人が生まれながらにして持つ天性の女性美を、千代の月日を掛けて更に磨きあげた究極の母性と慈愛。もはや男女の隔てなく万人を虜にさせるに余りある、完成極めたボディラインを縛り隠す漆黒の薄皮は取り除かれた。
残ったのは、穢れなき純白のプリンセスライン。尼公として暮らすには些か不釣り合いが過ぎる、豊満なる上半身のシルエットが露になった。それに相反するようにウエストから下の下半身は、ふんわりフレア状になったスカートがエレガントとも称すべき雰囲気を醸し出している。
純白と漆黒。清涼感と大胆さ。決して混ざり合わない二つが絶妙に両立した白黒のドレス。聖白蓮以外にこれを着こなせる女性を見つけて来いと言われれば、幻想郷を飛び出して世界中を旅する羽目になったとしても早々見つからないだろう。
観客を甘美の蜜に蕩けさせる双つのドレスも機能を果たし、無事全てが地面へと落ちた。白蓮はそれらを馬鹿丁寧に折り畳み、綺麗な長方形へと整え直してその上に数珠を重ねる。
程よく肉付きの良い、しなやかな両脚部を守っていたブーツをも脱ぎ……とうとう彼女の清潔を守り通す衣は、眠りにつかせるように局所部分へと宛てがわれたベール───すなわち下着のみとなった。
幻想郷の多くの少女達はドロワーズを愛用しているとされている。しかしながら、それらの下着は誰の目から見ても見栄や威厳に欠けていると評価せざるを得ない。無論、古今東西下着に大別される衣類は、他人に見せびらかす類のファッションとは違い、衛生的な意味合いも大きい。少なくとも威厳の有無で下着のジャンルを選抜するというのは、異性に媚びる意味を込めなければ世間的にもズレた俗識ではあるだろう。
聖白蓮は職業上、しばしば大衆の面前に出て行き説法を行っている。その際、たとえ人の目に映る前提でなくとも、常識を完熟させた立派な大人かつ素晴らしい道徳を説く自分の衣の下が、よりによってドロワーズというのでは、通常の精神であれば羞恥するというものだ。
───従って、白蓮は極々当たり前の感覚で、自らの肌を着飾る下着にブラジャーとパンティを選んでいる。
どこぞの貧乏くさい巫女辺りは御多分に漏れず、歳相応にイモ臭いドロワーズを好んで穿いているのだろうが、幻想郷には一応この手の現代的な下着もあるにはある。ブラジャーなどの歴史を紐解けば、それは約600年も前に遡れるが、日本に渡ってきたのが大正後期より。幻想郷の時代背景が明治ほどで止まっている事を吟味すれば、こういった下着の流通も程々に行われ始めている、というのが現実であった。
───従って、白蓮の中にある常識に「黒・紫色のレース下着は男の劣情を催しかねない」という項目が未だに無いという哀しき現実を受け入れるなら、彼女が黒のパンティとブラジャーを愛用している事に何の不思議もありはしないのだ。
永きに渡って魔界へと封印され、最近復活したばかりの大魔法使いゆえに、その美的センスは千年以上前から磨かれる事なく時を止めていた。そんな重たい過去を持つ彼女だからこそ、下着選びのセンスがしっかり育まれていない事に突っ込んでくれる者は彼女の周囲に居なかった。(どころか、白蓮の適当なセンスに感化されて同ジャンルの下着を選ぶ者すらそこそこ居た)
先程まで雨に濡れていた状況を重ね合わせると、現在の白蓮は濡れそぼった下着一枚という大変な状態である。彼女が先程、翼竜の目を潰したのは決して視線を気にしたからではないのだが(いや気にしたから潰したのだが)、それにしたってあまりに目に毒だ。
どれ程に見る目のない愚か者が採点したとして、どう見繕っても“絶世の美女”という呼び名が最低基準にあたるであろう完全たる容姿。
瞬間───まさに光彩奪目といえる美女があろうことか、この寒天の下で上着のみならず、最後の砦である上下二枚の下着をも堂々と脱ぎ放った。これもまた、一切の淀みすら見当たらないスピード脱衣である。
「雪も降り出してきた頃合だけど、この程度なら大したことはないわね」
皆目躊躇の感じられない脱衣を終え、一糸まとわぬ全裸の白蓮が目前の湖を見渡しながら、何故か得意気に呟く。
そこには、とうとうあらゆる束縛を解き放った一人の美女が、白肌の肩に新雪を乗せながら立っていた。
かの愛と美の女神ヴィーナス。一般には半裸または全裸の姿で表される事も多い女神だが、その隣に白蓮を並べて立たせても殆ど遜色しないのではないか。それ程に彼女の肉体には目を見張る様な圧倒的な造形美があった。
掌に余る程に豊かな実りを終えた双丘……というよりもはや山。果実に喩えるなら、完璧に熟された期間を永遠に逃さない、光り輝く最高級品のメロン。それも二玉だ。女性を象徴する二つの柔らかなメロンの肉は、黒の防護壁を先程外されたばかりだというのに、地球の重力に屈することなく綺麗な形とラインを保ち続けていた。
尼僧と聞けば、どうにもひ弱だとか細身・脆弱なイメージも付いて回る。しかし蓋を開けばその実、彼らは心身共に厳しい修行を行い続けている肉体的な役職である。一皮剥けば、その肉体は見る者を思わず感嘆させてしまう程に引き締まった外殻を呈している場合も多かった。
白蓮においては天性の美貌に加え、日常的に肉体育成の促進とも呼べる荒修行や戦闘行為(弾幕ごっこ)をよくやる。必然、その身体──主に腰やくびれだ──もだらしない様相な訳がなく、これに関しては全女性が嫉妬の念で睨み通す程に、上半身とも完璧なバランスを作り上げてなだらかな曲線を描いている。
その上、程よく引き締まっているのだ、白蓮の肉体は。目立ち過ぎず、引っ込み過ぎず。その中間を上手いこと捉え、全くの無駄がない筋肉をも女性的に作り変えていた。
ある鉄球の一族がもしもその露わとなった肉体を目撃するという有り得ぬ幸運を発揮する事あれば、そこにはきっと完璧なる黄金比を身に付けた完全無欠のパーフェクトスケールが潜んでいる事だろう。これで寺の住職を名乗っているのだからこの世は分からない。
特筆すべきは彼女の肉体ばかりではない。寧ろ、聖白蓮が最も美しいと由縁される身体の特徴は、金と紫のグラデーションを宛てがった麗しきロングヘアである。
仏門に入った身でありながら剃髪の一つも施さずにいる理由の一つに、「長い髪は魔法を使うのに必要」という呪術的な云われが関係している。髪を切ると魔力が減衰するという思想は珍しくなく、旧約聖書の怪力サムエルも己の髪を切られて力を失ったという逸話が残っている程だ。
白蓮の髪にも魔力が込められている……そう言われても納得の美と彩が、最上質の絹織の様に上から下へと華麗に流れている。これを切れというのは、それはもはや罰当たり以外の何物でもなく、神(髪)への冒涜とまで言っていい。
一つ一つ挙げたところでキリがない。しかしこれほどの女性がその身を晒しておきながら何も特筆しないのでは、それこそ罰当たりだ。
男は勿論、女であろうとこの光景をうっかり覗けば、心を奪われるどころではない。肢体も局部も余す所なく晒された、神々しいという比喩すら温いありのままの姿には、この世の全ての生物を惹き付ける視覚的なフェロモンとでも呼ぶべき訴求力があった。
それでいて微塵の羞恥を感じる様子もない彼女には、下品さや淫らさといった低俗な印象は見当たらない。世界的国宝として有名な絵画や美術像───例えば先述したようなミロのヴィーナスやダ・ヴィンチのモナリザを鑑賞して性的興奮を覚える愚か者は居ないだろう。現在の白蓮の放つ存在感も、それら美術品と並び立てるレベルにある。
普段の彼女は当然であるが、常に服を纏っている。それも僧正服……神仏に携わる者の清き正装だ。今の、全ての囲いを取っ払ったありのままの白蓮を見てしまえば、通常の制服でこの完全体の大部分を隠してしまうというのは、勿体ないを通り越して愚かの極地とすら思えてしまう。
しかし一方でそれは、当然の対応でもあった。人は服を着るものである、という常識の話ではなく、こんな神秘性と暴力性を秘めた裸体などが外に露呈してしまえば、命蓮寺で本尊される信仰対象が毘沙門天から聖白蓮へと一瞬で変更されかねない。
今更になるが、別に彼女は衆目に自らの裸身を晒すことで快感を得る変態露出魔だから突如脱ぎ出した、という訳では無い。もしそうならわざわざ翼竜など潰さない。
空を渡り歩くという選択肢が失われている現状、残る紅魔への潜入ルートは湖を潜っての湖面ルートのみ。いかな礼節を重んじる命蓮寺の最高権威といえど、まさか正面玄関から直接お邪魔するわけにもいかない。
お誂え向きに、ここは霧の湖。見張りの影が疎らに飛んでいようと、水中+白霧に紛れての潜入ならば大きな隠れ蓑として機能する。
あらゆる衣装を脱ぎ捨てたのはこの為だ。幸いにも脱いだ服は、エニグマの紙に入れて持ち運べる。元々雨天を危惧されていたのか、荷物には小さめのビニール袋も常備されている。白蓮は一旦紙に全ての衣類を収納し、上からビニールを被せて握り締めた。これで水に濡れて紙が破ける、などという最悪の事態は防げる。
「いざ、南無三───!」
気合を入れて決め台詞を発し、極めて美しい弧を描き切った飛び込みが湖上に再現された。雪も降り出し、そろそろ水温の低下も始まってくる中での寒中水泳。真っ裸の姿勢も手助けして、訓練していない常人ならばあっという間に動けなくなる環境だ。
そこは流石のマスタープリースト。肉体に展開できる魔法防壁関係なく、普段からの厳しい修行が実を結んだ。真冬であろうと極寒の滝修行を日常生活に組み込んでいる彼女にとって、この程度の距離を泳ぐことくらい問題にならない。通常、寺の修験者は修行の際に禊衣という専用の衣装を着用するが、欲を言ってられない状況。
それがこの、素っ裸による素潜りである。
大丈夫だ。たとえ白狼天狗が上空から百人監視していたとしても、この霧なら発見されない。唯一気にかけるとしたら、握り締めた荷物入りのビニール袋が流されて見失うというマヌケな事態くらいだ。そうなれば本格的に、この痴女スタイルでの突撃を遂行せざるを得なくなるのだから。
海泳ぐイルカ、あるいはここ霧の湖にて度々出没すると噂される淡水の人魚姫なのかもと見間違えかねないほど、滑らかで美しい潜水をひた続ける白蓮。泳ぎというよりもそれは、水中で舞踏を披露するような見事な足捌きであり、水を踏み鳴ら(タップ)し猛烈な勢いをつけながら、前へ前へ突き進む。
(………………星)
そんな彼女が脳裏に描くのは、やはり最愛の弟子の事であった。
どうあっても忘れることなど不可能だ。正義の瞳を燃やしながら別れた彼女が、既にこの世に居ないという残酷な事実だけは。
古明地さとりから掛けられた「自分ばかりを責めるな」という言葉。白蓮自身も彼女へと返してやった言葉になるが、その言葉を白蓮は未だに受け入れきれずにいる。
聖白蓮という女は、優しすぎた。
その性格が仇にもなり、遠い昔には人間達に裏切られ、耐え難い仕打ちを受けてきたというのに。
頼りになる仲間たちの活躍により復活できた現代においてなお、彼女は絶対平等主義を貫いて人妖分け隔てなく接してきている。
経歴から言って、人間には憎悪の一つも抱いて当然であるというのに。彼女はそれでも、世を恨むことなく今を過ごしている。
それはきっと、愛する仲間たち───『家族』のお陰であると、白蓮は心に秘めている。
人は環境一つ、接する他人一つで容易く変わる。白蓮が最上の優しさを持ち続けていられるのも、命蓮寺の家族の存在が支えになっている部分は果てしない恩恵だ。
その家族も……殆ど居なくなってしまった。
中でも自分と最も近い場所に居る寅丸においては、自分と最も近い場所で死んだ。手の届く範囲に居ながらも、死なせてしまった。
直前の自分との会話、やり取りや早計な判断が寅丸の道を決定付けさせてしまったのは確実だ。己の未熟さが、最愛の家族を不条理な死に至らしめてしまったのだ。
(………………星ッ!)
考えれば考えるほど苦しくなる。それでも白蓮は、考えずにはいられない。
肌を凍てつかせる湖水の冷たさも、失われゆく酸素を求める脳の警鐘も、今はどうだっていい。
明鏡止水の精神には、程遠く。
只々ひたすらに。丸裸にひん剥かれた心で。
彼女は湖底を孤独に進んでいく。
その心を暗愁に齧られながら。
ゴン!
