京成電鉄3700形電車

登録日:2025/08/24 Sun 21:28:52
更新日:2025/08/24 Sun 21:28:52NEW!
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京成電鉄3700形電車は、同社の通勤型車両である。車体外観が本形式をもとに製造された3400形や、京成グループ内で同時期に製造され設計に共通点がある車両北総鉄道7300形、ニュータウン鉄道9100形、元・新京成電鉄8900形および、3700形のグループ内リース車両である、北総鉄道7800形、千葉ニュータウン鉄道9800形についても本項目で解説する。


車両概説

導入経緯

1990年代は成田空港直下への鉄道乗り入れ、北総開発鉄道(現・北総鉄道)高砂~新鎌ヶ谷間延伸による京成本線との接続、直通先では羽田空港新ターミナル移転に伴う京浜急行空港線の延伸に伴い、京成電鉄とその乗り入れ先各線による直通ネットワークの拡大・強化がなされた。当時の京成電鉄が使用していた初代3050形、3100形などのいわゆる「赤電」と呼ばれた車両では、高速運転が要求される京浜急行線内で性能不足気味となっており、それらを置き換える高性能車両として、3700形が開発されることとなった。

車両データ

1991年・1994~1998年、2000~2002年と断続的に増備。
8両編成15本、6両編成2本が製造され、2025年8月時点では8両編成10本と6両編成2本が京成電鉄に在籍する。
18m3扉で、京成電鉄の通勤型車両では標準の規格を引き継いでいる。
3500形、3600形に続いてステンレス製の車体で製造されているが、コルゲートから、当時のステンレス車の標準的な工法であったビードプレスへと工法が変わっている。
京成電鉄の通勤型では初めて、製造当初から当時のスカイライナーのカラーリングと同じヒューマンレッドとフューチャーブルーの帯を採用した。窓上はフューチャーブルー、窓下は上がヒューマンレッド、下がフューチャーブルーの配置である。3700形の増備途上で既存の形式もファイアオレンジ塗装や帯からこの2色帯に変更された。*1
足回りは京成電鉄での通勤型車両としては初めて本格的にVVVFインバータ制御を採用している。製造当初は東洋電機製のGTO-VVVFで、3700形と同時期に増備されていた、スカイライナー用のAE100形の足回りがベースとなっている。一説ではAE100形と3700形の足回りは共通の部品を使用しているとされ、AE100が早期廃車になった理由は3700形への部品供出を行うためなどと言われているが、真偽不明。
最高速度は120km/hに対応し、成田空港アクセス線のアクセス特急の代走時にはこの性能をフルで発揮する。
初期車では前照灯・後部灯が前面窓下部に左右並び、急行灯と方向幕が前面窓上部に、種別幕が貫通扉に位置し、3600形の配置をほぼ踏襲しているが、前面窓周辺のブラックフェイスによる方向幕、急行灯との一体化、貫通扉の左右非対称配置、前照灯・後部灯への角型ライト採用により、3600形に比べてより当時基準で現代的な前面デザインへと仕上がっている。

後期車

3828編成以降の2000年代に落成した車両は前照灯の位置が前面窓上部へ移動、後部灯と急行灯が横長の形状になり、前面窓下部に上下に配置される顔になっていたり、ドアが閉まってから数秒間は挟まれた乗客の脱出がしやすい設計になっていたり*2、ロングシート端部の袖仕切りが大型化したりなどと、設計が大きく変更された箇所が存在する。ここで特筆した事項は、3700形の次世代通勤車である3000形にも引き継がれている。見方によっては、3000形の試作要素を盛り込んだといえよう。
なお、6両編成で落成した編成は後期車にのみ存在する。

編成組み換え

2020年にリース車の北総7800形の7818編成(元京成3748編成)が、2022年に3788編成が脱線事故を起こした。
2021年には7818編成を京成に戻し、編成を組み替えたうえで6両編成の3748編成として運用。2023年には3748編成の2両を3788編成の事故当該箇所に組み込む形で、3788編成として復旧させ、3748編成は残りの車両を廃車し、編成抹消となった。

