けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

すべりだい

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mioritsu

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「あなたが八度七分の声を 使うときは
 必ずあたしに後ろめたいことがあるとき」


椎名林檎の曲の歌詞で、こんな一節がある。
歌詞の内容は、カップルが別れた後の話って感じ。
付き合ってるとかじゃないけど、幼馴染みの律がこの一節に見事に当てはまる。
怪しいと思ってちょっとでもカマを掛けようものなら、あからさまに態度がおかしくなると言うか何と言うか…
…まぁ、わかりやすくて律らしいなって思う。
事によるけど、なんだかんだで可愛いヤツだなって、思う。

‥‥けど、最近は何かおかしい。

いつも「そういう調子」になる時は提出物忘れてたーとか、私にイタズラしようと企んでる時とか。
で、私が思い当たって突っ込んでみると白状するってケースが殆んどなんだけど‥

‥‥けど、今回は「何なのか」が掴めない。

「そういう調子」を垣間見せてきて、おかしいと思って聞いてみても「なんでもないよーん♪」とか言って、はぐらかす。
思い当たる節が無い分には、突っ込みようも無い。
それなりに長い付き合いだし。お互い隠し事しても、お互いすぐに見破っちゃう。そんな仲だし。
気にはなりつつも……気にしててもどうしようもないので。
まぁ‥その内シッポを出してくるだろう。そう思うことにした。



ある、冬の日の、放課後。
部活を終えて、律と一緒の帰り道。
「なぁ、澪ー」
「何ー?」
「ちょっと、公園寄ってこーぜ?」
「あ、あぁ」
出た。
特に用も無いのに公園に寄る、とか。
お菓子とか買って、公園で食べてこう、なんて事はあるけど。
前触れも無く寄ってこうってのは、おかしいよな‥‥。

……律は、何を考えてるんだろう。

ちょっと警戒しつつ、私は律と公園に立ち寄った。



季節が季節で、時間も夕暮れ時だからか、公園には人気は無かった。
葉っぱが枯れている木に、カラスが数羽止まっている位。
私は、律の後を歩いた。
律は、公園を見渡すように歩いた。
まるで、公園に誰も居ない事を確認するように。

雰囲気で……分かった。

第六感とか、そんな感じ。
律は、私に何か伝えようとしている。
公園に誰か居たら、一通り歩いて場所を変えようとしていただろう。
「なっつかしいなー」とか言いつつ、極端に口数が減った。
懐かしいも何も、今でもたまに立ち寄ってるじゃないか。
敢えて、突っ込まずに、様子を見た。
おかしい様子を隠し切れない、律。
無口になった背中から、墓穴を掘って後悔してる心情が読み取れた。
夕日もすっかり身を沈め
微かな明かりが辺りを照らし
街灯の光が目立ち始め
タイヤが半分埋められてる辺りを、通り過ぎた所で
「…澪」
‥私の先を歩く律が立ち止まり、口を開いた。
「‥何?」
私が返事をすると、律は振り返った。
「話が‥あるんだけど‥」
泳いだ目を、なんとか私に向けてきた。
話でも無い限り、こんな所わざわざ寄らないだろって思ったけど。
ソレは置いといて
「‥何?話って」
真相に、迫った。
「‥あの‥さ」
律は、大層言いにくそうに、話し始めた。

「………澪の事、好きなんだ。付き合って‥くれないかな‥」

…告白、された。

公園に来た辺りから、予想はしていた。
律がそんな感情を抱いてる事なんか、気付いてたし。
私だって、同じ気持ちだし。
バンドでやってる曲の歌詞だって、律の事を想って書いてる。
直接好きって言えないけど、歌詞だったら…って思って書いてる。

想いが、通じたのかな…………だから、告白してきたんだよね……。

「……………」

私は、赤面して黙り込んだ。
想いが通じた。嬉しい。

「……ど、どうかな?」

律も、顔を真っ赤にしている。
いつもの律じゃないみたい。
告白してるんだもの。そりゃいつもの調子なワケは無い。
ココ最近、ずっとこのコトを考えてたから、おかしかったのかな…
…じゃなきゃ、あんな調子にならないよね。

「…………わ‥私も、好き……だけど‥‥」

私は、声を振り絞って、また黙り込んだ。
想いが通じたのは、嬉しい。
告白してきてくれたのも、嬉しい。
ちゃんと私も応えなきゃって思って、好きって言った。

………でも、私の「こわがり」が、邪魔をした。

好きなのは良いけど、これからどうするんだろう。
付き合うって、なんだろう。
一緒に居るのは、今までと一緒だけど
恋人同士って、なんだろう。
それに、女性同士で好きって…どうなんだろう………

……赤面しつつ、頭の中に色んな事柄が一瞬でよぎった。

気付いたら、言葉が出ていた。

「‥‥けど、ごめん。わかんない」

好きな事は好きだけど、ソレ以外のコトが分からなかった。
たっくさん、たくさん律のコトを想って歌詞とか書いてるけど‥‥

‥‥実際、好きって言って。付き合うってなると。わかんなくなった。

「……わかんない?」

律は、いつもより暗いカオで聞いてきた。

「…うん、好きなんだけど‥‥わかんない‥かな……」

曖昧で、中途半端で、失礼だったかもしれない…
…けど、正直な気持ちを、伝えた。

「……………そっか!」

律が開き直った所で

~♪~♪♪

「‥あ」

私の携帯が、鳴った。

「‥ママから、メール。ゴハンだよって……」

母からの夕飯を告げるメールだった。
気付くと、夕暮れの明かりももう見えないくらいだった。

「‥‥うん、じゃ…帰ろっか」

律が、いつもより寂しそうな笑顔で言った。

「‥‥うん」

私は、頷いた。

公園を‥‥‥後にして。
いつもの分かれ道まで、私も律も、無言だった。
分かれ道では
「じゃ、また明日な!」
「うん」
お互い、なるべくいつも通りの態度で別れた。



その日の、夜。
夕飯食べて、おフロ済ませて、ちょっと、ベースの練習して‥‥

‥‥律に、今日の事をメールした。


私のことを好きって言ってくれて、伝えてくれて、ありがとう。
私も律のことは、好き。
だけど、付き合うって事が、わからない。
でも、ちゃんと律のことは好きだから。好きって言ってくれて嬉しかった。
嫌いになったわけじゃないからね。律のこと、好きだから。
明日も、ちゃんといつもの場所で待ってるからね。
寝坊しちゃ、ダメだよ?おやすみ。


なんか、言いたい事だけ、メールした。
律が好きって言ってくれたから、律を好きだってコトを伝えたかった。

………でも、ちゃんと応えられなかった…と、思う。

メールの送信ボタンを押した瞬間、後悔の念が襲ってきた。

好きなら、付き合ってもイイんじゃないの?
お互い嫌いじゃないのに、お互い好きなのに、付き合わないのってなんなの?

女性同士とか、そういうんじゃなく、律のコトを好きなんだな………って、気付いた。

「…………」

携帯を充電器にセットした。
返信が来るのが、怖かった。
すぐに照明を消して、冷たい布団に潜った。

明日、ちゃんと律来るかな。
明日、ちゃんといつもの場所に行けるかな。
明日、ちゃんと律と話せるかな。
明日、律と会ったら何て言おう。

明日………

律のことばかり、考えた。

胸が、苦しくなった。


‥‥ちょっと、せつないな………。


後編:冬の日

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