「ぶはっ!?(痛っ!?)」
思考が完全に沈んでいた。いつの間にか目前には、地上へと伸びる土壁が立ちはだかっている。
思い切り頭を打ち付けてしまった白蓮は、肺に残った酸素を残らず気泡に変えて、体外へ放出してしまう。ゴール地点へと到着してしまったのだ。
出発点の畔からここまで百や二百の距離では無いはずだが、一度たりとも息継ぎをせずに辿り着いた辺り、彼女の脅威的な身体能力の程が測れるというもの。
(彼らは………………見当たらないようね)
呼吸を求めようと、派手に地表へ顔を出すヘマはやらない。あくまで翼竜達の目に映らないよう最大限の警戒を施しながら、白蓮はまず目元から上だけをそっと出して覗き込む。
見張りの気配は感じられない。代わりに、おぞましい程の妖気がすぐそこまで漂っている。館の中に居る者の気配だろう。
スゥーっと、館を裏から旋回するように泳ぎ始める。窓の少ない建築物ゆえ、潜入は裏手に備わった勝手口の様な小扉からが望ましい。
程なくして、目的の扉は難なく見つかった。再び上空を見渡し、翼竜の影が無いことを完全に確認し終えてから行動に移る。地上に飛び出し、館内に入り込むまでは大きな隙を誘発しやすいので油断は禁物だ。
一切の物音を立てず、手練の忍者の様に素早く、残像すら残しながら白蓮は無事、紅魔館侵入を果たしたのだった。
【C-3 紅魔館 裏手/午後】
【聖白蓮@東方星蓮船】
[状態]:全裸、疲労(小)、体力消耗(小)、ずぶ濡れ
[装備]:独鈷(11/12)@東方心綺楼、魔人経巻@東方星蓮船
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1個@現実、フェムトファイバーの組紐(1/2)@東方儚月抄
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止める。
1:紅魔館に侵入し、ジョナサンのDISCを取り返す。
2:殺し合いには乗らない。乗っているものがいたら力づくでも止め、乗っていない弱者なら種族を問わず保護する。
3:ぬえを捜したい。
[備考]
※参戦時期は東方心綺楼
秦こころストーリー「ファタモルガーナの悲劇」で、霊夢と神子と協力して秦こころを退治しようとした辺りです。
※DIO、
エシディシを危険人物と認識しました。
※
リサリサ、
洩矢諏訪子、プッチと情報交換をしました。プッチが話した情報は、事実以外の可能性もあります。
※スタンドの概念を少しだけ知りました。
『
秋静葉』
【午後 14:22】C-3 紅魔館 大食堂
人が人と会う時というものは、多くの者がまず相手の人間を『想像』するだろう。
どのような相手か。男か女か。男であれば、出来れば怖くない男の人であればいいなあ、と女性であればそう思うかもしれない。顔が良ければお近づきにもなりたい、とか。
女であれば、綺麗な女性だと男としては嬉しくもなる。身なりに気を遣える女性であるなら、相手を敬える姿勢を持っているという事だ。きっと、笑顔も素敵なのだろう……そう予想できる。
空想を描く、という事は、自らの人生観を脳裏に反映させるという事だ。より達者で幅広い経験を積んだ者ほど、多種多様の人間と交わってきたという事だ。
秋静葉は、姓でも主張している通り秋の神様である。当然人間よりも遥かに長生きで、その分多くの触れ合いも経験してきた。
主な活動時期は秋であり、大抵の人間達は秋季が近づくと、作物の収穫や冬支度の為に忙しくなってくる。
人は活動的になると、表情が増えるのだ。静葉は毎年この時期に、様々な表情を覗かせる人間模様を観察するのが密かな楽しみでもあった。
きっと、妹の穣子も同じ事を思っていたのかもしれない。
プッチから聞かされたDIOという男の人間像は些細な範囲であったが、少なくとも悪いイメージは無かった。善人だとは思えなかったが、悪人だとも思ってなかった。
それは語ったプッチ本人の個人的な感情が話に反映されていただけなのかもしれない。所詮、人伝でしか聞かされていない男のイメージだ。どうあれ、会って話してみようという積極的な気持ちが、何故だか静葉の胸に渦巻いていた。
DIOとは、果たしてどんな男なのだろうか。
結果から述べるなら……静葉が事前に色々と想像していた『DIO』の人物像は、予想のどれとも大きく違っていた。
静葉の思い出の中にある人間達の表情や本質は、決して少なくない。これでも秋の神なりに、色々な人間を見てきたつもりだ。
DIOは、そのどれとも違う表情を見せていた。
静葉の培ってきた空想に、その男が持つ独特の空気は一片も掠りすらしなかった。
少なくともこんな人間や妖怪は、幻想郷の隅から隅まで探し回っても居やしない。どういうわけか、目の前で椅子に座った男を一目見て、そんな根拠が静葉の中に生まれ君臨した。
「───『感動とは人間の中にではなく、人と人の間にあるものだ』……ええっと、この言葉は誰のものだったかな」
男が声を発する。
父親が夜、ベッドの子供に絵本を朗読してあげるような……落ち着いた、優しげな声だった。
土地への支配力を民に誇示する様な、尊厳高い館の尊厳高い大食堂。
全てが一級品のみで揃えられた、主のこだわりを感じられる上品な家具と食器の数々。
食堂の端から端まで伸びた、豪勢な料理なら幾らでも余す所なく置き詰められそうな長テーブル。
高貴なる貴族のみに許された、格調高い赤椅子。
小声であっても大きく響きそうなホールのちょうど中心。その赤椅子に背を預け、男はワインを優雅に傾けていた。
「ドイツの名指揮者、ウィルヘルム・フルトヴェングラーが残した言葉だよ、DIO」
隣に立つプッチが一歩前へ出て、男の些細な失念を軽く補佐する言葉を差し込んだ。DIOと呼ばれた男は「そう、その彼だ」と小さく頷き、中身が半分程残ったグラスのワインを波紋ひとつ立てず、テーブルにトンと置く。
たったそれだけの所作に、静葉は言いようのない不安に背筋を撫でられた。恐怖や不快感とは違う、得体の知れない感覚。
これから自分はこの男と会話をするのだ……それを考えただけで、想像の付かない未来の大穴に自ら飛び込んでいく様な孤独を覚えてしまう。
「彼は───フルトヴェングラーは、押しも押されもせぬ指揮者でね。まあ、彼の音楽観についてはここでは置いておこう」
随分と楽しそうな笑みを零し、DIOは会話を続けた。その視線は我々には向いてなく、グラスの中のワインをジッと見つめるのみに留まっている。
一体誰にやられたのか、その左眼球は縦に裂かれていた。古傷ではなく、ついさっき付けられたような新しい傷だ。おぞましい朱色が滲むその線は、同じ顔半面が爛れた静葉から見ても、醜さよりも優雅さと表現すべき雰囲気が伝わってくる。
