ボディアーマー

登録日:2011/02/27 Sun 21:10:45
更新日:2025/07/10 Thu 21:47:39
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概要

銃弾や爆弾の破片からの防護を目的とした防護装備。通称防弾チョッキ。
主に軍や警察*1が使用しているが、規制は比較的緩くオーストラリア等一部の国以外では民間人も所持可能。


歴史

刃物や銃火器など攻撃兵器発展に伴い衰退し、再興してきた。

中世

中世ヨーロッパでは14世紀以降プレートアーマーの中でも全身を覆うフルプレートが用いられていた。
しかし同時期にマスケット銃が発展し、対刃物向けの普通のプレートアーマーでは銃弾を防ぐことが出来なくなる。
対策として装甲厚を増していくことになるのだが、当然その分重量が増えて人間では運用できなくなる。
そこで膝下や腕など一部を排し、軽量化したものが使われた。
しかし発展甚だしい銃に対しもはや防弾は望めない程となった後には頭部以外を守らなくなり、かわりに戦列など規律を要する戦術をとるために紺色詰襟などの派手な軍服を着るようになる。

なお、頭部を鉄帽(ヘルメット)で守るのはこの時期や第一次大戦からの共通事項なのだが防弾は想定していない。耐えたところで頭蓋骨や頸椎に影響が出るし重たくなる点から破片のみの対処を念頭に置いており、小銃弾の防護まで保証されるのは米軍最新のECHヘルメットなど極々少数の事例に限られる。


日本でも1543年に種子島が伝来してきた。戦国時代以降、新型の当世具足が発展していたが、銃弾に対しての直撃を耐えるのは難しく、南蛮胴などプレートアーマーを和式に仕立て直したもので耐えられるかもしれない、といった具合であった*2
しかし江戸時代となり急速に平和となっていく過程でいったん防弾能力などの向上は打ち止めとなり、対刃物向けとして引き続き具足は使用されていく。

近代

プレートアーマーは衰退を続け組織的に使われることは著しく減ったものの、大戦期までは一部で使われた。
第一次世界大戦時のイタリアではアルディーティと呼ばれる突撃歩兵部隊にてファリーナ・アーマーの名で配備された。
ただし、これは砲撃によって飛び散る破片からの防護が主目的であり、防弾効果はほとんどなかった。
どうしても冬至の鋼鉄製では重量面での限度があるため、時たま胸当てとして使用されては廃れるを繰り返して戦後には使用されなくなっていった。

現代

近代的なボディアーマーはかなり段階的にアプローチされており、合成繊維の発明後にようやく結実することとなる。
1895年、ポーランド出身のシカゴの司祭カシミール・ゼグレンにより軽量なシルク製ボディアーマーを考案した。理論的には正しかったのだが、シルクの手編みでは黒色火薬の拳銃程度が限度であった。
1920年代ごろからコットンに変えた廉価版が犯罪者に用いられ始めたため、警察も.38ロングコルト弾より強力な.38スペシャル弾などを採用している。
第二次大戦中、イギリス軍では爆撃機乗員用にFlakJacketが開発された。ナイロン製で砲弾片への防御を目的としたものであり、実用的なソフトアーマーの先駆けとなった。

第二次大戦後からアメリカを主とした各先進国でケブラー、スペクトラなど軽量で高性能なナイロン製アーマーが採用された(最近ではザイロンへと移り変わっている)。こちらは拳銃弾や破片、破片からの防護を目的としたソフトアーマーに分類される。

さらにセラミックや成形した超高分子量ポリエチレン繊維、性能が向上した装甲鋼などでできた防弾板(アーマープレート/トラウマプレート)を追加で入れることで合成繊維のみのソフトプレートに対小銃弾能力を付与できる。

アーマープレートを入れられるものを総じてプレートキャリアという。対小銃弾防護のみを目的としてソフトアーマーの効果を捨て軽量化したものもあるし、後述の対策で衝撃吸収パッドを装着しているものもある。

ただし繊維など材質の都合、3~5年で使用期限となり交換が必要になる。アーマープレートも耐えるだけ耐えたら再利用不能である場合が多く、特にセラミックアーマーは雑に脱いでポイするだけでも割れて交換…という事態になりかねない。耐用年数を対価に防弾性能を向上させているといえる。

近年では女性も前線勤務に立つ機会が増えたため、小柄な体格や胸などの隙間を埋める機能を加えたプレートキャリアなども存在する。


防御能力

能力を数値化したもの。最低1発は通さないがそれ以上を防ぐことを明記しているものもある。
東西で有名な2つを上げるが、米軍や欧州、中国など別途区分が存在する地域も多い。
概ねクラスが上のものはそれより下の弾も対応する。

NIJ規格

アメリカでの民間規格。別途刃物や打撃についても述べられている。

2024年以前
ランク 所定の銃弾 発射する銃のスペック 凡そのマズルエネルギー 試行する飛距離 試行する弾数
.22 LRHV~弱めの.38スペシャル ピストル 141J~282J 5m 6発
ⅡA 弱めの9mmパラベラム~弱めの.357マグナム ピストル 494J~725J 5m 6発
9mmパラベラム~.357マグナム ピストル 675J~868J 5m 6発
ⅢA 強めの9mmパラベラム~.44マグナム ピストル 790J~1600J 5m 6発
.308ウィンチェスター ライフル 3590J 15m 6発
.3006 M2徹甲弾 ライフル 3894J 15m 1発
Ⅲ+は5.56mmNATO弾が票になかったことからそのレベルに対応していることを示すために作られた非公式のクラス。

