振り返ってはいけないのタブー

振り返ってはいけないのタブー

「振り返ってはいけない」というタブーは、世界中の神話や民話に広く見られるモチーフであり、見るなのタブーの一種として位置づけられます。
このタブーは、特定の行為(振り返ることや見ること)を禁止され、それを破ることで悲劇的な結果がもたらされるという物語の構造を持っています。


概要

代表的な例
1. ギリシア神話:オルペウスとエウリュディケー
  • オルペウスは亡き妻エウリュディケーを冥界から連れ戻すため、冥王ハデスと交渉します
  • 条件として「地上に戻るまで振り返ってはいけない」と言われますが、地上直前で振り返ってしまい、エウリュディケーは冥界に引き戻されてしまいます
2. 日本神話イザナギイザナミ
  • イザナギ黄泉の国から逃げる際「変わり果てた姿を見ないで」と言われたにも関わらず振り返ってしまいます
  • その結果、イザナミは怒り、二人は決別することになります
3. 旧約聖書ロトの妻
  • ソドムとゴモラの滅亡から逃れる際「振り返ってはいけない」と命じられたロトの妻が振り返ったために塩の柱になったという物語があります
4. 映画・アニメへの影響
  • 宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』では、主人公千尋が「振り返らずに進む」ことを求められる場面があり、これは日本神話や他文化のタブーから着想を得たものと考えられます

背景と意味
境界への畏怖
  • 振り返る行為は、生者と死者、現実と異界など「境界」を超える行為と結びついています
  • 境界は曖昧な領域であり、不安や恐怖を引き起こすため、そこにはタブーが生まれやすいとされています
カリギュラ効果
  • 「禁止されるほど興味を引かれる」という心理現象も、このタブーを強調する要因です
  • 禁止されることで逆にその行為への誘惑が増し、それを破った結果として悲劇が訪れるという構造が物語に多用されています
聖なるものへの接触
  • 振り返ることや見ることが禁じられる背景には、「聖なるもの」や「異界」に対する畏敬の念があります
  • これを破る行為は、それらに対する冒涜や秩序の破壊とみなされます

振り返ってはいけない理由
1. 視覚による現実化
  • 見ることで禁じられた世界や存在が現実化し、人間界に影響を及ぼす可能性があるため
2. 信頼と試練
  • 振り返らないことは信頼や意志の強さを試す行為でもあります
  • これを破ることで罰せられるストーリーは、人間の弱さや欲望への警告とも解釈できます
3. 境界の保持
  • 境界とは秩序そのものであり、それを越える行為(振り返る)は秩序を乱し、混沌を招く象徴となります

「振り返ってはいけない」というタブーは、人間社会における秩序維持や境界への畏怖心から生まれた文化的・心理的なテーマです。その背後には、視覚による影響力、聖なるものへの敬意、そして人間の好奇心と弱さへの警告が含まれています。このモチーフは、神話だけでなく現代作品にも影響を与え続けています。

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最終更新:2024年12月19日 14:45