オーディン

登録日:2011/05/09(月) 08:10:34
更新日:2020/03/19 Thu 07:25:26
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オーディンは北欧神話の最高神にして戦争の神。
その行動から死の神ともいわれている。
『死神』ではなく『死の神』

その容姿は片目がなく、長く白い髭につばの広い帽子を被った老人と描かれる。
自らを象徴する武器たる『グングニル』を持っている姿で描かれることも。
知識にどこまでも貪欲であり、「全知全能の神」「魔術と狡知の神」等の名でも知られる。

神々の世界アースガルドにある『ヴァルハラ』*1に住んでいる。
ちなみに、
『柱は槍、屋根は楯、長椅子には鎧が置いてあり、540ある入口は一つ一つが800人の戦士の戦列が通すことができる』
というヴァルハラの構造に関する説明がある。
ヴァルハラ広すぎ。

またオーディンには愛馬である八本足のスレイプニル、ワタリガラスのフギンとムニン(それぞれ『思考』、『記憶』を意味する)*2、狼のゲリとフレキ(それぞれ『飢餓』と『貪欲』を意味する)*3がいる。

普段はヴァルハラにおいて、ワルキューレ(ヴァルキリー)達が連れてきた戦死した戦士達をラグナロクにそなえて戦わせ、夜は大宴会をしているとされる。

しかし、ワルキューレが連れてくる戦士を選ぶ際、気に入った戦士がまだ存命中の場合には、

オーディン「あの戦士気に入った、殺して連れてこい」
ワルキューレ「了解しました」
戦士「よっしゃ! ヴァルハラにいける!」

ということがよくある。
自分勝手にもほどがあるが、ぶっちゃけ神にはよくあること。

ん? こんな風にスカウトされた戦士絶対キレるだろって?

そんな事は無い。オーディンを信仰していたノルドの世界観では人がいつ死ぬかは運命によって定められている。
この運命は誰にも、それこそ神々にすら変えられないものであり、それ故にノルド達はただ安穏と生きるよりは戦いの中で猛々しく死ぬ事を尊んでいたのだ。
オーディンの目に留まり、ヴァルハラに招かれるという事は、己の生き方や力が認められた事に他ならない。
故に、ノルドの戦士たちにとってこれは大変に名誉な事なのである。

それにオーディンとて必死である。なにせ彼等には世界の終末『ラグナロク』の到来が判っている。
いつかやってくる最終戦争を勝つ為にも、優れた戦士は何人居ても足りない。
オーディン自身もその戦いで死ぬ運命あるとしても、彼は運命に抵抗する為に力を求め続けているのだ。

だが、戦士の家族には愛する者が殺されたと思う者もいるので、これが理由で死の神と呼ばれたりする。
実際ヴァルハラ云々がなかったら旦那や父、息子を奪った以外の何物でもないし。


戦神としての存在感ある逸話の中で有名なのは、
シグムント(ジークフリートのベースの一つと言われるシグルスの父)に後に高名な剣グラムとなる選定の剣を授けた…と言うか、
木に突き刺して適任者に引っこ抜かせた件だろう。

その戦神の恩寵の証である剣でシグムントは武功を重ねていったが、オーディン自らが後述のセルフ儀式で作った
自慢のグングニルでこの剣をあっさり真っ二つに砕き、シグムントはオーディンの加護が自分に失われた瞬間を察したと言う。
まぁシグムントが予定通りオーディンに認められた証だが、神って気紛れよね。



また、オーディンには自らの身を犠牲にしてなにかを得る逸話が二つある。

フヴェルゲルミルの泉を飲むために片目を差し出し、魔術を得た時と、かのルーン文字*4を得た時である。

で、このルーン文字を得た時、
『九夜のあいだ、我が槍に傷つき、オーディンの犠牲となり、我と我が身をおのれへ捧げて、
私は風にゆらぐあの樹に、人々がその根のいかなるものとも知らぬあの力強い樹に吊るされよう』
とオーディンが語っている。

