概要
第六次コルナンジェ攻防戦は、
第三次ロフィルナ革命の終盤に起こった市街戦である。
共立公暦1008年、王都コルナンジェに退いた王党派の全戦力と、
セトルラーム共立連邦を中核とする連合軍が正面から衝突した。
戦力
王国の版図が王都の周囲に縮んだ後の交戦であり、双方の編成は市街の内と外に分かれて組まれた。
侵攻部隊
連合軍の司令部が攻勢の中核に据えたのは、南部戦線から呼び戻した
第4世代ゾラテス級事象界域制圧艦1隻であった。艦の主砲は地表の構造物を一撃で潰す威力を持ち、随伴する戦闘機と無人機の群れが上空の掃討を受け持つ。地上に投じられた兵力は50万を上回り、街路の突破に充てられた装甲車1600台が先鋒の隊列を組んだ。輸送車700台で編まれた補給の車列は、外港と前線の間を昼夜を分かたず往復する手順で回された。
ヴァンス・フリートン大統領は連邦議会の厭戦の声を星域の秩序という論法で抑え込み、追加の予算を通したうえで作戦の期限を年内に切っている。
共立機構国際平和維持軍のFT2執行本隊は王都圏の郊外に陣を進め、突入の時期を連合軍との協議に委ねたまま待機の姿勢を保った。連邦軍と機構の部隊は同じ市街を目指しながら、指揮の系統を最後まで別立てとしている。
守備部隊
迎える側の戦力は、各地の戦線を失って王都へ流れ込んだ将兵の集まりであった。
アリウス公王は臨時政府の名で受け入れの枠を定め、王都直轄司令官
ガルヴェイン・ゾルドリックが到着の順に配置を割り当てる。直轄軍の常備軍と予備役に、各州から退いた部隊と信仰系の武装勢力が重なった結果、市街に集まった戦力の規模は開戦以来の最大に達した。合流を重ねた戦列は火砲の口径も車両の型式も揃っておらず、部隊ごとに別の補給を要する状態のまま前線に就いた。修理を終えた重戦車130台は市街の要所に分けて据えられ、砲身の向きは主要な街路の見通し線に合わせられた。
サンリクト・
ユリーベル両公国の将兵を率いる
ヴェイル・グラウストラ元帥は、王室の存続を死守する立場から王党派の一翼を引き受けている。上空の警戒には
レミソルト級スイートクルーザー1隻と有志の艦艇が就き、電子戦闘システムの運用が防空の一端を占めた。
特異戦力
特異戦力の投入は、
文明共立機構の
メレザ・レクネール常任最高議長の決断による。議長は交戦の長期化が文明の存続を脅かす段階に入ったと判断し、PLコマンド・ヒュプノクラシアの発動に踏み切った。展開の主体は
ゼノアビリティ・プランの要員であり、Mr.Xが後方の拠点から全体の指揮を執る。特命執行官のカーンソンドは前線に立って地上の各隊を束ねる任を受け、七草には欺瞞と毒物への対処が割り当てられた。
パルディ・ルスタリエの異能は高出力の波動を放つ性質を持ち、艦の機関に働きかける用法が投入の前から想定されている。TB機動作戦司令部は執行会議の方針に反対の立場を貫き、人道支援の名目で機動陸戦部隊を同じ市街へ送り込んだ。イドゥニア星域の外周では、FT2執行艦隊が航路の封鎖に就いている。
経過
6月15日に始まった交戦は44日にわたって続き、上空の制圧から市街の消耗戦を経て、王宮の周辺で決着を見た。
空襲
開戦初日、ゾラテス級の主砲が王都の防衛塔15基を焼き払った。戦闘機と無人機の群れが街区の上空を覆ったため、司令官府と各詰所を結ぶ通信は昼のうちに途切れる。6月18日、
レミソルト級スイートクルーザーは有志の艦艇を伴って上空に上がり、電子戦闘システムで連邦艦の照準を狂わせた。連邦の護衛艦2隻が同士討ちで航行の力を失った一方、ゾラテス級の反撃は艦隊の隊列を割り、巡航艦40隻が市街の各所に墜落した。王党派の重戦車130台は装甲車の隊列を街路の角で待ち受け、初動の三日で相手の車両の四分の一を炎上させた。連合軍は装甲を先に立てる手順を捨て、歩兵を建物の内側から進ませる形に切り替えている。6月22日までに王都の上空は連合軍の掌中に移り、王党派の部隊は昼間の移動を封じられた。地下の壕に降りた司令官府は、夜間だけを使う交代の順を各部隊に配っている。
街区
