オスカー・ワイルド

登録日:2012/02/01(水) 23:25:06
更新日:2024/07/21 Sun 09:40:27
所要時間:約 5 分で読めます




「普通の芝居の常識からいったらまるでキチガイだね」
〜 オスカー・ワイルドについて、三島由紀夫


オスカー・フィンガル・オフラハティ・ウィルス・ワイルド(Wilde, Oscar Fingal O'Flahertie Wills、1854〜1900)とは、
アイルランド出身で、主にイギリスで活躍した作家。

19世紀英文学を代表する人物。
耽美でデカダンス(退廃趣味)な作風で知られ、小説、詩、戯曲、批評、童話などのあらゆる文芸ジャンルでめざましい活躍を見せた。

もっとも、文学にまるきり関心がない我々にとっては、ブラックジャーナリズム軍団ことアンサイクロペディアンの神いわゆるゴッドとしての方が有名なのだが。

しかし文学とジャーナリズムの違いとは何だろうか。ジャーナリズムは読むに耐えない。文学は読む人がいない。まあそんなところだろう。

◇生涯

1878年頃、デカダンス運動の流れに乗ったワイルドは、ロンドンで耽美主義運動(Aesthetic Movement)を主唱した。
彼は、因習や、偽善的で人間性を否定するキリスト教の道徳を批判したのである。

ワイルドの耽美主義は、作品観だけでなく人生観でもあった。ハデな振る舞いで芸術を至上する彼は、作品と人物共に有名になるのである。
しかし、彼は世の常識的な大人からは、その退廃的な作風ゆえに嫌われていた。
1882年。ワイルドは28歳の時、アメリカ人を教育すべく講演流行に赴く。
約1年間、各地を回り講演をしたが、現地のメディアからは「Talent Sadly Misapplied」と報道された。
一方ワイルドは、アメリカ国民の芸術への関心と理解の低さに失望した。

1884年、彼はウィンダミア夫人のような麗しき女性と結婚した。更に、美青年貴族アルフレッド・ダグラスという親友もできる。
しかし、人間は自分の敵を選ぶことにあまりにも不注意である。

1895年。彼は40歳の時に、ダグラスとアナルセックスの疑いで、ダグラスの父に告発されてしまうのだった。

ワイルドは裁判でこう述べた。
「年上の男性が年下の男性に対して持つ偉大な愛情であり、シェイクスピアやミケランジェロの詞の中に見るようなものです。
 それは偉大なる芸術作品に影響を与えてきました。それが今世紀に入ってから誤解され、私は今いる場所に追いやられているのです。
 それは美しく、洗練され、最も高貴な愛の形です。不自然なことは何もありません。何度も存在してきた知的なものです。
 そうあるべきものを、世間は理解していません。世間はそれをあざけ笑い、時にはそのためにある者に汚名を着せるのです。」

また裁判では、作品のモラルについても指摘されていていた。
今風に言うと「こんなエログロ書いておいて、どこが正常なんだ、このアブノーマルが!」と言葉の棒を心の穴に突っ込まれたのである。
しかし、ダグラスはワイルドの初めての男ではないという。彼の穴処女を奪ったのは、ロバート・ロスという説が濃厚白濁だが、真実は穴の中である。
何にせよ、こうしてワイルドは2年もの歳月を深淵より牢獄で過ごすハメに。

出所後、ダグラスとイタリアで生活を共にする。しかし、ダグラスは金のないワイルドに興味を失い、彼にヤリ逃げをかましてしまうのだった。
要するに、ダグラスにとって、彼はただの金づるにすぎなかったのである。

1900年11月30日。全てを失ったワイルドは、パリのホテルで梅毒いわゆる性病で命を落とした。

このワイルドという背徳者の死に、世の常識的な大人達は安堵の息をもらしたのだった。



◇代表作

【小説】

『ドリアン・グレイの肖像』The Picture of Dorian Gray (1891)
ワイルド唯一の長編小説。
絶世の美男子ドリアンは、自身をモデルにした肖像に、自分の代わりに老いることを願う。
しかし、ドリアンが豪奢で享楽な日々を送るたびに、肖像は色褪せていく。快楽と禁欲、善と悪を華麗に記した名作。

【戯曲】

『サロメ』Salome (1894)
1幕による悲劇。時はローマ。
ヘロデ王の娘サロメは、預言者ヨカナーン(ヨハネ)に恋をする。
耽美主義を代表する世界的に有名な悲劇。

『真面目が肝心』The Importance of Being Earnest (1895)
3ばあいによって4幕による喜劇。時は現代(書かれた当時)イギリス
裕福な若者アルジャーノンと、その友人アーネストの刹那的な生き方のせいで、様々な問題が生じてしまう。
ワイルド節に溢れた喜劇の最高峰。

【童話】

幸福な王子』The Happy Prince (1888)
息子達に書いた童話。貧しい人々を見たつばめは、幸福な王子という名の黄金像からある頼みをうける。
死の悲しみよりも尊い愛の大切さを謳った作品。

【詞】

『レディング監獄の歌』The Ballad of Reading Gaol (1898)
長詞。レディング監獄の歌。
ワイルドは、これを自らの囚人番組C.3.3.という筆名で服役後発表した。

◇ワイルド名言

昔、本は文学者によって書かれ、大衆によって読まれた。
現在、本は大衆によって書かれ、誰にも読まれない。

思考は誰かの意見、人生は物まね、そして情熱は引用
最近の人々は、あらゆる物の値段は知っている
しかし価値は分かっていない

笑いに訴える芸術と、美に訴える芸術とは、別の物だ。

すべての芸術はまったくの無用である。

近ごろ無用な情報がほとんどないのは悲しいことだ。


ワイルドの作品は一部新訳が出ている。古い訳なら図書館へ。




誰にでも項目は創れる。

偉人とはそれに追記、修正する者達のことである。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 文学
  • 芸術至上主義
  • 耽美主義
  • デカダンス
  • 悪魔主義
  • オスカー・ワイルド
  • 作家
  • 小説家
  • 詩人
  • 批評家
  • 戯曲
  • アンサイクロペディアン
  • 里中李生
  • 孤高の天才
  • 快楽主義者
  • 天才
  • アイリッシュ
  • アイルランド
  • 英文学
  • 波瀾万丈
  • ドリアン・グレイの肖像
  • 幸福な王子
  • サロメ
最終更新:2024年07月21日 09:40