???「日本語でおk

だれか知らんがその通りである。

要するに、
「九日九夜、自分にグングニルを刺して自分に自分を捧げるために、ユグドラシルに首を吊ります」
と言っている。

おい、だれだMって言ったやつは。
その後、無事にルーン文字を得たからいいんだよ。*5

ちなみに、何故こんなドMプレイを実践したかと言うと、この世において至高の宝である知恵を得る為には最高の供物が必要だが、
その基準に見合う供物とは、最高神である自分自身である。という理論的なのかトチ狂っているのか分からない思考故である。



オーディンの最期はラグナロクにてロキの息子であるフェンリルによってアッサリ飲み込まれる、とされている。
最高神とて死んでしまうのが北欧神話なのだ。ちなみにこのオーディンの最期は本人も承知の上であり、その仇は息子である無口のヴィーザルが討つとされている。
彼は全てを知った上でなお自分が死んだ後の世界、息子のヴィーザルが生き残り、死んだバルドルが復活する世界を見据えて行動している。




…と、散々説明してきたが、キリスト教が広まってからの記述が主なので、これがまたややこしい。
キリスト教にとって「死」とは「罰」であり、その罰から人々を救うのが神の子イエスであり、
また、徳の高いキリスト教の信者だけが天国に行けるという教えが前提にあったりする。
しかしオーディン……というより北欧神話では勇敢な戦士が死後も戦士として戦ったり、演習で死んでまた復活したりと、キリスト教の世界とは正直ほとんど噛み合っていない。
なお、ユダヤ教の教えとも合わないのでぶつかっていたらしい。

ぶっちゃけた話、現在伝え残っている北欧神話は主にキリスト教を普及させる意図があるものくらいしか残っておらず(大体口伝だったのこと)、
キリスト教から最も敵対視される主神は真っ先に被害に遭い、ロキと同じくゲスエピソードを多く作られてゆがめられた(あるいはそのまま残せなかった)ものと推測されている。
伝搬した状況の違いから、同様の被害を受けた他の物とは異なり微妙な違いにはなっているが*6、それにしてもエピソードが少ない上に良いイメージの話が少ない。

あまり信仰されていなかったという説もあるが、
そもそも様々な時代・場所で改宗を迫ったり信仰を捨てるように工作されていたり、争いを避けるために改宗したり、裏で信仰されていたりしたため、実態が掴みきれないというのが正しいところ。
少なくとも一世紀頃のゲルマン人の間で最も崇高な神として崇められていたらしい。
(キリスト教圏におけるバイキングの主体であるデーン人はゲルマン民族の一派。早くからキリスト教化したゲルマン民族も多かったため、大きな差異も生じている)
そのため現在のところは、北欧神話の元の元とも言える大本の教えではやはり主神でOKな模様。

ちなみにトールは物語の主人公的な立場になることも多いなど、雄々しさやかっこよさをよくアピールされている一際目立つ存在のため、
キリスト教布教後もユピテルと同じ神として捉えられるなど、むしろ愛されており*7、ハンマーを十字架に見立てたシンボルまで作られた。



また、北欧神話の文献で有名なスノッリのエッダからしてオーディンの神性を意図的に薄めて記述しているため、現在一般に知られているオーディン像は不正確である。
それは長らく普遍的に信仰され、全知全能の神、死と霊感の神、嵐の神、戦の神、知識の神、万物の神、詩の神など多彩な役回りを持っていたらしきことからも伺える*8
現在はそういった面からかけ離れたイメージになっていることからも、影響が見てとれる。



余談だが、英語における水曜日(Wednesday)の語源はオーディンとも言われている。
ドイツでは今でも、水曜日を「ヴォーダン(オーディン)の日」と呼ぶ習慣がある。



●FINAL FANTASYシリーズに出てくる召喚獣。

殆どの作品で斬鉄剣を使い、一撃の元に敵を切り裂く。
なぜ斬鉄剣なのか?
元は逸話通りグングニルで、一撃必殺の効果にしようと考えていたらしいのだが、イラストレーターの天野喜孝があげてきた絵では剣を持っていたから、スタッフが「剣→一撃必殺→斬鉄剣」という風に変えてしまったらしい。
FFの作中でオーディンがグングニルでなく斬鉄剣を振るう理由付けは特にされておらず、またルパン三世とも何も関係が無い。

