蕎麦

登録日:2011/12/14 Wed 13:57:46
更新日:2024/02/13 Tue 01:02:24
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阿呆かァ!!立ち食い蕎麦は掛けに始まり掛けに終わる。
具の少なきは更なり、つまる所具は女の化粧と同じ。
究極的には外道だ。麺を引き立てる彩りに過ぎん。あくまでも本質は麺!
真の立ち食い蕎麦の哲学に於いては、天蕎麦ですら邪道といえるのだ!
なのにお前ときたらァ~~~ンンン~~~~!!!
なァんだその女の厚化粧の中年オンナみたいに何の脈絡もなくゴテゴテと具で固めた丼はァ!!?
そンな訳の分からん蕎麦は決しておれの眼の前で食ってくれるなァ!!!

アニメ『うる星やつら』122話「必殺!立ち食いウォーズ!!」より


蕎麦とは、タデ科ソバ属に属する植物及び、それを粉にしたものを調理した料理。ここでは主に、後者を説明する。
生命力が強く、僻地でも植えられるソバは、飢饉の際にも重宝される食材として、日本だけでなく、フランスでも重宝された。
ジャン・フランソワ・ミレー「種まく人」で蒔かれている種は蕎麦である、という説も根強い。

蕎麦はビタミンB1を多く含んでおり、特に白米だけを多く食べがちで脚気になり易かった江戸っ子にとっては心強い食品であり滋養強壮食的な意味合いも持っていたと思われる。

そばの有名な場所は、長野県など山間部などでかつて米や麦の栽培が難しかったとされるケースが多い。
「そばの自慢はお里が知れる(=そばくらいしか採れるものがない貧しい土地の生まれ)」というイヤなことわざも存在する。
またハチミツの採取花として利用される場合もある。


日本に伝わったのは奈良時代頃だと言われている。
当時は、ソバがきやソバ饅頭として食べられていたが、江戸時代から、うどんに倣い細切りにされて麺状となった蕎麦切りが、現在は一般的に食べられている。

現代においても、寿司、天ぷらうなぎとならび、江戸っ子などが一家言持っている事も多い、歴史の深い食べ物として親しめられている。

なお、中華そば、志那そば焼きそば、沖縄そばはそばではない(この場合の「そば」は「麺」という意味だと思えばよい)。


■蕎麦切り
前述のように、現在、日本で一般的に蕎麦と呼ばれる食べ物は、麺状にした蕎麦切りである。
16世紀末(=江戸時代。5代将軍綱吉の統治する元禄の頃)に世に広まっていた。
誕生に関しては各種伝承・記録から古いところで室町時代以降の諸説がある。

粉にした蕎麦を、小麦粉や山芋、卵などをつなぎに、またはそれらを使わずに練り、麺状に切ってから、茹でる。
つなぎの割合によってニ八や十割など、粉の状態によって藪そば・田舎そばなど、様々な呼び方がある。

かつては、蒸籠に入れて蒸される蒸し蕎麦も食べられていたが、茹でるのに比べてボソボソとした食感があるため、現在は廃れてしまった。
盛り蕎麦などの容器に蒸籠が使われているのに、その名残がある。

茹でた後のお湯をツユで割ったら蕎麦湯となり、食後のお供になる(お湯にそば粉を入れる場合もある)。
ルチンたっぷりで血液サラサラだ。


■主な蕎麦


◆かけそば
つゆ蕎麦とも呼ばれる、温かい出汁のスープ(つゆ)に蕎麦を入れたもの。
「ぶっかけそば」を略したものである。現代では冷やし蕎麦にツユをかけたものをぶっかけそばと呼ぶ。
うどん同様、地域によってつゆの原料や濃さが異なり、東西の相容れぬ価値観の違いの象徴として挙げられることもある。
具として乗せたものによって○○そばと呼ばれる。
天ぷら:海老の天ぷら(野菜など他の天ぷらがプラスされることも)
きつね:甘く煮付けた油揚げ
たぬき:関東では天かす、大阪では甘く煮付けた油揚げ*1、京都では刻んだ油揚げの餡掛け
月見:生卵
花巻:千切った板海苔
○○南蛮:長ネギと一緒に入れるものと合わせて鴨南蛮、鶏南蛮、カレー南蛮と呼ばれる