機器更新

GTO-VVVF制御車は運用開始から十数年~20年後にその時点で最新のVVVF装置に更新され、IGBT素子やSiCモジュールといったものに交換されることが多いが、京成3700形はデビューから30年以上、GTO-VVVFを貫き通していた。
しかし、2024年以降SiCモジュールを採用したVVVFインバータに更新された編成が順次登場している。2025年8月時点で3編成存在する。

運用

6両編成は京成本線、千葉・千原線を中心に運用、8両編成は京成本線を中心に運用され、押上線から都営浅草線、その先の京浜急行線、高砂で分岐する北総鉄道北総線への直通運用もある。
また、所定では3100形で運用されるアクセス特急への代走に使われる場合もある。

関連形式

京成電鉄3400形

1993年から1995年にかけて、8両編成5本が増備された。成田空港直下乗り入れと前後して、スカイライナー車両は初代AE形からAE100形に置き換えられたが、初代AE形はこの時点で古いものでも車齢が約20年前後と、在来線車両としてはまだ中堅に当たるものであった。
そこで、初代AE形の足回りはほぼそのままに、通勤型としての車体に載せ替えた車両としてセカンドライフを送ることとなった。
3700形と同世代であり、外観もそれにそろえてはいるものの、鋼製車体となっているのは、改造を担当した大栄車両ではステンレス車体を取り扱っていなかったからである。
2020年以降引退が進み、2025年8月時点で残り1本のみとなっている。

北総鉄道7300形・7800形・千葉ニュータウン鉄道9800形

高砂~印旛日本医大間の北総線及び直通先の京成線、都営浅草線、京急線で運用される。
7300形は3700形とほぼ共通設計の通勤型電車、7800形、9800形は京成3700形をリースした車両である。
北総線は小室を境に西は北総開発鉄道、東は住宅都市整備公団が路線建設を行ったため、その名残として、2025年8月時点でそれぞれの後進となる事業者の北総鉄道と千葉ニュータウン鉄道それぞれに所属する車両が存在している。
7300形は8両編成2本、7800形は8両編成3本、9800形は8両編成1本が所属している。
北総鉄道所属車はビビットブルーとダークブルーの2色の帯、9800形はキャンディーブルーとイエローの2色の帯を巻いている。

千葉ニュータウン鉄道9100形

愛称は「C-flyer」曲面的な前面形状にヘッドライトは窓下中央に集約、一部のドアだけに施された縦のカラーストライプ、乗降扉の窓は閉じているときはまるで1枚かのように見える配置、と京成グループの通勤型でも特に目を引くデザインの電車。
1995年の千葉ニュータウン中央~印西牧の原間、2000年の印西牧の原~印旛日本医大間延伸に伴い増備され、8両編成3本が在籍する。
クロスシートや公衆電話など、京成グループの通勤型車両としては珍しい設備も設置された。なお、1997年に公衆電話が撤去されたため、2000年に増備された1編成には元から電話は設置されていない。
上述の北総線所属車と共通運用を組む。

元・新京成電鉄8900形

2025年4月より京成松戸線に編入された、かつての新京成電鉄に所属していた車両。
京成車・北総車では東洋電機製のVVVF装置を使用しているが、こちらでは三菱製のVVVF装置を使用していること、乗降扉がワイドドアとなっていること、ボルスタレス台車を採用していることが3700形との大きな違い。
1993年・1996年に8両編成が合計3本増備され、2025年8月時点で6両編成3本が京成電鉄に在籍する。
日本国内の普通鉄道向けの電車では、初めてシングルアームパンタグラフを本格的に採用した。

追記・修正は京成3700形、北総7300形または7800形、千葉ニュータウン9800形、同じく9100形、元新京成8900形のすべてに乗車してからお願いします。

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最終更新:2025年08月24日 21:28

*1 鋼製車はアクティブシルバーと称される、薄い青の地色塗装に赤青2色帯を採用。

*2 ドアの作動音も3000形とほぼ同じものとなっている