概要
戦闘に至るまでの背景
▲684年6月における勢力図
砦を突破した討伐連合軍も到着し、ここに両陣営あわせて20万に近い大軍勢が集結した。
兵士の数だけではない、この僅か四方数キロの一区間に、後の
蜉蝣時代を彩る英雄、豪傑、軍師たちが敵、味方にわかれて対陣、この戦いにより表舞台の主役へと駆け上がって行くこととなる。
対する
ルディック帝国にも、後に
カルディスの腹心となる
ゾイ、
ドゥバ達がそれぞれの部隊に所属していた。
しかしこの時点での彼等はあくまでも
ルディック帝国に数多く存在した副将の一人にすぎず、どこかの部隊に所属する配下武将の一人であったり、自らの軍勢を持っていたとしてもその兵数は微弱であったりと、まだその名を轟かしてはなかった。
両軍の戦力
戦闘経緯
7月8日、両軍はついに激突。史上名高い決戦でありながら、その序盤は
バルディゴス討伐連合軍が寄り合い所帯であるということをさらけ出す形となった。
これは、盟主である
ボルゾックの人望のなさもあったが、連合軍は総兵力で勝りながら連携がとれず、あくまでも各部隊がそれぞれ勝手に戦うという形となっていた。
本陣まで侵入を許した
アゾル国に残された最後の手段は、
リヴァを後陣の
ロードレア国軍に援軍要請に派遣すると同時に、
ラディアが自ら馬を駆って最前線へ向かい、敵将を討つことであった。
しかし、
ラディアが相手をした敵将こそが
カルディスであり、後に
炎の化身と呼ばれるこの将は、
ラディアの天才的な剣術をもってしても苦戦を強いられていた。
中央の戦いでは、ようやく連携をもちはじめた
ゾリメック、
リューグ両国の攻勢によって
レザリアが疲弊して後退、
バルディゴスを守る様に何重にも布陣していた
ルディック帝国部隊も、徐々に押し込まれれていく。
更に、前半の戦いで戦力を温存していた
シャリアル国軍も戦場に本格的に参加、戦は混沌の様相を示し始める。
一度は
アゾル国主
ゴル自身すら戦死を覚悟した戦いではあったが、
ロードレア国が軍師
ソフィスと共に4000の部隊で救援に駆けつける。
だが、
ロードレア国軍が動き出したこのときこそが、
カルディスの待っていた「瞬間」であった。
カルディスは、援軍要請を口実に本陣まで単身駆け戻ると、突如その牙を剥いて
バルディゴスをその場で殺害する。
この突然の出来事に本陣にいた将軍たちは狼狽するが、既に
カルディスの息のかかっていた将がその中には存在していたことから、彼等はその場で
カルディスに斬りかかる事ができず、しばらくの沈黙が流れた。
ルディック帝国軍に一斉に撤退命令が下される。
この突然の幕引きに、連合軍は罠を警戒して追撃をためらった為、
ルディック軍は壊滅を免れた。
戦いの結末
そして、
カルディスは、偽帝討伐の手柄として、自身の建国許可を要求した。
密書の件に加えて、連合軍解散における様々な書類処理に忙殺されていたこともあり、また、建国などと大きなことを言っても、せいぜい辺境の城を1つ頂く程度だろうと思っていた
ボルゾックは、この要求を厄介払いするかの様にあっさりと飲んだ。
こうして
ロー・レアルス国は大国となるが、この建国劇はあまりにも迅速だったため、かなり以前から用意周到に根回しがされていたと思われる。
すなわち、
カルディスにとって兄の仇をとることは己の野望を達成させるためのついでにすぎなかったのだ。
連合軍参加国にあたえる恩賞は、
ルディック帝国から調達する予定だった
ボルゾックは、この報告に驚愕する。
結局、数万の兵士を遥か彼方から引き連れて集まった連合軍は、
カルディス一人の手柄の為に舞台を演出した形となり、怒りを抑えながらもそれぞれの領土へと帰っていく。
一方で、
カルディスに反発した将軍達は引き続き
ルディック国を存続させ、その国主に
テレサを置いた。
また、それまでは自称に過ぎなかった
ロードレア他が名乗っていた「国主」の地位を、
ルディック国は正式に明文化してこれを認め、皇帝の地位を廃して
ルディックも、帝国から、他国と同じ諸国の1国とすることで周囲の攻撃の矛先をひとまず避けることに成功した。
こうして、「序章」は終わりを告げた。
だが、これで平和が訪れるものではなかった。
存在していた時は形骸の扱いをされていた皇帝という地位は、失ってからその存在感を光らせる。
既にここ数十年、国境を巡っての小競り合いや外交戦略が続き、互いに疑心暗鬼となっていた国主達、そして空席となった皇帝に拘り始めた諸侯達は、水面下で動き始め、まさに戦国の時代、
蜉蝣時代へ突入しようとしていた。
最終更新:2024年07月15日 18:49