マジック史上、最低最悪の紙クズとされるカード。蒼ざめるのはこれを引いたプレイヤーの顔である。
何やらテキスト欄に「特殊地形メタとして使ってね」的な言語が書かれているが、要約するとその効果は「この呪文は特に効果も発揮せずに墓地に置かれる」と同義である。
同じ特殊地形対策の月でも、血染めの月との差は酷い。あちらはトップレア、こちらはトップ「カス」レア。比べることが間違い。
後に出たカードと組み合わせれば若干使える…とはいえ他のもっと強いカードと組み合わせたほうがはるかに良いのは言うまでもなく。
もちろん、上述の紙屑リストでも堂々のワースト1位である……というか正しくは紙屑リストで1位を取ったことで不動の地位を手にしたもの。2022年版でも当然の如く1位。
唯一の利点はイラストが美しいこと。
マジック史上最弱のコスパを誇るクリーチャー。詳しくは専用項目へどうぞ。
実質4+Xマナ、X/Xの土地生け贄ペナルティ能力持ち。5マナなら1/1というひどいマナレシオを誇るクリーチャー。
しかもこれに加えてボードアドバンテージまで激烈に失うという、現代のMTGの感覚で見たら目を疑うようなカードである。
あまりの弱さに誰が呼んだか「ウッディ先生」。これまでは史上最悪のクリーチャーとして28年以上もの長きにわたってワーストを守り抜いてきたが、17年前の「ラヴニカ:ギルドの都」の《西風のスピリット》登場以降はその立場が危うくなりつつある。とはいえあちらはコモンのカードなので『弱すぎるレアクリーチャー』というカテゴリーにおいては未だ他の追随を許さない。
このカードは本当に最初期のカードであり、トレーディングカードゲームという娯楽すらなかった頃にバランス調整なんてできるわけがないため、こういうカードが生まれてしまうのは仕方のないところがある。
そして言ってしまえば、すべてのX持ちクリーチャーのご先祖様とも言える存在。ゲロを吐きそうになるほどの弱さのおかげでバランス調整が非常に長いこと試されていき、
後にトーナメント級のクリーチャーとして《果てしなきもの》のようなカードが躍り出ることとなる。まぁX=0で唱えるためのコンボパーツなんだけど
また、刷られた時期とレアリティのせいで、この性能のくせに再録禁止カードに名を連ねている。あまりの弱さに上記の名前とともに人気が出て、再録禁止と合わせて結構なお値段がするカード。
アルファから第4版までに収録された、《□□の色/○○lace》というカード群。
1マナ使って出来る事がパーマネントか呪文1つの色を変えるだけ。ピンポイント過ぎて使えない。
後に「レアには実用的なカードを入れる」という理由と「弱すぎる」という理由で再録されなくなるという公式カスレア。
中でもその後何故か作られた《月の色》は本当に使い道がなく、イラストも合わせて《蒼ざめた月》と色サイクルの魔融合なのではという話も。収録パック(時のらせん)を見る限り公式のお遊びの可能性も高い。
こいつはパーマネントか呪文1つの色を無色にする能力だが、パックから引いたプレイヤーの顔まで失わせる。そんな点も月に似ている。
最初期のライフ回復の過大評価を象徴する1枚。
設置に白3マナ、アップキープに白2マナ払って得られるものがわずかライフ1点。1マナでライフ3点回復するインスタントすらコスト相応でないというのに酷いコストパフォーマンス。
あんまりにも弱すぎて第4版ですら再録されず、再録禁止になったため地味に値段の高いカード。
とはいえリバイズド以前の高額パックのレアからこれとか色サイクルが出てくると顔が青ざめるなんてレベルではなくなるのも事実。
あのスリヴァーの女王が無色5マナで出せますよ!えっ、追加費用4マナが無駄すぎる?お、おっしゃる通りで…
- 《ファイティング・チャンス/Fighting Chance》
コイン投げに成功したら、このターン中攻撃クリーチャーが戦闘で死ななくなるよ! …だからなんなんだよorz
5マナ5/5クリーチャー。4マナ6/6なんてのが当たり前にいる現在では鼻で笑える性能だが、当時としてはそれなりに高スタッツだった。
しかし自分が受けたダメージを-1/-1カウンターに変換するうえに自分のアップキープにそのカウンターを1つ取り除くだけ。
クリーチャー同士の戦闘を避ける手段があるのなら悪くはないが、ダメージを蓄積したうえでサイズまで下がるデメリットが重すぎる。
ビジョンズ初出当時からカスレアの名をほしいままにしており、カスレア議論の際には必ず名前があがった1枚。「ウッディ先生よりはマシだが弱すぎる」と評価されているが、さすがにあんなのと比べるのは苔男に失礼である。
こんなしょうもないカードだが再録禁止カードに名を連ねている。つまり再録禁止というのは別に強さやカード価格で決まっているわけではないといういい例になる。そもそもこんなカード絶対値上がりしないし。
後に「スタッツ自体は優秀だが弱体化していくクリーチャー」として《アボロス》が、相手に-1/-1カウンターの形でダメージを与える、つまりクリーチャーを《苔男》扱いをする手段として「萎縮」「感染」という能力が登場。
特に「萎縮」は当時のスタンダードで、「感染」に至ってはスタンダードはもちろんモダンやレガシーでも好んで使われることとなった。《苔男》の失敗は後世の糧として確実に生きているのだ。
4マナ1/1クリーチャー。場にいる場合4マナ払わなければ勝手に場から消える。しかもフェイジングを持っているので何もしなくても2ターンに1回場から消える。
