トヨタ・MR2(AW型)

登録日:2010/01/26 Tue 14:09:17
更新日:2025/04/15 Tue 14:43:06
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MR2(AW11/AW10)は、トヨタ自動車が生産していた1600cc及び1500ccのミッドシップ・スペシャリティカーである。
MR 2やMR-2などとよく標記されているが、正しくは『MR2』である。

日本の市販車では史上初めてとなるミッドシップレイアウトを採用した車種であり、今でも言われがちだが当時のトヨタはつまらない車を作っている・・というイメージが強く、「将来、常識では考えられないひと味違ったクルマがあってもいいのではないか」という社長の一言から開発に至った経緯を持つ。

トヨタはあくまでこのクルマを“スペシャリティカー”と位置付けたかったようだが、
そのミッドシップ・スポーツ然としたスタイルはスポーツ走行を求める人々の心をくすぐるには十分すぎたようで、
スポーツカー同然に扱われ、型式の「AW(エーダブ)」の愛称で親しまれた。

「前輪駆動車(FF)の前後を逆にすれば…」という発想・手法で作られた*1為、
エンジンはドライブシャフトのほぼ真上とかなりリア寄りになっていて、前後の重量配分も後部に比重がある。
エンジンの位置は高めで、重心が高い。


最初期のミッドシップカーであるため、挙動や特性がRRに近しいものを持つ。
フロントが非常に軽く、後部エンジン車両らしい初期旋回性の鋭さが持ち味で、加速時のトラクションのかかりが良い。
まだサスペンションのジオメトリーが煮詰められる前の車なので、荷重によりトーがものすごい動きをするのも相まり、
旋回挙動中に不用意にアクセルを開けると簡単にリアタイヤがブレイクしたが、
その分、前荷重が不足していると途端に曲がらなくなるという両極端な性格を持った。
またフロントが軽いということは、ハードブレーキングでフロントタイヤがロックしやすいという点もあり、
このクルマを乗りこなそうと奮闘する者は多く、難しくとも乗りこなせることがMR2乗りのステータスでもあった。



◯生い立ち

1983年11月
東京モーターショーでコンセプトカー・SV-3を発表。

1984年6月
コンセプトカーのSV-3をベースに、日本車初のミッドシップエンジン型市販車として誕生した。
安価で量産性を高めるため、足回り・エンジン・ミッションは既存のE80型カローラを流用した。

1984年
日本カーオブザイヤーを受賞。

1986年
マイナーチェンジ。後期型へ移行。
スーパーチャージャー搭載・Tバールーフ装備の新グレード“G(-Limited) SUPER CHARGER”を追加した。

1989年
最終型生産終了。
SW型に完全移行。



◯基本グレード


  • S(AW10)

3A-U型1500ccのエンジンを搭載した廉価グレード。
オプションのリアウィングの形状が違う。

  • G

4A-GE(LU)型1600ccのエンジンを搭載。
最も標準的なグレード。

  • G-Limited

パワーウィンドウ、集中ドアロック、ブロンズガラス、7-Wayシートを装備した上級グレード

  • G(-Limited) SUPER CHARGER

後期型より追加。スーパーチャージャーを装着した4A-GZEエンジンを搭載。
出力が向上し、パワーアップに伴うリアサスペンションの改良・ダンパーの大径化などがなされた。



◯オプショナルモデル


  • ホワイトランナー

前期型ではバンパーやサイドステップ、ウィング、マッドガードがブラックアウトされている。
これを一体ホワイト化したモデル。
ちなみにランナーのスペルは「RUNNER」ではなく「LANNER」。

  • ブラックリミテッド

後期モデルチェンジ間際に用意された、前期型の専用ブラックカラーモデル。
専用モールストライプ、ロゴあり。

  • ムーンルーフ

前期型のみ、ムーンルーフモデルが用意されている。
着脱式トリムと手動チルトのガラスルーフ。

  • Tバールーフ

後期型より、Tバールーフモデルが用意されている。
着脱式トリムで、最終型ではハーフミラーになっている。
このモデルはルーフアンテナから変更され、右側リアにオートアンテナを備えている。

  • ADパッケージ

後期型スーパーチャージャーモデルにのみ追加。
POTENZA RE-71を装備、リアスタビライザー装着、スプリングとショックアブソーバーがハード寄りに調整されたモデル。

  • スーパーエディション

後期型より追加。専用ツートーンボディカラー、専用レザーコンビネーションシート、MOMO製ステアリング、革巻きサイドブレーキハンドル(カバー)装着。
専用モールストライプ、ルーフバイザーとドア部にロゴ有り。

  • スーパーエディションII

最終型限定。基本的には上記スーパーエディションに準拠するが、専用色としてブラキッシュブルーマイカが用意されており、シートがRECARO LXモデルに変更されている。
ドアトリムもRECARO LXに色味を合わせたものに変更されている。



◯エンジン


  • 3A-U

直4SOHC8バルブ 1,500ccキャブレター。
83ps/5600rpm 12.0㎏-m/3600rpm

  • 4A-GE(LU)

直4DOHC16バルブ 1,600ccインジェクション。
130PS/6,600rpm 15.2kg・m/5,200rpm
可変吸気システム「T-VIS」搭載。
前期型ではI型、後期型ではII型と呼ばれ、搭載されているエンジンモデルの違いがある。

