モーター

登録日:2022/06/26 Sun 22:06:03
更新日:2022/06/28 Tue 23:41:51
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モーター(電動機)とは、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換する電気機器である。
ミニ四駆のモーターに関してはモーター(ミニ四駆)を。
いないとは思うが迫撃砲(mortar)については大砲(兵器)を。

概要

電気エネルギーを力学的エネルギー(運動エネルギー)に変換する電気機器。
この項目では「電動機」としてのモーターを扱う。

…え、どゆこと?

実は、「モーター」という言葉は本来、電動機を含めた「原動機」「エンジン」「動力」全般を指すものである。
自動車に関連するものが「モーター○○」と表されたり、バイク英語ではモーターサイクルと呼ばれることを考えれば、なんとなくでも納得がいくであろう。
あとロケットエンジンも「ロケットモーター」と呼ばれることもあるし。

ただし、この項目では上記の通り電動機としてのモーターについて扱うものとする。

で、本題。
電気エネルギーをローレンツ力(電気と磁気の相互作用による力)や超音波などを用いて、運動エネルギーに変換する電気機器である。
生活家電からホビーまでありとあらゆる機器にモーターが潜んでおり、現代社会においては電気消費量の半分以上はモーターのものとすら言われている。

燃料を混合したり圧縮したりと回転が軌道に乗るまでが遅い内燃式エンジンと違い、電気を流した瞬間にダイレクトに回転力を生む為、よく「トルク」が強い動力とも言われる。
出力とは微妙に違うのだが、「完全に停止した状態からの起動に強い」といえば多分合っている。
ただトルク=出力ではない*1以上、普通のモーターに直接負荷の強い仕事をさせようとすると勿論固まるため、大抵は回転数の調整も兼ねて大小複数の歯車を経由してから仕事をさせるのが一般的な使われ方である。

構成

モーターとして最もメジャーな「回転する電動機」の構成は、大まかに言えば
  • 回転して実際に動力を発生させる「回転子」
  • 回転子を電磁気の作用などで駆動する「固定子」(界磁とも)
の2つで構成されている。
いや、電磁気で動力を発生させるモーターだけでなく、超音波モーターも大雑把に言えばこの構成だし、リニアモーターすら「回転子が回転ではなく直進するようになっただけ」と言うこともできる。
軸とか、冷却機構とかを省いた「最小限の構成」とすれば本当にこう書くしか無い。

回転子のうち、整流子電動機、つまりマブチモーターなどの小型直流モーターなどに使われる、「外部から電力を供給されて固定子との相互作用を行うもの」は、電機子と言われることもある。

…なんか、「整流子」というまた聞き慣れない単語が出てきたが、これは上記の「電機子」と呼ばれる形の回転子を持つモーター特有の機構である。
大雑把に言うなら、「回転子に順番に通電を行って回転運動を成立させるためのスイッチ」である。
同じコイルにずっと通電していたら、途中で止まってしまい回転しなくなってしまう。
そのため、通電するコイルを電機子を用いて次々と切り替えているのである。
電動工具を扱っている方ならば、工具の保守作業の一つで「カーボンブラシの交換」というのをやったりことがあるだろう。
あるいはミニ四レーサー諸兄の中には「プラズマダッシュモーターの交換用カーボンブラシ」を店頭で見かけた事がある方もいるだろう。
あの「カーボンブラシ」とは、電機子に接触して外部から給電するための部品である。
うん、消耗品です。
そして整流子電動機の泣き所が、実はこのカーボンブラシと整流子でもある。
上記の通りすり減る消耗品なので定期的に交換する必要があり、さらに高負荷状態が続くとフラッシュオーバー*2が発生する懸念もあると、とにかく整備性の面で劣る。
そのため、特に大規模な直流モーターは現代では整流子を持たない交流モーターへの置き換えが進んでいる。

モーターの分類

一覧化を避けるためにこれまた大雑把に。

電流の種類による分類

  • 直流モーター…直流電流で稼働するモーター。回転子と固定子の電磁気による相互作用で稼働する。
  • 直流パルスモーター…固定子に順繰りにパルス電流を送ることで稼働する。「機動戦士ガンダム」に登場するエアバイク・ワッパは直流パルスモータを動力とするとも言われている。
  • 交流モーター…交流電流で稼働するモーター。基本的には交流の「一定時間ごとに極性が変わる」という特性で稼働する。単相電動機、三相電動機、同期電動機など様々な種類がある。

