ティルヴィング

登録日:2012/01/07(土) 21:07:23
更新日:2025/05/03 Sat 11:51:02
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Tyrfing*1

北欧神話に登場する魔剣の一
音揺れの関係でチュルフィング、テュルフィン、ティルフィングなどと表記する場合もある。

ちなみに語源的にtyr(同名の神がアースガルドにいるが、「神」を示す一般名詞にも使用される*2)+fing(「指」、英語のfingerと同語源)となる。

出典は古エッダ、ヘルヴォルとヘイズレク王サガ。


【サガ】
オーディンの孫にあたるスヴァフラーメ王(スウァフルラーメ)が、ドヴェルグ(ドワーフ)のドヴァリンとドゥリンを拘束し、自由にする引き換えにこの剣を作成させた


ティルヴィングは黄金の柄によって装飾され、決して錆びることはなく、岩や鉄をも布のように容易に裂く切れ味を誇り、スヴァフラーメはその出来栄えに大いに満足していた。
だが、二人のドヴェルグはこの剣に二つの呪いをかけ、去り際にそのことを教えた。


一つ。この剣は一度鞘から放たれれば、誰かを殺さなければならない。

二つ。この剣は所有者の願いを三度叶えるが、必ず所有者の命を奪う。


スヴァフラーメは戦場でこの剣を振るい、幾度も勝利を納めた。
だが、ドヴェルグの呪いには打ち勝てず、巨人アルングリムルに奪われたティルヴィングそのものによって命を落とす。


その後も呪いは続く。

スヴァフラーメの王女ユフラテを娶ったアルングリムルは息子アンガンチュールにティルヴィングを譲るが、その息子は英雄ヒャルマルとの決闘で相討ち、両者と共に呪いの剣は葬られる。

その後、ティルヴィングはアンガンチュールの娘ヘルヴォルによって掘り出され、その息子ヘイズレクに渡される。
ヘイズレクは兄アンガンチュールを殺し国を追放される。後にレイドゴートランドの王となるがオーディンの予言によって命を落とす。

さらにヘイズレクの息子アンガンチュールは、父を殺した仇に復讐しティルヴィングを取り戻す。
そこから伝承はゴート族とフン族の戦争へと繋がっていく……


なに? アンガンチュールが三人もいる? 全員血族だが別人だ。



なおこのサガは後にJ.R.トールキンの『指輪物語』創作に大きく貢献することとなる。
作り手のドヴェルグ二人の名前を聞いたことのある人もいるだろう。


【エッダ】
『ゴート族とフン族の戦い』に登場。
伝説は上記のサガに組み込まれているゴート族とフン族の戦争の話の部分と大体共通。
こちらではティルフィングのメリットもデメリットも経歴も特に示されない。


北欧神話に登場する武器の中では、レーヴァテインミョルニルフルンティングなどに比べるとややマイナーな感は否めない

だがその『願いを叶え、破滅を齎す呪いの宝剣』という性能から、出てくるとそれなりに上級な扱いをされることが多い。

ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』では主人公親子の専用武器になってたほどなのだが、父親(並びに先代継承者の祖父)の悲惨な最期、並びに彼の名前(シグルド)と武器名に共通性がない*3ので最初から「不幸をもたらす剣」のイメージで命名されたのではないかという疑惑がある。

追記、修正は鞘から剣を抜いて誰かを殺し、願いを三度叶えてからお願いします

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最終更新:2025年05月03日 11:51

*1 厳密には昔の北欧で使用されてた古ノルド語では名詞を主格で使用する際の語尾に「r」をつけるので、大半の場合は「Tyrfingr」表記になる。

*2 詩などで婉曲表現で神々を呼ぶ際に「片目のテュール=オーディン」、「詩のテュール=ブラギ」などの使用例がある。

*3 シグルドの元ネタはゲルマンの伝説にでてくる勇者で、そっちでは「バルムンク」もしくは「グラム」と言う剣の使い手、なお「バルムンク」は本作に別の人の専用武器で登場する。