ヨギ・ベラ

登録日:2011/06/29(水) 11:24:30
更新日:2024/10/11 Fri 16:31:05
所要時間:約 5 分で読めます




かつてニューヨーク・ヤンキースなどに所属していたメジャーリーガーにして球史に残るアホの子。

名前の"ヨギ"とは「ヨガ行者」のこと。
本名はローレンスというかわいらしいものなのだが、
子供の頃のベラの歩き方が友人が見た映画に出てきた蛇遣いにそっくりだったので「蛇遣い→インド→ヨガ→ヨギ」とマジカルバナナ方式で"ヨギ"が愛称となった。

容姿は大きな耳に太い眉、ギョロリとした目。ずんぐりした体つきで、顔がやたらデカいのに、短足というアンバランスな体型。
まるで漫画のキャラクターのような風貌だった。
というか「ヨギ・ベア」というベラをモチーフにした漫画が本当に作られた。

父親の反対を押し切って野球に没頭していたベラは地元のセントルイス・カージナルスの入団テストを受けた。
しかし、ずんぐりした体型と、送球の正確さに難ありとして、当時のGMから「せいぜい3Aまでだろ」と評された。
その後もあちこちのトライアウトに参加するが連戦連敗。それでも諦めず、ようやくヤンキースとの契約にこぎ着けた。


1940年代の終盤にメジャーに定着すると、わけのわからない迷言を連発して瞬く間に人気者となった。
その珍語録の数々は、後にヨギイズムとして知られることとなった。


■有名なヨギイズム

  • 「ベースボールは90パーセントがメンタル、残りの半分がフィジカルだ」
…計算が合わない。

  • 時代が経って貨幣価値が変わることについて「ニッケル(5セント)は、もう以前のダイム(10セント)ほどの価値もない」
…昔からそうだよ。

  • 繁盛しているレストランに出かけたところ、あまりの混雑ぶりにヘソを曲げて「こんなところ、もう誰も来ないよ。混みすぎているもの」
…人気があるから混雑してるんですけど…。

  • 「いつも2時間、昼寝をする。1時から4時までね」
…小学生の算数からやり直せ。

  • 息子からエンサイクロペディア(百科事典)をせがまれて「何だそのサイクル何とかというのは。そいつは自転車か?」
…父親の威厳は大丈夫だったのか?

  • 帽子のサイズはいくつかと聞かれて「わかんないな。まだ、身体づくりをしているところだから」
…シェイプアップすると頭のサイズも変わるのか?

  • 自身の本塁打記録を破られた際の祝電に「記録更新おめでとう。私はいつでも、記録は破られるまでは存在すると思っていた」
…記録は破られるために存在するって言いたかったんだよね?

  • 「言ったことの全てを言ったわけじゃない」
…何言ってんの?

  • 「まるでもう一度デジャブになったみたいだ」
…長嶋?

  • 「奴らが俺について言っているデタラメの半分は嘘だ」
…半分だけでいいの?

  • 悪球打ちを注意されて「どうやったら考えることと打つことを同時にできるんだ!」
…あんたにゃ無理だろうね*1

  • 自宅への道順を教える時に「分かれ道に来たらとにかく進め」
…どっちに?*2



かようにおかしな選手だったベラは、フィールドでも同様だった。大のお喋り好きで、塁に出た時は相手チームの野手と話しまくっていた。
しかし、ヒットエンドランのサインがでると急に黙りこくってしまう。相手チームはすぐに作戦を見抜き、ベラが走者の時のエンドランは悉く失敗したという。
わかりやすいにも程がある。


後年は監督も務めたが、コミカル過ぎる言動が災いしてか選手の尊敬を集めることはできなかった。









と、ここまでなら単なるバカだが、そんな奴が19年も現役を続けられるほどメジャーは甘くない。
ベラの凄いところは選手としても超一流だったことである。

ヤンキース入団後、先輩捕手のビル・ディッキーから全てを叩きこまれたベラは、常勝ヤンキースの正捕手としてその強肩強打で幾多の勝利に貢献した。

MVPに輝くこと3度。

ワールドシリーズ出場14回、世界一10回はいずれもメジャー最多記録である。

オールスターゲームにも15回選出された。

打者としては悪球打ちで有名であり、10年連続20本塁打以上をマーク。通算358本塁打は捕手としてはジョニー・ベンチに抜かれるまでメジャー記録だった。
それでいて三振は非常に少なく、一番多かった年でも38個だった。

捕手としてはリードに優れ、完全試合1度を含む3度のノーヒッターを引き出した。


迷言ばかりが目立つヨギイズムも、中には

  • 「終わるまで終わりじゃない」
  • 「人の葬式にはちゃんと行かないとダメだ。そうしないと、自分の時に誰も来てくれない」

などの本物の名言もあった*3


その功績を讃えられ、1972年に野球殿堂入り。背番号8は前に着けていたディッキーとシェアする形でヤンキースの永久欠番となった。

ヤンキースの本拠地開幕戦の始球式は毎年ジョー・ディマジオが行っていたが、彼の死後はベラの役目となった。

2015年9月22日、90歳で死去。


ヤンキース史上最高の名捕手として、ヨギ・ベラの名はこれからも語り継がれていくことだろう。



追記・修正はヨギイズムを暗唱しながらお願いします。

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最終更新:2024年10月11日 16:31

*1 なお後の宇宙人系プロ野球選手・糸井嘉男は「何も考えないようにしてバットを振れ」と言われてから打席に立った際、「何も考えないってなんだっけ?????」と考え込んでしまい三振したとかなんとか…

*2 これは自宅への道の途中に分かれ道があるためなのだが、その分かれ道が家の手間で再合流するためこういう説明となった。要はどっちでも良いから進めば家に着くということである

*3 なお後者に関してだが、「誰も来てくれない」の所が"everybody won't come"や"nobody will come"ならば普通の処世訓である。ところがベラはここで"they won't come"(彼らは来てくれない)としてしまった。代名詞であるthey(彼ら)をここで使うと、その「彼ら」は文法的に「other peoples' funerals」(人の葬式)で送られた人、つまり「既に無くなった人」を示すことになってしまう。よってこのベラの発言を文字通り受け取ると「自分の葬式に死者たちを招き寄せる方法について述べた」というトンデモない言葉ということになってしまう