回転子・固定子の種類による分類

  • 永久磁石界磁電動機…界磁が永久磁石になっているタイプ。要するにミニ四駆のモーターやマブチモーターである。直流モーターとしては一番シンプルな形。
  • 電磁石界磁電動機…界磁が電磁石になっているタイプ。速度制御が容易などの点で、電車などに使われる大規模な直流モーターは大抵これ。
  • 誘導電動機…交流モーターのうち、回転子が電力供給の無い単なる金属塊になっているタイプ。交流モーターでは最もシンプルで軽量。
  • 同期電動機…交流モーターのうち、回転子が外部から電力供給を受ける電磁石や、あるいは永久磁石になっているタイプ。誘導電動機より重量があり複雑になるが、効率面では誘導電動機よりも優れているとされる。

その他

  • サーボモーター…動力ではなく、位置決めなどに使われるモーター。モーター自体に回転数や角度などを検出するセンサーが組み込まれており、精密な動作が可能。

他にもあるがだいたいこれくらい覚えておけばなんとかなる(適当

誘導電動機・同期電動機の速度制御

交流電動機のうち、誘導電動機と同期電動機は従来は「一定の速度で回す」という用途で用いられてきた。
理由は、回転数が電源の周波数に依存するため、速度を変えるのが非常に難しいためである。
そのため電車などの回転数を頻繁に変える必要がある用途(可変速運転)では、直流電動機が用いられてきた。
…だが、直流電動機の泣き所は上記の通りブラシと整流子である。
ブラシは消耗品なので定期的に交換する必要があるし、その作業も決して楽とは言えない。
一方の誘導電動機はそもそも回転子に電流を供給する必要がないので、ブラシが不要になる。
さらに軽量化も期待できる。
だが、回転数が周波数に依存する交流電動機は、電圧や電流を調節するだけで速度制御ができる直流電動機と違って速度制御が非常に難しい。

交流電動機の整備性は魅力だが、制御が難しい。
さて、どうする。
それを解決したのが可変電圧可変周波数制御(VFD/VVVF)である。
大電力用半導体を用いて、電圧と周波数を変えることで交流電動機の速度制御が実用的なものとなり、交流電動機による可変速運転が実現したのだ。

VVVFについて詳しく書くとさらに長くなってしまうので割愛するが、
  • 近年の家電が起動するときになる「ジー…」「キーン」という音
  • ハイブリッドカーや電気自動車が発車する時に鳴る「ヒューン」という音
  • 新型電車の起動時の「ウオォォォォン」「チュイーン…」「ソラシドレミファー」という音
この辺りの音は、VVVF制御装置が直流電流を交流電流に変換し、速度制御をしている音である。

最近流行りの「DCモーター」って?

最近の家電で、「DCモーター搭載」「DCブラシレスモーターで高効率低騒音」などを謳う製品があるのに気づいた方もいるだろう。
「DCモーターってくらいだから、要するに直流モーターなんでしょ?」と思っている方もいるだろうが、この「DC(ブラシレス)モーター」は、厳密には直流電動機ではない。

その実態は「インバータを内蔵しており、直流電流を流すだけで動く交流電動機」である。

電動機の部分は永久磁石同期電動機*3が多い。
従来の直流整流子電動機の泣き所である「ブラシと整流子」を排することができるので、信頼性が高いのが特徴。

リニアモーター

リニアモーターカーなどで知られる「リニアモーター」も、基本的には回転する電動機と大差はない。
それどころか、場合によっては「回転式モーターを巻き寿司とすれば、巻き寿司を巻く前の状態がリニアモーター」と評されることもあるほどだ。
固定子(界磁)を平面上に展開し、その上を「回転子」を直線状に動かす…というのがリニアモーターの構造である。
高速列車や、あるいは都営大江戸線や大阪メトロ鶴見緑地線のような小型地下鉄で用いられている…という印象が強いが、東京ディズニーランドの「ビッグサンダー・マウンテン」や富士急ハイランドの「高飛車」などの遊園地の乗り物にも用いられている。

アニオタ的には

モーターというのはイメージが湧きやすい動力機器なので、巨大ロボットの関節駆動に多数のモーターが用いられていたり、或いは「ガソリンエンジンを使わない未来の車」に謎の技術が用いられた超高性能モーターが搭載されている…などの描写がよく出てくる。
また、モーターを新型に交換することで主人公機がパワーアップするとかもよくあること。
「電気機器」ということで、激しい戦いの最中に動力のモーターから激しい放電が起こったり、火花が飛び散ることで過負荷を視覚的に表現するという場合もある。

追記・修正は直流モーターのカーボンブラシを交換してからお願いします。


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最終更新:2022年06月28日 23:41

*1 「出力=回転数✕トルク」

*2 電機子の表面で整流作用の不具合により放電が発生し、整流が意味をなさなくなる現象

*3 回転子が永久磁石となっている同期電動機