予兆詩第106番

予兆詩第106番(旧96番) 1564年4月について

原文

Secret conjur1, conspirer populaire.
La decouverte en machine esmouvoir.
Contre les grands la bestiale fere2:
Puis trucidée, & mise sans pouvoir. *1

異文

(1) conjur : conjure 1649Xa
(2) Contre les grands la bestiale fere conj.(PB) : Contre les Grands la bestiale fere 1589Rec, Contre les Grands* T.A.Eds.

(注記1)1589Rec はジャン=エメ・ド・シャヴィニーの手稿『散文予兆集成』の異文。この年向けの予兆詩は、初出に当たるフランス語版の暦書どころか英語訳やイタリア語訳すら確認されていないため、復元にあたっての底本は1589Rec になる。
(注記2)3行目の異文は * 印も含んでいる。

校訂

 ジャン=エメ・ド・シャヴィニーが『フランスのヤヌスの第一の顔』において、3行目の後半を省いたため、のちのほとんどの版がそれに従った。
 例外は1691年頃のアントワーヌ・ベソン版で、3行目を Contre les Grands, conjuration faire. (偉大な者たちに対して、陰謀を企む)としていたが、この版には問題点が非常に多く、信頼性に欠ける。

日本語訳

秘密の陰謀を、民衆は企てる。
策略の露見が煽り立てる。
偉大な者たちに対する凶暴な野獣。
そして殺され、権力のない状態に置かれる。

訳について

 1行目 conjur は conjuration の省略形と見なされており、ここでもそれに従った。
 3行目 la bestiale fere は直訳すれば「獣じみた野生の獣」。
 4行目「殺される」「置かれる」はともに女性名詞を受けているので、省略されている主語は前の行の「野獣」(fere)だろう。

信奉者側の見解

 ジャン=エメ・ド・シャヴィニーは、1588年の予言と位置付け、王と民衆が互いに陰謀をめぐらせていた状況と解釈した*2

その他

 ベルナール・シュヴィニャールは、シャヴィニーが3行目後半を略してコメントしなかったのは、「黙示録の獣」を連想させるからではないかと推測している*3


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予兆詩
最終更新:2010年05月17日 22:55

*1 原文は Chevignard [1999] p.164 による。

*2 Chavigny [1594] p.248

*3 Chevignard [1999]