戦車

登録日:2009/11/21(土) 18:54:36
更新日:2021/05/18 Tue 21:57:03NEW!
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①現代戦において欠かせない存在にして、陸戦の王者。
無限軌道または履帯駆動(キャタピラーは商標名)を採用し、強力な火砲、重厚な装甲、圧倒的な機動力、追随を許さぬ通信能力をもって敵を殲滅する最強の兵器。タンク。
本項目で説明する。

②古代において中国や中東などで使用された、馬に牽引される戦闘車両。英語ではチャリオットと呼称される。
タロットの戦車もこちらを指す。
馬の数、乗員の数ともに文明圏や時代によってまちまちだが、乗員は御者と戦闘要員が分かれる都合上、二人から三人が多かったようである。
段々と「直接馬に乗った方がいいよね」ということになり、騎兵に取って代わられる形で廃れていった。

日本語ではチャリオットもタンクも「戦車」と呼ぶが、これは日本にチャリオットの運用実績が全くなく、「戦車=タンク」が常識となっているためである。
逆に、チャリオットの運用実績を持つ中国大陸では、チャリオット=戰車、タンク=坦克(タンクの音宛て)と別々の言葉を充てている。
また、イスラエルで採用された戦車である「メルカバ」シリーズは、チャリオットの意味を持つヘブライ語から命名されている。

③よく怪獣映画やロボものでボコボコにされる殺られ役的ナニカ。上記の戦車と似ているため一括りされるが、外見以外何一つ異なる。
悪質な模倣品に注意して下さい。




【歴史】


〈戦車誕生〉
実は案外新しい兵器であり、戦場に現れてから百年ほどである。飛行機の方が古いくらい。
第一次大戦期、塹壕線を突破するために、英国海軍のチャーチル(後の首相)が主となって陸上戦艦として開発されたマークⅠ菱形戦車が始祖。
計画を秘匿するため水運搬車(タンク)の名前を与えられ、後に一般化した。

第一次世界大戦の塹壕陣地は、乱暴に解説すると「塹壕」「鉄条網」「塹壕内で待ち構える機関銃」で構成されていた。
地面より低い塹壕に歩兵がこもれば機関銃では狙えない、
大砲榴弾の爆風と爆発破片でもなかなか飛び散らない鉄条網は歩兵の足を止める、
足が止まった歩兵は塹壕内で待ち構えた歩兵の機関銃でめった撃ち…

そんな手詰まり状態を「穴も、鉄条網も、機関銃弾も、鉄の壁を押し立ててブチ破る」のがマーク1の主目的だった。
そのため現在の形とは異なり、非常に長い車体や大きな車輪を持つものも多い。
6~8人乗りが主力で装甲も薄い。


〈洗練される戦車〉
実戦投入された戦車は数々の不具合を孕みながらも、大戦の勝利に貢献。この戦果に各国は注目し研究・開発が盛んにされる。

多砲塔化などの紆余曲折を経て、ルノーFTを元にほぼ現在の形(主砲一門+機銃数丁)に落ち着く。

初期はその開発経緯から「歩兵部隊の随伴兵器」としての意味合いが強かった。
それを変えたのが第二次世界大戦時のドイツ軍であり、戦車を集中運用することで、質、量ともに勝るフランス軍を破った戦いである。
但し戦車の集中運用、という発想自体は戦間期にドイツ以外でも考えられていた理論でもある。
フランスでもド・ゴールが戦車の集中運用を提唱していたが、残念ながら軽んじられていた。

二度目の大戦を経ることによってあらゆる能力を向上した戦車は、終に陸戦の王者となった。
以後、戦車の敵は戦車であり「矛と盾」のイタチごっこが追求されることとなる。



〈新たな戦争の中で〉
冷戦の終了と共に、増加してきた非対称戦争においても、戦車は活躍する。
確かに容易に接近を許し、奇襲されることも多いが、防御力の比重が大きい市街戦では、構造的に重防御の難しいその他の車両よりも高い能力を示し、歩兵の盾、強力な移動砲台としての重要性は依然高い。
「居座る」ことの多い警戒行動でも、その重量・装甲・圧迫感は最上。

なお、時々「島国である日本で専守防衛の自衛隊が戦車を持つことに意義があるのか」と指摘されることがあるが、こちらから攻めなくても上陸してきた敵に対して戦車への対応を迫ることができるので、防衛力としては十分意義がある。
日本に戦車がなければ歩兵だけ上陸させればいいが、戦車に対抗するための装備を同行させることで結果的に相手の戦力を縛ることができるのだ。