絵になる男、だという印象を持った。静葉は漠然とした不安から逃げるように、その男の表面的な空気を嗅ぎ取って唾を飲む。
静葉は、というより幻想郷に住む多くの人妖にとって、音楽の存在は浸透しきっているとは少々言い難い。と言っても、穀物の収穫を祝う、静葉にとっては馴染み深い「祝歌」は毎年飽きるほどに聴いているし、民謡や神楽、雅楽といった古臭いジャンルの祭囃子から、最近だとパンクロックバンドの「鳥獣伎楽」なるユニットも進出してきているという極端な世界だ。
しかし、今DIOが例に出した、所謂オーケストラ音楽の類は幻想郷には全く流通していない。従って静葉には、偉そうに他人様の館の食卓でふんぞり返る彼の喋る話が、これからどこに着地するのかの予測が不明であった。
「人間たちがこれだけ地球上に栄えて来たのは、様々な繋がりを作って来たからであろうな。脳みその中から地球上まで、如何に繋がっていくのか。
そして、生きていくためにはその存在意義が必要だ。他者を認め合い、何かによって繋がる事。
フルトヴェングラーは『音楽』によって、人と人との間に感動という中継点を生み出し、繋げた。私はそれを心から偉大だと思うし、素晴らしいと拍手を叩いて感動できる」
なにか……何となく。
DIOは恐らく、自分に向けて話をしているのだと静葉は悟ってきた。
この場にはプッチの他に、ディエゴや青娥といった曲者も首を揃えているが、DIOは会話相手の名を誰とも指名していないにも関わらず、彼の言葉が新参者の自身に向けているのだと、静葉は段々と確信を得てきたのだ。
「この地球上の『勝利者』を誰と仮定するにはまず、勝利の定義から決めねばなるまいが……端的に言って私は、やはり人間なのかなと思っている。
何故と言われれば、それは彼らがこの星で最も『繁栄』しているからだ。種の繁栄……主観的な話に過ぎないが、生物であるのならそれも勝者の証ではないのか?」
DIOの語る話は脈絡がなく、敢えて聞き手を惑わす様な回りくどい喋りが好きなんじゃないか。静葉の印象としては、概ねこれに尽きる。
「私の生まれた時代は19世紀末のロンドンでね。その頃、世界人口は16億人という記録がある。
そしてまあ……色々あって、もうすぐ21世紀というこの時代に眠っていた我が意識も復活し、100年振りに外に出てみれば人間の多さに驚いたものだ。
それもその筈、今や世界の人口は60億人! たった100年そこらで4倍ほどだ。全く、浦島太郎の気分だよ」
「因みに私の住む2012年では更に増加し、70億人だそうだ。多すぎるくらいだと個人的には思うんだがね」
「ななじゅう……億人!でございますの! ほへ〜〜〜。私が外に住んでた時代とはまるきり変わっていますのね〜」
次第に昂っていくDIOに感化された様に、プッチや青娥まで会話に加わり各々のリアクションを披露していた。ディエゴだけは扉横の壁に身体を預け、話を聞いているのか聞いてないのか、何処とも知れない空間をじっと見つめるだけだった。
一方で静葉は、次々に飛び出してくる未曾有の情報の渦に飲まれまいと、懸命に頭を整理するのに必死だった。
参加者間でゲームに呼ばれた時代が異なっているらしい事は、事前にプッチから聞いていた。荒唐無稽な話ではあるが、その事実を認めざるを得ない会話が現在進行形で交わされている。
そして自分は初めて『外』の世界の情勢を本人らの口から伝えられているわけだが、人間の人口がウン十億だの、田舎である幻想郷と比べると次元が違うレベルの発展だ。
愕然とした。自分の住む時代が彼らとどれほど離れたものかは知らないが、人間だけで70億となると、静葉の体感する数値の許容範囲を完全に振り切っており、かえってピンと来ない。
ピンとは来ないが、そんな数字を聞かされたのであれば、先程のDIOの言葉も実に自然と胸の内に透き通ってくるものがあった。
種の繁栄。人間こそが地球上で最も繁栄した『勝利者』。
どれほど優れた神も妖怪も、一歩現実(そと)に出れば有象無象の魑魅魍魎。いや、たちまち消滅してしまうのではないかと畏怖を覚えるくらいだ。
DIOは先程こう言った。
『生きていくためにはその存在意義が必要だ』と。
『他者を認め合い、何かによって繋がる事』とも。
それはまさしく、幻想郷の神や妖にもそのまま通じる理屈だ。
神も妖も、生きていくには人間の存在が必要不可欠。まず互いの存在を認め合い、『恐怖』あるいは『信仰』によって両者が繋がる事で、初めてこの世に顕現する。
DIOが例に挙げたフルト何とかという人間の音楽家だかは、ものの例えに過ぎない。彼らのような創作家は音楽によって人と人の間に『感動』を生み、その輪を繋げていくのだと。
幻想郷の神は、もたらす奇跡や恵みによって人々の間に『信仰』『感謝』を生む。また妖怪は、それぞれの個性に倣った演出によって人々の間に『恐怖』を生む。
そういった正も負も無い『繋がり』をシステムそのものに組み込んで不変の都として立ち上げたものが、幻想郷なのだ。
今まで生きてきた……いや、生きてこれた幻想郷という狭い箱庭は、外の世界にて『真』に繁栄してきた人間の話を聞いた後では───本当に不安定そのもので、ちっぽけな世界にしか思えてこない。
DIOが人間を『勝利者』と謳うのも頷ける話だ。
それならば……自分は、果たしてどうなのだろう。
幻想と現実の垣根を壊されかけるという、幻想郷の者が決して陥ってはならない思考に沈む静葉は、藁をも掴むような気持ちで……ここで初めて口を開いた。
「あ、あの……」
「うむ。君の名は……えっと」
「あ、静葉……です。秋、静葉」
「申し遅れてすまない。プッチから既に紹介を受けていたと思うが、私の名はDIOという。……それで静葉、青い顔をしてどうしたかね?」
「いえ、その……」
口篭ってしまう。何が言いたいのか、自分でもよく分からない。
それでも何か言わなければ。少なくともDIOと意思の疎通を交わさなければ、自分はこのまま消えてなくなってしまうんじゃないかという不安に陥ってしまう。
そんな不安を分かってくれているかのようにDIOは、我が子の悩みを聞き尋ねる親心とも見紛いかねない柔和な表情で、静葉の言葉の先をじっと待つ。
横のプッチが一瞬だけ、口角を吊り上げたのに気付いた者は、その場ではDIOだけだった。
「私も…………私も、『勝利者』になれますか?」
「『繋がり』を得られたならね」
いとも簡単にDIOは即答した。
まるでそうである事が当然という風に。
「最終的に繁栄できた者が勝者だというのは、あくまで人間主観の、スケールを過大させた考え方に過ぎない。この星にはヒトの他に、それは多くの動植物も繁栄しているが、彼らは人間などとは全く別の価値観を持っているのかもしれないしな。