大体のシリーズでお城の地下と関わりが深い。FFⅥでは城ごと地下にうずもれている。
作品毎に色々な設定が加えられるが、一貫して言えるのはスレイプニルを駆るゴツい顔の剣士(騎士?)である。

初出はFFⅢだが、北欧神話においての得物であるグングニルを使うようになったのはFFⅤから。
ちなみにFFⅩには登場していない。
以下、シリーズ毎のオーディン。



FFⅢ

シリーズ初登場。
サロニアの地下に眠っている幻獣。
会話中ではオーディーンと表記されている。



FFⅣ
カイナッツォに殺されたバロン王が死後、幻獣に転生したものという設定になっている。
バロン城の地下でセシルを待ち、リヴァイアサンを習得していれば戦ってくれる。
斬鉄剣の威力が即死しかねない威力の為、発動前の撃破が妥当。
弱点の雷とバイオを中心に攻めたいところ。

斬鉄剣発動直前に雷属性で攻撃すると一撃で倒すことが出来る。

FFⅤ
バル城の地下に佇む幻獣。
忙しいらしく、1分しかバッツ達の相手をしてくれない。
時間切れになるとゲームオーバー。
斬鉄剣の威力は高いが、魔法剣ブレイクで瞬殺できてしまうので体感的な強さはそれほどでもない。

本作から斬鉄剣の他に単体にダメージのグングニルをランダムで出すようになったが、その分発動すれば確実に当たるようになった。

キングベヒーモス2体を相手に召喚→グングニル→カウンターメテオで窮地は誰もが通る道。


FFⅥ

本作から敵単体ごとに成功判定を判定するようになった。

古代城の幻獣であった。
王女が想いを寄せる相手であったが、魔大戦のさなか、一人の魔導士との一騎打ちに敗れて石化。
魔石となった後、古代城の最深部に行くと、石化した王女がおり、
王女の石像を調べると石像からこぼれた涙によりライディーンに進化する。
道端に落ちてるだけとかが多いFFⅥの幻獣の中では、数少ないバックグラウンド持ち。
そんな彼だが、習得出来る魔法はなんとメテオ。

……なんで?



FFⅦ
CG演出になった事でかなりゴツくなって登場。最早軽いホラー。

この作品では「オーディーン」。Ⅲから久々の復活。
神羅屋敷の金庫から入手可能。仕様はⅤと同じ。



CCFFⅦ

効果は即死と地味なのだが、馬で崖を駆け下りてくる演出が非常に綺麗で格好良い。そして顔の怖さは最早子供がひきつけ起こすレベル。いやマジで。



FFⅧ

G.F.(他シリーズでの召喚獣)の1体だが、ジャンクションするタイプではなく、乱入型とでも呼ぶべきG.F.。
セントラ遺跡の最深部でスコール達を待ち構えており、戦闘に勝利すればG.F.になるのだが……。
発動のタイミングが任意では無い為、
ドロー・盗み・カード化等が目的で探したモンスターをも問答無用で斬り殺す事があり、非常に扱いにくい。

なおセントラ遺跡はダンジョンの攻略自体に制限時間があり、超過するとゲームオーバーとなる。
オーディンとの戦闘でも時間が引き継がれ、この戦闘中に時間切れになると斬鉄剣をかまされてゲームオーバー。ただし、制限時間が来るまでは何一つアクションを起こさないサンドバッグである(無論相応にHPは多い)。

サイファーとの最終戦で入手していると自動的に出現するが、カウンター技の「斬鉄剣返し」で自分が真っ二つにされてしまう。 
DFFではこの斬鉄剣返しを、「今となっては斬鉄剣で切り裂きたい悲しき過去である」と表現している。
当然このイベント後はオーディンは使用不可になるが、弾き飛ばされた斬鉄剣は戦闘中に現れたギルガメッシュが回収してサイファーを撃破、そのまま乱入型G.F.として参入する。

あまり評判のよろしくない仕様ではあるが、モルボルが出た時だけは別。
前述の通り判定が戦闘開始直後なので、臭い息をぶっかけられる前に一刀両断出来る。
開始と同時にスコール達が消えたら勝ち確定。