ただ兵器のお値段が天井知らずで上がり続ける現在、「コスパ悪いから」という理由で配備を縮小したり、あるいはオランダの様に全廃する国もちらほらみられるようになってきた。
実際第二次大戦当時のM4A2中戦車が5万6千$、現代価値に直して2億2千4百万円程度で買えたのに対し、現代のM1A2はお値段約8億6千万円。実に4倍ものお値段に跳ね上がっているのである。
これが戦闘機となると当時の50倍とか60倍になっているのでまだマシな方ではあるが、どこの国の軍隊も予算不足に喘ぐ現在、陸戦兵器としてはぶっちぎりのお値段を誇る戦車の配備は実に重い負担になっている。
また重量級の装軌式装甲戦闘車両である戦車の戦力発揮には、戦車の車台をベースにした架橋戦車を擁する工兵部隊や戦車回収車を擁する整備部隊の支援が不可欠であり、
戦車にガスタービンエンジンを採用していた場合はディーゼルエンジン搭載車でも良好とはいえない燃費が更に悪化するため、ライフサイクルコストも高く付いてしまう。

無論実用面ではまだまだ有用性は高く、イラク戦争では戦車の居なかった歩兵部隊が大きな被害をだして慌てて戦車を購入したり、カナダも一旦止めた戦車生産を復活させたりしている。
しかし予算と言う絶対的な壁はいかんともしがたく、日本でも「今後、戦車部隊は九州と北海道にのみ配備する」という決定が下されている。


【各種特徴】


《攻撃力》

主砲

何はともあれ戦車のアイデンティティ。
戦車の黎明期には口径37mm~57mm、第二次大戦期には75mm~90mm、現代では105mm~125mmと、どんどん大型化している。

第二次大戦より前の古い時代では、機関砲や低速・短砲身の榴弾砲なども使われていたが、現代では高初速の長砲身砲に統一されている。
また現代では、歩兵科の迫撃砲や砲兵科の榴弾砲、軍艦の艦載砲などに至るまで、砲という砲には砲弾を安定して飛ばすための「ライフリング」が施されているのが普通だが、戦車砲だけは滑腔砲、即ちライフリングがない砲が一般的となっている。
これは後述する現用の戦車砲弾にとって、砲弾の回転が邪魔なためである。

(主砲の砲弾種)

〈榴弾(HE)〉
炸薬がいっぱいに詰まった砲弾で、着弾すると爆発して周囲に被害をもたらす。
元々は後述のキャニスター弾と同じ「柘榴弾(ざくろだん)」にルーツを持ち、榴弾は特に炸薬を多量に内包した弾という意味へ変わった。
貫徹力は低いが非装甲目標に対する威力が高く、火力陣地や非装甲車両などに対して使われる。
戦車が元々「塹壕を乗り越えて、敵の機関銃陣地を潰す」ために作られことを考えれば、戦車砲の基本となる砲弾と言ってもよい。

第二次世界大戦までは短延期信管を用いて対戦車戦闘にも使用されたが*1、大口径砲ならば小口径対戦車砲の徹甲弾・徹甲榴弾に匹敵する貫徹力を有していたためである。
戦車の装甲厚が増してくると脆弱な側面を狙わないと困難になってきたため、陽動や戦闘能力の減殺*2あるいは随伴歩兵の排除を図るなど別の目的に変わっている。
なお分厚い装甲板でも叩き割れるという記述が軍事趣味誌で散見されるが、砲兵による破砕射撃で多数の命中弾を浴びた場合ではない限り通常はありえない。
接合部の構造破壊とそれに伴う脱落や亀裂の発生と混同されている例かと推測される。


〈成形炸薬弾(HEAT)〉
戦車の装甲やコンクリート堡塁を打ち抜くための特殊な榴弾。粘着榴弾と共に対ベトン榴弾や破甲榴弾を過去の存在にした。
爆弾をお椀のような形(凹型)にして爆発させると、お椀の上の方に爆風が一点集中し、高圧・高速の衝撃波が生まれるという「モンロー効果」
次にその凹んだ部分に薄い金属の内張りを付けると内張りの金属が変成して高圧のメタルジェットとなって穴を穿つ「ノイマン効果」、この二つの組み合わせを利用した砲弾。

敵の装甲の近くで爆発すると先端から先に超高速の金属ジェットが形勢され、その運動エネルギーで装甲をぶち抜くという仕組み(一昔前は金属ジェットの熱で溶かす、とも言われていたが、これは間違い)。
威力は大体砲弾の直径に依存し、またライフリングがあると、というか砲弾が回転するとこのモンロー・ノイマン効果が減衰する。
これをどうにか出来ないか、とフランスは国産の105mmライフル砲*3を使うにあたって、砲弾のガワだけが回転するG弾なる変態兵器HEAT弾も採用した。
が、結局「ギミック仕込んだ分砲弾の直径が事実上ちっさくなって結局威力減は避けられなかったよ……」というオチが待っていた。
とはいえ同じ砲を積んだイスラエルのスーパーシャーマンの戦績を見るに、失敗作では決して無い。
冷戦時代は第二次世界大戦中よりも高い初速で発射できるようになったため、命中率は大きく改善されている。