一応帰ってくるたびに+1/+1カウンターが乗って強化されていくのだがペースが遅すぎる。ウッディ先生や苔男と違ってまともに使う手段がない訳ではないのが救い。
いわゆる「除去の強いゲームにおいて、育成が前提になるカードは弱い」という例。
マナが出る土地の中ではマジック史上最低最悪のカス土地。
タップインディスアドバンテージ無色地形という救いようのないゴミ。
効果自体は相手のマナタップによるテンポアドバンテージを奪う真っ当なものだが、
2マナタップするために「タップインに加えてさらに3マナ+土地一枚(自身)の生贄」はあまりに割に合わない。
こうなった一説には往年の凶悪土地《リシャーダの港》の調整版…にしてはやりすぎであった。
一方でそのあまりの弱さから妙な噂話が昔から絶えず、「このカードはリシャポの調整版だからリシャポが禁止になる前兆」「EDHでは使われている」など変な話が昔からたまに出てくる。
墓地から土地を消し去る墓地対策呪文。墓地に土地があって喜ぶヤツは《
土を喰うもの》と《
タルモゴイフ》ぐらい。おまけに後者はタフネス1持ち+すぐ再成長できるのでほぼ無意味。
MTG公認のカスレアであり、ジョークパックに「このカードを有効活用できるカードが収録」と言われるほど。さらにエイプリル・フール企画「Secret Lair Drop Series: Wizards of the Coast Presents: After Great Deliberation, We Have Compiled and Remastered the Greatest Magic: The Gathering Cards of All Time, Ever(開発部が激しい審議の末に選び抜いたマジック:ザ・ギャザリングで最も偉大なカード4枚のセット)」でも新プロモイラスト版が作成され、各ショップに無料で配布された。
今後もMTG公認カスレアとして様々な面で活躍していくことだろう。
オデッセイにはほかにも《墓火》という「対戦相手の墓地からフラッシュバックを持つカードだけを追放する」非常にニッチなカードがあり、《泥穴》に比べると知名度は劣るもののこちらも同様の理由でカスレアとして名高い。
「オデッセイ」で登場した、3マナで手札を見て互いに同名の土地以外のカードがあれば捨てさせるという、あまりにも範囲が限定的過ぎるハンデス。
当然ながら1枚捨てさせることすら困難を極める。こんなん入れるくらいなら《困窮》《精神腐敗》辺りを入れた方が遥かにマシなのは言うまでもない。
紙屑ランキング(新旧両方)でトップ10に入る程度には全く仕事しないカードであり、このページに乗っているカードの中でもトップクラスの弱さ。しかし中途半端な順位のせいか知名度はまったくない。
推測になるが、このカードが収録された「オデッセイ」は今でこそ名カードの話が有名なのだが、一時期は使い道のまったくないカスレアが多いことでも有名だった。
つまりこういった派手なエピソードを持つカスレアの山の中で埋もれていったのではないか……というもの。mtg wikiもあまりの弱さのせいかほとんど2,3行で評価が終わるカードも多く、あえて評価したいとも思えないのだ。
また、名前の雰囲気がなんとなく似通っている上に「相手に大きく依存する」「手札を参照する」「黒の3マナ」という特徴が似ている《無残な助言》あたりと混同している人も多いかもしれない。
つまりカスレア特有の魅力にも劣るという、「影が薄いことで有名なキャラのせいで本当に影が薄くなってしまったキャラ」のような立ち位置なのである。
カスカード擁護の定番の「ピッチコストにできる!」系の話を真面目に評論していくと、多分月以上に何もしないカード。たまには思い出してあげてください。
《
冬月台地/Wintermoon》を上回るカス土地。
なんかやたらとややこしい事が書いてあるが、つまるところブロッククリーチャーの入れ替えという使いどころのないメリットのくせに、タップするたび自分&自軍すべて2点ダメージというふざけたデメリット。
正しい使用用途は自殺らしい。
このカードをなんとか使おうとマローが試行錯誤悪戦苦闘した結果があの《寄付》だという。
こいつも再録禁止カード。再録禁止がカードパワーと関係ないというのがよく分かる。
ちなみにカスすぎるのと上記の理由で逆に高額である。ウッディ様よりは安いが。
なお、黎明期のカード故にレアリティはアンコモン1となっているが、これは現在のレアに相当する。
後にMagic Online専用カードセット『Masters Edition 3』でレアとして収録され、
名実ともにカスレアとなった。
戦場に出ている間、その色の呪文を唱えるためのコストが色マナ1つ分多くなるというデメリットを持つクリーチャー。元ネタはフォールン・エンパイアで登場した《デレロー》。
重いデメリットのせいで必然的にその後の展開が遅くなるのでビートダウンにすら入らない。デメリット持ちクリーチャーということもあり数値で見たコスパはいいが、翡翠のヒル以外は元ネタのデレローほどではなく焼け石に水程度。
マナのやりくりがしやすいため他の色よりデメリットが薄くヒルサイクル唯一のファッティの《翡翠のヒル》は構築でも使えるスペックはあり、シェイド能力持ちの《ざくろ石のヒル》はデメリット込みでもリミテッドでなら使えたので一部のデッキに投入されていたが、それ以外はお察し。
《あられ石のヒル》に至ってはデメリットを抜いてなおコモンクリーチャーレベルという凄まじいコスパであり、カスレア中のカスと評判。たった1枚だけ紙屑ランキングにランクインした。
