ありふれた理由/Common Cause(MtG)

登録日:2012/06/11(月) 20:05:26
更新日:2025/07/10 Thu 10:58:34
所要時間:約 2 分で読めます




《ありふれた理由/Common Cause》とはマジック・ザ・ギャザリングのエキスパンション、メルカディアン・マスクスのありふれたカードである。レアリティはレア。カード名はCommonなのにレアである。

■ありふれた性能

ありふれた理由/Common Cause (2)(白)
エンチャント

アーティファクトでないクリーチャーはそれら全てが共通の色を持っている限り+2/+2の修整を受ける。

このカードを見た時の反応は3つのステップに分かれている。

第一段階(初見)が好意。

「おお、強いな。効果が2倍になった十字軍なんて!強さは全然ありふれてないし」
「むしろ白ひとつの3マナの軽さで二回り大きくなるのが「ありふれた」なんて、実にいい名前じゃないか!かっこいい!」

第二段階(効果チェック)が疑問。

「いや、でもちょっと強すぎないだろうか。ちょっとテキスト読み直してみるか」
「…あれ?これもしかしてあの文がない?ってことは相手のコントロールするカードの色も参照するの?」

第三段階(真相を知った後)が――失望だ。

「ってことは相手が違う色のクリーチャー出したらそこでおしまい!?」
「ていうかこれ相手のクリーチャーまで強化しちゃうの!?」
「何だこのカスレアはァァァァッ!!!」


そう、このカードには「あなたがコントロールする」というありふれた一文がない。つまり相手のクリーチャーも共通の色を持っていなくてはならないのだ。


■ありふれた解説

相手があなたと違う色のクリーチャーを出すというありふれた状態の時このカードは置物と化す。つまり「何もしない状態」が最もありふれている。
よしんば同色同士の対戦だったとしても相手のクリーチャーも強化されてしまう
相手のクリーチャーと自分のクリーチャーが、パワーもタフネスも同じだけ強化されるということは、クリーチャー同士の戦闘に対してはほとんど影響を及ぼさない。
しかしクリーチャー同士の戦闘を避けるとなると、ライフロスが一気に響いてくる。状況次第ではあるが、こうなると利敵行為に近い。

極端な例ではあるが、たとえばあなたが白ウィニーでこれを使っているとしよう。対戦相手に4/4の飛行を持つ《セラの天使》がいて、自分は2/2の飛行を持たないクリーチャーしかコントロールしていない。
この時、何もしなければセラ天の4ダメージ×5回で自分は死ぬのだが、《ありふれた理由》を出してしまうと6ダメージ×4回で24点で死、下手にライフを使う行動してると3回の時点で死。
また、「対戦相手の方がクリーチャーを多く展開している場合」「クリーチャー同士の戦闘を避けてすれ違いのダメージレースをしたい場合」なども、
対戦相手のクリーチャーを二回りも強化してしまうというのはかなり響いてくる。
当然だが複数枚展開できるので、もっと嫌な状況を作ろうと思えば作れるのも問題だ。

しかも最悪なのがこのカード、対戦相手のクリーチャーも同じ条件で強化してしまうという点。
つまり《神の怒り》などで流された後に相手がクリーチャーを出すと、そのクリーチャーが強化されてしまう。
こちらがクリーチャーを展開できない限り、相手を利するというわけだ。

こんなカードが入る隙間など何処にあるはずもない。カードパワーからみても環境からみてもまごうこと無きカスレアである。
本当に何に使うのだろうか。上述の三段オチの為にデザインされたとしか思えない。

それでも他に代用が利かないのなら或いはどうにかして使われたかもしれない。
実際上記問題点の裏返しである「自分の方がクリーチャーを多く展開している場合」は修正値の点で有利だし白ウィニーは単色デッキで展開することが得意なのだ。
不安定さはあるとはいえデッキ構造には合致している。

しかしメルカディアン・マスクスか発売された時には前回のブロックであるウルザブロックにおいて《栄光の頌歌》(あなたがコントロールするクリーチャーは+1/+1)が登場。
そして第6版までは《十字軍》(白のクリーチャーは+1/+1)が再録されていた。
つまりスタンダードではこれらを4枚積む「エイトクルセイド」が組めたという白ウィニーにとってこの手の効果はありふれていた環境だった
それらのカードなら、不安定な要素もないし複数枚張ることのリスクも非常に低い。