安価な上に威力が高い砲弾だが、空間装甲や複合装甲など効果的な対抗策が多く、現代では対戦車用の化学エネルギー弾としては一線を引いている。
が、これはあくまで基本となる技術が頭打ちになっただけで金属内張を安くてコスパのいい銅から他の金属へ変えるなどの改良の余地は残されている。
またHEAT弾は戦車砲弾よりもミサイルや歩兵携行ロケットなどに使用した方がより効力を発揮出来る状態なのも戦車砲弾としての採用が減りつつある理由の一つである。
戦後第二世代型戦車が主力だった1970年代まではHEATの高性能化が目覚ましく、遠距離ではHEAT、近距離ではAPDSといった風に使い分けていた国もあった。


〈多目的対戦車榴弾(HEAT-MP)〉
HEAT弾の進化系。
基本的な構造はHEATと同じだが、金属ジェットが発生する先端部以外にも金属砕片などを仕込んで爆発の威力を上げている。
HEAT弾の装甲貫徹力を保ちつつ、普通の榴弾の様にも使える様にした砲弾で、最新型の戦車以外の全ての目標に対して使用可能な万能さを持つ。
もっとも炸裂時の威力はやはり普通の榴弾には敵わないらしく、120mmHEAT-MPは口径がワンランク下の105mmHEと同等(数値に直すと大体80パーセント台の威力に換算されるとの事)だと言われている。
このため米独では市街戦用として破片榴弾が復活している。

先進国の現代戦車では、基本的にAPFSDS(後述)半分、HEAT-MP半分を搭載して出撃し、普段はHEAT-MPを即応弾として装填し、対戦車戦闘時にAPFSDSを使用するというのが一般的なようだ。


〈粘着榴弾(HESH)〉
イギリス紳士が偏愛する特殊榴弾。プラスチック榴弾(HEP)とも言う。
第二次世界大戦中にイギリスで考案されて対戦車及び対トーチカ用として開発されたが、実戦投入には間に合わず実用化は戦後となった。
構造は基本的に普通の榴弾と同じなのだが、弾頭のキャップが薄く、装甲に着弾すると炸薬が充填された弾頭が衝撃で変形してへばりつき、広く密着した状態で爆発する。
こうすると爆発の衝撃波が装甲を伝わって裏面で収束するという現象(ホプキンソン効果)が発生し、厚い装甲を貫通することなく、その内側部分を破壊して破片を飛散させることができる。

しかし柔らかい内張り(スポールライナー)を車内に張るだけで簡単に対策ができ、跳弾し易い、またHEAT同様に複合装甲にも大した効果が無いという欠点があるため、今ではあまりメジャーな砲弾ではない。

とは言え通常の榴弾としてはHEATよりも威力が高い、コンクリートなどの建造物に対する破壊効果が抜群、何より価格がクッソ安い(榴弾とほぼ一緒で、HEATの1割~2割)などの長所から今でもちょこちょこ使われている。


〈徹甲弾(AP)〉
戦車やコンクリートトーチカなどの硬目標に対して使用する文字通り「装甲を貫徹する」砲弾。初期の小口径砲だと被帽や仮帽が無い場合もあった。
砲弾は単純な金属の塊で、砲が与えた運動エネルギーによって敵の装甲を貫通し、内部の機材や乗員にダメージを与えるという仕組み。
ただし戦車砲の場合はAP弾といっても少量の炸薬が封入されている物も有り、それ等は正確には「徹甲榴弾(APHE)」という分類になる。
小口径砲に内蔵された炸薬量だと効果は限定的だったが、75mm以上の大口径砲では貫徹後に引火や誘爆の発生する確率が飛躍的に増大するため、
炸薬の無い硬芯徹甲弾や装弾筒付徹甲弾、当時は技術的に未熟だった成形炸薬弾よりも内部破壊効果が大きく、修復を手間取らせることが出来た。

現代では後述するようなより進化した高性能徹甲弾が使われており、単純な徹甲弾というのはほぼ廃れている。
もっとも第二次世界大戦の総力戦体制下では希少金属の需要が爆発的に高まっていて、
枢軸国よりも資源に恵まれた連合国でもタングステン弾芯の徹甲弾は潤沢に供給できなかったという事情がある。

