けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

御守り

最終更新:

mioritsu

- view
だれでも歓迎! 編集

部室で練習前のセッティング中。
「あ」
私は、チューニングキーを無くした事に気付いた。
「どうした?律」
澪が声を掛けてきた。
「チューニングキー、無くした…」
カバンを探り尽くした私は、途方に暮れた。
「チューニング、キー?」
唯の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「スネアの張りとか、調節するやつですよ」
梓がフォローした。
「張り?」
「…」
梓は一呼吸置き
「ギターで言う、チューナーみたいなものですね」
「あ、タケコプターみたいなやつだ!」
「…まぁ、そうですね」
苦笑した。
「りっちゃん、タケコプター無くしちゃったの?」
「タケコプターじゃないけど、な。無いわ、チューニングキー」
「ドラム叩けないの!?」
「や、叩けるけどさ。細かい音とか、変わってくるんだよ」
「へぇ~」
「唯も、ギー太のチューニング狂うと直すだろ?アレと同じだよ」
「りっちゃんも繊細なんだね~」
「いやいや、私の問題じゃねーから‥」
「でも律先輩、チューニング出来ないと厳しくないですか?練習」
「そうなんだよ…」
「じゃ、今日、おやすみ?」
「ん~…」
私はギター勢からの問い合わせに考え込んだ。
「‥じゃ、今日はジャムって終わらそっか?」
澪が提案した。
「ま、それもそーだな」
私が賛成すると
「ジャム!?」
「セッションって事ですよ?パンじゃなくて」
「そ、そうなの?」
「一応皆セッティングしてるだろ・・」
唯に呆れる梓と澪。
「あ、この前思い付いたメロディがあるの!」
手をパン、と叩くムギ。
「なになに!?」
おもしろそう!とムギに詰め寄る唯。
やれやれ、と眺めていた私は、澪に聞いた。
「澪。今日、終わったら買い物付き合ってもらえるか?」
「ああ、いいよ」
澪は、二つ返事でOKをくれた。


結局部活は結構捗り、新曲の骨組みぐらいまで出来上がった。
我ながら、ピンと来ないスネアの音でよくやったかな、と思う。
「律も、やれば出来るんだよな」
澪にも、褒められたし。
私はその澪と、部活帰りに楽器屋に立ち寄った。
無くしたチューニングキーを買いに来たついでに、ウィンドウショッピング。
少ないレフティモデルを物色する澪。
「…あ」
「どしたー?」
「リッケンが、ある」
「おー!」
澪が指差した先にはリッケンバッカーの4001のレフティモデルが展示してあった。
たまーに音楽雑誌の広告で見掛けてはいたが、実物に御目に掛かるのは初めてだった。
「初めて見た‥」
見とれる澪。
「リッケンのレフティとか、めっちゃレアじゃん!」
ドラマーではあるが、一応知識はある私はテンションが上がった。
「試奏さしてもらいなよ!試奏OKって書いてるし!」
「う、うん」
緊張気味の澪。
私は店員さんを呼び、試奏をお願いした。
澪はやっぱり緊張気味で丸椅子に座り、試奏した。
「‥うわぁ‥」
澪は小さく声を上げながら試奏した。
色々セッティングを変え、ピックと指弾き両方試してみたり。
夢中になって、真剣になっている澪の表情はやっぱり、好きだ。
「…どうだ?」
私が声を掛けると
「んー‥」
澪は唸って試奏を続けた。納得行かない御様子。
「‥もう、イイかな」
澪はベースとアンプのボリュームを絞った。
「わかった。すいませーん!」
私は店員さんを呼び、試奏の終了を伝えた。

私と澪は楽器のアクセサリーコーナーを物色していた。
目当ては勿論、無くしたチューニングキー。
「澪、リッケン。どうだった?」
「ん~、弾きにくかった、かな。特にネックが握りにくかった」
「そっか」
「音は良かったんだけどなー」
「うん。ビジュアルも澪に似合ってたし」
「あ、ありがと‥」
澪は少し照れた。
「でもやっぱり値段が、ね‥」
澪は視線を下げた。
「あぁ‥高かったよな…」
ゼロが一個少なかったらな…、という値段だった。
そんな中、私は目当てのブツを発見した。
「あ、コレコレ」
Pearlのチューニングキー。ドラムセットはYAMAHAだけどいつかは欲しいな、Pearlと思って選んだ。
「見付かった?」
「ああ。予備に二つ、買っとく。澪はもうイイか?」
「あ、私ピック買う」
澪は手早くピックを選ぶと
「じゃ、律」
私が持っていたチューニングキーを手に取った。
「え?」
私が呆気に取られると
「試奏付き合ってもらったし。一緒に払っとくね」
「いいの?」
「いいの」
いつもは私がおねだりするんだけど。
「じゃ、ちょっと待ってて」
澪は足早にレジへ向かった。


帰り道。
今日の練習は上手く行ったなー、とか。
いつかは高い楽器欲しいよねー、とか。
談笑していた。
あっという間に、いつもの分かれ道。
「律。コレ」
澪は楽器屋の小さい紙袋を取り出し、中からチューニングキーを探り出すと私に手渡した。
「あ、忘れてた。サンキュー♪」
私は談笑に夢中で忘れていた。
「ソレと、コレ」
澪は、紙袋からピックを取り出し、私に手渡した。
オニギリ型の、青いピックだった。
「・・・ピック?」
私は手の平に乗ったピックを眺めた。
「律」
澪は
紙袋から別のピックを取り出した。
「コレ」
取り出したのは、私の手の平に乗ったピックと色違いの黄色いピックだった。
「おそろいって、ヤツかな?」
澪は照れ臭そうに笑った。
「おそろい?」
「ピック探してたらさ。丁度色違いのがあったから」
買っちゃった、と言うと澪は頬を赤くした。
私に渡したのは澪が好きな青で、澪が持っているのは私が好きな黄色。
理由はなんとなく分かったし、聞いた所で澪が照れて無言になる事は分かっていた。
「‥サンキュ!」
私は礼を言うと
「澪」
「え?」
「コレ!」
私は、二つ買ったチューニングキーの内の一つを澪に手渡した。
「おそろいって、ヤツだ!」
ニカっと、私は笑った。
「…ふふっ」
澪は、ピックとチューニングキーを握り締めると、可愛く微笑んだ。
「澪が持ってれば、無くす事も無いしな!」
私がははっと笑うと
「‥いつも、一緒だもんね」

ちゅっ

澪はキスしてきた。

「‥ッ!?」
狼狽える私。

「いつも一緒に居れば、無くしても安心だもんな!」
澪はまたふふっ、と笑った。
「御守りに、しとくよ!」
澪はまた、ピックとチューニングキーを握った手を、ぎゅっと握り締めた
「‥あ、ああ」
私が呆気に取られていると
「じゃ、また明日な!」
澪は、とても嬉しそうに。帰って行った。

私は、澪の後ろ姿を見送り、歩き出した。
ピックとチューニングキーを握り締め、呟いた。

「おそろいの御守り、か‥」

握り締めた手は、何故か暖かかった。


名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー