登録日:2011/03/29 Tue 20:11:48
更新日:2025/11/25 Tue 14:13:45
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メルカディア市では、忠義はあんたの財布が伸びる範囲内でしか働いてくれないのさ。
《袖の下/Bribery》は
マジック:ザ・ギャザリングのメルカディアン・マスクスに収録された青の呪文。
レアリティはレア。
その後第八版にも再録されたため、実はモダンでも使用可能。
性能
袖の下/Bribery (3)(青)(青)
ソーサリー
対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーのライブラリーから、クリーチャー・カードを1枚探し、それをあなたのコントロール下で戦場に出す。その後そのプレイヤーは自分のライブラリーを切り直す。
解説
クリーチャーのコントロールを奪う呪文の一つ。その効果は変則的で、相手のライブラリーから直接クリーチャーを奪う。
本来このタイプの呪文は戦場に出たクリーチャーにしか効果を及ぼさない(《支配魔法》《不実》など)のだが、
《袖の下》は問答無用で相手のデッキの中の戦力を、《さまようもの》から《引き裂かれし永劫、エムラクール>エムラクール》に至るまで、たった5マナで自分の支配下に置いてしまう。
もし、自分のデッキに《ダークスティールの巨像》や《
引き裂かれし永劫、エムラクール》あたりが入ってる時にプレイされたら泣くしかない。
効果だけ見るとインパクトがあるが、実は結構弱点がある。
まず基本的に相手に依存するという点。
相手がノンクリーチャーデッキであった場合に途端に腐るのは言うまでもなく、白ウィニーや赤単バーン、スリヴァーやエルフのように「小粒のクリーチャーをそろえていくデッキ」が相手の場合も「5マナかけてこれかよ」という結果に終わることも多い。
白ウィニーから《サルタリーの僧侶》、赤単バーンから《ボール・ライトニング》を一枚奪った所であまり意味がないのである。やってることが「5マナをかけて2~3マナのカードを奪う」では割に合わないのだ。
モダンやレガシーのように広い範囲なら、たとえばスリヴァーなら《スリヴァーの女王》《スリヴァー軍団》のようなカードを出せるし、エルフなら《威厳の魔力》《孔蹄のビヒモス》のようなカードを出せば割と刺さるのだが、これも結局相手依存。
喜び勇んで《袖の下》を唱えたらフィニッシャー枠がおらず、泣く泣く単なる小粒ロードを奪うのはよくある話。
「なんで《孔蹄のビヒモス》入れてないのさ」
「エルフじゃないからですね。ではまずはお前から血祭りにあげてやる」
「こんなカジュアル思考に足元をすくわれるとは……これもスパイクのさだめか……!」
さらにライブラリーから直接クリーチャーを引っ張ってくるため、既に戦場に出ている相手クリーチャーの数に影響を与えないのは地味に辛い。
通常のコントロール奪取呪文なら「除去をしつつ自分の盤面にクリーチャーを準備できる」という意味で0:1交換が可能なのだが、違って使った時点では1:1の交換でしかない。
さらにMTGは「大勢で攻める」「回避能力を使う」「除去呪文を撃つ」「こちらから攻めずにじっくり戦う」などでクリーチャーとの戦闘を迂回できることが多いため、安直に形勢逆転とはいかない場合も多い。
極めつけに、ローウィン以降のMTGは「プレインズウォーカー」という新しい形のフィニッシャーを手にしたため、これがうまく刺さらないこともしばしばあった。
事実、このカードがスタンダードに存在していたマスクス〜インベイジョン期に主流になっていた赤緑ステロイド「
Fires」には切札にはなり得なかった。
もっとも、《
魂売り》や《
煽動するものリース》が入る事もあったので、まったく出番がない訳ではないのだが、結局相手に依存することが多く、
MTGに限らず強いプレイヤーの思考として「上振れたときに強いカードよりも、常に安定して動いてくれるカードの方がありがたい」というのもあるため、その評価は議論を呼ぶものだった。