6月23日、連合軍の地上部隊が市街に踏み込み、街区ごとの制圧に日数を費やす戦いが始まった。合流を重ねた王党派の戦列は数の上では厚みを持ちながら、部隊ごとに異なる弾薬の型式が補給の手間を増やしていく。6月28日、複数の隊が同じ街区へ同時に退いた結果、指揮の重複した区画では味方の射線が交差し、直轄軍3500人と連邦兵4500人が同じ一帯で倒れた。政権軍の残余は坑道の口から夜ごとに現れ、路面の下に埋めた爆薬で連合軍の車列を吹き飛ばした。7月5日、街区ごとの配給は倉の底が見えた時点で止まり、郊外に溢れた避難民25万人は焼け跡での自活を強いられた。輸送車700台のうち相当数が街道の途中で襲われ、燃え上がった車体が後続の荷役を半日にわたって塞いでいる。政権軍の残余が偽の降伏勧告を街路に流したため、投降の列に加わった住民が連合軍の銃口の前で立ち往生した。7月10日、公王は王宮周辺の関門へ予備の戦力を回し、外縁の街区を明け渡す判断を下している。
異能
7月11日、レクネールの発令を受けたゼノアビリティ・プランの要員が王都の市街に降りた。七草の欺瞞は連邦の通信網を攪乱し、毒気の残る地下の区画でも行動を続けた点が展開の速さに結びついた。カーンソンドは前線に立って政権軍残余のプラズマ砲を無力化し、民兵3万の進出を市街の外縁で止めた。ルスタリエは単独で上空に上がり、ゾラテス級の
量子バブルレーン炉へ高出力の波動を注いで過負荷に追い込む。炉の暴走によって艦体は内側から裂け、燃える残骸が街区に降り注いだ。同じ異能はレミソルト級にも向けられ、軽
フルイド・バブルレーザーを吸収する障壁の内側から主砲塔と機関が撃ち抜かれ、乗員800人が艦とともに落ちる。波動を直に浴びた王党派の艦艇はすべて墜ち、コマンドブリッジに立っていた公王は深手を負った。傾いた艦体は王宮の行進広場に突き刺さり、致命の破壊を免れた船体からは複数の人影が降りてくる。同じ日、
リティーア公女は検問の制止を振り切って王都に降り立ち、行進広場を目指す道で暴徒に阻まれ、TB機動陸戦部隊の手で後方に運ばれた。7月18日、FT2執行本隊が市内に突入して武装解除に取りかかると、王党派の自爆攻撃で車両40台と兵士700人が失われた。
勅令
7月26日、王党派の戦列は王宮周辺の一角に押し込まれ、指揮の届く部隊は市街の中枢だけとなった。艦隊を失った連邦政府も特異戦力の前で作戦の主導権を手放しており、交渉の席に着く判断を下している。
ヴェイル・グラウストラ元帥は徹底抗戦を説いて指揮下の将兵を集めたものの、公王の裁定によって主張は退けられた。王都直轄司令官も突入への反撃を求め続け、反戦を掲げてきた将校の一団が説得の任にあたっている。7月28日18:00、行進広場に立った公王は生存する全ての部隊へ停戦の勅令を告げ、街区に残る民兵にも武装解除を求めた。命令は口伝と伝令によって夜半まで市街を巡り、地下の壕に籠もっていた部隊も日付の変わる前に武器を置いた。市街に残った政権軍の残余は住民の報復を受け、その多くが焼け跡で命を落とした。FT2執行本隊は王宮周辺の警備を引き継ぎ、投降した将兵を郊外の拠点へ順に送り出している。
影響
44日の交戦が残した損害の大きさは、戦後統治を巡る各国の判断を数年にわたって縛った。
王都
交戦による民間人の死傷者は約45万人、双方の軍人の損耗は約80万人にのぼる。王党派の側では各地から集まった部隊が一度に失われたため、戦後に武装を保った旧王国系の勢力は市街の外側に殆ど残らなかった。王宮は上部の構造を失ったまま焼け跡に立ち、瓦礫の撤去は臨時軍政の発足を待って始まる。8月12日、統治の実務は平和維持軍が主導する臨時の軍政へ移り、暫定政権の庁舎は焼け残った官衙に置かれた。外国軍の駐留は年を追って長引き、共立公暦1010年、暫定政権は治安の状況を踏まえて民主化の実施を先送りする決定を下している。公王が街区の役場を通じて配らせた「ロフィルナの未来」の演説は写しの形で市中に広まり、復興の作業に加わる住民の間で読み上げられた。
民主革命ロフィルナ軍は武装を保ったまま
コルナンジェ停戦協定の交渉に第三の当事者として加わり、統治の形を巡る要求を席上に持ち込んだ。
戦後
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最終更新:2026年08月24日 19:35