登録日:2012/06/25 Mon 08:56:11
更新日:2025/04/19 Sat 16:26:23
所要時間:約 5 分で読めます
薬売りのメソメソは、十日野鬼久が月刊コロコロコミック1999年8月号(No.256)に載せた
読み切り漫画である。
第44回小学館新人コミック大賞で佳作を授賞した十日野の作品。コロコロでは
読み切りから連載へつながるパターンが多いのだが、十日野の漫画が連載されることはなく、後にも先にもこれっきりであった。
コロコロは知っての通りギャグや
下ネタ、かっこいいマシンやホビーが幅を利かす雑誌である。
そのためコロコロ読者の支持は得られなかったが、わずか16Pである意味とてつもないインパクトを残した(内容は後述)。
登場人物
メソメソ
薬売りの行商をしている女の子。本名なのか知らないが、怖くなると名前通りめそめそと泣く。しかし普段は明るく元気で優しい性格。本人は裁縫が得意じゃないというが、なかなか上手である。大好きな父親がいる。
魔女のおばあさん
道に迷ったメソメソを泊めてくれた魔女のおばあさん。いかにも昔話に出てきそうな人相風体なので、メソメソに警戒される。
魔法の力が弱ってきているらしく、「若返りの薬」、「時間を長く感じない薬」、「ひとりでも楽しい気分になる薬」をほしがっている。普段あまり料理をしないようである。
話の内容
薬売りの行商をしていたメソメソは、迷子になって森で夜を迎えてしまう。めそめそと座りこんでいると、そこは魔女の家のドアの前だった。
「薬売りか…。若返りの薬はあるかい?」
泊めてもらうことになったメソメソ。昔話に出てきそうな風体の魔女に、太らされた挙句、眠りについたところを食べられるのではないか、と心配する。ところが
コーヒーにミルクを入れられた時
「あ、そんなにミルク入れないで…。」
「なまいきだねメソメソ。ねむれなくなるよ。」
「!!」
もう眠りにつく心配をされているということは、すでに自分は美味しそうに太っていると思われているということ…!?、と思ったメソメソ。次第に瞳が潤み始め、おばあさんが売ってほしい薬の話をしだしても、そんな薬持っていないし、めそめそと泣くばかり。
耐えかねた魔女は相手にしてられなくなり、
「あたしの友だちだったら、こんなめそめそ泣きゃしないってのに。」
と言って部屋に戻ってしまう。
不思議に思うメソメソ。こんな森の魔女に友達などいるのだろうか?
するとおばあさんの部屋から話声が。
「…あの歳で行商なんてえらいねェ、ヒイラギ。」
「―でもあの子はいいさ。ひとりのようでひとりじゃない。」
「たびさきで友だちをこしらえて…なお、あの子の帰りをまってくれているひとがいる。」
「あの子のころからあたしゃ―」
一体誰と喋っているのだろうか。不思議に思ったメソメソがドアの穴から中を覗いてみると…
そこには目いっぱいのぬいぐるみを相手に、寂しそうに話しかけているおばあさんがいた。
メソメソはおばあさんがなぜ「若返りの薬」、「時間を長く感じない薬」、「ひとりでも楽しい気分になる薬」をほしがっていたのか、理解したのだった。
その夜、なにかを決心したメソメソは
スコップと袋を持って外に出る……。
翌朝おばあさんのぬいぐるみを直してあげることにしたメソメソ。おばあさんも大喜びする。そして父親から聞かされた言葉を語り出す。
「薬はただのませてもきかないって。たすけたい…きもちに神さまが力をかしてくださるんだって。」
「おまえの薬でたすかったひとの笑顔で、おまえのこころもすくわれる……。」
「にんげんはひとりでは生きていけないようにできている。神さまはそこまでなさけぶかいから――…。」
昨夜の外出のせいか、そこまで語ってうたたねをしてしまうメソメソ。その言葉とメソメソの優しさに涙を流すおばあさん。
「…メソメソの神さまは、こんなおいぼれ魔女の…この子を早くぶじに村へ帰してやりたいってきもちにも、力をかしてくださるかしら……?」
そして寝ているメソメソの靴に精一杯の魔法をかけるのであった。
日が高くなり、帰ることにしたメソメソ。
おばあさんは魔法でメソメソの靴を「空とぶくつ」にしていたのだった。目的地を思って歩き出せば、体が浮いて飛んで行ける靴だというのである。
驚き喜ぶメソメソ。
「…そんじゃあ帰りまぁぁっす!」
「二度とこんな森とおるんじゃないよ。」
「……」
「……」
「ひとついいわすれてたんだけど、あたしゆうべこっそりね」
「おばあさんの足もとあたりに、薬草のタネまいといたから。」
