概要
戦闘に至るまでの背景
天下分け目の
ヴァイグの戦いに勝利を収めた
ベルザフィリス国軍は、
ガイヴェルドを先頭に凱旋した。
この勝敗は、これまでのどの戦いよりも重く、意味のあるものであった。
それは、次の時代の覇者がどちらであるかを明白としたものであり、長年
ロー・レアルス国の領土として統治されていた
ルディック城を中心とした都市は比較的落ち着いていたが、近年になってからその旗を仰いだ各都市は、この戦いを境に
ベルザフィリス国への内応を申し込んだり、中立を宣言したり、
ロー・レアルス国からの要請には露骨なサボタージュを決め込むなど、地図の色分けはほとんどその意味を成していなかった。
ロー・レアルス国は、
将星将軍が中心となり、国内の混乱をひとまず落ち着かせ、今後の方針について軍議を重ねるが、そんな彼らにまるで歴史という名の神が結末を急がせるかの様に試練が与えられた。
711年の秋、この年から徐々にこの地方に寒波が襲い始める。
各地で不作が続き、食料を失った
ロー・レアルス領土の村人が、国境を越えて
ベルザフィリス国領土の村を襲った。
これを鎮圧するべく
ベルザフィリス国の国境守備部隊が動き、
ロー・レアルス領土の村を攻め滅ぼす。
これに怒った部隊が動き始め、両国は上層部の意向を無視して臨戦態勢となる。
こうなると、「もはや時代の流れが自分たちを動かしているのだ」と自身を納得させ、両国の交戦派が動き出し、
ベルザフィリス国軍は
ロー・レアルス国軍を完全に沈黙させる最後の決戦へと出陣した。
全ての始まりは、
ルディック国の
バルディゴスが起こした戦いからであった。
そこから幕を開けた戦乱の、最後の決着をつける戦いの舞台が
ルディック城だったことは、人の成した足跡を皮肉る悪戯か。
両軍の戦力
前哨戦
しかし、そこには
リディ部隊、
ギザイア部隊が集結し、誘い込まれた
メネヴァ部隊は兵力を失うわけにもいかずすぐさま後退する。
だが、これを逃がさずに追撃する
ベルザフィリス国軍の猛攻撃の前に、結局
メネヴァは緒戦から大事な兵力を失い、
ベルザウス部隊の救援によって、漸く後退に成功する。
10月21日 北東区の戦斗
序盤の戦いで、なんとしても極地的な勝利を収めて士気を上げたかった
ロー・レアルス国軍にとって手痛い敗戦であった。
この後、
ベルザウスは北東部の陣地を放棄して後退、自身も一旦城に戻って再び軍議を開く。
10月22日、主だった将が集結し、
ルディック城内で軍議が開かれた。
この時、
ルーの元に内通を促す使者がやってきたという噂が流れたが、誰もそのような流言に乗ることはなかった。
出身も目的も異なり、中にはかつて敵同士だった者もいるにもかかわらず、
将星将軍は驚くほど協調がとれていた。
それが、滅びの美学を完成させようとする将たちの本能だったのかどうかはわからない。
軍議では、城外に機動部隊を配置し、極地的な勝利を重ねていくことで戦線を混乱させ、相手の部隊間に隙を作らせるという結論に達した。
その機動部隊に志願したのが
グローリヴァスであり、
ルーがこれを援護する事となる。
レイディックが戦死した
シャリアル遠征のとき、この二人は包囲する側とされる側であった。
にも関わらず、乱世が成せる技か、二人の間には友情が生まれていた。
だが、
ルー自身敵の出現場所によって臨機応変に動かなければならず、
グローリヴァスを援護することは不可能だと悟っており、
グローリヴァスもそれを承知の上で死を覚悟しての志願であった。
同じ頃、
ルーは
ディルセア部隊と交戦していた。
ディルセア虎の子と呼ばれた最強の騎馬部隊に対して、
ルーは槍隊を駆使して戦い、大陸に名を轟かせた
ディルセアの騎馬部隊も無傷な者は一人もいないところまで追い詰められていた。
結局
ディルセア部隊はおびただしい屍を残して後退する。