一応こんなカードにも使い道はある。それはインベイジョンという当時よく剥かれたパックから出るカスレアなので集めやすく、カードファイルに並べておくと見栄えがすること。
冗談のように思えるかもしれないが、この用途で《ルビーのヒル》を集めている人の話が一時期非常に有名だった。
- 《運命の逆転/Reversal of Fortune》
6マナも払っておいて出来ることは「対戦相手の手札を見て、その中のインスタントかソーサリーを自分も使える」だけ。
唱えるのはコピーなので該当カードは相手の手元に残るし、しかも相手への依存が強すぎる。対象が限定的過ぎる上にまったく対策になっていないというか、
何のために作られたのかが分からないレベルのカードである。
と、強さ的には完全にカスレアなのだが、そのイラストのおかげでカスレア扱いされないこともしばしばある不思議なカード。
何でかって?とりあえず
こいつ
(外部リンク)を見ればわかる。この
おっぱい美麗なイラストに惚れ込んで頑張って使おうとする猛者もいる。
ただし相手に依存する上にほんとに弱い。さらになぜか
この記事には長らく4マナと記載されていた。多分記載者がおっぱいに目がくらんでマナ・コストを見間違えたか、おっぱいの話をしたくて忘れてしまったのだろう。
イラストを鑑賞するのが正しい使い方であるということのひとつのエピソードとして、好事家の方にはご記憶いただきたい。ほんとにおっぱいが魅力の10割みたいなカードなのだ。
Halo Hunter / 光輪狩り (2)(黒)(黒)(黒)
クリーチャー — デーモン(Demon)
威嚇(このクリーチャーはアーティファクト・クリーチャーかそれと共通の色を持つクリーチャー以外にはブロックされない。)
光輪狩りが戦場に出たとき、天使(Angel)1つを対象とし、それを破壊する。
6/3
ゼンディカーのレア。《スラムダンクジール》ネタや《呪詛の寄生虫》ネタで盛り上がったことを知る人なら、なんとなく記憶にあるかもしれない。
ETBで天使1体破壊という非常にニッチな除去条件を持ったカード。「5マナでパワー6、かつ除去と回避能力まで持っている」というのは当時としてはそこそこのやり手。
当時は環境の中でも存在感を発揮した天使は結構おり、狙う対象には困らない……はずだった。
ところで当時の環境でよく見かけた天使といえば《悪斬の天使》なのだが、悪斬に雰囲気付け程度についている「プロテクション(デーモン)」に引っ掛かるせいで一番除去したい相手を除去することができない。
さらにその悪斬が他の優秀な天使を環境から駆逐してしまったことや、ゼンディカーと入れ替わりでローウィン・ブロックの多相持ちがスタンダードから去ったせいで、狙いたい対象が環境内に存在しない。
回避能力が威嚇というのも問題で、アーティファクト・クリーチャーにはブロックされてしまう。直前のアラーラ・ブロックでは有色アーティファクトがフィーチャーされており、威嚇がそれほど信用できない。
そしてタフネスが3、当時は《稲妻》の復帰によってタフネス3以下のカードの場持ちが極めて悪い時期だった上に、《稲妻》以外にも除去がやたら強い環境だったせいでわざわざこんなカードを使う意味がない。
そしてライバル枠の充実。たとえば黒の5マナ域には《堕ちたる者、オブ・ニクシリス》というカードがあり、一度でも上陸を成功させれば無類の強さを発揮することから愛好家が多かった。6マナになれば《ソリン・マルコフ》や《墓所のタイタン》のような優秀なフィニッシャーがおり、わざわざこんな半端な除去しかできないデーモンを使う意味がまるでなかった。
ついでに言うと当時最強の多相クリーチャーである《カメレオンの巨像》が「プロテクション(黒)」、合体クリーチャーとして素早く盤面に出てくる可能性のある《浄火の大天使》が「被覆」を持つせいで除去できないこともネタにされた。本当にどこまでも「倒したい相手を倒せない」のである。
極めつけがこのカード、名前が「こうりんがり」。つまり当時ネタクリーチャーとして人気が高かった《甲鱗のワーム》と名前の読みが同じなのだ。そのことも相俟ってたいへんネタにされ、当時はパワーカードだらけで「買えばお釣りが返ってくる」とまで言われたパックにおけるネタレア枠として燦然と輝いていた。あまりのダメっぷりに「クリーチャー・タイプがデーモンだということを見落として印刷された」なんて噂まであったほど。
せめてクリーチャー・タイプがデーモン(とドラゴン)以外だったら、歴史は変わっていたかもしれないが……。
ワールドウェイクの神話レア。《火の玉》の火種が2マナになったら、ダメージの分散効率がよくなった。
EDHでは「大量のマナから3人を即死させる」という際などに使われており、《火の玉》ではX=120+対象追加2マナで122マナをつかわなければならないところを、こちらはX=40+多重キッカー2の42マナで済むのでとても効率がいい。
スタンダードでもたまに使われたが、当時の赤と言えば4マナですら重いことに悩むほどの軽量速攻デッキなので、「火種は重いしX火力が重いし」という特徴を持つこのカードは赤使いからは非常に敬遠された。
ただそのポテンシャル自体は高い。複数対象を取るため、《誤った指図》のように1つを対象にしていなければいけない対策カードを弾けたり、多重キッカーの値を増やせばクリーチャーも一緒に焼けたりなど、「無限マナではないが結構な量のマナを産める」というデッキを使う時には選択肢に入ってくる1枚。
……と、ここまでなら単なるオタクカードなのだが、このカードがカスレアとして燦然と輝いたのが「モダンマスターズ2015」の時。
