戸塚ヨットスクール

登録日:2014/5/4 (日曜日) 12:00:00
更新日:2020/09/11 Fri 18:59:02
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戸塚ヨットスクールとは、昭和の時代から現在に至るまで物議を醸し続ける、日本に実在する組織である。
校長(創立者)の戸塚宏氏により、「オリンピックで通用するような一流のヨットマンを育てる」ことを目標に1976年に設立された。


時代が1980年代に差し掛かろうとしていた頃、不登校や引きこもりなどの事情を抱える数多くの非行少年を手広く受け入れていることが注目され、
マスメディアに取り上げられるようになる。
(当時は非行少年による校内暴力が深刻な社会問題となっていた時代であり、教育現場は混乱し、日本中が対応に追われていた。
また、文中では「不登校」「引きこもり」という表現を使ったが、それらは歴史の浅い用語であり、
当時はそういった言葉も存在せず、当然、対処法も確立されていなかった。)

ここまでは至って普通のヨットスクールであり、慈善団体としても期待を集めていたことが伺える。
また、現在でも、更生して普通の生活を送っている卒業生のことが公式ホームページに記載されている。


しかし、問題はここからである。


1979年から1982年にかけて、ヨットスクールの訓練生の死亡・行方不明事件が複数発生。
警察は当初、過ぎた体罰による事故と見ていた。

しかし、亡くなった1人の少年から無数の打撲・内出血の痕跡・歯2本の損壊などが確認されたことから、警察は傷害致死の疑いでスクール内を捜査。
その後、指導員が舵棒と呼ばれるヨット部材(要するに角材である)で少年の全身を殴打したことがわかった。

それがきっかけとなり校長とコーチが傷害致死・監禁致死などの容疑で逮捕され、他の死亡事件についても起訴されることとなる……


全ての元凶は、ヨットスクールの校長・戸塚宏の提唱する「脳幹論」という独自の理論にあると言われている。

この「脳幹論」とは、「青少年の問題行動は、脳幹の機能低下により引き起こされる」というもの。
「アトピーや喘息、出勤・登校拒否、引きこもり、鬱、癌なども脳幹を鍛えることによって克服できる」とも説いている。
戸塚ヨットスクールのカリキュラムは、すべてこの「脳幹論」に基づいて組み立てられていた。

ちなみに、戸塚校長の支援者の一人である石原慎太郎は、この理論はコンラート・ローレンツが唱えたものであるとしている。
コンラート・ローレンツとは、オーストリアの動物行動学者で「刷り込み」を研究し、近年の動物行動学を確立させた偉大な人物である。
そんな人物が、こんな無茶苦茶な根性論を掲げるはずがないのだが……


この理論を実現するため、コーチたちは
  • 戸塚ヨットスクールに行くことを拒否した生徒に対し、コーチが数人がかりで顔面や腹部を殴りつけて車に乗せ、愛知県にある施設へ連行。(早い話が拉致である)
    ご丁寧にも、戸塚ヨットスクールに入学した生徒には学校に送迎してくれるサービスが付いてくる。(現在は送迎は辞めている様子)
  • 言うことを聞かない生徒には平手打ち、頭を掴んで海水に押し付ける、蹴り飛ばして海に落とすなどの体罰を行う。
  • 規則を犯したり、逃げ出そうとした生徒を角材で殴打。気を失ってもなお殴打。
  • 訓練や懲戒を口実にしつつ、実際はそれ目的ですらない単なる怒りに任せての体罰。

そして校長は保釈中の身でありながらも多くのテレビ番組に積極的に出演し、
「体罰により死亡した例はヨットスクールには1件もない」
「全てが訓練中の事故であり、体罰ではない」
と自己弁護に終始。
また、日本テレビの『EXテレビ』という深夜番組でも、前述の「脳幹論」を含めた持論を展開し話題になった。


しかし、時代は移り変わり、オーバーワークや根性論を是とした戸塚ヨットスクールの教育方針は世間に通用するものではなくなっていった。
1997年、校長やコーチに対し、高裁は執行猶予とした一審判決を破棄し、校長に懲役6年の実刑判決を下した。
即日上告したのだが、最高裁判所では上告を棄却。校長らは実刑判決を喰らった。