「上振れたときに強いだけのカードに頼るなよ」
「その上振れが狙える相手がどれだけいると思ってんだ?」
登場時には他にも優れた同系の呪文が存在していたのも理由としてある。
たとえば戦場のクリーチャーしか奪えないが、効果が通ってしまえば土地を5つアンタップする(=コストがチャラになる)フリースペル《不実》の有用性が高すぎて、《袖の下》は軽視されてしまった。
しかし《袖の下》の方が優秀な部分も割と多い。
たとえば当時のレジェンド・ルールは「先に出た方が残り続ける」というものだった。そのため大勢を決するようなカード、たとえば《果敢な勇士リン・シヴィー》を奪う時などは《不実》と変わらず優秀な働きをする。
これらのデッキにとってシヴィーを奪われるのはほぼ敗北であり、そのシヴィーが盤面にいないにもかかわらず奪ってくる《袖の下》は警戒対象のひとつだった。
「傭兵の困った点はな、彼らの忠誠心が買えるなら、ほかの奴らにも買えるってことだよ。」
当時のスタンダードのカードプールでは難しかったが、ショーテルやスニーク・ショー、変身やリアニメイトといった「踏み倒し系のデッキ」に対しても効果は絶大。
MTGは他TCGと異なり、エクストラデッキの概念がほぼ存在しない。そのため踏み倒し先もメインデッキに入れておく必要があり、これを強引に奪ってしまえる。
そういったデッキの踏み倒しギミックに対して先んじて動くことさえできれば、相手の目論見を大きく覆すことができる。
「
一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやろうか!ハハハ、ざまぁないぜ!」
そしてこのカードが通った際に相手のデッキを見ることができるのも大きな強みであり、情報アドバンテージ的な優位に立つことができる(生かせるとは言ってない。)
なんにせよ当時のスタンダード環境でよくお目にかかれたカードである。
エクテン・モダン以下の環境では遅すぎたカードだが、《引き裂かれし永劫、エムラクール》の登場後は「これを奪えば勝てる」という性質からたびたびサイドボード入りを検討されたカードでもあった。
モダンの青黒LOでは、デッキに入っているだけでほぼ詰みの状況を引き起こすエムラクールを迂回するためのプランとしてかなり真面目に検討されたカードでもある……重すぎて諦められたようだが。ロスレガとか使った方がいい気がするんだよなぁ……
ちなみに、戦場に出す能力は強制ではない。見つからなかったことにして相手のデッキからクリーチャーを出さないこともできる。
奪った方がいいのは言うまでも無いのだが、例えば相手のデッキに《
触れられざる者フェイジ》(手札以外から戦場に出すとコントローラーが敗北する)など、ろくなクリーチャーがいない場合などに活きるプレイングである。
フェイジの例は有名だが、他にも《ファイレクシアの抹殺者》《地ならし屋》《日々を食うもの》《田舎の破壊者》《深淵の迫害者》《地獄彫りの悪魔》等々、ピーキーすぎて普通のデッキ=自分のデッキでは操りきれないクリーチャーは結構多い。
そのため割と重要なテクニックである。カジュアルでは《怪しげな挑戦》《寛大なるゼドルー》などを軸にしたデッキを相手にすると思わぬ大事故が起きて笑ってしまうやつ。
亜種
「対戦相手のライブラリーから奪う」というカードすべてが亜種になりかねないため、うまい線引きが必要だろう。
Telemin Performance / テレミンの演技 (3)(青)(青)
ソーサリー
対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは自分のライブラリーを一番上から、クリーチャー・カードが公開されるまで公開し続ける。そのプレイヤーは、これにより公開されたクリーチャーでないすべてのカードを自分の墓地に置き、その後、そのクリーチャー・カードをあなたのコントロール下で戦場に出す。
コンフラックスのレア。ヘルムピースなどのパーツとして有名なヘルムこと《Helm of Obedience》のリメイク。