当時モダンのカードは高額化の一途をたどっており、それこそ《ウギンの目》が1万円を超えたり、《タルモゴイフ》の値段絡みの逸話がいくつも出てきたり、バイヤーに目を付けられた結果値段をつり上げられたりと、市場価格がかなり大荒れしていた。
「モダンマスターズ」シリーズは、そんな折に需要の高いレアの再録パックとしてたいへん期待されていたのだが、このパックは価格が高いくせに中身が実に塩だった。その塩パックの神話レア枠に《彗星の嵐》が入っていたのである。
2015年はまだゼンディカー時代の経験者がプレイヤーの中に多かった時期であり、「せめてレアに格下げしろ」「いや、神話レアでいいんだ。こんなもん引いて落胆するやつが少なくなる」なんて話がしょっちゅう出ていたほど。
そもそも「ジェイスくじ」のワールドウェイクは当時非常によく剥かれ、このカードはハズレ枠として在庫が過剰になっていた。
そしてワールドウェイクのプレリリースイベントでも配布され、それでいながら入るデッキのアーキタイプがニッチだったために供給が過剰になっていた。
そこにこんなものを収録したのだから、ユーザーは「モダンマスターズ2015の中身のしょぼさ」の旗印としてこのカードをあげつらうようになっていったのである。
「供給過剰型」のカスレア。
- 《大天使の光/Archangel's Light》
闇の隆盛の神話レア。8マナで自分の墓地のカードの枚数の2倍のライフを回復し、さらにライブラリーも修復できる。つまり8マナ使って敗北から遠ざけるというだけ。
普通に考えたらぶっちゃけ6マナ以下の時点でフィニッシャーなんていくらでも調達できるため、このカードを使う理由がない。
そしてライブラリーを修復してしまうせいで、ライブラリーアウトからは遠ざかるものの2枚目以降のこのカードの威力が大きく落ちてしまうという至れり尽くせりな弱さ。神話レアの性能か?これが……
当時あったジョークには「このカードが神話レアで助かった。レアだったら被害者がもっと増えていたから」というものがある。本当にそれくらい悲惨なカード。
このカードがこんなにも悲惨になってしまったのは、プレイテスト中に白の神話レア枠が世に出すのに問題があると判断されたため。
もう印刷まで時間がないという切羽詰まった時期に下手に強さにつながる要素を残してしまうと、《頭蓋骨絞め》や《精神を刻む者、ジェイス》の二の舞になってしまうため、絶対安全になるような性能、つまりカスレアとして世に送られることになったのであった。ここまで来るとイラストを流用されたイラストレーターがかわいそうである。
当時は大騒ぎされたカードだが、この開発秘話が出て以降は、意図的な調整であることから他のカスレアよりは格落ちするというカードになってしまった。カスレアにはこういうパターンもあるのだ。
2022年版の紙屑ランキングでは99位に無事ランクイン。11年ぶりくらいにこのカードが話題になってくれることだろう。
最弱のプレインズウォーカー。小-能力と奥義はまあまあ強いのだが+能力と初期忠誠度でそれを完璧に台無しにしている。
開発からも「低コストプレインズウォーカーを作るための実験台」「
開発者は技術の自慢でカードを作ってはいけない戒め」呼ばわり。
こんな奴だが何故か主役のデュエルデッキが存在。しかしどう考えても同時収録されたレアの《地獄乗り》の方が強いため、「ソリンVS
地獄乗り」とか言われる始末である。他にも当時下環境のバーンで使われることのあった《怒鳴りつけ》がメインという声もあり、ティボルトは見向きもされなかった。
詳細は
個別項目で。
ショックランドの再録をはじめ数々の優良カードを輩出した「ラヴニカへの回帰」のカスレア。
カードを出した時にライブラリーの上から5枚を追放し、同名カードをプレイするたびにそのカードが手札に加わる。そして5枚すべての条件を達成すると追加ターンが得られるという青の5マナのエンチャント。
同名カードをたくさん積んでいるデッキで使うということが考えられるが、まず「条件付きの手札補強」というのが5マナの性能ではない。このエンチャントを対処されると追放されたカードはそのまま二度と使えなくなる。
さらに「すでに3枚使用してしまった」などの事情でデッキに1枚しか残っていないカードが追放されてしまうと、その時点で条件達成が不可能になる。
そして条件を達成してできることが、5マナソーサリーの追加ターンである《時間のねじれ》と同じ。ぶっちゃけデッキ構築に条件を与えるくせに条件を達成するほどの旨味がないし、5マナ3ドローのカードでも採用した方がよほど有用なのである。
「厳しい条件に見合わない報酬」という点から、公式でもたまに失敗カードの例として挙げられている。
往時の名カード《嘘か真か》のリメイク。「デッキトップを上から5枚めくり、それを2つの束に分けて相手に提示。相手が選んだ側を手札に加え、残りを墓地に置く」というもの。
レアリティがアンコモンからレアになり、赤が追加された(=マナ拘束がきつくなった)ことでそもそも唱えるのが難しくなり、最終的な選択権は相手にあるので望んだ手札が手に入らない。
つまりレアリティが上がっていることに対して行われているのが完璧な弱体化。元々が不当に強いカードだったので調整自体は妥当なものなのだが、ぶっちゃけ二色化か選択権逆転の片方だけすら使われるかの当落線上。さすがに弱くしすぎで、なにもそこまで弱くしなくても……となるカード。