ちなみに落語の時そばに登場するのは温かいしっぽくそば。


◆ざるそば/盛り蕎麦
茹でたそばを水で洗い、冷やしてから蒸籠に乗せて提供される。そば切りの食べ方としてはこちらが最初。
小鉢にツユを絡めて啜る。薬味にはわさびを用いる。
そばにわさびを丁寧に塗ってからツユにつけたり、豪快に音をたてるなど、江戸っ子ごとに拘りがある食べ物。
蕎麦好きで知られた池波正太郎はざる蕎麦に直に七味唐辛子をかける食べ方をしていたそう。
が、蒸篭やざるに乗せられた蕎麦にこれをやると隙間に七味が引っかかって非常に洗い辛いらしい。

なお、この二種の呼び名だが、海苔の有無やそば粉の割合やらつゆやら材料の質やらで店によって個性的に区別されているが、
生まれた当初の皿や蒸篭に持ってあるのが「もりそば」、水っぽくならないようざるに乗せたのが「ざるそば」とシンプルな区分だった様子。
なので下調べせず店で頼んで自分が想像したのと違う蕎麦が出てきても自己責任で。

一部の人にはツユは蕎麦本来の香りが飛ばない程度につけてすするのが通であり、どっぷりとツユの味をつけてしまうのは野暮天とされる。
昭和初期の落語では枕として一度でいいから蕎麦にツユをたっぷりつけて食ってみたかったと言い残して死ぬ江戸っ子などとネタにされた。
※ただこれは藪系というタイプの店の蕎麦の話であり、出前等を主とした砂場系や更科系の場合はたっぷり汁をつけても問題はない。

同様にそばはのどごしを楽しむために噛まずに飲み込むもの、という説もあるが、こちらは危険な上に歯応えや香りを楽しめないので怪しい。
もっとも、本来の蕎麦は「歯ごたえではなく歯切れの良さを楽しむもの」という意見もある(歯ごたえがあるそば=生煮え、であることから)。
こちらの蕎麦の食べ方と現代の歯ごたえのよい蕎麦が混ざった結果、「歯ごたえの良い蕎麦を噛まずに飲み込む」という食べ方が生まれたのかもしれない。


■その他のそば料理


◆ガレット
フランス・ブルターニュ名産。
飢饉の際にも食べられる作物としてフランスでも重宝されたが、日本と違い、クレープのようにして食べられた。

◆そば粥
粒状あるいは粉状にしてお湯で溶いて熱したもの。こちらもそば切り以前のもの。
ロシアや東欧では「カーシャ」*2と呼ばれ代表的な家庭料理の一つでもある。
フランスでも食べられたが、焼き石にこれをこぼした際、固まり、上記のガレットとなった。

◆そばがき
器にお湯と蕎麦粉を入れ、ぐりぐりとかき回して完成する食べ物(お湯一合にそば粉八勺程度のバランスとされている。お湯は蒸発分も考慮しないといけないが)。
こちらも蕎麦切り以前は主な使い道だった。蕎麦切りと比べると一度にたくさん作れない弱点はあるがこちらも美味。
現在も、産地のおばあさま方は、蕎麦切りよりこちらを主に食べる。
スロベニアにも「ジカンツィ」というそばがきぽい料理がある。

◆パンケーキ
小麦粉が貴重だった時代のアメリカでは蕎麦粉のパンケーキは珍しくなく、『風と共に去りぬ』にも登場している。
ブータンでは「クレ」と呼ばれる。ブータンらしくエゼ(唐辛子ペースト)やエマダツィ(唐辛子のチーズ煮)と共に食べる。

◆わんこそば
岩手県名物。椀にツユと共に少量入った状態で出されて、食べ終わると次々と新しいそばが追加される。


■蕎麦アレルギー

蕎麦はアレルギー物質を含む食品として食品衛生法施行規則に指定されている。

症状は食後すぐに現れ、軽い頭痛からかぶれ、嘔吐等様々である。
下手すると死ぬ事もあるため、蕎麦アレルギーを持った人は、たとえ好きでも食べてはいけない。
過去に小学校で蕎麦を食べてアレルギー発作を起こした小学生が嘔吐物を気管に詰まらせて窒息死するという事件もあった。

また蕎麦アレルギーを持った人は、蕎麦を食べないだけではなく、蕎麦殻を使用した枕も使用してはならない。
特に旅館に泊まる時には、枕の種類に注意する必要がある。


追記、修正は、蕎麦をすすりながらお願いします。

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最終更新:2024年02月13日 01:02

*1 大阪ではうどんかそばかで「きつね」「たぬき」を呼び分けている

*2 そばに限らず雑穀粥全般を指す