  • 4A-GZE

直4DOHC16バルブスーパーチャージャー 1,600ccインジェクション。
145PS/6,400rpm
最大トルク 19.0kg・m/4,400rpm
スーパーチャージャーは電磁クラッチ制御され、スロットル開度を検知して2,000rpmから過給される。



◯ミッション

NAモデルはトヨタ伝統のC型(C52)、SCモデルは新型エンジンである4A-GZEのパワーとトルクへの余裕を持たせるため、E型(E51)が組み込まれている。
AT車両は新規開発の4速トルコン式オートマチックトランスミッションが採用されている。



◯現代におけるAW11


最終型でも製造されて30年近く経過する年式であり、部品が手に入りづらいこと、高年式車ゆえの故障等の不安要素が存在する。



  • 機械的部品関連

エンジン関連部品はAE86/92の影響もあり、新品とはいかずともリビルトや中古等によって、供給がなくとも部品の入手が容易なケースも多く見られる。
(一部例外あり)

SCモデルに搭載されているE51型ミッションは2013年頃にシンクロナイザーリング、低速ギアの各種の生産がストップしているのが確認されている。
後継車両のSW20型やスプリンターカリブ、AE92&101SCのモデル、ST215までのセリカ等が採用していたミッションではあるが、その後はE型ミッションを搭載する車両がトヨタから消失したため。
特にAW11のE51型ミッションはE型ミッション初期モデルゆえにシンクロ関係の耐久性があまり無く、状態に不安が残る。
先述の要因も相まってE型ミッションのオーバーホールは困難と言わざるを得ない。
しかしながらNAモデルのミッションマウント、ブラケット、対応したドライブシャフトを用意することによってC型ミッションへ換装することが可能であり、200馬力を超えるような過度なパワーアップチューニングを施さなければ出力には充分適応でき、部品供給も継続されている(初代ヴィッツのMTモデルがC型ミッションである)ため解決が可能、なのでZZT231用の6速を頑張れば載せられる。
ただC型もそろそろ弾数が怪しくなってはいる。


  • ボディ関連

外装関連部品はほぼ生産終了。ウィンドウの極一部のガーニッシュ、モール等のみが入手できる。
現在入手可能な新品部品は、プラスチックベースのフロントエンブレムのみである。


  • 電子装備関連

経年劣化、および旧式エアコン冷媒ガス(R12)使用車であるため、必然的に故障がみられやすい。
修理及びR134a化によって対応可能。
但しオートエアコン装着車両は温度センサーユニットの劣化も係るため、煩雑化する。
4A-G特有のアイドリング関係の不調も存在し、ISCVやスロットルポジションセンサー、ECU等が疑われるケースが多い。
旧式リトラクタブルヘッドライト車ゆえに、リトラクターリレーやモーターの不調により、通称“リトラダンシング(リトラクタブルヘッドライトが頻繁に起きたり格納されたりする症状)”も存在する。



◯コラム

AW型は全てのグレード・型を通してパワーステアリングは搭載されていない。
そのため発進~超低速走行時はハンドルが重いので注意が必要である。
とはいえフロントが軽いしタイヤも細いので、重さを感じるのは据え切りの時ぐらいだけど。

生産された約16万台中、4分の3が北米に輸出され、アメリカではインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。開発に至ったのも、開発主査が北米出張時に地元の若者がアメ車ではなくロータスやトライアンフといったイギリス製のライトウェイトスポーツカーを乗り回していた光景を目にしたことがきっかけ。

AWを手にした世代はスーパーカーブームに幼少期を過ごし、免許を持てるようになった層が多く「スーパーカーは高くて手が出せないけど、ミッドシップには乗ってみたい…」という思いをにどストライクすることとなった。
今も乗り継いでいるオーナーにはスーパーカー世代の人が多い。

リトラクタブルライトに角張ったボディを持ち、その独特のスタイルは「ガンダムとかメカが好きそうな人が乗るクルマ」と形容される。

トヨタ博物館に展示されている1次試作車は量産車よりも丸みを帯びたデザインとなっており、後にマツダから登場したAZ-1を大型化したような見た目となっている。

フロントの軽さからくる荷重不足を抑えようと、フロントのメンテナンストランクに工具や砂袋などの重りを詰める人が多い。

デビュー前に、某雑誌がフィアットX1/9をベースにレプリカを製作したことがある。



フジミから1/24、1/48、今はなきLSから1/20で発売された。
フジミの1/24は初めプロトタイプのSV-3だったが、デビュー時に前期型サンルーフ、マイナーチェンジ時に後期型Tバールーフに金型が改修された。
ちなみに後部にはエンジンが再現されている。

バリエーションには峠シリーズやオーバーレブ!仕様やエアダムチューン仕様等がある。
オーバーレブ!仕様以降は、Tバールーフから通常のルーフに金型が改修されている。

1/48は初期型のままであるが、最近めっきり見かけない。

LSは他の1/20スケール同様プロモーションモデルである。
現在では有井から再販されている。

トミカとチョロQも発売されたが、こちらはモーターショー発表時のプロトタイプ車を製品化したため、リアスポイラーの形状が異なっている。


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最終更新:2025年04月15日 14:43

*1 このレイアウトはトヨタ独自ではなく、フィアットX1/9やポンティアックフィエロといった先駆車が存在した。