なお、特定のタイミングでセントラ遺跡に侵入し、制限時間切れの後に再トライを選ぶとゲーム自体が進行不能となる致命的なバグが存在するので注意。

FFXIV

蛮神の一体として登場するが、特定のインスタンスエリアで戦闘する他とは異なり、数日に一度黒衣森のどこかに出現するという特殊な存在。
出現時にはその闘気により森一帯の天候が変化する。
古の闘神と呼ばれる存在であり、元は人間であったとも言われているが詳細は不明。
通常、蛮神は存在を維持するために祈り(信者)とエーテル(クリスタルの形で賄われることが多い)を必要とするが、オーディンの場合はそれらを捧げる信者が居ないにも関わらず現界し続け、冒険者に撃破されても時間を置いて復活するという非常に特殊な謎の多い存在となっている。
また、再出現する際は前回トドメを刺したPCの姿でスレイヴニルにまたがり出現する。
このため、ララフェル族の冒険者が倒した場合はとても可愛らしいサイズのオーディンが現れることに…。

後に実装されたインスタンスコンテンツ「オーディン討滅戦」にて、再出現を待たずに1PTで挑戦することが可能になる。
この際に上記の謎の一部が解明されるがオーディンを封印するには至らず、今も黒衣森のどこかを彷徨い続けている。

ラグナロクに備えてレナスにエインフェリアを集めるよう命令する他、ハードモードではユーミルの血族であるリセリアについて教えてくれる。
声優はシャア
Aエンディングでは意外な事実が明かされる。


不完全で覚醒したシルメリアを連れ戻すようアーリィに命令する。
ディパン王バルバロッサの処刑を命じたのも彼。
その後、ユグドラシルの頂上にてアリーシャ達と対峙するが……。


北欧神話に関する用語が多く登場し、その中にはオーディンも含まれる。
PS版、PSP版ではクレスで一騎打ちを挑むことができ、勝利すると真の力を解放した「真・グーングニル」を獲得できる。
GBA版では残念ながら登場しないが、真・グーングニルは別の形で入手可能。


●『仮面ライダー龍騎』に登場するライダー。
神の名を冠するだけあり絶大な力を持つ。詳しくは仮面ライダーオーディンの項を参照。


●『銀河英雄伝説』に登場する銀河帝国側ゴールデンバウム王朝時代の首都星。
多数の人工惑星が周回しているが、皇宮上空を見下ろす軌道は不敬罪となるため周回しない。
ローエングラム王朝が成立して以後は遷都が宣言されたため、ただの一惑星に成り下がった。

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*1 Valhöll ヴァルホル 古北欧語。 valhçl,valhollとも。 独:Walhalla ヴァルハラ 英:Valhalla ワルハラ 
意味はvarl(戦場の死体)+höll(広間)で、「戦死者の館」を指す。

*2 オーディンの肩にとまる2羽のワタリガラス、フギン(「古北欧語: Huginn, 英: Hugin 「思考」を意味する)とムニン(古北欧語:Muninn, 英: Munin 「記憶」を意味する)。
「フギンの餌」とは死体を指し、「フギンを喜ばせる」とは「戦死者が多く出た」ことを指すと言われる。

*3 オーディンに付き従う2頭の狼、ゲリ(Geri/Gere 飢えるもの) とフレキ(Freki/Freke むさぼるもの)。
葡萄酒しか口にしないオーディンに替わって、彼に饗された食事を喰うとされる。
「ゲリの麦酒」とは血を、「フレキの小麦」とは死体を表す言葉といわれ、
彼らにエサを与えるということは「多くの敵を殺した」ことを意味するという。

*4 rune 古北欧語でrún ゲルマン民族の間で使われたアルファベットの一種。3世紀ごろ成立し中世ごろまで使われた。魔術的な力を持つと言われている。
当時の魔術師や巫女たちはこの文字を木片や石、または剣などの道具に刻んだり、手の甲など体の一部に指で描くなどしてその力を用いたとされる。

*5 この伝承がタロットカード「吊るされた男」のモチーフになったともいう

*6 北欧神話はキリスト教の影響を受ける前の情報が比較的多いとされる

*7 キリスト教ではこういった形で同化したり・させることもままある

*8 ※呼び名がめちゃくちゃ多く、少なくとも呼び名だけ見てみると上記の様なキリスト教的な負のイメージは比較的少ない