ローズレッド・ストラウス

登録日:2014/05/18 (日) 15:30:27
更新日:2024/12/31 Tue 09:26:01
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月がある限り 夜がある限り いつか私が殺されるまでのこと





ローズレッド・ストラウスとは、「ヴァンパイア十字界」の主人公である。

容姿は優男と称されるほどの美青年だが、武術・知識・魔力から、はては芸術まであらゆる面に精通した天才中の天才で、人間やダムピールからは「赤バラの魔人」と畏怖されている。

千年前はヴァンパイアの王国「夜の国」王で、当時二百歳という異例の若さで王に即位した。(通常は1000歳で即位するらしい)
だがその強大すぎる力ゆえに人間はおろか血族からも恐れられ、「夜の国」の元老院は人間との関係悪化を阻止すべく彼の処刑を決行、女王アーデルハイトを人質にとることでストラウスを捕らえようとした。

しかしいざ処刑を行おうとした矢先、女王がストラウスが殺されることに狂乱して魔力を暴走させ、夜の国をはじめ周辺諸国が壊滅的被害を受けてしまう。人間とダムピールが結託したことでなんとか女王は封印されることとなるが、愛する妻を奪われる形になったストラウスはこれに憤慨する。

そして彼は王としての地位も親愛なる祖国も守るべき血族ですらその手で切り捨て、女王の封印を解くためにこの世の全てに敵対することを誓うのであった。



全ては愛する妻、アーデルハイトを救うために・・・・・・・


























愛するアーデルハイトだと? ふざけるな! ストラウスはこれっぽっちもアーデルハイトを愛していない!!





レティシアと花雪に対して放ったブリジットの言葉。
その言葉の真意を確かめるためにストラウスに問う二人、そしてブリジットに問いただす蓮火が聞くのは驚愕の真実だった。


かつてストラウスがまだ「夜の国」の大将軍だった頃、彼には一人の愛する女性がいた。
名前は「ステラ・ヘイゼルバーグ」、当時十八歳の人間の女性だった。


隣国の村娘だった彼女にストラウスは一目で気に入り、恋人として「夜の国」でともに過ごすこととなる。
やがてステラはストラウスと正式に結婚し、彼女はストラウスの子供をその身に宿した。

しかし出産が間近に迫った頃、ステラは何者かに惨殺された。まだお腹にいた、ストラウスの子供ともども・・・・・・・・

当時ストラウスは隣国との交渉のために国を空けており、遺体は彼の義理の娘ブリジットによって発見された。
状況から考えて他国の主戦派による犯行ではと考えられたが、仮にそれが事実ならば条約も何も無視し
一夜の内にその国を滅ぼしかねないほどに怒り狂ったストラウスは、自らを抑えるためにあえて捜査を打ち切り
以降は心を凍らせるかのようにただひたすら国のために機械的に尽くし、しばらく後にかねてから皆に望まれていた王女アーデルハイトと結婚
そして王位につき、それから10年ほどの僅かな期間ではあったが夜の国はかつてない大繁栄を遂げ、ストラウスは『至高の王』と讃えられた。






だがストラウスの処刑の日、間が悪すぎることにステラ殺害の犯人が明らかとなってしまった。
その犯人とはなんと、彼が九年間妻として連れ添ってきた女王アーデルハイトだったのだ。

彼女はストラウスを愛するがゆえに、その恋人であるステラに嫉妬して彼女を惨殺、さらにはお腹にいた二人の子を引きずり出して引き裂いたのだという。
真実を知ったストラウスは当然のことながらアーデルハイトに復讐を決意、しかしあと一歩のところでアーデルハイトが魔力を暴走させてしまい、復讐は未遂に終わってしまったのだった。

つまり女王の暴走はストラウスが殺されそうになって狂乱したのではなく、彼に殺されそうになって怯えてのものだったのだ。
その後アーデルハイトは封印されたがストラウス自身はこの程度で諦めきれず、今度こそアーデルハイトの息の根を止めるべく彼女の封印を解く旅を始めるのだった。


守るべき血族も、自慢の愛娘でさえも、その手で切り捨てて・・・・・・・・ただステラへの愛ゆえに



















というのが、ブリジットが千年間思い込んでいた真実。だが事実は更に酷なものだった。
なんとストラウスはアーデルハイトを許していたのである。

そもそもアーデルハイトがステラ殺害の犯人だとストラウスやブリジットが気付いたのは
元老たちがストラウスを処刑場へ連れ出すために、人質にとったアーデルハイトの装身具を見せたからである。
だがその「アーデルハイトのもの」として差し出された装身具は、かつてストラウスが自ら細工しステラに渡したこの世に1つしかないものだった。
だからこそ2人は「アーデルハイトがステラを殺した」と確信したのだが、実はそれこそがアーデルハイトの狙いだったのである。
アーデルハイトは、自分がステラを殺したことによって凍てついてしまったストラウスの心を憎悪でもって再び動かし
何とかストラウスが生きる気力を取り戻して処刑を回避してはくれまいかと想い、あえて元老にその装身具を渡したのだった。

だが処刑城に現れたストラウスは穏やかな表情で処刑に臨もうとし、想定外の展開にとまどうアーデルハイトに対しても
事実を受け入れた上で全ては自分の責任であるとして彼女を許した・・・既にストラウスの心は憎悪ですら動かないほどに死んでいたのである。

