ノストラダムスの2025年予言

2024年予言2025年予言―2026年予言

この項目ではノストラダムスの2024年予言について扱う。

 オカルト界隈では、漫画家たつき諒の予言にも関して、2025年7月5日の大災難を煽る言説が見られる。
 しかし、ノストラダムスの『予言集』には、2025年と明記された予言はない


【画像】 ムー2024年11月号別冊 『2025年人類滅亡大予言』


 そのため、この種の書籍、雑誌でも、ノストラダムスの扱いはさして大きなものではない。実際、ムー別冊『2025年人類滅亡大予言』(2025年予言をテーマにした『ムー』掲載記事を集めた再編集版)でも、ノストラダムスについては、冒頭で軽く触れられているだけである。

目次

以前の解釈例

中国がロシア北部やスカンジナビア半島を併合する

 ヘンリー・C・ロバーツは『ノストラダムス全予言』(1947年)において、詩百篇第1巻49番第3巻77番に登場する「1700年」に325年を加算し、2025年の事件と解釈した。

 ロバーツは第1巻49番について、2025年に経済的・工業的な伸張を完成させた中国が、ロシア北部やスカンジナビア半島を併合する予言と解釈した*1
 中国の経済・工業発展を、中華人民共和国建国(1949年)前から解釈していたこと自体は評価できるのかもしれないが、2024年下半期にはむしろ中国経済の減速がしばしば報道されていたことを踏まえると、「完成」は大いに疑問である。
 また、スカンジナビア半島のノルウェーは北大西洋条約機構(NATO)の原加盟国であり、スウェーデンも2024年に加盟したため、スカンジナビア半島を侵略するということは、集団的自衛権を規定しているNATO全体に戦争を仕掛けるに等しく、非現実的といえるだろう。

 ロバーツは第3巻77番については、キリスト教徒にとって恥となるような中東の事件が起きると解釈したが、こちらは曖昧すぎて論評のしようがない。

 なによりも「1700年」に、ニカエア公会議のあった325年を加算するという解釈自体に何の正当性もなく、信奉者の間ですらほとんど支持されていない解釈である。

偉大な君主がヨーロッパに誕生する

 ヴライク・イオネスクは『ノストラダムス・メッセージII』(1993年)などで、彼の解釈のピークの一つである「大君侯」(Grand Monarque)の即位する候補として、2025年も挙げていた。

 大君侯は、イオネスクの解釈では、1999年8月11日に誕生するブルボン家の血を引く若者で、中国・イスラーム連合軍を迎え撃つヨーロッパ側の救世主として描かれていた。
 イオネスクは詩百篇第4巻86番に描かれた星位から、2022年2月5日、2023年2月16日、2024年3月1日、2025年3月13日、2033年7月10日、2034年7月17日、2042年11月2日、2043年11月14日、2051年1月31日、2052年2月12日などの候補を挙げ、詩百篇第6巻3番(未作成)との関連から、「2023年と2024年を即位年として選ぶのがいちばん蓋然性が高いという結論に達する」としていた*2

 つまり、2025年は一応候補にあたってはいるものの、さして重視視されていた年代ではなかった。
 また、大君侯即位の前段に当たる中国とイスラームの連合軍自体、2025年初頭の時点では全く存在していない以上、大君侯の即位だけが突然当たるとは考えづらい。

千年王国が到来する

 ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌの著書には「2025年」を含んだものがいくつもある。

 それは、彼の解釈では、2025年が千年王国=黄金時代の到来と位置付けられていたためである。
 ただし、イオネスクへの疑問と同じく、黄金時代の前提になっていたはずの長期間にわたる世界大戦が実現していないのだがら、黄金時代の到来だけ実現すると考えるのは都合がよすぎるだろう。


【画像】フォンブリュヌの『ノストラダムスの470年史』

 ちなみに、ノストラダムス解釈者には、ジャン・マグロンヌの『2025年までのノストラダムス予言集』もそうだし、2020年代半ばに黄金時代が到来すると推測する論者が何人もいた。

 それは、反キリストによる戦争が「25年」(アンリ2世への手紙)ないし「27年」(詩百篇第8巻77番)続くという予言があるためで、かつてそれは1999年ないし2000年に始まると解釈されることがあった。

 つまり、1999年か2000年から始まって、25年ないし27年続くということは、終わるのが2024年~2027年の間になると理解できるわけである。
 しかし、そんな戦争は始まっていないのは言うまでもない。始まってもいない戦争が終わるなどという予言は、もとより当たるはずもない。

 2025年に黄金時代が来るという予言は、良く言えば1999年に向けたブームの忘れ形見、悪く言えばただの残りカスである。


【画像】 ジャン・マグロンヌの『2025年までのノストラダムス予言集』

イスラームのスンナ派とシーア派の間で戦争が起こる

 マリオ・レディングは、『ノストラダムス 未来のための全予言』にて、詩百篇第5巻25番に基づいて、2025年にイスラームのスンナ(スンニ)派とシーア派の間で戦争が起きると解釈した。

