京成電鉄3700形電車

登録日:2025/08/24 Sun 21:28:52
更新日:2025/09/17 Wed 19:22:21
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京成3700形電車は、1991年に登場した京成電鉄の通勤形車両である。
本項では
  • 同一設計車両である北総開発鉄道7300形
  • 走行機器類が同一の住宅・都市整備公団9100形
  • リース車の北総鉄道7800形/千葉ニュータウン鉄道9800形、
  • 本形式をベースに開発された新京成電鉄8900形
の4形式についても解説する。

なお、本項における事業者名は落成・導入時点での名称を優先的に使用する。


概要

1991年3月の成田空港ターミナル乗り入れおよび北総線2期区間(京成高砂~新鎌ヶ谷間)開業に伴う輸送力増強と、老朽化した初期赤電車両(初代3000形・3050形・初代3100形・3150形)の置き換えを目的に、1991年~2002年の間に8両×15本と6両×2本の計132両が増備された。

それまで臨時列車程度しか存在しなかった京急線への乗り入れを前提に開発された形式で*1、京急線の車両規格に対応するため京成では初めて先頭車を電動台車に変更した。本形式以前の京成通勤車(北総・公団車含む)にも追って改造が実施されている。

また、本形式をベースにした北総開発鉄道7300形および住宅・都市整備公団9100形が導入されるなど車両設計の共通化も実施されており、その後の京成通勤車の基礎と方向性を決定づけた車両である。

車両解説

3600形に引き続きオールステンレス車体を採用し、外観は当時のステンレス車の標準的な工法であったビードプレス式へ変更された。
塗装はスカイライナーと同じフューチャーブルーとヒューマンレッドの帯を巻いた新塗装を採用。これが好評だったことから他の通勤車も試験塗装を実施した後、1993年から本形式と同様の新塗装化が開始*2された。

前面は貫通扉付きだが、固定編成での使用を前提としたため中心部から左側にずらして設置されており、その扉下には京成伝統の種別幕が設置されている。
ピラー部分はブラックアウトで処理され、従来車よりも近代的なデザインに変更。これらの意匠は初代スカイライナー・AE形の機器流用車である3400形にも継承された。

1~5次車までは前照灯が窓下、標識灯が窓上に配置されていたが、2000年に落成した6次車以降は灯火類の位置が逆転し、この意匠はのちに登場する2代目3000形にも引き継がれた。
2次車からはスカートが設置され、1次車にも後に取り付けられた。また、2次車初期のスカートは六角形のごついものが採用されていたが、後に現在使用されている逆台形のものとなった。

車内はロングシートだが、従来よりも明るい内装に変更。ラインデリア空調や車内案内表示器も京成通勤車では初採用となった。
6次車からはドアに挟まれた乗客の脱出がしやすい設計に変わり、ロングシート端部の袖仕切りが大型化されている。

制御装置には京成電鉄の通勤型車両としては本格的にVVVFインバータ制御を採用。一方、駆動装置については京成通勤車の伝統でもあるTD駆動とWN駆動の並行採用が実施されている。
台車はボルスタ付きのミンデン式だが、3848編成では2代目AE形への導入試験としてボルスタレス式を導入して運用した実績がある。

本形式からそれまで使用されていた「クハ」「モハ」の呼称が廃止されており、形式は数字呼びとなった。

改造

  • 成田スカイアクセス線対応工事
成田スカイアクセス線開業に合わせ、ブレーキの増圧を実施して最高速度を120km/hに向上している。但しスカイアクセス線の定期運用は専用形式(3100形・3050形)が専属で使用されるため、同線での運用はダイヤ乱れ時のみとなる。
また、これと並行して行先・種別方向幕のLED化も実施されている(当初は3色だったが、後にフルカラー化された)。

  • 内装・機器のリニューアル
2012年から内装を3000形と同等のものに改装する工事が開始された。これに伴い側窓の半数が固定化されており、一部の編成ではUVカットガラスも採用されている。
また、2017年からは車内案内表示器がLCD式に交換されている。

2024年からはSiCモジュールを採用したVVVFインバータに更新された編成が順次登場しているが、その第1陣は次述の3788編成だった(曰く付きだから施工した…とも)

  • 事故に伴う編成組み換え
2020年に後述するリース車の北総7800形の7818編成(3748編成)が脱線事故を起こし、翌年京成に返却後2両を脱車し6両編成として運用された。さらに2022年には3788編成が脱線事故を起こし、2023年には3748編成の2両を3788編成に組み込む形で復旧させた。なお、脱車された3748の車両は全車廃車となっている。

関連形式

  • 住宅・都市整備公団9100形
1995年の北総・公団線印西牧の原開業に合わせて導入された車両で、C-flyerの愛称がある。
検査を京成に委託するため走行機器類は3700形に準じているが、流線型の独特な車体構造を持ち、前面部分は黒に塗られ中央部に前照灯と英語の行先表示、窓上に尾灯・標識灯と日本語の行先表示という宇宙船やロボットを彷彿させるデザインとなっている。
塗装はスカートと車体裾、運転席直後に水色、中間車のクロスシート部に黄色を配したものとなっている。
車内はロングシートだが、車端部に固定式のクロスシートを設置しており、3・6号車の車端部には1997年まで公衆電話も設置されていた。

2000年の印旛日本医大延伸に際しても増備されたが、公衆電話の廃止やクロスシートの削減など小規模なマイナーチェンジが行われている。

前述した検査の関係から、入出場回送では京成本線を走行する機会がある。

  • 北総開発鉄道7300形
1991年の北総線2期開業に伴い増備された車両。
何が違うのかというと帯の色がビビットブルーとダークブルー…ぐらいしか無いんですけどね。
ちなみに落成当初は3700形同様スカートがなく、本家と異なり2010年代までその状態で運用された。

  • 北総鉄道7800形/千葉ニュータウン鉄道9800形
本形式のリース車両。
9800形は老朽化した9000形の置き換えのために導入された。
何が違う(ry、9800形は帯色が9100形と同じ水色と黄色になっている。

  • 新京成電鉄8900形
1993年に8連3本が製造された。
新京成電鉄初のステンレス車で、最後の自社設計車両である。
登場当初は青とピンクの帯*3を巻き、従来車とは一線を画すデザインだった。
また、京成グループの通勤車では唯一となるボルスタレス台車を採用したほか、パンタグラフには当時高速鉄道用車両では珍しかったシングルアーム式*4を採用した。車体側面のドアも1500㎜のワイドタイプとなっている。
2014年に他形式と合わせて6両化が行われ、余剰となった中間車は廃車された。

一応車体が3700形を基本としているので本項に掲載したが、上述したように機器類は独自のものを採用しているので派生車種と言えるかは微妙なところ。



追記・修正は3700形ファミリーすべてに乗車してからお願いします。

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最終更新:2025年09月17日 19:22

*1 但し当初の京急乗り入れは平日に数本程度で、本格的な乗り入れは1998年の空港線羽田空港ターミナル開業からとなる。

*2 鋼製車は地色にアクティブシルバーの塗装を採用。

*3 落成当初は普通のピンクだったが、色あせが目立つとの指摘があり1996年から旧塗装で使用されていたキャンディピンクに変更された。

*4 形状はヨーロッパの車両やJR貨物EF200形のようなもので、メディアによってはZ型と紹介されたこともある。