法廷で校長やコーチは、生徒たちの死亡について「ちょっと行き過ぎちゃったかな?」程度で自身の責任を認めようとせず、「生徒が悪い」「生徒の運ばれた病院が悪い」と他人のせいにしていた。
それどころか「自分たちは権力者の陰謀で狙われた」などと陰謀論まで展開した自己弁護をしていた。
高裁の判決の量刑の理由を抜粋してみよう。

「人権を無視する程度が甚だしく、特別合宿生の生命身体に危害を及ぼす程度も著しいものであって、社会通念に照らして到底許容される訓練方法ではない。」

「また、訓練や懲戒を口実に、実際はそれとは全く無関係な私的感情に駆られて犯した犯罪も多い。」

「相当数の悲惨な事態を目の当たりにしているのに、医療面で協力者を得るなど若干の改善はしたものの、根本的な訓練方法を改めようとはせず、
安全対策も不十分なまま次々と多数の特別合宿生を受け入れ、同様な方法で訓練を続けてきた。」

「このような悲惨な結果をもたらした事態を直視して謙虚に自省しようともせず、
警察官及び検察官が重大な結果を生じさせた事件の強制捜査をして一連の事件を起訴したのに反発し、
警察官の捜査及び検察官の起訴は戸塚ヨットスクール潰しを図る不当なものであるなどと非難し、
今なお戸塚ヨットスクールの訓練方法は正当であり、死亡した四名の心身には問題があるとか、うち一名については搬送した病院の治療に過誤があるなどと主張し、
改悛の態度は認められない。」

「被告人らに供述の機会を与えたが、ついに誰からも心から反省悔悟する言葉を聞くことはなかった。


こうして、コーチや校長達には実刑判決が下り、全ては終わったかのように思えた…
しかし、悲劇は終わらなかった……


2006年、校長は満期出所。
出所後、報道陣からの「スクールはまだ続けますか」との問いかけに対し、校長は笑顔で「まだまだ続けていく」と回答した。
体罰に依存しない刑務所の矯正プログラムが通用しなかったということだろう。雑誌のインタビューでは刑務所の待遇に対して不満を述べている。
その後も継続された戸塚ヨットスクールの寮内にて、訓練生が寮から飛び降り自殺する事件が相次いでいる……
(逮捕前と比べるとあからさまに不審な死はない。体罰を肉体的なものから精神的なものに移行させた可能性がある……?)


ヨットスクールは今尚健在である。
入校金(330万円)と親や兄弟の同意(本人の同意は不要)、そして生活費さえ納め、スクールまでなんとか連れてくれば、彼らは今なお生徒を受け入れている。

ただ、親兄弟からしてみれば、このヨットスクールは荒れに荒れて手がつけられなくなった子供の最後の引き取り場でもある。
行政等に通報しても、なんもしてくれず、親やその兄弟達は、この手のつけられない、子供の恐怖と戦わないといけないのである。それが300万で解放されるなら安いという声もあるし、高いと感じても車などの大切なものを売り払ってでも入れたがる親もいるのも事実である
この背景こそ、未だに校長の支援者が絶えない理由の一つであろう。

しかし、手がつけられない子供については、まず児童相談所や警察に連絡するのが正しい方法である。
何か犯罪をしているようであれば少年院などに叩き込むこともできるし、担当者が相談に乗ってくれるはずである。

たとえ行政が対応してくれなかったとしても、スクールの蛮行が知れ渡っている現状で、なおスクールに丸投げを続け、お子さんが死亡でもしたら、親御さんも責任を問われる可能性が高いことを忘れてはいけない。
20歳以上のお子さんを本人の意向を無視してスクールに連行させたら、スクール担当者ともども監禁罪であるし、そこでの暴力で死ねば親も「分かってて預けたんだから共犯」ということで監禁致死に問われてもおかしくない。
監禁致死は最高で無期懲役である。
どれだけ自分の子に困っているのだと法廷で泣き叫んだところで、それが理由で無罪になることはないのである。



追記、修正は脳幹を鍛えてからお願ます。

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最終更新:2020年09月11日 18:59