運動エネルギーの高い大口径徹甲弾・徹甲榴弾であれば貫通は出来なくても、粘着榴弾程では無いものの内面の装甲剥離が生じて車内に被害を及ぼすため、
加農砲由来の122mm砲を搭載するIS-2と高初速で知られる8.8cm砲を有するティーガーIIはお互いにとって危険な存在だった。


〈硬芯徹甲弾(APCR)〉
第二次大戦期に使われた高性能徹甲弾。高速徹甲弾(HVAP)とも言う*4
徹甲弾と言うのは、基本的にその直径が細ければ細いほど、重ければ重いほど、速度が速ければ速いほどに貫通力が上がる性質を持ち、そのために弾頭に柔らかく硬い素材(アルミとか)を使って軽量化し、通常の徹甲弾よりも初速を向上させているのがこの砲弾である。
もちろん柔らかく軽い素材だけでは貫通効果がないため、その中心に硬く重い素材(タングステンなど)の細い芯を内蔵し、着弾するとこの硬い芯だけが装甲に突き刺さるという仕組みになっている。
つまり通常の徹甲弾に比べて「より細く、より速い」を実現しており、貫通力が大きく跳ね上がっているのだ。
弾芯のタングステン使用量は各国によって異なっていて、第二次世界大戦中だと米>独>露の順で性能差にも繋がった。

ただし柔らかい周辺素材のせいで砲弾の比重が軽いため、空気抵抗で弾速が落ちるのがはやく、遠距離ではむしろ徹甲弾よりも威力が低下してしまうという欠点があった。


〈装弾筒付徹甲弾(APDS)〉
主に冷戦時代のMBTに搭載されていた高性能徹甲弾。
第二次世界大戦中にフランスで実用化されたものの早々に降伏してしまったため、主にイギリスで使用された。
ちなみにドイツでは徹甲榴弾や成形炸薬弾に装弾筒を装着した減口径砲弾を試作していたが、前者は実戦投入例が殆ど確認されておらず、後者は実用化が間に合わなかった。
「比重が軽いため速度が落ちやすい」というAPCRの欠点を解消した砲弾で、芯の周りを軽い金属で覆うのではなく、発射と同時に芯から離れて落ちる特殊な筒(装弾筒)で覆っているのが特徴。
このため敵に対しては固くて細くて重い芯だけが飛んでいくことになり、空気抵抗による速度の落ちやすさが解消できた。
ただし初期のAPDSは遠距離での命中精度に問題があり、戦後も照準器の改善やFCSの整備が進むまでは満足な水準に達しなかった。


〈翼安定式装弾筒付徹甲弾(APFSDS)〉
現用のMBTが搭載している高性能徹甲弾。
APDSの威力をより高めるため、砲弾(弾芯)の重量をより重くしようという試みがなされていたが、芯を太くすると貫通力が低下してしまうため、重さを増すためには前後に、つまり長さを伸ばすしかなかった。
だが芯が一定以上の長さになると、回転しながら飛翔している砲弾が止まる直前のコマのようなぐりんぐりん運動を始めてしまい、安定しなくなることが判明したのである。

このため従来の砲弾の様にライフリングによるスピンによって安定させるのではなく、弓矢の様に安定翼によって安定させようという発想が登場。これがAPFSDSである。
もっとも翼安定式砲弾の発想自体は以前から存在し、第二次世界大戦でドイツが対トーチカ用の榴弾や破甲榴弾として実用化している。日本も擲弾筒用で試作している。

APDSとの違いは芯に翼がついてるか否かの違いでしかないが、大きく違うのはその発射装置である砲そのもの。
通常のライフリングが施された砲では芯に回転を与えてしまうため、APFSDSを発射するのはライフリングがない滑腔砲の方が理想的*5

2000年代以降はL/D比(弾芯の長さを直径で割った数値)30相当のAPFSDSが主流である。
弾芯が長くなるほど貫徹力は増大する反面、弾芯の強度との両立が課題になるため、複合装甲や爆発反応装甲とのイタチゴッコが続いている。

一応徹甲弾という名前がついているが、装甲を貫通するシステムは徹甲弾とは全く異なるのが特徴。
詳しくは割愛するが、「APFSDSで打たれると跳弾させるのはほぼ無理」というレベルで装甲に食い込むため、この砲弾がメインとなった第3世代以降の戦車では傾斜装甲が採用されていない。