2024年以降
HG(ハンドガン)とRF(ライフル)で分化した。
ランク 所定の銃弾 凡そのマズルエネルギー
HG1 弱めの9mmパラベラム~弱めの.357マグナム 494J~725J
HG2 強めの9mmパラベラム~.44マグナム 790J~1600J
RF1 7.62×39mm/5.56mmNATO M193/7.62mmNATO M80 1755J~3590J
RF2 7.62×39mm/5.56mmNATO M193/5.56mmNATO MM855/7.62mmNATO M80 1847J~3590J
RF3 .3006 M2徹甲弾 3894J

GOST装甲規格

ロシアの規格。

2017年以前
ランク 所定の銃弾 凡そのマズルエネルギー 試行する飛距離 試行する弾数
1 9×18mm~7.62×38mmR 160J~225J 5m 5発
2 5.45×18mm~7.62×25mm 128J~488J 5m 5発
2A 12ゲージ散弾 1000J~2000J 5m 5発
3 5.45×39mmPS~7.62×39mmPS 1328J~1555J 5m 3発
4 5.45×39mmPP 1402J 5m 3発
5 7.62×39mmPS~7.62×54mmR PS 1555J~2677J 5m 3発
5A 7.62×39mmAP 2068J 5m 3発
6 7.62×54mmRBP 3840J 5m 3発
6A 7.62×54mmRBS 4151J 5m 3発

2017年以降
BR6では欧州のVPAM PM13~14並の防護までも含まれている。耐えられても肋骨どころか内臓はもつのか…?
ランク 所定の銃弾 使用銃 凡そのマズルエネルギー 試行する飛距離 試行する弾数
BR1 9×18mm APS 225J 5m 5発
BR2 9×21mm SR-1 601J 5m 5発
BR3 9mmパラベラム MP443 790J 5m 5発
BR4 5.45×39mmPS~7.62×39mmPS AK-74/AKM 1402J~1555J 10m 3発
BR5 7.62×54mmRPP~API SVD 3677J~3840J 10m 3発
BR6 12.7×108mm OSV-96 16240~17861J 50m 3発





時間とお金が許す限り作ってみてはいかがだろうか、全身をボディアーマーで覆った服を。作れば貴方は最強になれます。
銃を扱う最強の人類ゴルゴ13でさえも貴方の敵ではない。
戦車大砲ミサイル魔法攻撃や人知を超えた馬鹿力に襲われない限り最強。
アメリカ軍もまだ開発していないのでチャンスだ!金儲けのチャンスだ!!いつも俺を見下していたあいつも!!!僕をいじめたアイツも!!!!
俺、TUEEEEEEEEEEEEEE!!!!!
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ボディアーマー、確かに銃弾から命を守る効果は高いのだが、フィクションでは大幅に誇張されて語られている部分も多いと言われている。
確かに弾丸は貫通しないで済む。重大な銃創やそれによる失血死などを防ぎ、助かる命が大幅に増えるのは間違いない。
が、いくら高クラスのボディアーマーでも、弾が貫通しないだけで命中した衝撃は殆どそのまま撃たれた体に伝わってくる
衝撃緩衝材を追加することはできるが、0にはなり得ない。要するにいくら撃たれてもへっちゃら……とはならず、むしろ拳銃弾一発でも普通に悶絶する


上記表の通り、ポピュラーな拳銃弾でも500Jものエネルギー*3を持っている。それを銃弾より大きな面積で受け止めることで貫通力を落としているだけであって、言ってみればナイフの代わりに柄で突かれるのと大差ない。死ななくなっても結局痛いものは痛い。*4
打撲、骨折も日常茶飯事。下手をすれば内臓破裂を起こして致命傷もあり得るので、貫通しない点のみしか見ていない場合防御したのに助からないということにも繋がる。

それに現在のものはかなり軽量高性能化されているが、我々一般人が簡単に着こなせるほど手軽なものではない。
フィットするようになっているため多少ましだが剣道の防具並みにかさばり、着ているとどうしてもガタイが良くなり目立つ。アーマーの内側にボタンなどがあるとエネルギーの分散ができずボタンが体にめり込むので服も工夫しないといけない*5し、きちんと防護するためには肺や心臓を覆うように締めないといけない。
そしてはるかに重い。最軽量のプレートキャリアでも5~6kg、米軍のIOTVのフルプロテクション(上腕や鼠径部まで守るもの)だと15kgは超えてくる。

ちなみに上の方でゴルゴ13にも勝てると言っているが、ぶっちゃけ普通に手に入るソフトアーマーでは重ね着していようとライフル弾は強力過ぎて防げないしプレートだと防護に穴ができる。つまり不意に拳銃で撃たれるとかならともかく、スナイパーに狙われるような状況では防弾チョッキを着ても全く安心できないことになる。
そもそも基本的にゴルゴは頭を狙ってくるので守りようがない。


結局の処、最も有効な銃弾対策は如何に当たらないようにするかである。
遮蔽物に身を隠す、伏せて被弾面積を減らす、射界から逃れる、射手を制止する…あたりであろうが、そんなことを考えなくていい現実になってほしいと切に願う。






追記・修正よろしくおねがいします


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最終更新:2025年07月10日 21:47

*1 日本警察では銃器による犯罪が著しく少ないので軽量で刃物のみの防護に絞った防刃ベストを着用している。また、厳密には防刃ベストはボディアーマーではない。

*2 デモンストレーション用の具足に弾が貫通していないように見える偽装加工を施して性能を詐称するなどの例があった

*3 野球投手が投げたボールでも150J程度

*4 アーマープレートで拳銃弾を受ける等の場合はマシになるが、こんどは小銃弾の防護を期待されるので結局小銃弾だと同じ痛さになる。

*5 米兵などが袖だけ迷彩柄で胴体はぴっちりした素材の戦闘服を着ている理由