「ちゃんッとおせわしてね!」
メソメソは昨晩、薬草の種を植えていたのだった。
おばあさんに薬草を育ててもらうことで、若返り、時間を長く感じず、ひとりでも楽しい気分になるだろう、と考えたのである。
そして最後に一言
「実がなるころにまた来るわ!」
笑顔で手をふるおばあさん。
その後森には、忙しそうに、しかし楽しそうに薬草の手入れをするおばあさんの姿があったのである。
メソメソが渡したのは「心の傷に塗る薬」だったのだろう。
以上が話の内容である。心温まる話、
ファンタジーな絵のタッチは、コロコロでの浮きっぷりが凄まじかった。
しかしコロコロ読み切りものの中でも、その完成度の高さは強いインパクトを残している。
作者は自分のHPでこの漫画を公開しており、複製・転載・加工・翻案・配布などの二次利用を認めている。
現在作者HPが消えているため読むのは困難であるが、上述のように転載などの二次利用を認めているため、有志がどこかへアップロードしてくれるのを待つか、当時のコロコロを押入れから探してくるしかない。うまく手に入れたら、ここのサイトにアップロードしてもらえると、助かります。
運よく見つけた際は、明らかにコロコロでは場違いなその作風を感じていただきたい。
※余談
作者の十日野鬼久は
ゲド戦記(小説)の大ファンらしく、自分のサイトもゲド戦記のファンクラブ的な位置で作っており、イラストを描きまくっていた。薬売りのメソメソはついでに載せていたようで、原稿も残っていないらしい。もったいない……
おばあさん「追記・修正の薬はあるかい?」
メソメソ「そんなのないよぉ…」メソメソ
- 1999年か・・・その頃ならボンボンに載ってたら人気が出てたろうな -- 名無しさん (2014-04-22 02:35:56)
- うわ、懐かしい! もう項目読んでるだけでおぼろげながらも思い出せるw ってか公開してるのか!ちょっと見てくる! -- 名無しさん (2014-04-22 04:09:44)
- コロコロを溜め込んでいざ捨てるとき、この話だけ大事にとっておいた -- 名無しさん (2014-10-11 20:46:44)
- 「薬売りのメソメソ」掲載号のコロコロコミックを持っていたけど、捨ててしまったことを心の底から後悔している。捨てた時はまだ子供だったから単行本がその内出るだろうと思った。本当に馬鹿だった。あの時の自分を呪っている。絵もストーリーも全部大好きだった。自分が許せない。 -- 名無しさん (2015-03-07 01:17:58)
- 小学生だった当時、この漫画の内容と絵がすごく好きでした。とにかく好きで、そこだけ切り取って保管していました。是非いろんな人に読んで欲しくて、小学生の保存方法で荒くて申し訳無いのですがアップロードします。捨ててしまった人、新しく見た人の助けになれば幸いです。どうかこの記事の複製~のくだりが本当であり、アップロードによって問題が起こりませんように・・・ -- 名無しさん (2015-07-21 00:14:25)
- ↑この漫画の二次利用や転載は認められていましたが、今現在うpしていただいたものはコロコロ掲載版であり、作者の主張とちょっと食い違うかもしれません。実は作者がサイトにうpしていたバージョンのjpgを古いPCからサルベージできたため、今うpされているものを削除していただければ、そちらをうpさせていただきますが、いかがでしょうか -- 名無しさん (2015-07-25 21:20:26)
- ↑今確認しました。現状こちらでは編集、削除が出来ない状態なので、管理者の方に連絡し削除していただくか編集権限をいただけるように連絡いたしました。削除されるまで今しばらくお待ちいただければと思います。軽率な行動、申し訳ありませんでした。 -- 名無しさん (2015-07-27 22:25:08)
- 懐いwなんでこんな連載にもなんなかった読み切り漫画の記事があんだよwww -- 名無しさん (2015-08-31 02:27:26)
- ファイルの件はどうなったのかな…削除もされていないし、斧かどっかに作者さんがあげてたファイルをzipでアップロードしてURL貼り付けるくらいでもいいと思うけど -- 名無しさん (2016-06-04 18:47:27)
- 「なまいきだねメソメソ。ねむれなくなるよ。」ミルク沢山入れるとカフェインの効果が薄くなるのか? -- 名無しさん (2018-02-14 01:34:53)
最終更新:2025年04月19日 16:26