君の言う『勝利者』というのは、それとはまた少し別観点からの話なのだろう?」
人間は外の世界で大きく繁栄を成功させ、今なお脅威的なスピードで技術革新と共に成長している。静葉は一抹の神様として、未来への不安など微塵も感じられないような彼らの安泰に対し、羨望の念が無いと言えば嘘になる。
とはいえそれは、現況に置ける自分の境遇とはまた別の話。彼女の求める『勝利者』とは、彼女自身が到達しなければならない個人的な渇望にある。それも、制限時間まで施された火急の事態だ。
「このゲームに勝ちたい。いえ、勝たなければならない」
「……事情を話して貰えるかい?」
粛々と語り始める静葉。
寅丸星やプッチ神父にも伝えた事と同じ内容を、今またDIOへと話す。その間にも感じたことだが、DIOは非常に聞き上手の輩であり、静葉が陥ったどうしようもない事情を察しているのか、無意味に話を急かしたり触れられたくない部分には触れずにいてくれたり……適度に挿入される柔らかな相槌もあって、静葉の話は滞りなく終えることが出来た。
しかしその内容はといえば、要は『ゲーム優勝』という不動なる目的。つまり最終的にはDIOをも打ち崩すという物騒な皮算用だ。これをDIO本人に嘘偽りなく直接語るというのは如何にも勇気の要る行為で、実際かなり及び腰の姿勢となってしまった。
「───なるほど。君の事情は理解出来たと思う。辛い心境だったろうに、無理を言わせたね。悪かった」
「……え」
ところが、思わず静葉の方が呆気に取られた。DIOは、静葉が予想していた態度のどれとも違う反応を見せたのだ。
プッチにしてもそうだったが、叛意を前提にして取り入ろうとする小賢しい輩など、常人の反応なら怒るか、一笑の後に捻り潰すかの二択だろう。
この男DIOは、呆れることすらしなかった。それどころか静葉へと真摯に耳を傾け、気遣いの心すら見せながら謝ってくれたのだ。
「君がこのゲームに勝たなければならない事情は分かった。心臓に掛けられた毒薬が溶けだすまで、そう時間も残されていないことも」
「……その通り、です。だから私は、一時的にでも味方となってくれる人を探している。それが、ここ」
「ふむ。しかし静葉。君は私の目から見ても、お世辞にも歴戦の実力者というフウには見えない。その顔の半面が、たとえ死闘の末に浴びた勲章の証だとしてもだ」
言われて静葉は、あの地獄烏の最期の攻撃に灼かれた顔面の左半を軽く擦った。傷は男の勲章という言葉もあるが、女の彼女からしてみれば苦戦の証明だとしか思えない言葉だ。無い方が良いに決まっている。
「君が私に会いに来たのは、隠れ蓑として丁度良いと思ったからかい?」
男の言葉には、別段怒りも脅しも含まれていない。プレッシャーを掛ける為の問いではなく、純粋に静葉の真意を確かめたいが為の疑問なのだろうと、相対している静葉はそう捉えた。
「そういった謀も無いとは言いません」
「正直だね」
「でも、私は強くなる為にここへ来ました。優勝するには、自分自身を成長させなければ万に一つの可能性すら無くなってしまうと考えたからです」
いつの間にか静葉の瞳は、DIOを真芯に捉えるようになっていた。
最初に感じたような得体の知れない不気味さが、殆ど失せていたのだ。その上で静葉は彼を、どことなく尊敬するような目線から見るようになった。
神様とはいえ、元々消極的で自分を低く見がちな彼女は、日頃から謙譲する性質ではある。そんな彼女が、力の上下に関係なく、目の前の相手を無条件に敬うというのは珍しくない事だが、DIOに対してはそれ以上のモノを感じる。
話を偽らずに何もかもを話してしまったのも、そんな根源的なモノのせいもあるかもしれない。
「『強くなる』……か。簡単なようで、簡単じゃない。簡単じゃないようで、実は簡単な事だ」
「……私自身が思うには、とても難しい試練だと感じてるわ」
「それは君の主観で考えているからだよ静葉。人間はね、思いのほか容易く強くなっていくものだ。ちょっとしたキッカケでもね。
極端な話、大概の人間は心身が成長するに伴って『強く』なっていくのだと私は思う。逆説的に言えば、強くならない人間など滅多に居ない」
「DIOさんの言いたい事、分からないでもないです。でも私には、時間が無い。強くなるのを悠長に待っている暇なんて、とても無いんです」
「それも切実だろう。だが静葉。君が早急に考える事は、『どうやって強くなるか?』『どうすればいいのか?』ではない」
一体いつ飲み干したのか。半分は残っていた筈のDIOのワイングラスが、気付けば空となっていた。そこにすかさず新手のワインをトクトクと注いだDIOは、話の本筋とも言うべき命題を切り出す。
「君が悩み、一刻も早く答えを出さなければならない命題とは『強くなった後』の事なのだ」
強くなった後。それはすなわち、全ての『目的』を達した後の事柄を言っているのだろうか。
敢えて。
今まで敢えて、深く考えようとしなかった所をDIOは的確に突いてきた。
「君は言ったね。『優勝し妹を蘇らせた後、全ての元凶となった荒木と太田に復讐する』と」
「……妹にあれ程までの残酷さを与え、見せしめにした彼らを私は絶対に許しません」
踊らされているというのは、理解もしている。
その上で奴らに一度は頭を下げ、最愛の妹を取り戻す。
帰ってきた妹の身体を私はぎゅっと抱きしめ、きっといっぱい泣いてしまうかもしれない。
そうして二人だけの時間を幾分過ごし……私はあの二人に復讐をするつもりだ。
どんな事をしてでも妹を蘇生させたい。不条理な形で妹を奪った彼らをとても許せない。
だから。
「その成否はともかく……君のやろうとしている事は何の筋も通らない矛盾の塊で、しかも最後の最後に復讐ときた。その無駄な行為に一体なんの意味がある?」
「矛盾……無駄、ですか」
「そうとも。『無駄』なのだ。奴らを許せないという気持ちは私にも分かる。だがそれなら尚のこと。
あの主催者にへりくだり、頭を下げて願いを叶えてもらう。そして、用済みとばかりに奴らを始末する。意味不明であるし、私であれば絶対にやらないだろう」
「……それ以外に、私に残された道は無いじゃない!」
自分でも嫌という程に理解していた矛盾を、DIOはあっさりと突いた。これがただの興味本位や嫌がらせなどではなく、話を進めるのに必要な過程だと分かっていても、静葉は大声を出さずにはいられない。
「それ以上に、妹を蘇生した後に主催に復讐する……私にはその点が、どうにも引っ掛かる」
組ませた腕をトントンと指で叩きながら、男は難しい顔を作り口を開いた。
「主催への復讐というのは、君にとって都合の良い『口実』…………本当の所は、君は最初から『死ぬ』つもりなのだろう?」