アーデルハイトが魔力を暴走させたのは、一周回って伝説のとおりにストラウスが処刑されることに狂乱したからである。


では何故ストラウスは国も民も見捨てたばかりか、アーデルハイトを殺すためと偽ってブリジットすら敵にしたのか?
それは、アーデルハイトの暴走によって高まったヴァンパイア血族への恐怖を自分一人に集中させるため
そして残った民を率いて人間達と「打倒赤バラ」の下に協力できる人材がブリジットをおいてほかにいなかったからである。
ストラウスがその気になれば世界を征服することもできたが、それでは人間とヴァンパイアの血族の間に大量の血が流れてしまい、戦乱によって大地は荒れ果て未曾有の大飢饉が発生しそうだったからである。
全ては民たちの犠牲を最小限に食い止めるため、自ら悪役になるための大芝居だったのである。

仮に、ブリジットの思い込み通りであってもブリジット等を懐柔しておけば、その固有能力等から封印の発見も容易く・『黒く白鳥』への有効手段となるため整合性が取れなくなるのだが『その可能性に思い至る思考力』を奪うために手ひどい裏切りを演じたのである。

この自身を生贄にした策の結果、純血のヴァンパイアは腐食の暴走とその後の吸血鬼狩りで全滅したものの『赤い薔薇』への共同戦線を人類と吸血鬼の血族は構築し、一応の戦乱は終結を見たのだった。



      • そしてストラウスにとってアーデルハイトは確かに愛する妻であった。
実は、アーデルハイトはステラ殺害の犯人などではなかったのである。
真犯人は無限十字のセイバーハーゲン。ストラウスの強大な力を恐れていた人間だった。
だがアーデルハイトはステラがセイバーハーゲンの術で殺害されるのを目撃しており
そしてステラの遺言でストラウスの贈り物である装身具が奪われぬよう預かって欲しいと言われ、諸々の事情から真犯人を隠すよう言われていたのである。

全ては愛するストラウスを守るために自ら悪役になるための大芝居だったのである。

当初はアーデルハイトの封印をできるだけ長く解かないでいようと考えていたストラウスだったが
事実をセイバーハーゲンから聞かされた後は少しでも早くアーデルハイトを解放し、彼女に謝りたいという一心で千年間戦い続けたのだった。






だが、この自分を双方の敵とする策には重大な欠陥があった。

一、人間の世代交代による『霊力喪失』と『赤薔薇への恐怖の喪失』であった。これによって人間の敵意が赤薔薇からヴァンパイア血族の生き残りによってシフトしつつあり、ブリジット指揮のもとヴァンパイア血族は人間社会から離脱。隠れ住むようになる。
このことにより、当初の目的であった人間とヴァンパイア血族との戦争中断の目的は喪失してしまった。
二、世代交代を繰り返すたびに強化される『黒き白鳥』の能力がストラウスに迫りつつあり、いずれ力関係が逆転してしまう。時間制限
三、人間社会離脱後のヴァンパイア血族が纏まっていられる理由が、『純血のヴァンパイアの死骸』を用いての人間化という目標であったが実はこれは『完全なブラフ』であり、純血のヴァンパイア殺害を抑止させるためのでっち上げであるため『赤薔薇の死=目標の崩壊』という図式が成立してしまっているためである。
目標=希望を喪失したコミュニティが空中分解するのは避けられず、只でさえ弱体化したヴァンパイア血族の破滅を意味する。


この為、この状態を永遠と演じていられるはずもなく彼は『ヴァンパイア血族の人間化』以外の目標の設定とそれへ血族の目的を移行させる必要があったのだ。
そして、終盤すべての嘘が暴かれしまった赤薔薇は新たな策を提示する。

『ヴァンパイア血族月移住計画』である。

元々、この策に時間制限があったのは彼自身百も承知でそれに次ぐ策として制定したものであった。

この計画には大筋として

  • アーデルハイドの腐食の魔力の転用によるコロニー形成(この時点で全霊の魔力消費をするので彼女は死亡する)
  • 既存の不完全な宇宙工学でも十二分に作業可能なダムピールによる月面開発
  • アーデルハイドによる魔力コロニー喪失前に人工コロニー建設
  • 残ったヴァンパイア移住

というプロセスである、これをブリジットに伝え彼女が今まで育ててきた配下を含む組織力により最初のプロセスさえ完遂すれば自分が居らずともヴァンパイア血族は新天地で生き続けるという方策である。
此処までくれば、もはや自分は必要ない。
血族は自分という存在を敵としても・王としてももはや必要とはしなくなる。----生きているのならば血族の為に心身を費やす事は決めている、だが『黒き白鳥』との戦いだけは他人を関わらせてはいけない。

そして、彼は地球へ迫る侵略者を妻と共に鎧袖一触で葬り、亡き前妻の墓の前で血族の未来を作り果てる妻を見送り―――単身、不俱戴天の天敵が待つ青い星へと帰還する。


黒き白鳥、赤い薔薇の二者は事の是非を天命に問うと言わんばかりに、生死を分かつ戦いによって運命を決しようと洋上にて最期の戦いを始めるのだった。




『-----どうか、あなたにいと高き月の恩寵がありますように。』











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最終更新:2024年12月31日 09:26