しかも当時のスタンダードでは《思考を築く者、ジェイス》が3枚で行うプチうそまこを繰り返し使えた。《蒸気占い》はマナ総量は同じで色が増えていて打ちっぱなしのカードにもかかわらず、なぜかできることがジェイスより弱くなっているので「どうして赤が混ざるとこんなに悲惨な弱体化をするんですか?」という疑問や苦情も多かった。
この時期からしばらく、WotC社は「対戦相手に選択権のあるカードを実用的にする」という課題に挑戦することになる。このカードはスタンダードにおけるそんな風潮の嚆矢であり、その流れを受けてこのカードの後に《嘘か真か》の亜種が何枚か登場した。いずれも青単色シングルシンボルなのでこのカードの存在意義は着実に薄れてきている。
ちなみにこのカードのフレーバーは「嵐の神様から神託を授かる」というものだが、この元ネタはかつてギリシャで本当にあったデルフォイの神託。こちらは蒸気ではなく火山性ガス(有毒)を吸った巫女の支離滅裂な発言を神のお告げとみなしたもので、民俗学や文化人類学の見地からはかなり興味深い。
その元ネタを知っているとなかなかマニアックのネタ源と再現率が愉快なカードだが、だったらなんだよって話なわけで……。
- 《飛鶴の技/Flying Crane Technique》
「あなたがコントロールするすべてのクリーチャーをアンタップする。ターン終了時まで、それらは飛行と二段攻撃を得る。」という、青赤白を含む6マナのインスタント。
イラストが話題になるというMTGでは非常に珍しいカードで、カンフーやってる中国人風の男が躍動的な決めポーズをとるという独特の雰囲気のイラストは世界中で「ポーズ選手権」「クソコラグランプリ」的なブームが巻き起こった。
「インスタントタイミングでのアンタップ」という防御側の能力と「二段攻撃」という攻撃的に使いたい能力が組み合わさっておりなんとも言えないカード。防御的に使うには6マナは重すぎるので、大抵は攻撃クリーチャーを選択した直後に使うことになるだろう。
さらにPT修整すらなく、戦場に十分な数のクリーチャーが並んでいなければわざわざこんなカードに頼る必要がない。率直に言って《踏み荒らし》のようなカードを使わせてほしいという気持ちになるカードである。
しかしリミテッドではクリーチャー戦が一瞬で有利になるため、除去に使えるしフィニッシャーにも使える。そのためカスレアではない……と、普通の場所ではこのカードは「リミテ用なのでカスレアではない」と評されて終わるのだが、実は肝心のリミテプレイヤーにとって極めて悩ましいカード。
「タルキール覇王譚」3セット時代のリミテッドでは相当強いカードであり、攻撃でも防御でも適切な状況で使えば勝利が確定するというエンドカードなので有意性は高い。
しかし3色カードであることから、2パック目や3パック目の初手にこのカードが出てくると「下に流すには危険すぎるが、かといって貴重な1ピック目をヘイトピックに使わなきゃいけないのか」と大いに悩みのタネになる。
この時点ではいわゆる決め打ち状態になることを嫌うプレイヤー(≒ドラフトをやりこんでいるプレイヤー)に評価が低いだけだったのだが、これが「運命再編」発売以降になると「タルキール覇王譚」が最後の1パックになってしまうためこの傾向がなおのこと強くなってしまった。
ではシールドではどうかというと、このカードを生かすにはジェスカイカラーの有用なカードを引かなければならない上に構築がかなり限られてくるのでやはり手放しで評価するには厳しい。
つまり適切な状況で使えれば強いが、リミテッドでその適切な状況を作るのが難しいというもの。ゲームを面白くしているタイプのカードではあるが、少なくとも「初手ピック確定級レア」というほどではない。他のリミテ用レア(いわゆるボムレア)と比較すると強いと断言するには疑問符が残る。
いわゆる「リミテ用レア」にもこのような悩ましいパターンがあるのだが、だいたい「リミテ用なのでカスレアではない」で片づけられてしまいその下を覗くことのない悲しいカード。
通称プリケツ。
5マナの青のエンチャントで、このカードを唱える際に支払ったマナの色に応じて「水晶カウンター」が乗り、この水晶カウンターを取り除くことでクリーチャー1体を1ターンの間タップする。
青のエンチャントなので一応1個乗ることが担保されており、シングルシンボルなので最高5つのカウンターが乗る。カウンターを取り除くだけでいいのでコストも不要。
そしてさらに5色マナを支払うことで占術3が行える。繰り返し使える占術3でドローサポートが可能になるので、カウンターを取り除ききっても無駄にならない。
このように強い点も多いのだが、まず「クリーチャーを1回タップする」だけでアドバンテージが取れないことを5マナのエンチャント、しかも事実上5色を要求されるカードでやる旨味がないという点。単にタップするだけで、次のターンのアンタップ制限などもない。
占術3も確かにそれ自体は強いのだが、「5マナのエンチャントを出して毎ターン5色を支払ってカード・アドバンテージが取れないドローサポートを行う」と考えると途端に割に合わないものになる。
リミテッドのタッパーは確かに強力だがどう頑張っても3~4回使えればいい方で、1~2回しか使えないのならこのカードを採用する意味はない。一応ブロッカーの排除などには使えるが、5マナのレアの仕事としては地味すぎる。
つまりこのカードは中途半端に守勢に回るだけで、このカードのおかげで勝ちにつながるというシチュエーションが極めて少ないというかなり厳しいカードなのである。