見抜かれている。私が誰にも打ち明けずにいた、あまりに見苦しい真意を。
「君がどれほど強くなったところで、主催には及ぶべくもない事など子供にだって分かるだろう。ならば初めからそんな妄言など捨て去り、蘇った妹と再び末永い幸福を堪能すればいい───普通はそう考える」
それが出来ないから。
そんな選択肢など残っていない事は、とっくに知っているから。
「君がそれをやろうとしないのは『強くなった後の事を最初から考えていない』から───すなわち、主催に歯向かい、返り討ちにあって……壮絶な死を遂げる事それ自体が最後の目的となるからだ」
不思議と、鼓動は静寂を貫いていた。
死に誘う毒を着飾られた、静寂である筈の心臓は。
静かな空間であったから余計に。
まるで獣の唸り声のように、低く、畝ねって聴こえた。
「ハッキリ言おう。君は自分の犯した罪に耐えきれる人種ではない。
だからこそ、最後に死のうとしている。背負ってきた自罪や他者の終焉、その全ての怨から逃げ出す為に」
奥に長く広がった大食堂の、ちょうど中央部の壁に立てられた古めかしい時計台。
それが鳴らす脈動と、私の胸の脈動が交響を奏でる。
DIOの語った『それ』は、核心でしかなかった。
私がこのゲームに呼び出されて、最初にあのガンマン達の決闘に巻き込まれた時から───『そいつら』は私に憑きまとって来たんだから。
「君は何人殺した? 二人? いいや、三人だ。
既に三人の命を奪った君は、もう後戻りなど出来ないだろう。初めの一人……『
グイード・ミスタ』を殺害した時点で、君の魂は呪われているのだから」
呪い。その言葉はこれ以上ないくらい、今の私の状況に相応しい意味を孕んでいる。
「君は殺人者の汚名を被ることを決意したその瞬間、きっと思ったろう。
『感情を克服しなければ』『冷徹にならなければ』……とね」
沈みゆく月天の下、あの鉄塔で寅丸星と交わした会話が遠い記憶のように思えた。
エシディシを倒すには。ゲームに優勝するには。感情を捨て、死に物狂いで構えなければならない、と。
「口では簡単に吐き出せる。現に君は今まで、それが出来ていた。……『表面上』ではね。だが、秋静葉という人物はそもそもそんな事が出来る少女ではなかった筈だ。
余程の『悪のカリスマ』でなければ無理なのだ。殺した人間を、まるで食ってきた『パン』の様に扱うなんて事は」
そんな事は……言われなくても分かっていた。
他人にはいくら偉そうに論っても、こんな自分なんかが心から非道になりきるなんて幻想は。
だから。
「だから、君は一刻も早く逃げ出したいと今も考えている。
現実から。
罪悪から。
呪縛から。
生からも。
それが秋静葉という神様のベールを剥いだ、正体だ」
私、秋静葉は死ぬつもりでいた。
愛する妹を地獄の吹き溜まりから掬い上げ、そしてひとり残したまま。
ミスタさん。お空さん。寅丸さん。
そしてこれからも、私が登るべき『崖』に選んでいく人達は……きっと増え続ける。
ああ、だというのに、あろうことか私は。
そんな尊いはずの命たちを、このさき永遠に背負っていく罪悪の意識にきっと……耐え切れない。
非情になりきれない半端者。それだけならまだマシかもしれない。
奪うだけ奪ったその結果、妹を取り戻して、そして最後に逃げ出す。
今だって、本当はとても恐ろしい。
ちょっとでも気を抜いたら、殺した人達の『声』が頭の中に絶えず反響してくるんだから。
だから、敢えて考えないようにしてたのに。目を背けていたのに。
強くなった後の事なんてどうでもいいと。
穣子が帰ってきてくれるのなら、それでいいと。
「その未来には、妹の幸福はない」
黙りこくった静葉へと言葉を掛けたのは、DIOではない。後ろで控えていたプッチの方だった。
「妹の為にはなんだってやる。その心意気自体には尊敬するよ。
だが、自ら死を選ぶような愚かな真似は、残された妹を必ず不幸にさせる。家族が罪を犯すことを喜ぶ者は居ないんだ」
教戒師らしい、いっぱしの言葉。それを説く神父の瞳は静葉を捉えているようでいて、その背後にいる別の誰かに語り掛けているようにも見えた。
それは瞳に反射するプッチ自身であり、壮絶な非業の末に自殺を選んだ彼の妹をも含んでいる事を、DIOのみが知る。
静葉はプッチの言葉の真実を推し量れない。代わりにそれは、過去に対峙したある妖怪の残した言葉へと被る。
───『わかった。……わかったわ、アンタは、何もわかっちゃいないってことが。
私もまだちょっとしかわかっていない……家族が罪を背負うってこと。
だけど、アンタがこれから何人も殺して、みのりこって子をわざわざ生き返して、
その子まで悲しい目に合わそうっていうなら、アンタは今すぐここで焼き殺す!』
あの地獄烏が訴えようとしていた事が、今になって脳を揺さぶる。
当初穣子には何も伝えず、何も知らせぬまま事を終えようとしていた。
それでいいと。あの子がそこまで苦しむ必要はないと。
そんな身勝手な理由で、姉は妹の前から姿を消そうとしていた。
頭に響く『声』がずっと憑きまとって来るのが、苦しくて苦しくて、心は今にも壊れそうで。
消え去りたい。そう思うようになってきた。そんな事、絶対に思っちゃいけないのに。
もしそんな事をすれば、穣子も姉と『同じこと』をやるかもしれない。
理由も分からず消え去った、唯一人の姉を取り戻す為に。
罪を重ね、自らも地獄の輪廻に飛び込もうとするのかもしれない。
「静葉。君がこれから戦っていかなければならない相手とは、強力な参加者の数々などではない。主催者でもない。
乗り越えるべき『崖』とは、君が過去に蹴落としてきた相手そのものだ」
「私が、殺してきた人達……?」
「そう。君が弱者である限り、頭に響く『声』が鳴り止むことはないだろう。殺人をなんとも思わない人種でもない君が、如何にして過去の罪と折り合いを付けるか」
「過去、なんて……でも私、どうすれば」
「君はどうして、わざわざ『自分の手』を汚してまで寅丸星を殺す道を選んだ? それには意味があった筈だ」
踏み越える、ため……。
もっともっと多くの敵を屠れば、頭の中の『声』なんか気にならなくなるんじゃないか。そんな観念も、あったかもしれない。
結果的には『声』は無くなるどころか、増えただけだった。
「過去を乗り越えるとは、生半可な事ではない。先程の『勝利者』の話と矛盾するような事を言うのかもしれないが、過去との繋がりを断ち切る事もまた、人が『勝利者』へと登り詰めるのに必要なステップの一つなのだ」
DIO曰く『最終的に繁栄出来た者こそ真に勝利する』との弁。
繁栄とは、過去なくして成り立たない。その過去を断ち切ってしまうのでは、もはやその人間に勝利が訪れる事は未来永劫無いのではないか?
