概要

ルディックの陣とは、蜉蝣時代の戦乱の中で、アルファ711年10月、ベルザフィリス国軍とロー・レアルス国軍の間に起きた戦いである。
蜉蝣時代の終幕を告げる、最後の戦いとなった。


戦闘に至るまでの背景


▲711年1月における勢力図(無色の部分はロー・レアルス国の領土でありながら、ヴァイグの戦い後、非協力的となった地域)

天下分け目のヴァイグの戦いに勝利を収めたベルザフィリス国軍は、ガイヴェルドを先頭に凱旋した。
この勝敗は、これまでのどの戦いよりも重く、意味のあるものであった。
それは、次の時代の覇者がどちらであるかを明白としたものであり、長年ロー・レアルス国の領土として統治されていたルディック城を中心とした都市は比較的落ち着いていたが、近年になってからその旗を仰いだ各都市は、この戦いを境にベルザフィリス国への内応を申し込んだり、中立を宣言したり、ロー・レアルス国からの要請には露骨なサボタージュを決め込むなど、地図の色分けはほとんどその意味を成していなかった。

ロー・レアルス国は、将星将軍が中心となり、国内の混乱をひとまず落ち着かせ、今後の方針について軍議を重ねるが、そんな彼らにまるで歴史という名の神が結末を急がせるかの様に試練が与えられた。

711年の秋、この年から徐々にこの地方に寒波が襲い始める。
各地で不作が続き、食料を失ったロー・レアルス領土の村人が、国境を越えてベルザフィリス国領土の村を襲った。
これを鎮圧するべくベルザフィリス国の国境守備部隊が動き、ロー・レアルス領土の村を攻め滅ぼす。
これに怒った部隊が動き始め、両国は上層部の意向を無視して臨戦態勢となる。

こうなると、「もはや時代の流れが自分たちを動かしているのだ」と自身を納得させ、両国の交戦派が動き出し、ベルザフィリス国軍はロー・レアルス国軍を完全に沈黙させる最後の決戦へと出陣した。

迎え撃つロー・レアルス国は、かつてルディック国の首都であり、この大陸を一度は統治していたルディック城を最後の拠点として、全軍を集結させた。
ここに、蜉蝣時代最後の戦いとなるルディックの陣が幕を開ける。

全ての始まりは、ルディック国のバルディゴスが起こした戦いからであった。
そこから幕を開けた戦乱の、最後の決着をつける戦いの舞台がルディック城だったことは、人の成した足跡を皮肉る悪戯か。

北はリアーズ平原から、南はルーズ平原を抜けた後二手に別れ、合計三路から同時侵攻を仕掛けてくるベルザフィリス国軍に対して、ロー・レアルス国軍はとりあえず防衛陣を敷くものの、最初から要害のルディック城に誘い込むしか選択肢はなく、ケルスティンに民衆の疎開作戦を任せる一方で、各方面の防衛部隊は、ある程度足止めだけすると軍勢を徐々に下げて、全軍をルディック城へと集結させた。


両軍の戦力

攻撃側 守備側

ベルザフィリス国軍
軍勢
ロー・レアルス国軍
総兵力220000 兵力 総兵力86000
ガイヴェルド 総指揮 ベルザウス将星将軍
ディルセア 軍師 ルー将星将軍
主要参戦者

ガイヴェルド

ディルセア

レニィラ

バイアラス

リディ

ベルザウス

ルー

リヴァドル

グローリヴァス

ゾルデスク

ヴィルガス

ラゴベザス

ディグド

ギザイア

ロミ

メネヴァ

ファクト

ドゥバ

ガルダ

シリナ

シルヴァス

リヴァイルシア

シーヴァス

バンガーナ

レア

ノードゥ

フリージア


前哨戦


この戦いで、ガイヴェルドディルセアを変わらず軍師として抜擢したが、その兵力は明らかに減少されていた。
既にディルセア自身も、自分がガイヴェルドの元で出来ることはこの戦いですべて終わる事を悟っていた。

10月20日、ベルザフィリス国軍の一部隊が挑発行為として近隣の村で略奪行為を行い、村に火を放った。
その煙はルディック城に布陣するロー・レアルス国軍にもはっきりと見え、これに怒ったメネヴァが、自身の部隊と周囲の部隊を結集させて2万の兵力で出陣、ヴィルガス部隊と戦闘状態となる。