 第5巻25番の1行目「火星、太陽、金星(が)、獅子宮(に入る)[…]」は、事件がおこる日時の星位と解釈されることがしばしばだが、星位と読む論者で2025年と解釈した者はいない(近いのは、ジョン・ホーグの算定の候補の一つだった2032年)。
 それに対し、レディングは1行目を錬金術的に解釈しており、2025年を導いたのは、単に詩番号の「25」から結び付けただけのようである。

前々年からこの年にかけての解釈例(書籍・雑誌など)

ノストラダムス新解釈 2025年中国滅亡

  • 白金狐子 「ノストラダムス新解釈 2025年に中国滅亡が予言されていた!!」、『実話ナックルズGOLDミステリー』Vol.12、2023年10月25日、p. 68-71./『実話ナックルズGOLDミステリーSP』VOL.03、2024年9月5日、p. 40-43.

 ノストラダムスの2024年予言でも扱ったが、「ノストラダムス研究家の冴木氏」なる人物の解釈が紹介されている。

 その冴木氏は詩百篇第2巻65番を解釈し、4行目を基に、人馬宮に水星がある時期に中国に恐ろしいトラブル等が起こる恐れがあるとして、「直近では2023年12月23日~2024年1月2日と、2024年11月26日~12月16日」を挙げた。

 そして、4行目の「土星が衰退する」云々を東洋占術と結び付けて、習近平と李強の2人がその時期に衰え、中国共産党が終焉すると解釈したのだが、その2人とも、失脚はおろか体調不良による休養などもないまま2025年を迎えた。

 なお、2024年予言の記事にも書いていたように、「土星が衰える」というのは誤訳に過ぎない(第2巻65番の記事参照)。
 だから、もともと当たりようがない解釈だったともいえる。

 著者の白金は「冴木氏」の解釈を紹介した後に、「これら多くの一致は、果たして偶然なのだろうか……?」と問いかけているが、そもそも偶然の一致にすらなっていないのである。

帰ってきたノストラダムスの大予言

  • 「帰ってきたノストラダムスの大予言」、『週刊ポスト』2024年4月12・19日合併号、p. 53-56.

 執筆したライターの名前は書かれていない。
 2025年に起こる出来事として、白神じゅりこの談話を紹介しつつ、以下のような解釈が示されている。
  • 詩百篇第1巻69番「大きな山が7つの競技場を取り囲み」が、周囲を山に囲まれている大阪で万博が開かれているときに、南海トラフ地震で大阪が大津波に見舞われると解釈。
    • 詩百篇第1巻69番の記事にも書いたことだが、「山が競技場を取り囲む」は誤訳で、そういう理解はできないので、根本的にデタラメである。原文の山は単数形で、取り囲むことなどできないのだ(カルデラの中に築かれた集落などならば、単独の山が特定の集落群を取り囲むことは可能だが、大阪はまったく該当しない)。
  • 詩百篇第8巻28番を引き合いに出し、米ドルの暴落による崩壊があるとした。白神のコメント内に時期はないが、白神ないし記者(?)がまとめたリストでは「2025年~2030年」という期間が示されている。
    • 白神のコメントにも、まとめたリストにもなぜ2025年~2030年と解釈できるのかの根拠はない。実際、この詩は、2022年の予言でも米ドルの崩壊と解釈されており、今後も実際に当たらない限り、何度も引き合いに出されていくであろうことは、予言者でなくても予言できる。

ノストラダムスが記した2025年の恐怖の大予言

  • 「ノストラダムスが記した2025年の恐怖の大予言」、『実話ナックルズGOLDミステリー』VOL.17、2024年12月12日(奥付上は「2025年1月25日」)、p. 24-27.

 執筆したライターの名前は書かれていない。
 扱われている詩篇の訳は、当「大事典」の訳文のほぼ転載で、一部が解釈に合わせて改変されている。たとえば、詩百篇第1巻69番では、以下のとおりである(パクリ記事の方は改行が多いが、無視した)。

【このパクリ記事の訳】 【当「大事典」の訳(2024年12月時点)】
七つのスタディオン(競技場)の大きな円い山が、 七スタディオンの大きな円い山が、
平和、戦争、飢餓、洪水の後で、 平和、戦争、飢餓、洪水の後で、
遠くへと転がるだろう。広大な諸地方を深淵に投げ込みつつ、 遠くへと転がるだろう。広大な諸地方を深淵に投げ込みつつ、
古代遺跡や大きな土台すらも同様に投げ込みつつ。 古代遺跡や大きな土台すらも同様に(投げ込みつつ)。

 見ての通り、2、3行目は完全一致の丸写し、4行目については、繋がりが分かりやすいようにと当「大事典」で補った、原文にはないカッコ書きの補足まで丸写ししている。その一方、七スタディオンを山の大きさにしてしまうとこじつけをしづらくなるため、「競技場」という解釈を導入している。