一応このカードに欲しい部分である「除去とは言わないからアンタップ制限」「せめて5マナで1ドロー」「手札に戻る能力」などを1つでもつけると主にリミテッドでオーバーパワーになってしまうのだが、それにしてももう少しやりようはあったのではないか?と思わせるすごいカード。
戦乱のゼンディカーは《待ち伏せ隊長、ムンダ》やら《陰惨な殺戮》やら、リミテ用と言うにしても悲惨なレベルのレアが多いのだが、その中でもリミテプレイヤーすら「ゴミと切って捨てるほどではないが、強くはない」と相当にお茶を濁して説明するあたり別格のカードである。
- 《試練を超えた者、サムト/Samut, the Tested》
「破滅の刻」の神話レア。赤緑4マナのプレインズウォーカー。
+1で対象に二段攻撃の付与、-2で2点分の割り振り火力、奥義はライブラリーからのクリーチャーやプレインズウォーカーの展開。
何かデメリットがあるわけではないし、忠誠度の上下についてもごくごく普通のプレインズウォーカーである。しかしすべての能力が、ハッキリ言うと4マナを支払って出したカードでやるようなことではなく、他のカードに極めて大きく依存しているせいでとても使いづらい。っていうか4マナあれば○○するよね、という代替選択肢がいくらでも出てくる始末。
何度か使うことで4マナ分をペイしようというデザインなのだが、+1も-2もあろうことか1マナのカード相当。1マナだからこそ強かったことを4マナ支払ってまでやるべきことかと言われると、多くの人は首を横に振る。
しかも単色なら組み合わせる色次第で工夫ができるのでまだしも、多色なので入るデッキを相当に選ぶうえでこの能力。そして赤緑を含む色というのはグッドスタッフデッキになりやすく、デッキの枠の取り合いは非常にシビアなものになる。サムトが他の採用候補に太刀打ちできるはずもない。
そんなわけで販売価格が最終的に50円になったり、ストレージの中で投げ売りされたりという、プレインズウォーカーにあるまじき粗略な扱いを受けることになってしまった。
似たようなカードには本項目のティボルトの他《ニッサ・レヴェイン》《ドビン・バーン》などもあるのだが、ティボルトやニッサは奥義に至る道筋がダメダメのダメなのであって奥義自体は結構強く、何よりPW界のネタキャラ需要がある(ティボルトが出る前のネタPW枠はニッサだった)。ドビンは書いてあること自体はかなり強いのだが環境にまったく恵まれなかった。
サムトはこういった性質が一切なく、ただ単純に力不足。剥いたパックから出てくるとリミテッドでさえげんなりする。そのため「最弱のプレインズウォーカー」の話では結構頻繁に顔を出すカードだった。
擁護意見としてよく「《倍増の季節》が出ている状態で奥義を打つ」というものがある。それこそ往々にして「○○でいいじゃん」で終わるような意見なのだが、サムトの場合は《賢いなりすまし》などのプレインズウォーカーをコピーできるカードと組み合わせることで事実上の勝利に大きく近づくことができる。そのため単なるカスレア擁護にとどまらないポテンシャル自体はあった。
しかしこれも実は3つ問題点がある。
ひとつは単体では大した仕事ができない上に必ず《倍増の季節》を先に出さなければならないコンボかつサーチ先のカードがライブラリーに眠っていてほしいため、手札事故を起こしやすいという点。
ひとつは《倍増の季節》が出ている状態で強いプレインズウォーカーはサムトに限らないため、サムトよりも単体で仕事をするプレインズウォーカーを選んだ方がいいという点。
そしてひとつは《狡猾な漂流者、ジェイス》の登場後は(プレインズウォーカーのルールの変更もあって)コンボとしてはほぼ下位互換、つまり採用枠がないといって差し支えない点。
これらの問題点を解消できなかったサムトの評価は言うに及ばず、中にはリミテッド用のアンコモンPW《暴君潰し、サムト》の方が使いやすいという人までいたほど。
「破滅の刻」自体、レアの当たり外れがかなり激しいパックではあったのだが、書いてあることが単純に力不足なせいで夢すら見られない。夢を見られるカードなら《ロナス最後の抵抗》とか《永遠の刻》とか色々あるだけに残念である。
当時はストーリーにおける覚醒前の《造反の代弁者、サムト》が、能力をたくさん入れただけのもの(流し台型デザイン)であり、特に瞬速と速攻という両立していても片方が腐ってしまう能力の組み合わせがどうもしっくりこないこともあって、あまり人気のあるカードではなかった。
しかしカードとしては赤緑系のデッキに採用されることがあった他、当時モダンで話題になっていた《魂剥ぎ》デッキの餌としての適性が高かったことで採用される機会自体はそれなりにあった。
それがプレインズウォーカーに覚醒すると採用の余地すらなくなってしまうという、設定的には強化されているのに実際には容赦ないレベルの弱体化を食らっている点も当時は結構話題だった。
背景ストーリーでは人生ハードモードなんてレベルじゃなく、信じていた神様が欺瞞だったことに気づいても誰も信じてくれなかったり、ゾンビ兵になったかつての友人たちを泣きながら再殺害したり、ラヴニカ人に死体は丁重に扱ってくれと頼んだり、萌え化しやすい日本語版イラストでなぜか男らしさが増したせいで性別を誤認されたりとなかなかの苦労人。
- 《スフィンクスの命令/Sphinx's Decree》
各対戦相手は、次の自分のターンの間、インスタントかソーサリーである呪文を唱えられない。
「イクサランの相克」のレア。
なにやら過去の優良カード《中断》や《沈黙》っぽいことが書いてあるが、実際には全く別物。