〈キャニスター弾〉
対歩兵用の散弾。昔の大砲につかわれていた「ぶどう弾」や本来の「榴弾」の原義である「柘榴弾(ざくろだん)」の子孫である。
散弾銃のショットシェルと原理は同じだが、初速が早い戦車砲から発射されるため、かなり早い段階で子弾が飛散するようになっている。
そのため射程は短いが、もともと歩兵に接近されたときに使う砲弾なためあまり問題はない。
ショットガンとは口径も運動エネルギーも桁違いであり、子弾の一発一発が対戦車ライフルレベルの破壊力を持っている。
歩兵が近距離でこれを受けるとミンチどころか血煙になって消えてしまうという。コワイ!!!
日本軍も戦車砲用の散弾を試作していたが、整備には至らなかった。


〈先進多目的弾(AMP:Advanced Multi-Purpose)〉
可変信管を備えた翼安定式榴弾で、距離2km以内に存在する軟目標(対人・ソフトスキン)や硬目標(鉄筋コンクリート製の障害物・戦車未満の装甲車両)へ対処できる。
多目的成形炸薬弾(HEAT-MP)・破片榴弾(HE-FRAG)・キャニスター弾(空中炸裂弾)の後継として開発されていて、米陸軍では2020年代に配備予定。
攻撃ヘリコプターやパワード・リフトの排除も可能とされているが、携帯地対空誘導弾(MANPADS)のように小型UAVの迎撃能力まで有するのかは不明。


〈焼夷煙幕弾〉
第二次大戦で盛んに使われていた砲弾だが、スモーク・ディスチャージャーに取って代わられた。
リンなどの焼夷材をまき散らしてそれを発火させ、盛大に煙を発生させる砲弾で、煙幕目的でも焼夷目的でも使われた。
抵抗の激しい防御陣地や敵部隊へ撃ち込み、支援要請した味方砲兵の観測援護に使用される例もあったという。
現用の戦車の場合、赤外線探査などを標準搭載しており煙幕はほとんど無意味なので搭載されていない。


〈ミサイル〉
戦車砲から発射されるミサイルも、現代戦車の重要な武器。
航空戦力で優位に立つ西側諸国ではあまりメジャーではないが、それを仮想敵とする東側諸国や、戦闘ヘリが現実的な脅威となるイスラエルなどでは多用されている。
基本的には対戦闘ヘリ用の武器だが、HEAT弾頭を搭載しており戦車相手にもある程度の有効性を持つ。
砲弾よりも費用が桁違いに掛かる上、嵩張る欠点も持つ。
一昔前は砲を意味する「ガン」とミサイル「発射機」を意味する「ランチャー」を合わせた「ガランチャー」という名称が有ったが今はほとんど使われていない。


現在は各国で次世代の主砲が研究されているが、今のところ電熱砲や電熱化学砲を有力視する声が多い。


機銃

戦車のサブウェポン。弾数が無限なので雑魚相手に重宝する。
主砲の取り回しを補う意味で極めて重要な武装であり、接近してきた歩兵を追い散らしたり、兵員輸送車などのソフトスキン目標を狙ったり、あるいは戦闘ヘリなどへの悪あがきにと、幅広く使われる。
地味だが重要な役割がスポッティング・ライフル。主砲と同軸の機銃をまず射つことによって照準の正確さを確認し、しかる後に本命の主砲を発射する射撃法。コンピュータ制御による補正が可能になるまでは同軸機銃の一番の意義はこの用法だった。

基本的には
  • 主砲の脇に併設内蔵されているもの(同軸機銃)
  • 車体、とくに前面に内蔵されているもの(車体機銃)
  • 車体天井に搭載されているもの(対空機銃)
の3箇所がメジャーだが、現代のMBTでは防御上の欠点になる車体機銃は廃止されている場合が多い。


他にも特殊装備として

〈Sマイン〉
ティーガーなどのドイツ戦車が搭載していた近接防御兵装で、平たく言えば「空中に打ち上げられて爆発するクレイモア地雷」。
本来は通常の地雷として使われていたものだが、対戦車武器を持った歩兵の対策として戦車に搭載された。

<迫撃砲>
対歩兵用でイスラエルのメルカバに正式採用されたり、ウクライナの戦車で試験導入された。
なお第二次世界大戦の英戦車にも搭載されていたが、使用弾種は煙幕弾のみだったという(レンドリースされたソ連は榴弾も加えた)。

〈APS〉
現用MBTに搭載例がみられる、対ミサイルアクティブ防護装置。
ミサイルやロケットなどの接近を感知して、自動で迎撃してくれるACのような装備である。
イスラエルのトロフィーやロシアのアリーナなどが有名。


《防御力》

〈装甲防御〉
初期は単なる肉厚鉄板、鋼鉄板だったが、材質工学の進歩によってセラミック材など性質の異なる多種の装甲材を複合積層的に用いる複合装甲が主になる。
かつては成形炸薬弾対策のために中空装甲を持つ場合も有ったが中空スペース分が無駄になる事やAPFSDSにほぼ無力な為廃れつつある。