10月23日 南区の戦斗
両軍は日暮れと共に一旦後退し、補給と軍議を行った。
だが、部隊の再編制を行う
ベルザフィリス国に対して、補給といっても、
ロー・レアルス国軍には補充する兵力は存在せず、それは特攻前の最後の休息にも近かった。
10月27日 ルディック城落城
10月27日、両軍は最後の激突を繰り広げた。
だがこの戦いは、
ガイヴェルドの最後の戦いにしてはあまり出来のよいものではなかった。
それは、もはや特攻して華々しい散り花を咲かす道しか残されていない
ロー・レアルス国軍に対して、勝利後の恩賞を考え始め、最後の最後まできたこの局面で戦死するのはあまりにも惜しいと考える
ベルザフィリス国軍の、決戦に対する姿勢の違いの現れであった。
城を包み込む炎を見た
ルーは、闇夜に紛れて一旦姿を消すと、早朝に
ガイヴェルド本陣に向かって最後の特攻を仕掛けた。
この時、
ルーと共に駆け抜けた騎馬は108騎。
一人、また一人と討たれる中、ひたすら彼らは
ガイヴェルド本陣を目指すが、この突撃に対して
ベルザフィリス国の兵士たちは、ほとんど防衛できなかった。
それは、
ルディック城も落ち、天下統一が成し遂げた今、勝利の美酒を飲みかける寸前で何故命を捨てなければならないのかという自己保身のためである。
たった一人この突撃を本気で食い止めようとしていた
リディも腕を斬られて負傷、この傷は思ったより深く、彼女は二度と槍をもてなくなる。
しかし、
ルーの後世にまで語り継がれる神憑りな突撃も、たった108人ではやがて限界が訪れた。
同日昼過ぎ、
ルーの戦死をもって、
ルディックの戦いは完全に終わりを遂げた。
戦いの結末
ルディック城落城の知らせが各地に届き、かろうじて
ロー・レアルス国の旗を掲げていた周辺の城もすべて降伏。
ここに、
ベルザフィリス国によって乱世は統一され、この土地にようやく平穏な日々が訪れることとなる。
ガイヴェルドは、
ルディック城を再建すると、そこを新首都(後に帝都)として自ら入城すると、各地に功績のあった将軍を領主として派遣した。
だが、軍師であった
ディルセアは新領土の授与を辞退し、隠居を申し出た。
ガイヴェルドもこれを止める事なくすんなりと承諾。
こうして
ディルセアは、全ての肩書きを捨てて再び旅人となり、歴史の表舞台から姿を消す。
かつて
ルディック帝国が、領地を各区に別けて自治を認めたことから、後にそれらの区が独立したという前例を踏まえて、独自の法体勢などは一切認めず、法律は
ベルザフィリス国法のみで統一した。
新時代へ
それぞれの新領地へと派遣された諸将は、新たな領土で乱世の後始末に入っていた。
バイアラスは、家族や一兵卒時代から苦楽を共にした友人達と栄華を楽しみ、
リディは
アレスの墓を作り、武器を捨てると相変わらずの無口さで治世に務めた。
ギザイアは、完全に互いを憎む関係になっていた
シーヴァスにあえて不毛の土地を与えると、彼が反乱せざるをえないところまで追い詰めて、後顧の憂いなく彼を討ち取った。
ディグドは、かつて
シャリアル国に仕えていた頃の領土を貰うと、妻子を殺した
メスローの一族である
ラフィ達を見つけ出し、報復として皆殺しとした。
ラゴベザスは、
デイロードの墓参りをすませると、
デイロードの遺児を連れて隠居し、故郷の村へと戻り、そこで昔の様に畑を耕す生活を送った。
ヴィルガスは、ようやく手にした平穏な日々を楽しみながら治世に務め、
レニィラは養子を貰い、子育てという新たな戦いに四苦八苦しながら領土を統治していった。
蜉蝣時代は終わりを告げ、大きな戦いは終わったが、この後最後の事件となる
国崩れの乱が勃発し、更に大寒波の到来により、あれだけの戦乱を経てようやく手に入れたこの地を、自ら捨てなければならない日がくることとなる。
最終更新:2024年08月13日 01:26