「断つべきとは、自分にとって『害悪』となる過去……『因縁』の事さ。それさえ乗り越えれば、人は自ずと己の収まるべき地点に到達できる」
「私にとって、害悪となる因縁……」
「間違ってはならないのが、『逃げ出し』てはいけないという事だ。過去から目を背けていては……過去に屈し、『死』へと逃げようとする人間は、永遠の敗北者でしかない」
DIOの語る内容には、絶対的な信念と説得力が備わっていた。まるでそれは、彼自身に言い聞かせているようにも静葉には思えた。
「私は、そんな敗北者には一寸たりともの興味も無い。君が『勝利者』か『敗北者』のどちらになるのかは……それは君自身がこれから決める事になるだろう」
DIOが、ゆったりとした動作で椅子を引き、立ち上がった。
静葉よりも遥かに高い目線の場所から、男は帝王のような光に包まれたその手を差し出す。
「『感動とは人間の中にではなく、人と人の間にあるものだ』……。
私はこの言葉の『感動』という部分を『引力』という言葉に差し替え、我が人生観とさせて貰っている」
「でも……私は未熟、ですよ」
「愛すべきは、その未熟さだ。未熟さこそが自分の最大の魅力で武器なのだと、胸を張るといい」
「頭の中の『声』すら、満足に振り消せないわ。本音では、誰かを殺す事がとても恐ろしい……!」
「初めて食べた『パン』の味は忘れない。それを美徳だと考えろ。たとえ不様であっても、幸福を求め続けろ。
君にはこれからすぐにも試練は襲い来る。その時、『立ち向かえる』か『逃げ出してしまう』か……。それが運命を分かつ選択だ」
「独りになるのが怖い! 独りになれば、私は『声』に押し潰されるかもしれない! もしそうなったら、わたしは……わたしは……っ!」
「それでも、もし君が恐怖に竦み、立ち上がれる自信がなくとも……『繁栄』し、『勝利者』になりたいと願い……そして、このDIOに対し何らかの引力を感じたのなら」
「──────その時は、改めて友達になろう。秋静葉」
私の瞳から流れる雫は、どこを根源としたものなのだろう。DIOの手を取りながら、私は頭の片隅に残った理性で考えていた。
恐怖でもない。孤独でもない。
敢えて……敢えてこれを表現するのなら、多分。
──────『感動』、なのかもしれない。
【秋静葉@東方風神録】
[状態]:顔の左半分に酷い火傷の痕(視覚などは健在。行動には支障ありません)、上着の一部が破かれた、服のところが焼け焦げた、 主催者への恐怖(現在は抑え込んでいる)、エシディシの『死の結婚指輪』を心臓付近に埋め込まれる(2日目の正午に毒で死ぬ)
[装備]:猫草@ジョジョ第4部、宝塔@東方星蓮船、スーパースコープ3D(5/6)@東方心綺楼、石仮面@ジョジョ第1部、フェムトファイバーの組紐(1/2)@東方儚月抄
[道具]:基本支給品×2(寅丸星のもの)、不明支給品@現実(エシディシのもの、確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:穣子を生き返らせる為に戦う。
1:優勝した後、私はどうすれば……?
2:DIOの事をもっと知りたい。
3:エシディシを二日目の正午までに倒し、鼻ピアスの中の解毒剤を奪う。
[備考]
※参戦時期は少なくともダブルスポイラー以降です。
※猫草で真空を作り、ある程度の『炎系』の攻撃は防げます。
※名簿のジョースター一族をおおよそ把握しました。
※プッチ、ディエゴ、青娥と情報交換をしました。
【DIO(
ディオ・ブランドー)@第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:左目裂傷、多少ハイ、吸血(紫、霊夢)
[装備]:なし
[道具]:大統領のハンカチ@第7部、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに勝ち残り、頂点に立つ。
1:天国への道を目指す。
2:永きに渡るジョースターとの因縁に決着を付ける。
3:神や大妖の強大な魂を3つ集める。
4:プッチらの話を聞く。
5:静葉の『答え』を待ち、利用するだけ利用。
6:ジョルノの反応が近い……?
[備考]
※参戦時期はエジプト・カイロの街中で承太郎と対峙した直後です。
※停止時間は5→8秒前後に成長しました。霊夢の血を吸ったことで更に増えている可能性があります。
※星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※名簿上では「DIO(ディオ・ブランドー)」と表記されています。
※
古明地こいし、
チルノ、秋静葉の経歴及び地霊殿や命蓮寺の住民、幻想郷についてより深く知りました。
また幻想郷縁起により、多くの幻想郷の住民について知りました。
※自分の未来、プッチの未来について知りました。ジョジョ第6部参加者に関する詳細な情報も知りました。
※主催者が時間や異世界に干渉する能力を持っている可能性があると推測しています。
※恐竜の情報網により、参加者の『6時まで』の行動をおおよそ把握しました。
※八雲紫、
博麗霊夢の血を吸ったことによりジョースターの肉体が少しなじみました。他にも身体への影響が出るかもしれません。
※ジョナサンの星のアザの反応消滅を察していますが、誰のものかまでは分かってません。
【
エンリコ・プッチ@第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:全身大打撲、首に切り傷
[装備]:
射命丸文の葉団扇@東方風神録
[道具]:不明支給品(0~1確認済)、基本支給品、要石@東方緋想天(1/3)、ジョナサンの精神DISC
[思考・状況]
基本行動方針:DIOと共に『天国』へ到達する。
1:DIOと話をする。
2:ジョースターの血統とその仲間を必ず始末する。特にジョセフと女(リサリサ)は許さない。
3:主催者の正体や幻想郷について気になる。
[備考]
※参戦時期はGDS刑務所を去り、運命に導かれDIOの息子達と遭遇する直前です。
※緑色の赤ん坊と融合している『ザ・ニュー神父』です。首筋に星型のアザがあります。
星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※古明地こいしの経歴及び地霊殿や命蓮寺の住民について大まかに知りました。
※主催者が時間に干渉する能力を持っている可能性があると推測しています。
※静葉、ディエゴ、青娥と情報交換をしました。
※名簿のジョースター一族をおおよそ把握しました。
【ディエゴ・ブランドー@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:タンデム、体力消費(小)、右目に切り傷、霊撃による外傷、 全身に打撲、左上腕骨・肋骨・仙骨を骨折、首筋に裂傷(微小)、右肩に銃創、 全身の正面に小さな刺し傷(外傷は『オアシス』の能力で止血済み)
[装備]:河童の光学迷彩スーツ(バッテリー100%)@東方風神録
[道具]:幻想郷縁起@東方求聞史紀、通信機能付き陰陽玉@東方地霊殿、ミツバチの巣箱@現実(ミツバチ残り40%)、基本支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る。過程や方法などどうでもいい。
1:DIOと話をする。
2:幻想郷の連中は徹底してその存在を否定する。