敵に面する前面装甲がもっとも厚く、傾斜がついている(避弾経始)。
傾斜角60°の装甲板は計算上だと傾斜角0°時の倍の厚さに相当すると言われているが、実際は貫徹時における徹甲弾の存速が倍必要となる効果であるため、
冷戦前に実用化された運動エネルギー弾(AP・APHE・APCNR*6・APCR・APDS)にはそれ以上の防弾性を発揮し、内部容積の減少という短所に対して補って余りあっていた。
しかしながらユゴニオ弾性限界を突破するAPFSDSと化学エネルギー弾(HEAT・EFP・HESH)に対しては見掛け上の厚さを増す効果のみしか得られないため、
複合装甲が導入された戦後第3世代型以降の主力戦車は傾斜装甲の採用に積極的では無くなっている。

天井や背面・ラジエーター部分は比較的薄い。
それでも対地攻撃機や攻撃ヘリコプターが装備する機関砲で貫通させるのは容易ではないため、
第二次世界大戦中にはHVAP/APCRが投入されるようになり、現在はAPDSやHEDP(硬軟両用の成形炸薬弾だが、HEAT-MPよりも軟目標寄りである)が使用されている。

〈リアクティブアーマー(反応装甲)〉
着弾直前に装甲自体が弾けることによって敵弾を防ぐ。正確にはこの手の物は「爆発反応装甲(ERA)」という。
「モンロー・ノイマン効果」によるメタルジェットを邪魔するモノなので、HEAT弾など対戦車兵器に有効な防御手段だが、当然使いきりのうえ、味方も装甲が爆ぜた時に巻き添えを負いかねないのが欠点。
イラスエルやドイツでは付随被害を低減すべく、材質を変更して破片が粉砕され易く加工したCOHERAやCLARAERAを実用化している。

最近の対戦車兵器の中はこの反応装甲対策で、HEAT弾頭を前後に二つ以上並べたもの(タンデム弾頭)もある。
もっとも爆発反応装甲の方もタンデム弾頭対策に乗り出していて、イタチゴッコとなっている。
またコンタークト5などの第二世代以降の爆発反応装甲は、HEATのみならずAPFSDSに対しても効力を発揮している。

ちなみに反応装甲には非爆発性のタイプ(NERA)も存在していて、冷戦終結後は戦車のみならず装甲車にも補助装甲として採用されている。
爆発反応装甲よりも効果は限定的だが、タンデム弾頭や付随被害への対策に有効であるため、現在でも研究開発が進められている。
更に将来的には次世代型として「電磁反応装甲」という物が研究開発されているとか。

〈ステルス性〉
披発見率を下げることは戦車にとっても重要。ただし戦闘機のそれとは意味合いが異なりレーダー反射率より震動や音、暴露面積、色彩、廃熱の方が重視される。


【戦車の乗員】

昔は試行錯誤の途中であったり、戦車運用・兵器の差異などから1人から10人近くとかなり様々だったが、現代では大体3~4名が乗ることになる。
不要になった役割・兼任・人員不足やらで2名以下に出来る(になる場合もある)のだが、その場合警戒や車両損傷時の対応や撤退時などにおける対処が困難になる。
つまり戦車の力を生かしきれなくなるし、貴重な人員が減ってしまいやすくもなり、人的にも資金的にも損に繋がる…とされる。

〈車長〉
その戦車の指揮者。
仕事は各搭乗員に指示を与えて戦車の指揮・統制を行うことと、ペリスコープを使ったりキューポラから顔を出したりして周囲を把握すること。
いわば戦車の目・兼・頭脳であり、最も重要なポジションである。

〈砲手〉
主に主砲と同軸機銃、というか砲塔を操作する人のことを指す。
仕事は当然ながら主砲を操作して敵をぶっ飛ばすことである。
かつてはハンドルをぐるぐる回したり肩の力で砲を動かしたりと中々の重労働だったが、今では完全電子機力化されているためゲームパッド感覚で操作が可能。
自走砲だが、実際にコントローラーがXBOX Oneの物もある。

〈操縦手〉
文字通り、戦車を操縦する人。
これも昔は重労働だったが、電子化が進んだ現代ではインドア派でも楽々運転が可能。
ちなみに日本で戦車に乗る場合、大型特殊と自衛隊内で認定される資格(MOS)が必要だ。
戦闘中だろうが移動中だろうが、戦車が動いている限りは最も忙しいポジションなので、他の乗員と違って別の役割を兼任するということが殆どない(スウェーデンのstrv103など、例外もある)。

