カーリー
カーリー(Kālī)は、
ヒンドゥー教における破壊と再生を司る女神で、シヴァの妃
パールヴァティーの恐ろしい面を具現化した存在です。
その名はサンスクリット語で「黒」または「時間」を意味する「カーラ(Kāla)」の女性形に由来し、時間や死、破壊の象徴として描かれます。一方で、帰依者には
愛情深い母として信仰される側面もあります。
概要
カーリーは破壊と殺戮という恐ろしい側面だけでなく、悪から守り深い愛情で包み込む母なる存在としても崇拝される、多面的な女神です。
その神話や姿には宇宙的なエネルギーや生命循環への深い哲学的意味が込められており、インド全土で広く信仰されています。特にベンガル地方では非常に重要視され、人々の日常生活や文化にも深く根付いています。
カーリーの特徴
- 外見
- 黒い肌を持ち、4本またはそれ以上の腕を持つ姿で描かれる
- 手には剣、生首、捕縄などを持ち、首には髑髏や生首をつないだ首飾りをかけている
- 長い舌を垂らし、牙をむき出しにした恐ろしい表情が特徴
- 腰には切り取った手足を巻き、戦いの女神としての姿勢を示す
- 夫であるシヴァの腹の上に立つ姿がよく描かれ、この構図には彼女の力や暴走を抑えるシヴァとの関係性が象徴されています
- 象徴
- カーリーは破壊と殺戮を象徴する一方で、悪魔や邪悪な力から信者を守る存在でもあります
- 彼女はまた、「シャクティ(エネルギー)」と呼ばれる宇宙的な力そのものでもあり、シヴァにとって重要なエネルギー源とされています
神話と起源
- 1. 誕生
- カーリーは女神ドゥルガーが悪魔シュムバやニシュムバと戦った際、その怒りから額から現れた存在とされています
- この際、彼女は悪魔ラクタヴィージャ(流血から分身を作る能力を持つ)を倒すため、その血液すべてを吸い尽くしました
- 2. シヴァとの関係
- 悪魔との戦いで勝利した後、カーリーは踊り狂い、大地が震動して砕けそうになりました
- これに危機感を抱いた夫シヴァが彼女の足元に横たわり、その衝撃を和らげました
- この出来事が、カーリーがシヴァの腹の上に立つ姿として表現されています
- 3. パールヴァティーとの関係
- カーリーは穏やかな女神パールヴァティーの恐ろしい側面とされます
- パールヴァティーが怒りによって黒く染まった際、その黒い部分から分離して誕生したとも伝えられています
信仰
- 地域的信仰
- カーリーは特にベンガル地方で篤く信仰されており、「カーリーガート寺院」(コルカタ)などでは現在も動物供犠が行われています
- ベンガル地方では「母なるカーリー」としても崇拝され、人々に愛情深い母親として慕われています
- 儀式と祭礼
- カーリー信仰では動物供犠が行われることがあります
- 過去には人身供犠(人身御供)も行われていたとされていますが、現在では禁止されています
- ベンガル地方では「カーリープージャ」という祭りが行われ、多くの人々が彼女への祈りや供物を捧げます
- タントラ教との関係
- カーリーはタントラ教において重要な存在であり、瞑想や儀式の対象となります
- 彼女は宇宙的なエネルギー(シャクティ)の象徴であり、精神的解放への道として崇拝されます
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最終更新:2025年01月16日 23:42