しかし、そこにはリディ部隊、ギザイア部隊が集結し、誘い込まれたメネヴァ部隊は兵力を失うわけにもいかずすぐさま後退する。
だが、これを逃がさずに追撃するベルザフィリス国軍の猛攻撃の前に、結局メネヴァは緒戦から大事な兵力を失い、ベルザウス部隊の救援によって、漸く後退に成功する。


10月21日 北東区の戦斗


翌日、今度はヴィルガスリディ部隊がメネヴァの陣に総攻撃を仕掛け、ここに「北東区の戦斗」が開幕する。
今度はベルザウスも、ギザイア部隊の攻撃に対処しなければならず、メネヴァを援護することが出来ない。
結局メネヴァは、数倍の兵力を擁するリディヴィルガスを相手に奮戦するものの、部隊は壊滅し、彼も戦死する。
かつて、共にロードレア国の未来を担うと期待されていたリディと敵味方に別れて、この様な結末を迎えることとなるなど、当時誰が想像しただろうか。

序盤の戦いで、なんとしても極地的な勝利を収めて士気を上げたかったロー・レアルス国軍にとって手痛い敗戦であった。
この後、ベルザウスは北東部の陣地を放棄して後退、自身も一旦城に戻って再び軍議を開く。

10月22日、主だった将が集結し、ルディック城内で軍議が開かれた。
この時、ルーの元に内通を促す使者がやってきたという噂が流れたが、誰もそのような流言に乗ることはなかった。
出身も目的も異なり、中にはかつて敵同士だった者もいるにもかかわらず、将星将軍は驚くほど協調がとれていた。
それが、滅びの美学を完成させようとする将たちの本能だったのかどうかはわからない。

軍議では、城外に機動部隊を配置し、極地的な勝利を重ねていくことで戦線を混乱させ、相手の部隊間に隙を作らせるという結論に達した。
その機動部隊に志願したのがグローリヴァスであり、ルーがこれを援護する事となる。
レイディックが戦死したシャリアル遠征のとき、この二人は包囲する側とされる側であった。
にも関わらず、乱世が成せる技か、二人の間には友情が生まれていた。
だが、ルー自身敵の出現場所によって臨機応変に動かなければならず、グローリヴァスを援護することは不可能だと悟っており、グローリヴァスもそれを承知の上で死を覚悟しての志願であった。


すぐに出陣したグローリヴァス部隊と、リヴァイルシア部隊の交戦により「北区の戦斗」が開幕する。
グローリヴァス部隊の動きは凄まじく、リヴァイルシア部隊は一方的に押し込まれていく。
しかし、第二陣、三陣と控えるベルザフィリス国軍に対して、グローリヴァス部隊はたった一部隊で連戦しなくてはならなかった。

同じ頃、ルーディルセア部隊と交戦していた。
ディルセア虎の子と呼ばれた最強の騎馬部隊に対して、ルーは槍隊を駆使して戦い、大陸に名を轟かせたディルセアの騎馬部隊も無傷な者は一人もいないところまで追い詰められていた。
結局ディルセア部隊はおびただしい屍を残して後退する。


10月23日 南区の戦斗


しかし、10月23日に「南区の戦斗」が始まり、レアレニィラバイアラスの総攻撃によってリヴァドルが戦死、シルヴァスバンガーナの攻撃によってドゥバガルダも苦戦を強いられる。

続く24日に、ラゴベザスの援軍を得た波状攻撃に更にディグド部隊も加わり、ついにグローリヴァス部隊も壊滅。
相打ちの形でリヴァイルシア部隊を壊滅させるが、グローリヴァスは壮絶な戦死を遂げる。


両軍は日暮れと共に一旦後退し、補給と軍議を行った。
だが、部隊の再編制を行うベルザフィリス国に対して、補給といっても、ロー・レアルス国軍には補充する兵力は存在せず、それは特攻前の最後の休息にも近かった。