〈装填手〉
砲弾を主砲に装填したり、場合によっては入れ替えたりする人。
戦車の砲弾というのはものすごい重量があり、第二次大戦時の75mm砲弾でも弾頭だけで5~8kg、
現用の120mmAPFSDSも弾頭のみなら7kg程度だが全体だと20kg程度になる。
成人男性にとってもハードな超肉体労働であり、第二次大戦当時の装填手は、1か月で2~3kgはやせられたという。
内容自体は比較的単純な肉体労働であるため、下っ端の戦車兵が一番に配属されるポジションでもある(基本的には装填手→砲手・操縦手→車長という流れで出世していく)。
現在では砲弾があまりに大きく重くなり過ぎて負担が高い&なるべく人員を節約して車内容積を小さくしたいという事情や、
機械の安定かつ迅速な装填速度が魅力的などの理由で、日本の90式を始めとした第三世代以降のMBTでは自動装填装置を採用した戦車も増えている一方、
人員が少ないという事は戦車単独で整備や周辺警戒が必要になった時の人手も減るという事になるため、
アメリカのM1エイブラムスやイスラエルのメルカバ等この点を嫌って技術的には可能ながらも敢えて手動装填としている戦車も少なくない。

〈通信手〉
他戦車や部隊との通信を行い、かつ通信機器を調整管理する人。
昔の通信機というのは現代のスマホなどとは比較にならんほど大変なものであり、専門知識がないと扱えない代物だった。
このため他の乗員が機甲科であるのに対して、通信手だけは通信科の兵士、といった変則配置になっていた国も多く(ドイツとか)、車内ではやや独特の存在。

現代では通信機器が超進歩したため殆ど不要な存在となっている。



【戦車の敵達】


〈航空機〉
残念ながら多くの陸戦兵器と同様に、空からの攻撃にはほぼ無力。非武装だったり、マヌケなヘリくらいなら喰えるが基本はSAM部隊に任せよう。ルーデル恐い。
ちなみにロシアはチート的制空能力を持つアメリカを仮想敵としているため、対空戦闘に力を入れている。

〈砲兵〉
戦車の敵は「航空機と砲兵」で十分。そもそも戦車の登場と同時に各国の砲兵は対戦車戦闘を任務に加えている。
ヴィットマンなどのエースが活躍したと言われるWW2西部戦線ですら
戦車の損害要因は空襲と間接射撃で4割を占めている。(以下地雷2割、対戦車砲2割、戦車は1割5分!)
敵の砲兵陣地を完全に叩き潰せなければ戦車はまともに動けないのだ。(世話が焼けるな…)
無論生半可な砲兵陣地では蹂躙されてしまうし、戦車さえ阻止可能な突撃破砕射撃が可能な砲兵部隊が相手だと他兵科(歩兵・騎兵)でも突破できず迂回を余儀なくされる。

〈地雷〉
トラウマ。
履帯自体の交換は簡単だが、衝撃でシャフトが逝ったり、下手してひっくり返されたり……
ちなみに対戦車地雷はスイッチが入るまでのセット荷重が高いため、人間(何も持っていない標準体型の方々)が踏みつけても爆発しない(完全武装した兵士がいい具合に踏むと吹き飛びます)。

〈歩兵〉
知っての通り、歩兵にとって戦車は恐怖の的。
よって一見「ゴミのようだ!」で無双出来るように思われるが、実は対戦車兵器を装備した歩兵はものすごく危険な敵で、戦車にとっても歩兵はわりと恐怖の的。
第二次大戦末期、パンツァーファウストを装備した3人の兵士によって22両のチャーチル戦車がたった1戦で撃破されたり
第四次中東戦争ではサガーとRPGの前にイスラエルの精鋭戦車部隊がフルボッコにされ、世界的に「戦車不要論(約3回目)」が真剣に論議されたりと、
無双されてしまったことすらある。
携行対戦車兵器の性能もどんどん向上しており、戦車の視角が狭いのもあいまって懐に入られるとかなり不利。随伴歩兵なしの単独行動ダメ、絶対。

〈沼〉
トラウマその2。厳密には取り分け粘度の高い湿地・泥濘地の沼が苦手。
つか車両はみんな嫌い。歩兵か空軍に頼め。

〈戦車〉
強力な敵だが、上記と比べるとまだフェアな戦いになるので扱いやすい。
数や性能差、地形利用などでボコされることも多いが。

〈機動砲〉(装輪装甲車)
タイヤ式装甲車に戦車砲載せた最近流行りの兵器。MGS4にも出てきたが、気になるならチェンタウロでググってみよう。
後述の理由から、大した敵にはならないとされる。

〈対戦車砲〉
昔は好敵手だったが、今では歩兵が対戦車兵器を使った方が安いし強いので相手してくれなくなった。哀しい。

〈戦車・機動砲以外の車両〉
カモ。美味しくいただける。
…が、対戦車ミサイルを搭載した鉄砲玉や爆薬を満載した自爆トラックなどもいるので、思わぬカウンターを喰らう可能性もある。

〈対戦車犬〉
な、なんてひどいことを!!!!