能力は「各対戦相手が次の自分のターンの間、インスタントかソーサリーである呪文を唱えられない」、以上。キャントリップが無いためアドバンテージ損、唱えたターンには全く影響しないためコンボの露払いに使えない、妨害に使おうにも非パーマネント呪文しか妨害できないため確実性が低すぎる。
使われても「だから何?」と首をかしげたくなるカードで、《蒼ざめた月》といい勝負。当時はまだモダンホライゾンの優秀なピッチスペルがなかったため、「《意志の力》のコストになる」系のネタを突き詰めていくと登場当時は月よりひどいカードかもしれない(当時、手札を追放するタイプの白のカードはどれも実用性が極めて低かったため)。
よく「これが弱いというのはエアプだ」という反論をする人がいるが、テキストを勘違いしているか、《スフィンクスの啓示》あたりと勘違いしているものだと思われる。面白いのでむやみに刺激するのもよくないので、そっとしておこう。
ちなみにイラストとフレイバーテキストでは元プレインズウォーカーのアゾールがかっこいいことをしている。
「カードはクソ弱いけどイラストは良い系なのでは?」と期待をした者もいたのだが、ストーリー中でこれがなんとジェイスが捏造した記憶だと判明。
「性能はパック随一のカスレア、イラストとフレイバーテキストは捏造」と、過去にないタイプとなっている。何もかもがあんまりすぎる。
- 《ダンジョンの入口/Dungeon Descent》
タップイン土地。無色マナを生み出す能力と、ソーサリータイミングでのみ、4マナ支払って、自身と伝説のクリーチャーをタップしてダンジョン探索を行う土地。
タップイン無色ランドというのはマナ基盤としては最低クラスであり、デッキに採用する以上他の能力が強いことが求められる。しかし実質5マナでタイミング的に隙を晒して伝説のクリーチャーを必要という極めて重いコストを支払ってできるのが「ダンジョン探索」という大して強くないことを行うだけ。
このカードが入るデッキを考えると「ダンジョン探索を積極的に行い、伝説のクリーチャーをある程度採用しているデッキ」になるのだが、まずこの時点で相当ニッチなデッキになる。
そしてそういうデッキでも繰り返しダンジョン探索をするカードがほしいなら実質3マナで繰り返し使えるダンジョン探索ソーサリークリーチャー《アーチリッチ、アサーラック》、伝説のクリーチャーのタップが必要ない《50フィートのロープ》など、ほかにいくらでも選択肢があり、あえてこのカードに頼る必要がない。
リミテッドで使おうにも、アンコモン以上にしかいない伝説のクリーチャーを要求する点が足を引っ張る。つまり採用する理由が希薄極まりない。
その弱さは伝説のクソ土地《冬月台地》に並ぶとも言われ、話題がマンネリ化しつつあったカスレア界隈にさわやかな風を吹かせた。
2022年版の紙屑ランキングでは19位にランクイン。旧枠時代の古いカードが上位を占める中での2021年発売のセット初出のこのカードの存在は極めて異質である。
あんまりにも弱かったため、MTGアリーナ専用フォーマットであるアルケミー及びヒストリックでは「アンタップで場に出る」「起動マナコストが(1)に変更」という大幅という言葉ですら済まないレベルの再調整を受けた。
件の紙屑リストではこのアルケミーでの再調整についても言及されており、「再調整されても依然として悪いカードだった。最初の調整がどれほどひどかったか分かるだろう!」とまで言われていた。しかし直後にアルケミーフォーマットで行われた神河チャンピオンシップはダンジョンデッキが優勝し、エラッタされたこのカードも採用されていた。
下記のカードが登場するまでは最近のカスレアの代表例として高い知名度を誇っていた、カスレア界の期待の星だった。
- 《血に呪われた者、オドリック/Odric, Blood-Cursed》
イニストラード次元で怪物と戦い続けていた聖戦士オドリックが吸血鬼になり果ててしまった…と同時にカスレアにもなってしまった。
戦場に出た時、コントロールしているクリーチャーが持つキーワード能力の種類だけ血トークンを生成するのだが、自らは血トークンを利用する能力もキーワード能力も持っておらず、単体では
ダブルシンボル3マナ2色3/3バニラでしかない。
しかも(各能力は
ぞれぞれそれぞれ1回のみ数える。)なんて末尾に書いてあるせいでキーワード能力をコピーする《月皇の司令官、オドリック》等で水増しすることも不可能。多種多様なクリーチャーを地道に展開することを強いられる。
そして血トークンを活用できるカードは赤と黒であり、このカードを入れたければタッチ白にすることを強いられてしまう。
明滅と組み合わせれば複数のトークンを繰り返し出せるものの、他にキーワード能力を持ったクリーチャーがいなければただ出たり消えたりするだけになってしまい、結局のところ多大な下準備が必要になる。同じ用途なら《ヴォルダーレンの美食家》(戦場に出た時対戦相手に1ダメージを与え血トークン1つ生成する
赤単色1マナコモン)の方がよほど安定する。
次の神河:輝ける世界でアーティファクトがフィーチャーされ、相性のよい換装やアーティファクトを生贄に捧げることをシナジーとするカードが登場しても
全くもって評価が上がらなかったことも付け加えておく。
オドリックの鼻血を構築物にして合体するメカ巨神なんてネタも増えたが。そのまた次のニューカペナの街角ではトークン生成を速攻持ちの猫トークンか警戒持ちの犬トークンに置換する《ジェトミアの情婦、ジニー・フェイ》のおかげで多少はマシになった…かもしれない。