 この記事によると、七つの競技場を取り囲む大きな丸い山は、大阪・関西万博で会場を取り囲む巨大リングのことだといい、関西をはじめ、古代遺跡の多い静岡、九州などとともに、南海トラフ地震で被災する様子を示しているのだという。

 これを書いたライターはあの巨大木造リングが「山」に見えるのだろうか。
 そもそも、上でも述べたように、「山が競技場を取り囲む」は誤訳である

 また、予言詩には「大きな円い山が…遠くへと転がる」と書いてあるのだから、その古代遺跡が静岡や鹿児島のことなのであれば、
万博の巨大リングが南海トラフ地震のせいでポーンとすっ飛んで、静岡から九州まで転げまわる
という予言になってしまうが、このライターは読者を怖がらせたいのか笑わせたいのか、どちらなのだろうか。

 なお、2025年として他に扱われている詩は第3巻1番第8巻28番の2篇のみである。だが、どの詩篇にも、当然2025年という年数の記載はない。

 ほかに、過去の的中例などの紹介として第2巻53番第2巻75番第3巻81番第10巻72番が扱われている。

2025年7月5日人類滅亡クライシス

  • 「東日本大震災を的中させた幻の漫画も警告!! 隕石衝突 巨大地震 ノストラダムス 2025年7月5日人類滅亡クライシス」、『週刊大衆』2025年1月13・20日合併号、p. 67-68.

 あくまでもメインは たつき諒で、ノストラダムスについては第1巻69番だけが言及されているに過ぎない。だが、それも、『ムー』編集長の三上丈晴による、(2025年の危機に関するノストラダムスの)「明確な予言自体はない」というコメントも紹介されており、少なくともその一言については全くその通りと言う他はない。

ノストラダムスは第三次世界大戦を予言していた

  • 宇佐和通 『5人の予言者と2025年からの恐怖の地球未来図』、笠間書院、2024.

 この本の第1章「ノストラダムスは第三次世界大戦を予言していた」において、5人の予言者の一人としてノストラダムスを採り上げられている。
 もっとも、断定調の章タイトルとは裏腹に、両論併記的な記述や疑問形の記述が多く、具体的に時期を明記した解釈はほとんどない。

 予言を否定しないが、無理筋な擁護もしないという意味ではバランスが取れていると言えなくもない。他方で、どっちつかずで当たり障りのない記述に終始していると見ることもできるだろう。



前年からこの年にかけての解釈例(ウェブサイト)

謎めいた言葉「コインレザー」


 もっとも、内容はよくある予言詩の片言隻句を強引に解釈して2025年とこじつけるもので、詩の原文に2025年という年数はない

 思わせぶりな日本語タイトルに採用されている「コインレザー」にしても、謎の言葉でも何でもない。

「コイン」と「レザー(皮革)」というキーワードで思い浮かぶのは、詩百篇第7巻25番の3行目

  • 金や銀に替えて人々は革で鋳貨するようになるだろう。

である。実際、この行は、ジョン・ホーグの『ノストラダムス:全予言』(1997年)では、

  • Instead of gold and silver, they will come to coin leather,*3

となっており、「コインレザー」は、ほぼ間違いなくここからとったものだろう(そういうわけで、この場合のcoinは名詞ではなく「貨幣を鋳造する」という意味の動詞で使われているとみるべき)。

 おそらくだが、第7巻25番という詩番号から安直に2025年だと言い出した解釈者が海外にいたのだろう(この種の解釈の出所を特定することにあまり意味はないので、これ以上深入りして調べることはしないが)。

戦争、疫病、自然災害、水中帝国…


 これもまた2025年という年数を明記した予言はない。

 それどころか出典の不明な予言がいくつもある。最たるものは以下の予言である(英語はLADbibleから、日本語はTOCANAからそれぞれ引用)。

  • "From the cosmos, a fireball will rise, A harbinger of fate, the world pleads. Science and fate in a cosmic dance, The fate of the Earth, a second chance.”
  • 「宇宙から火の玉が昇り、運命の先駆けとなるだろう。世界は嘆願する。科学と運命が宇宙のダンスを踊り、地球の運命は再び試される」

 ノストラダムスの予言詩にこんなものはない
 火の玉が昇る、というモチーフは第2巻91番「日の出に大きな火が見られるだろう」などが連想できるが、詩全体の情景が全く違う。

 あえて言うならクロケットが紹介したニセ予言に雰囲気が近いが、ぴったり一致するものはない。

 おそらくは、その種のニセ予言に触発されたデッチアゲ予言ではないかと思われる。


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最終更新:2025年01月27日 21:22

*1 Roberts [1947]

*2 イオネスク『ノストラダムス・メッセージ2』pp.165-167 ; V. Ionescu et M.-Th de Brosses, Les dernières victoires de Nostradamus, p.236

*3 Hogue [1997] p.515