ブータン

登録日:2010/10/27(水) 23:39:20
更新日:2025/02/17 Mon 18:12:00
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ブータン、正式国名ブータン王国とは、ヒマラヤ山脈に位置する九州程の大きさの立憲君主制国家のこと。ワンチュク家による王朝の下、良い意味で独特の道を進んでいる数少ない国である。

「どゆこと?」と思った人の為に少し例を挙げると…

GNP(国民総生産)ではなく、GNH(国民総幸福量)を増やす為に国を動かしている。
GNHの概念を生み出したのは当時の国王のジグミ・シンゲ。いくらお金があっても、使う人の心が貧しければ国は発展したとは言えない…という訳である。
ちなみに、荒川区もブータンを手本に幸福度の充実に力を入れている。
だが近年では近代化が進み、国内には高層ビルが乱立し始めている。


外国との交流は最低限
国交を持っている国は僅か54ヵ国(+EU)。国連加盟国の約1/4である。オーストラリアとは2002年に、カナダとは2003年に国交を樹立したばかり。
2009年のベルギー・ブラジルとの国交樹立を機に2011年にはスペイン、インドネシア等7ヵ国、
2012年にはトルコ、ポーランド、エジプト、ベトナム等18ヵ国、2013年にはアゼルバイジャン、オマーン、タジキスタンと国交を結んだが、
アメリカや中国、イギリスやロシアやフランス等の大国とは国交が無い。
2020年にようやくドイツとイスラエルの2カ国と国交を結んだ。
その代わり日本とは深い絆で結ばれている(後述)。
またインドは2007年まで外交に助言を与えていた特殊な関係である。
観光客の入国も厳しく制限されており、ジーンズやスカートは御法度。
外国人も民族衣装の着用を義務付けられる。

国王自らが民主化憲法を作成
普通の国ならば国王の横暴に国民が耐えられなくなり、「民主化しろゴルァ!」となるのが一般的だが、国王ジグミ・ケサル・ナムゲル自ら2008年に新憲法を制定。
内容はおおよそ以下の通りである。

  • 政治の実権は首相に。選出方法も大臣の輪番制ではなく選挙にします。
  • 国会は国王を辞めさせる事が出来ます。また国王の定年は65歳までとします。

見ての通り国王が圧倒的に不利な内容だが、隣のネパール国王が好き放題やったおかげで王族が多数暗殺され、王政そのものが廃止になった事を考えると妥当な判断かもしれない。
ちなみに、国民は全くそんな事は考えておらず、まさに寝耳に水だったらしい。
更に、ジグミ・ケサル・ナムゲルの父ジグミ・シンゲはなんと2006年に定年前の50歳で譲位している。

健康・環境国家
2004年に世界初の禁煙国家を実現。国内でタバコの販売が禁止になり、外国人が持ち込む時は100%の税金がかかるようになった。
また、山あいにあるという地の利を生かし水力発電所を建設。電力を輸出し、得たお金は医療費や教育費に当てられ、病院や学校は無料。
また、水流発電で得た電力を仮想通貨のマイニングに利用し、ビットコインに至ってはGDPの1/3にあたる9億ドルを保有している。これは一人当たりの保有額では世界最大で、ゲレフー市(Gelephu)では準備金の一部を仮想通貨に変換している。
同じタダでもナウルとはワケが違う。

  • 日本との関係
1964年に農業技術者の西岡京治が同国に派遣された。
翌年よりブータンの収穫量は劇的に増え続け、1980年に西岡氏は国王より「最高の人」を意味するダショーの称号を授与されている。
2014年にはゆかりの地であるパロに博物館が出来た。

また昭和天皇の大喪の礼と明仁上皇陛下の即位の礼には国王自らが民族衣装姿で来日しているほか、
日本からも徳仁天皇陛下(当時は親王殿下)と秋篠宮殿下がブータンを訪問しており、2021年に国交樹立35周年を迎えている。

