けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

抱き枕

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mioritsu

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月曜日の夜。
晩御飯とおフロをを済ませ。自室でテレビを見つつエリザベスのメンテナンスをしていた時。

見てしまった。

ホラー映画の、CMを。

私は、自他共に認める怖がり。極度の怖がり。
「コワイ話」どころか「怖い言葉」にすら反応してしまう程の怖がり。

迂闊だった。

逃げる主人公らしき男性と女性。迫り来るゾンビと思わしき、群れ。
主人公の男性が意を決して何かを発砲し、銃弾らしき鉄の塊がゾンビと思わしき群れに襲い掛かる。
なぎ倒される群れの向こうから、映画のタイトルっぽい字幕が飛び込んで来た。

何となしに画面を眺めていた私は、ニッパーを手に暫く固まった。

やがて、震えた。

震えた手でとりあえずニッパーを置き、メンテ中のエリザベスを床に寝かせ、布団へ直行した。
テレビではプライムタイムのバラエティ番組が流れていた。
私は布団を被り荒くなった呼吸を何とか抑え、バラエティ番組の音声で気を落ち着かせた。

ふぅー

何とか落ち着いた私は、バラエティ番組を見ながらエリザベスのメンテナンスを済ませ、消灯して床に入った。

気持ちは落ち着いたつもりだったが、体は正直過ぎた。
やがて体は震え、心も恐怖感に侵されていった。
幼い頃は泣きながらママの胸に飛び込んで行ったが‥高校生にもなってソレは流石に出来ない。
私は、布団を被ったまま布団の外に腕を出し、手探りで携帯を手に取った。
布団の中でメールを打った。
幼い頃はパパやママが心の拠り所だったが、中途半端に成長した今。

私の拠り所は、律だった。

震える手で律にメールを送信した。

『あいたい』

手が震えていて漢字変換なんて、出来やしなかった。
普段こんな内容のメールなんかしないし。

直ぐ様、律から電話が掛かってきた。
多分、メールを見て不安になったんだろう。

『‥もしもし?』
寝起き声の律。律は寝ていたらしい。平日だし週始めだし、そんな夜更かしはしないか。
「り、律…」
『‥どうした?』
「…」
『‥ん?』
「………あいたい」
『‥へ?』
「…今すぐ、あいたい」
『‥』
私は、直で気持ちを伝えるだけで精一杯だった。
怖いから、とかホラー映画のCM見た、とか、言ってる余裕が無かった。
声も、震えてたかもしれない。
『‥着いたらメールする』
「‥うん」
律は眠たそうな声で律は答え、私は電話越しに頷き、電話を切った。
電話を切った瞬間、恐怖心が襲ってきたが、電話をする前よりは耐えられた。

律が、来てくれる。

それだけで、私は生きているような感覚だった。


『ついた』
律からのメールを確認した私は、足音をなるべく立てずに玄関へ走った。
「律…」
「澪…」
私は、息が切れていた。
律も、息が切れていた。
走って、来てくれたんだ。
「上がって、律」
私は安心して、律の手を掴んだ。
「ああ…」
私の手に導かれる律の手は、熱かった。
そのまま、私は律を自室の布団へ連れ込んだ。



私と律は、布団の中に居た。
律は日付も変わっていたのに、来てくれた。
パジャマのまま、制服とカバンを持って、駆け付けてくれた。
一緒に夜を過ごすんだって、覚悟をしてきてくれた。
律は、家のキッチンに私の家に行く旨の走り書きを置いてきたらしい。
実際、私のメールで目は覚めたらしい。
電話を切った瞬間、身体が勝手に動いたらしい。

で、一緒に布団の中に、居る。
私は律の胸に抱き着き、律は私を包み込んでいた。

「‥澪」
「‥ん?」
「‥どうした?」
そういえば何も言ってなかった。
「‥ホラー映画のCM、見ちゃった」
私は思い出すと震えて律を抱き締めた。
「…そっか」
律は、震える私の頭を撫でた。
私の震えは間もなく、収まった。
「りつ…」
「…なに?」
「こわかった…」
「うん…」
律はまた、私の頭を撫でた。
私は、幸せな気持ちになった。

ぎゅっ…

私は、律を抱き締めた。


「‥」
律は無言で、私の頭を撫でた。

「‥抱き枕‥」
「ん?」
「律‥抱き枕‥」
私は、律を抱き締めた。

「ふふっ」
律は笑うと

ぎゅっ

私を包み込むように、抱き締めた。

「澪も、抱き枕」
私の頭に、囁いた。


嬉しかった。

こんな怖がりの私の為に。

夜中に駆け付けてくれて。

全然怒んないで。

優しくしてくれて。

ぎゅって、抱き締めてくれて。


「りつー…」

「なに?」

「ありがと‥」
私は、抱き枕にお礼を言った。

「…」
抱き枕は、私の頭を撫でてくれた。

私は照れ臭くて身を捩った。

「みおー」

「…なに?」

「…大好き」
律は、抱き枕に、大好きって。言ってくれた。


私達は、抱き枕を抱き締めて、眠った。


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