《袖の下》が対戦相手のライブラリーを探して好きなものを選ぶものなら、こちらは「ライブラリーの一番上にあったクリーチャーを奪い、その上にあったカードをすべて墓地に置く」というもの。
《袖の下》効果が目当てだと非常に使いづらいのだが、このカードの強い点は「奪ったついでにライブラリーから墓地に置く」という点。
ノンクリーチャーデッキが相手の場合、このカードは相手のライブラリーをすべて墓地に送るという事実上の勝利条件カードになるため、《袖の下》とは得意とする範囲がまったく異なるという面白い関係になる。
当時のスタンダードに存在していた《引き裂かれし永劫、エムラクール》などのライブラリー修復能力を持つカードを奪えれば一石三鳥くらいになる。
そのため青系のLOデッキを握ったプレイヤーの中には、上振れを狙って入れる人も多かった……正確には「これくらいしか入れられるカードがない」んだけど。
《道理の宿敵》《サディストの聖餐》とか入れるとなんかしっくりこないし……。
ちなみに元ネタの《Helm of Obedience》も一応《袖の下》的なカードとして使うことは可能だが、その用法だと制限だらけで非常に弱い。おとなしくコンボパーツとして使った方がいいだろう。
Sphinx Ambassador / スフィンクスの大使 (5)(青)(青)
クリーチャー — スフィンクス(Sphinx)
飛行
スフィンクスの大使がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、そのプレイヤーのライブラリーからカードを1枚探す。その後、そのプレイヤーはカード名を1つ選ぶ。あなたがそのカード名を持たないクリーチャー・カードを探していたなら、あなたはそれをあなたのコントロール下で戦場に出してもよい。その後、そのプレイヤーはライブラリーを切り直す。
5/5
という感じで、イメージ的には「スフィンクスの謎かけに負けて大事なものを奪われてしまう」といったもの。賄賂で奪うのではなくもっと違うイメージなのだろう。
基本セット2010に多かった「原点回帰のフレーバー重視のカード」の1枚にして、神話レアという当時の新しいレアリティの方向性を打ち出すために作られたカード。
そもそも7マナのクリーチャーの攻撃が通ってる時点で大勢が決しているのでかなり使いづらい。同期の《悪斬の天使》と殴り合おうとすると先制攻撃で一方殺にされる。
というわけで採用する意味がほとんどなく、非常に空気のままスタンダードを去っていった。
当時のMTGは「スフィンクスの謎かけ」の部分に挑んだカードに挑戦していたが、結局大成はしなかった。
そもそもこの手の駆け引き系のカードは「外れた時のリスクがデカいものを宣言する」方がいいため、駆け引きが生じるように見える部分にド安定の選択肢があるので面白くもなんともないのだ。
上述のやり取りも、職工を借りられたプレイヤーは「え、そっち?まぁいいけどさ。どうせ返しで除去するし」程度にしか思わないのである。
Inevitable Betrayal / 避け難い裏切り
〔青〕 ソーサリー
待機3 ― (1)(青)(青)(あなたはあなたの手札からこのカードを唱えるのではなく、(1)(青)(青)を支払い、時間(time)カウンター2個を置いた状態でこれを追放してもよい。あなたのアップキープの開始時に、時間カウンター1個を取り除く。最後の1個を取り除いたとき、これをマナ・コストを支払うことなく唱える。)
対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーのライブラリーからクリーチャー・カード1枚を探し、あなたのコントロール下で戦場に出す。その後、そのプレイヤーはライブラリーを切り直す。
モダンホライゾン2で登場したレアカード。通常の手段で唱えることができず、3マナと3ターンを待つことによってはじめて使える《袖の下》。
元手のマナがかからないのが嬉しいところ。さらに唱えたターンにはマナをまだ使っていないことがほとんどなので、「状況を見て奪うクリーチャーを選んでからそのターンの行動を決められる」という至れり尽くせりなカードだ!