また、東日本大震災にも国王自らが8000万円の義援金を送った他、同年には国王夫妻が新婚旅行先に日本を選んでくださった。
ちなみに、アジアで唯一(北朝鮮や台湾といった日本政府が認めていない国を除き)日本に大使館が無い(在インド大使館が兼轄)が、東京・大阪・鹿児島に名誉総領事館がある。

日本はブータン産マツタケの輸出先でもある。香りは日本産には劣るものの、高地ゆえ虫食いが少ないのが特徴。

  • ブータンの問題点
〇同国南部はインドからの独立を求めるアッサム州のゲリラが侵入しており、治安は悪い。これまでに軍によるゲリラ討伐作戦も行われている。
また、南部に住むネパール系住民に対しては拷問が行われており、彼らが設立したブータン共産党等のテロ組織も活動を行っている。
〇地球温暖化により氷河が決壊し始めており、30年も経たないうちに国内だけでなくインドやバングラデシュ等にまで影響が出る可能性がある。
〇若年層の失業率は9.7%と高く、仕事を求め都会にやって来る若者が後を絶たない。
かつてNHKの取材に応じた若者は「幸せなんて解らない」と、GNH政策に否定的とも取れる発言をしている。
ブータン政府の政策は大きな失敗こそない物の、国民が外の世界をインターネットで知ってしまったことや、コロナ禍で主産業の観光が大きな打撃を受けたことが主な要因のようだ。
幸福度調査は2019年の91位を最後にランクには載っておらず*1、かつては存在しなかったホームレスも増え始めている。
○2005年から中国に国境を変更されており、国境係争地は年々増え続けて居る。
前述の通り中国とは国交は無いながら会談は行われているものの、解決の見通しは立っていない。

  • ブータンの文化
人種で見るとチベット系、次いでネパール系が多く、ぱっと見は日本人のそれ。言語は公用語こそゾン語(ゾンカ)だが英語も普通に通じ、官民問わずインターネットが盛ん。
また男根信仰があるため国内のあちこちでチ〇ポの形をしたシンボルが見られる他、近年まで夜這いの習慣があったとか…
人気のあるスポーツは民衆がアーチェリー、武器の使えない僧侶が石投げだったが最近はサッカーがブームになっている。
2002年にはイギリス領の島・モントセラトと世界最下位決定戦を行った。なお、試合は4-0でブータンが勝利。
試合後、両国はサッカーを通じた友情をたたえ合い、「双方とも勝者」を意味する半分に分けたトロフィーを両代表チームに授与された。
ちなみに、2007年から2009年まで日本人がブータン代表の監督を務めていた。

  • ブータンの食文化
ブータンの主食は米。主に赤米を食べるが、白米も市場で売られている。
ブータンの食卓に欠かせない物の一つはダツィ(チーズ)。カッテージチーズに近い味わい。
もう一つはエマ(唐辛子)。ブータンではエマは香辛料ではなく野菜扱いで、おかずが生のエマに塩だけというブータン式日の丸弁当も一般的。
そんな二つを組み合わせた国民食がエマをダツィで煮た「エマ・ダツィ」。ダツィでマイルドになっているとはいえ案の定激辛。他にもケワ・ダツィ(ジャガイモのチーズ煮込み)など野菜をダツィで煮込むのは定番と言える。
エマを使った調味料をエゼという…のだが材料は野菜を入れたり香辛料たっぷり入れたり、見た目もサラダっぽかったりタレっぽかったりと明確に定まったレシピがないのが特徴。調理過程では加えず(ブータン料理の味付けはシンプル)食卓で各々が料理と一緒に食べる。
中部では蕎麦も食べられており、押し出し麺にして茹でて炒めたプッタ、パンケーキのように焼いたクレがある。
チベット文化圏らしく、餃子に似たモモや、バター茶も好まれる。



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最終更新:2025年02月17日 18:12

*1 参考までに同時期の日本は58位。2024年の日本が51位なので大きな変化はないと考えて良いだろう。