サイドストーリーでは血の呪いに抗い、吸血鬼を狩る吸血鬼として怪物と戦い続けるという非常にかっこいいシーンが描かれたものの、それで出てくるのが実質バニラクリーチャーというのは悲劇としか言いようがない。マローがその年度の振り返りを行うコラムにおいても「人気のキャラクターだったオドリックがほとんど使い物にならないカードだったこと」が不満点として挙げられていたと名指しされている。
さらに通常版とショーケース版は「それぞれ」が「
ぞれぞれ」になっているという誤植まで存在する。
極めつけは赤白、伝説のクリーチャー、カスレアということでかの
《覇者、ジョー・カディーン》を彷彿とさせてしまうことも笑いを誘う。あちらは能力の条件に質を問わずアーティファクトを3つ要求すること、こちらは
他に楽な手段はいくらでもあるが条件を満たせばアーティファクトが複数出せる、しかもジョーさんは先制攻撃を持っているのでアーティファクト生成の条件を満たせると
極めて相性がいいというオチまで付く。
ただし「お膳立てして使うほどではないだけで爆発力自体はあるタイプ」「覇者と同じくネタキャラ感がある」というところからか動画配信者には非常に人気が高く、
ETB能力に合わせて《天使火の覚醒》を打ったり機体に搭乗するなどでキーワード能力を水増しし、アーティファクトの数が増えることを利用したデッキなどが考案されている。
もちろん
オドリックエンジンを削って別の手段にした方がいいという意見が続出するカスレアであることは間違いないのだが、
高い爆発力と話題性を持つと別の意味で需要が出てくるという典型的なカードである。
- 《芽吹く生命の行進/March of Burgeoning Life》
手札を消費して軽く撃つことが出来るX呪文サイクルの1つで、山札からクリーチャーを直接サーチして踏み倒して出せる緑のインスタント。同サイクルの白青黒は下環境でも使われるカードで赤も柔軟性が高くそこそこ使われていたが、この緑行進だけは泣かず飛ばずだった。
緑行進の何がダメだったかと言うと、なんと既に戦場にあるクリーチャーと同名のクリーチャーしか出せない。サーチとは名ばかりで実質的にマナ総量+2マナ払うorカード・アドバンテージを失ってコピーを生み出すだけ。一般的なコピー呪文の相場は3~4マナなのでカラーパイを考えても壊滅的なコスパの悪さである。
後に登場した、『試作』クリーチャーや《敬慕される腐敗僧》とは相性が良く一瞬期待が持たれたが、残念ながらこのカードが活躍することは無かった。
- 《五者会談/Meeting of the Five》
5色8マナのソーサリー。ライブラリートップを10枚追放してその中で3色ぴったりのマナシンボルのカードをそのターンのみ使用可能にする。
《ニヴ=ミゼット再誕》が3マナ重くなったら6/6飛行のボディを失い、ハンドアドが衝動的ドローになり、得られるカードの制約がさらに厳しくなるという冗談みたいな効果。
一応補填として各色2マナずつの計10マナ貰えるのだが、如何せんマナ拘束と1ターン限定という二重の制約のせいでアド取りが全然安定しない。3色縛り=使える呪文は最安でも3マナということなので、大抵軽い呪文を無理やりチマチマ撃って終わりとなる。とどめに《五者会談》は5色なのでこれで2枚目がめくれてもチェーンコンボは起こらずハズレ扱い。これで8マナって噓でしょ…?
ちなみにカードイラストには5大頭目が会談を行う様子が描かれているが、それぞれのマナコストを考慮するとこのカードだけではどう頑張っても2枚までしか唱えられない。誰が言ったか二者会談
- 《サリンスの大ワーム/Sarinth Greatwurm》
7/6トランプルに、土地が戦場に出るとパワーストーン・トークンを1つ生み出す能力を持つ6マナ赤緑のクリーチャー。
まず前提として、6マナは現代マジックでは勝負を決めるような強力な効果がついていないと弱いとみなされる、重量級に属するマナコストである。が、このワームくんは持ってる能力が残念すぎた。
まず能力を誘発させるための擬似上陸能力が6マナと重いこれと噛み合っていない。前述の通り6マナはゲームが決まり始めるマナ域なので大抵手札は枯渇している。一応相手の土地が出ても誘発するという上陸にはない利点はあるが、相手がアグロデッキだとそのマナ域に到達する前にゲームが決着している場合があるし、例え大ワームが出せても相手がすでに必要分土地を伸ばせていたらわざわざ利敵行為になる土地セットなんて行わなくなるので気休めでしかない。
もっと悪いのが出てくるパワーストーン。なんとその効果、『アーティファクトでない呪文には使えない無色マナを出す』だけ。前述の通り、これが出る時点で使えるマナは十分にあるため、そこからさらにマナを伸ばす意味が薄く、しかも使い道が限られているマナなので安定して活用しづらい。パワーストーンを真っ当に使うならデッキは自然とアーティファクト中心になるので今度は大ワームがお荷物になるというチグハグ具合。
持っている能力が擬似上陸とトランプルのみなので基本的に仕事をするのは次のターンから。除去耐性もないので、何もせずに退場することもしばしば。相手の土地で誘発するという上陸にはない利点も、除去を打ってから土地を置くことで台無しに。残したとしてもそれほど仕事をしないので無視して自分の動きを優先されることもある始末。
あまりの弱さにスタンダードのプレイヤーたちは驚愕し、「開発中に大量のマナを要求する起動型能力を持ってたけど印刷時に書き忘れたのでは?」との憶測も広がったとか。