モダホラなんてインフレモダン後のセットでそんなことやってたら死ぬんだよなぁ。
というわけでこのカードの使い方は、続唱などを用いて「ルール上0マナのソーサリー」を唱えるデッキ(続唱バランス、死せる生、続唱サイなど)において、対戦相手のリアニメイトや変身系のデッキを対策するというもの。
まさか普通のデッキで2~3マナで唱えさせるわけにはいかないが、特殊な構造をしているデッキなら許してもいいだろう。そしてこのカードの存在が踏み倒し系デッキに対してにらみを利かせてくれるだろう……というメタゲームを眼目に据えて作られた、かなり特殊なカードである。
このカードが刺さる相手は案外多く、単なる踏み倒し系のデッキの他にも《クラガンウィックの死体焼却者》や《ドラゴンの嵐》のように専用の弾丸や相方を用意するデッキが相手の時にもよく刺さる。
現代のMTGにおいて最も素直に《袖の下》として運用するカードがこれだろう。
余談
このカードが登場した「メルカディアン・マスクス」の舞台メルカディアは商業都市の次元であり、美しい景色に住む薄汚い住民たちというものだった。
基本的に何でもお金で解決したがったり、窃盗や恐喝が当たり前だったりという、現代MTGでいえばラヴニカの下層民やフィオーラやニューカペナあたりがイメージ的に近い。
そのためマスクス・ブロックには《闇市場》《通商停止》《治国策》《領土論争》など、妙に生々しいカード名が多い。
《袖の下》もまたそんなカードの1枚で、文字通り金で不正行為を働くカードである。収賄や賄賂ではなく「袖の下」とみやびやかに訳しているのが実に当時らしい。
「地獄の沙汰も金次第」と言わんばかりのフレーバー・テキストも多く、MTGのフレーバー・テキスト人気を築いた時期でもあった。
MTGのルールでは不正行為のひとつに「Bribery」が定義されている。これはプレイヤーが対戦相手やジャッジに対して贈り物をすることに関する罰則。
ジャッジに対しては言うまでもないが、対戦相手に対する罰則としては、
「何らかの事情であなたとの対戦ができなくなった。ついては自分が敗北するため、賞金の一部額を自分にくれないか?」
という呼びかけをすること、およびそれに対して応じること、その仲立ちをすることなどに適用される。これは2000年代前半(=マスクス・ブロックの全盛期)にたびたび発生したことで有名になった。
MTGでは「ID」や「トス」が合法のため、「ってことは合意の上で勝敗を決めて、その後揉めることのないようにするのも合法だよね?」という認識だった……つまりそもそもいけないことだという認識が存在しなかったようである。
かなり強めの問題提起が行われてからすでに四半世紀経っている上にプロシーンもかなり縮小しているため、現在のMTGで行われることはまずないだろう。
ところでこのカード、2013年にジャッジ褒賞(DCI認定ジャッジに与えられる、まぁ無償でやってくれてるジャッジに公式が渡すお礼のようなもの)に選ばれ配られている。
…公明正大なるが求められるジャッジに「袖の下が渡される」とは、一体いかなる意味なのか…
渡すのはプレイヤーじゃなくて企業からだからセーフ。
ちなみにジャッジ褒賞にはこの手のネタカードも多い。ファイレクシア語版のカードも、《大修道士、エリシュ・ノーン》のジャッジ褒賞プロモが初出である。
なお対戦相手のライブラリーに手を付ける関係上、ブライバリー以外の不正行為やトラブルともかなり縁が深い。
対人ゲームである以上、こういうトラブルとは無縁だとは言いきれないのだ。使う場合は疑われないように、あるいはいちゃもんをつけられないように気を付けましょう。
「どうやら追記・修正のためのド暇な時間をお持ちのようですね。」
- 大会でリアル袖の下を使うと失格になるから気を付けようね!! -- 名無しさん (2014-04-29 02:00:06)
- 最近モダンライブラリアウトでエムラ対策で本当に採用が検討されるカード -- 名無しさん (2016-08-03 09:47:21)
最終更新:2025年11月25日 14:13