10月27日 ルディック城落城


10月27日、両軍は最後の激突を繰り広げた。
だがこの戦いは、ガイヴェルドの最後の戦いにしてはあまり出来のよいものではなかった。
それは、もはや特攻して華々しい散り花を咲かす道しか残されていないロー・レアルス国軍に対して、勝利後の恩賞を考え始め、最後の最後まできたこの局面で戦死するのはあまりにも惜しいと考えるベルザフィリス国軍の、決戦に対する姿勢の違いの現れであった。

ルーは七人の影武者を駆使して神出鬼没の戦いを見せてベルザフィリス国軍を混乱させると、ガイヴェルド本陣に突撃。
本陣の旗は倒れ、ガイヴェルド自身馬に乗り剣を振るう所まで追い詰められていた。
戦いながら日付は変わり10月28日、シーヴァスレニィラシルヴァスバイアラス部隊の総攻撃によりルディック城は炎に包まれていた。
各地の決戦で、ベルザウスシリナガルダドゥバノードゥは次々と戦死し、ファクトゾルデスクは燃え盛る炎の中に身を投げた。

城を包み込む炎を見たルーは、闇夜に紛れて一旦姿を消すと、早朝にガイヴェルド本陣に向かって最後の特攻を仕掛けた。
この時、ルーと共に駆け抜けた騎馬は108騎。
一人、また一人と討たれる中、ひたすら彼らはガイヴェルド本陣を目指すが、この突撃に対してベルザフィリス国の兵士たちは、ほとんど防衛できなかった。
それは、ルディック城も落ち、天下統一が成し遂げた今、勝利の美酒を飲みかける寸前で何故命を捨てなければならないのかという自己保身のためである。

たった一人この突撃を本気で食い止めようとしていたリディも腕を斬られて負傷、この傷は思ったより深く、彼女は二度と槍をもてなくなる。
しかし、ルーの後世にまで語り継がれる神憑りな突撃も、たった108人ではやがて限界が訪れた。
同日昼過ぎ、ルーの戦死をもって、ルディックの戦いは完全に終わりを遂げた。


戦いの結末

ルディック城落城の知らせが各地に届き、かろうじてロー・レアルス国の旗を掲げていた周辺の城もすべて降伏。
ここに、ベルザフィリス国によって乱世は統一され、この土地にようやく平穏な日々が訪れることとなる。

ガイヴェルドは、ルディック城を再建すると、そこを新首都(後に帝都)として自ら入城すると、各地に功績のあった将軍を領主として派遣した。
だが、軍師であったディルセアは新領土の授与を辞退し、隠居を申し出た。
ガイヴェルドもこれを止める事なくすんなりと承諾。
こうしてディルセアは、全ての肩書きを捨てて再び旅人となり、歴史の表舞台から姿を消す。

かつてルディック帝国が、領地を各区に別けて自治を認めたことから、後にそれらの区が独立したという前例を踏まえて、独自の法体勢などは一切認めず、法律はベルザフィリス国法のみで統一した。


新時代へ

それぞれの新領地へと派遣された諸将は、新たな領土で乱世の後始末に入っていた。
バイアラスは、家族や一兵卒時代から苦楽を共にした友人達と栄華を楽しみ、リディアレスの墓を作り、武器を捨てると相変わらずの無口さで治世に務めた。
ギザイアは、完全に互いを憎む関係になっていたシーヴァスにあえて不毛の土地を与えると、彼が反乱せざるをえないところまで追い詰めて、後顧の憂いなく彼を討ち取った。
ディグドは、かつてシャリアル国に仕えていた頃の領土を貰うと、妻子を殺したメスローの一族であるラフィ達を見つけ出し、報復として皆殺しとした。
ラゴベザスは、デイロードの墓参りをすませると、デイロードの遺児を連れて隠居し、故郷の村へと戻り、そこで昔の様に畑を耕す生活を送った。
ヴィルガスは、ようやく手にした平穏な日々を楽しみながら治世に務め、レニィラは養子を貰い、子育てという新たな戦いに四苦八苦しながら領土を統治していった。

蜉蝣時代は終わりを告げ、大きな戦いは終わったが、この後最後の事件となる国崩れの乱が勃発し、更に大寒波の到来により、あれだけの戦乱を経てようやく手に入れたこの地を、自ら捨てなければならない日がくることとなる。




最終更新:2024年08月13日 01:26