つまりこのカード、使わないためのありふれた理由だらけなのである。


■ありふれたパターン

さて、このカードをもう少し掘り下げてみるのだが、実はクリーチャーを強化する状況というのが微妙に分かりづらい

  • 戦場に白単のクリーチャーが1体しかいない時 → が共通しているので修整が入る。
  • 戦場に白単のクリーチャーがいる時 → が共通しているので修整が入る。
  • 戦場にのクリーチャーがいる時 → 全てに共通する色がないので修整が入らない。
  • 自分が白単のクリーチャーを、対戦相手が黒単のクリーチャーをコントロールしている時 → 共通している色がないので修整は入らない。(最もよく起こる何もしない状態)
  • 自分も相手も白単のクリーチャーをコントロールしている時 → が共通しているので、どちらにも修整が入る。
  • 対戦相手が緑単のクリーチャーをコントロールし、自分は何もコントロールしていない時 → が共通しているので修整が入る(いわゆる利敵パターン

そして当時はアーティファクト・クリーチャー=無色のクリーチャーだったのでほぼ起こりえなかった状況だが、現在は有色のアーティファクト・クリーチャーや無色だが非アーティファクトのクリーチャーが居るため、さらにこんな状況も考えなければいけない。
  • 自分が白単のクリーチャー2体、対戦相手が黒単のアーティファクト・クリーチャーをコントロールしている時 → 「アーティファクトでないクリーチャー」の色がで共通しているので、アーティファクトでないクリーチャーにだけ修整が入る。
  • 自分が白単のクリーチャーと黒単のアーティファクト・クリーチャーをコントロールしている時 → 「アーティファクトでないクリーチャー」の色がで共通しているので、アーティファクトでないクリーチャーにだけ修整は入る。
  • 非アーティファクトの無色のクリーチャー(エルドラージなど)だけをコントロールしている時 → 無色は色ではないので共通する色がなく、修整は受けない。
  • 非アーティファクトの無色のクリーチャー(エルドラージなど)と白単のクリーチャーをコントロールしている時 → 無色側が色を持っていないので共通する色が無いという扱いになり、すべてのクリーチャーは修整を受けない。

非常にややこしいのが分かるだろうか。しかも実際の戦況だと、
「インスタントタイミングで出てくるトークンや瞬速持ちのカード」「クリーチャー化する土地やプレインズウォーカー」などが出てきて計算が狂いまくる。
しかも土地は無色であり、クリーチャー化しても色指定が無ければ無色クリーチャーである。
これに利敵状態を起こすかもしれない状況まで加わってくるので、一見ありふれたテキストの割に、それはそれは御しにくいのである。


さらにもっとややこしい状況を作ろうと思えば作れてしまうのも問題。
たとえば「戦闘終了時に白単のクリーチャーだけが戦場に残ったので修整がつく」
「全体火力を打ってダメージを負わせた後に、別の色のクリーチャーが出てきて修整が消える」
「色の違うクリーチャーを《液鋼の塗膜》でアーティファクト化することで、ほかのクリーチャーの色を共通させて一気に修整を加える」
などなど。こんなことをすべてのプレイヤーに強いるカードなのだ。
わいわい楽しくやる状況でも、できれば使いたいカードではない。


だけどそんなありふれたカードにこそ、ほっこりとする思い出が詰まっているもの。
《ウルザの激怒》が高くて買えなかった話、パーミッションやミルストーリー相手にビキビキした話、
「プロフェシーのトップレアは《キマイラ像》」といった懐かしい話の数々とともに、
冒頭の三段オチの何とも言えない肩透かし感は、オールドプレイヤーにとっては代えがたい思い出なのである。

■ありふれたフレーバーテキスト

フレーバーテキストも皮肉が効いている。


「メルカディア市の軍隊は戦うべき敵が居ない時が一番いい状態なんだ」


相手にクリーチャーがいない圧倒的有利な状態なら本気だす(=自クリーチャーだけが修正を受けられる)
実にありふれた理由である。
またこのフレーバーテキストからこのカードの設計はミスなどではなく意図的なものであるというのが読み取れる。


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最終更新:2025年07月10日 10:58