ハンス・ウルリッヒ・ルーデル
ソ連の戦車兵「オワタ\(^o^)/」


【戦車の亜種】

〈自走砲〉
その名の通り、自走可能な大砲。
機械化砲兵の主要器材で、車台は戦車・装甲車から転用している。
現代はコスト削減のために、ソフトスキンの荷台へ大砲を搭載した無砲塔形式の自走砲も増えつつある。
砲兵なので間接照準射撃による面制圧が主であり、直接照準射撃で点目標を狙う戦車とは役割が別である。

歩兵が運用する迫撃砲も自走化されており、近年は後装式で自動装填装置を備える砲塔形式も存在する。
高射機関砲を自走化させた物は、後述の通り対空戦車と呼ばれる事も多い。

突撃砲
自走砲の亜種。
結果的に戦車になっているが、根本的な発想としては戦車の派生品というよりは大砲を発展させた兵器。
通常の戦車と区別するため、砲塔が回らないタイプのものは大体こちらに分類される。
基本的に低コスト短納期で作れる。

一見安いだけでダメダメに見えるが、第二次大戦中のドイツ軍において大活躍している。詳しくは突撃砲のページにて。
もちろん短所が多いことや、戦車技術や対戦車兵器などが充実し過ぎたことから第二次大戦後はほとんど姿を消し、現代はほぼ絶滅している。

〈駆逐戦車〉
対戦車戦闘を主にする突撃砲の亜種。
主に独軍で使用された。
現代においても、スウェーデン軍で一時期採用された(Strv.103)が、突撃砲と同様の理由で姿を消した。

〈装輪戦車〉〈機動砲〉
戦車より速い!安い!弱い!
戦略機動性、整備性、燃費、価格、以外のほぼ全ての点、特にタイヤ式のため接地圧過大になりやすく、軽装備しか出来ず命中精度でも劣る。
もっとも低反動砲と高価なFCSを採用した物もあり、旧式戦車なら対抗できなくもない。
腐っても装甲車両なので対戦車兵器を持たない歩兵は悲惨な目に遭う。
スピード命の作戦をこなすための兵器。
市街戦では戦車よりはやーい。 


〈対空戦車〉
戦車砲の代わりに20~40mm口径の機関砲を搭載する戦車。航空機を捕捉するためのレーダーを積まれる場合も。
蝿叩き、ガンタンクとも呼ばれるが、その真の姿は、あの恐るべき悪魔A-10すら叩き落とす車両部隊の守護神。
戦車以外の装甲車両もイケるくち。特に歩兵さんは一瞬で塵になります。

最近は地対空ミサイルとのハイブリッドがトレンド。


〈装甲車〉
文字通り装甲のある車両。武装が付いていない車両も含む。
装甲車自体は警察などの民間でも使われることが多い車両のため、兵器を備えていたり軍用の車両だと装甲戦闘車両と称されたりもする。

見た目・武装・運用目的などがかなり幅広いため、細かく細分化されている。
制式の車両を手に入れづらいゲリラなどにおいては一般車を改造して装甲車にしている例がよく見られる。
こちらは自走砲と違い、第二次大戦後の環境の変化において地位をますます強固なものにした。


【記事がある戦車一覧】

【実在】


イギリス
ドイツ
ソ連・ロシア
フランス
アメリカ
日本
イタリア
韓国

【架空】


【戦車と関連がある項目】


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最終更新:2021年05月18日 21:57

*1 本来は陣地攻撃用で、掩体壕の破壊や掩蓋内部の目標に被害を与えるために使用される。瞬発信管と違ってすぐに起爆しないため、意図的に跳弾させて空中炸裂や戦車底面の損傷を狙うという戦技もあるが、名人芸の域である。

*2 榴弾でも履帯、砲身、潜望鏡、照準器、車体機銃、ターレットリングなどを損傷させられる。

*3 詳細はこの砲の名称であるCN-105-F1あたりで調べてほしい

*4 ただし弾頭がただの鋼鉄だったり軟鉄製の高速徹甲弾も存在するため、必ずしも高速徹甲弾=硬芯徹甲弾では無い

*5 ライフル砲でも回転を防止するスリップリングを取り付ければ発射は可能

*6 ゲルリッヒ砲やリトルジョン・アダプターを装着した火砲に用いられる徹甲弾で、SVAPという略称も存在する。