01-01.知育・体育・教育
…ようこそ、と、言うべきなのかな?…部屋が暗いのは勘弁してくれ…
俺には光は必要ないからな…ふふ…ふふ…ふ…
…今日は人数が多いな? いつもなら一人なのに…三人?
よく判るな? だって?…これでも元は『漆黒の』なんて二つ名持ってた暗殺者だったんだぜ…気配が読めなくてどうするよ…
あの「緋い悪魔」どもに目を潰されて…「えんずい」とか言う所やられて…手足も効かなくなっちまったがね……
おまけに最後に火をかけられて…ご覧の通りぼろぼろの話す肉の塊…「あのこと」を話すためだけにここで生かされているだけのみじめな男さ…
……で、何を訊きたいんだ、俺に…
ああ、「
しろがね」……お嬢のことか……よく…覚えているとも……
~・~・~
「すてふぁ~ん♪」
食堂で食後の一服を決め込んでいると、明るい声が俺を呼んだ。
「よぉ。お嬢」
振り返った俺が応えると、にぱ、と笑みを浮かべた白銀の猫少女が…俺めがけて棍棒を振り下ろしてきた。
「のわぉっ!」
かろうじて避け、棍棒は今まで俺が座っていた椅子を…砕いた。
「い…いきなり何をするっ! 殺す気かっ!」
叫ぶ俺に、そいつはまたにぱ、と笑って応える。
「すてふぁんならこんなのよけられるって、ふでれりっくがいってたも~ん。よけられたでしょ?」
ふでれりっく?…フレデリック! あ~の~や~ろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
「フデレリ~ック!」
奴の部屋のドアをば~んっ! と開け俺は叫んだ。
「てめぇお嬢になにふきこみやがったっ! 下手すっと死ぬとこだぞこのクソエルフっ!」
俺の目の前にはいかにも「私は賢者でございます」とでも言わんばかりに蒼い長衣を着た、見た目は若いがホントの処何歳だか判らない金髪の
エルフが優雅にお茶などたしなんでいやがる。
「お前なら大丈夫と思ってたから『避けられる』と言ったまでだ…それから…」
そこで手に持っていたカップを何やら書物が広げられた机の片隅にとんっ、と置くと。
「私の名前はフデレリックではないっ! フ・レ・デ・リ・ッ・ク、だ! あの猫娘のせいでフデレリックと呼ばれるようになってしまったが、私はフレデリックなんだ~っ!」
コイツもお嬢には手を焼いているらしい。
「あの娘才能はあるくせに私の大切な本に猫の落書きはするしお前が気配断ちを教えてマスターしたら早速私のこの見事な金髪を三つ編みにしてリボン付けてくれるし…それから、それから…」
なんかコイツもお嬢になんか色々されてるようだ。
その後はなぜか俺とフデレ…もとい、フレデリックと俺とのお嬢に関する愚痴吐きが延々と続くことになってしまった。
~・~・~
…俺もフデレ…じゃない、フレデリックもお嬢よりも後にあの組織に入ったんだ。
お嬢の『教育係』として…な。
お嬢は組織では妙に優遇されていてなぁ…あの頃で3つぐらいだったと思うが…猫系獣人の子供ってのは頭が柔軟なのか俺やフデ…フレデリック、レティシアや他の連中の教える事を片っ端から自分のものとして吸収していったよ。
…『一を聞いて十を知る』なんていうが…お嬢はその知った十を十五にも二十にもする応用力があった…教えがいのある生徒だったよ。
…疲れたな…今日はこれぐらいにしてくれないか…
また明日? ま、大丈夫だろう…駄目だったらセンセイからなんか言われるだろうしな…
…あれからもう…3年か……俺の体もあとどれだけ保つことやら…
01-02.はじめての暗殺(おつかい) に続く
あとがき
とりあえずオチが付けられた処まで。つ~か勢いで書いて失速して止まってしまった処まで。
最終更新:2007年06月25日 07:59