3:ディオ・ブランドー及びその一派を利用。手を組み、最終的に天国への力を奪いたい。
4:同盟者である大統領を利用する。利用価値が無くなれば隙を突いて殺害。
5:主催者達の価値を見定める。場合によっては大統領を出し抜いて優勝するのもアリかもしれない。
6:紅魔館で篭城しながら恐竜を使い、会場中の情報を入手する。大統領にも随時伝えていく。
7:
ジャイロ・ツェペリは始末する。
[備考]
※参戦時期はヴァレンタインと共に車両から落下し、線路と車輪の間に挟まれた瞬間です。
※主催者は幻想郷と何らかの関わりがあるのではないかと推測しています。
※幻想郷縁起を読み、幻想郷及び妖怪の情報を知りました。参加者であろう妖怪らについてどこまで詳細に認識しているかは未定です。
※恐竜の情報網により、参加者の『14時まで』の行動をおおよそ把握しました。
※首長竜・プレシオサウルスへの変身能力を得ました。
※光学迷彩スーツのバッテリーは30分前後で切れてしまいます。充電切れになった際は1時間後に再び使用可能になるようです。
※名簿のジョースター一族をおおよそ把握しました。
※プッチ、静葉と情報交換をしました。
『
霍青娥』
【午後 14:49】C-3 紅魔館 地下階段
邪仙はメリーと蓮子、ついでにヨーヨーマッを後ろに引き連れて、蝋燭の光に照らされた薄暗い階段を軽やかに登っていた。
他ならぬDIOに命じられた仕事だ。たとえ小間使いの様に小さな雑用であろうと、彼女は喜んで引き受ける。その内容はというと「メリーと蓮子をここへ連れてきて欲しい」という、本当に些細な仕事だ。
彼はあの後、感情の高ぶりに涙する静葉へと敢えて部屋で休むよう促した。今の彼女を一人にするというのは本人も言っていた通り、精神的にも少々危うい判断だ。それに一言で素直に応じた静葉の未来も、一体どうなるか楽しみの一つとも言える。
ともあれ手の空いた青娥は、積もる話も後に、こうしてメリーらと仲良く館の内部を歩き進んでいる。
DIOがメリーに目を掛けている理由の深い所までは分からない。しかしながらそれは、一般的な人種に近い蓮子を始末せず、わざわざ肉の芽で支配してまで間接的に籠絡しようという企みだ。
「メリーちゃん、だったわよね? それで、『どう』?」
「…………」
軽快な足踏みと口調の青娥に対し、問い掛けられたメリーは無言で返した。完全に、気力を失った人間の顔。こうして後ろを付いてくるのがやっとという、絶望に包まれた少女のそれである。
青娥の『どう?』という問いはつまり、『DIO様に従う気になったかしら?』という意を含んだ物だ。うんともすんとも反応しないメリーだったが、それはこれ以上なく摩耗された精神性の現れ。
もう、限界なのだ。
彼女は今に、DIOの傀儡となる。その未来が目に見えていた。
(功労者は蓮子ちゃんの激しいアプローチってとこかしらね。ちょっぴり嫉妬しちゃうわねえ)
内に秘めるジェラシーを熱い視線へと変えて、青娥はメリーの横を歩く蓮子をチラと見る。
芽の支配を受けた灰色の瞳は、ともすれば青娥以上の忠誠心。DIOが死ねと命令すれば、喜んで死ぬのが今の蓮子なのだ。
メリーはDIOから逃げられない。それは彼女の親友・
宇佐見蓮子が捕えられているからだ。もしもメリーが本格的にDIOの機嫌を損ねる真似をしようものなら、躊躇なく蓮子は殺されるに違いない。
言うなれば、蓮子というカードそのものが、DIOのメリーに対する切り札。
その蓮子自身も、懸命にメリーの籠絡に精を出している。こんな状況を平衡に維持できるわけがない。素直に後ろを付いてくるメリーの態度が、彼女の絶対的窮地を如実に表している。
「メリー。私が付いてるからさ、元気出して?」
「…………」
親友の掛けてあげた、その言葉だけを聞くなら何とも涙誘う気遣いの台詞だ。しかし、それが言葉通りの意味を伴っていないという絶望を、メリーは知っている。
だから、終始無言で俯いたまま。心の健全な者がその光景を覗いたなら、見ていられないと目を背けるだろうか。
「大丈夫よメリーちゃん。在るが儘を受け入れるなら、きっと貴方にも幸福は訪れるに違いないわ。もっと前向きに物事を考えましょうね」
親友同士の二人を、青娥は実に楽しげに覗く。
嬉々を孕んだ豊かな欲を表現する彼女の瞳は、これから起こる事への期待で───子供の様な純粋さを発揮する。
───ジョルノ・ジョバァーナ、八雲紫、鈴仙の三名が館に侵入する、僅か10分前の出来事だった。
【C-3 紅魔館 地下階段/午後】
【霍青娥@東方神霊廟】
[状態]:タンデム、疲労(小)、全身に唾液での溶解痕あり(傷は深くは無い)、衣装ボロボロ、 右太腿に小さい刺し傷、両掌に切り傷(外傷は『オアシス』の能力で止血済み)、 胴体に打撲、右腕を
宮古芳香のものに交換
[装備]:スタンドDISC『オアシス』@ジョジョ第5部
[道具]:オートバイ
[思考・状況]
基本行動方針:気の赴くままに行動する。
1:メリーと蓮子をDIOの元へ連れていく。
2:DIOの王者の風格に魅了。彼の計画を手伝う。
3:会場内のスタンドDISCの収集。ある程度集まったらDIO様にプレゼント♪
4:八雲紫とメリーの関係に興味。
5:あの『相手を本にするスタンド使い』に会うのはもうコリゴリだわ。
6:芳香殺した奴はブッ殺してさしあげます。
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。
※DIOに魅入ってしまいましたが、ジョルノのことは(一応)興味を持っています。
※名簿のジョースター一族をおおよそ把握しました。
※プッチ、静葉と情報交換をしました。
【マエリベリー・ハーン@秘封倶楽部】
[状態]:精神消耗、衣服の乱れ、『初めて』を奪われる
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:蓮子と一緒に此処から脱出する。ツェペリさんの『勇気』と『可能性』を信じる生き方を受け継ぐ。
1:蓮子を見捨てない。
2:八雲紫に会いたい。
[備考]
※参戦時期は少なくとも『伊弉諾物質』の後です。
※『境目』が存在するものに対して不安定ながら入り込むことができます。
その際、夢の世界で体験したことは全て現実の自分に返ってくるようです。
※ツェペリと
ジョナサン・ジョースター、
ロバート・E・O・スピードワゴンの情報を共有しました。
※ツェペリとの時間軸の違いに気づきました。
【宇佐見蓮子@秘封倶楽部】
[状態]:健康、肉の芽の支配、衣服の乱れ、『初めて』を得た
[装備]:アヌビス神@ジョジョ第3部、スタンドDISC「ヨーヨーマッ」@ジョジョ第6部
[道具]:針と糸@現地調達、基本支給品、食糧複数
[思考・状況]
基本行動方針:DIOの命令に従う。
1:メリーをこのまま篭絡する。
[備考]
※参戦時期は少なくとも『卯酉東海道』の後です。
※ジョニィとは、ジャイロの名前(本名にあらず)の情報を共有しました。
※「星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力」は会場内でも効果を発揮します。
※アヌビス神の支配の上から、DIOの肉の芽の支配が上書きされています。
現在アヌビス神は『咲夜のナイフ格闘』『止まった時の中で動く』『星の白金のパワーとスピード』『銀の戦車の剣術』を『憶えて』います。
最終更新:2018年11月26日 19:08