アールネ・エドヴァルド・ユーティライネン

登録日:2014/09/27 (土) 03:12:00
更新日:2023/08/11 Fri 23:55:57
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アールネ・エドヴァルド・ユーティライネンとは、フィンランドの軍人であり、リアルチートであり、とあるフィンの聖戦士の実兄であり、ウォーモンガーである。
あのコッラー川の白い死神の上司としても有名で、部下に負けず劣らずの強烈な軍人だった。


軍歴、もといその生涯

戦前のアールネさん

青年期のアールネはフィンランド陸軍士官学校に入学、最終学年まで進む。言うまでもないが、この時点で(才能面での)士官適性が十二分に高いことは明白。
が、どうにも生来享楽的な面が大きかったようで、本人の言う所によれば「ちょっとした規則違反」を3回やらかし、卒業まで残り僅か4ヶ月というところで1年の停学処分を受ける。
……どう考えても「ちょっとした」では済まされません本当に(ry
停学中に少尉としてとある自転車大隊に仮配属となるが、ここでも本人曰く「3回ほどちょっと人生を楽しんだ」ために同数の拘禁処分を受ける。
これには士官学校もマジギレ、退学処分となった。まあ残当。

その後、糊口を凌ぐために船員となって甲板掃除などやっていたが、いい加減飽きてきたところでたまたま新聞にフランス外人部隊の記事を見る。
ビビっときたアールネ、即断即決で船員を辞めると北アフリカはモロッコに渡航、外人部隊に入隊する。

1930年~35年にかけて外人部隊に在籍。新兵としての訓練期間中に例によって問題起こして監獄に放り込まれるが、釈放後は大人しく訓練を受けていた模様。
その後は同僚のオーストラリア人とボクシングしたり、上官に罵倒かましたりしつつも5年間務め上げ、契約更改で残留を希望されるも除隊。35年の夏に祖国へ帰還する。
後述のエピソードからしてどうあがいてもまともな人間ではないが、精鋭で鳴らす外人部隊から残留要請を受けるあたり、傭兵としてはガチで有能だったようである。
なお、外人部隊在籍中に何をやらかしたのか、「モロッコの恐怖」なる物騒な渾名を頂戴していた模様。一体何をやらかした……

帰国後に経歴を買われてか、陸軍で小隊長を任されることになる。しかし酔って爆睡してるところを同僚に箕巻き放置されたのをよりによってお偉方に見つかり、マッハで除隊処分。
その後は様々な職を転々とし、「あー、モロッコ楽しかったなァ。もっぺん行くか?」などとウズウズしていたが、カーチャンの懇願で先延ばしにしていたところ、
赤い大地の露助どもが殴りかかってきたために予備役士官として再召集がかかり、再訓練の後中尉として任官。
フィン陸軍第12師団第34連隊第6中隊、通称“カワウ中隊”中隊長を拝命する。


冬戦争

冬戦争開戦時には所属連隊がソ連領内に突き出ていた「ヒュルシュラの鈎」と呼ばれる地域に展開しており、侵攻してきたソ連軍に対し遅滞戦闘を実行。
外人部隊で培った手管を駆使して赤軍を苦しめ、遅滞戦闘自体は完遂するものの、師団はコッラー川周辺まで押し込まれる。ぶっちゃけ、此処から先は後がない。
というのも、この辺には道路が数本しかなく、これを抜かれると道路沿いに首都まで一直線。
さらにはこの先のロモイラが失陥してしまえば鉄道補給の目がなくなってジ・エンド。ガチの最終防衛ラインであった。
この“コッラーの戦い”において、フィン軍の防衛戦力はヴォルデマル・ハッグルンド少将率いる第12師団のみ。
これに対し、アカどもは4個師団+1個戦車旅団を放り込んできたというから笑えない。普通なら揉み潰されて首都直行、そのまま蹂躙でフィニッシュ……の、筈だった。

しかし、第12師団は不退転の覚悟をもって決死の防衛戦を敢行。スキー部隊による雪中無音進軍からの夜襲など、地の利を十二分に活かした戦術で赤軍を翻弄する。
これには、赤軍がスターリンの大粛清でまともな将校をほとんど失っており、兵士は畑から採れる奴隷扱いで士気がドン底だったというのも大きかったようだ。
スキー部隊の奇襲に物資を放り捨てて逃げ出し、結果的にフィン軍に補給を行う連中が多数いたというから笑えない。
なお、フィン軍の武装は当時としても旧式であり、ついでにソ連製のものが多かったため、鹵獲兵装は「使い勝手が似てて弾丸共用の新型兵装」として重宝された模様。

ちなみにこの戦いにおいて、ハッグルンド少将とアールネの会話がこのように記録されている。
ハッグルンド「中尉、コッラーは持ち堪えるか?」
アールネ「コッラーは持ち堪えます、閣下が我々に退却を命じられない限り
これぞまさに燃える漢の会話である。

アールネの言は正しく、第12師団はその戦闘能力をギリギリまで削られながらも講和条約締結直前まで持ち堪え、遂にコッラー川周辺領域を守り抜いた。
これには例年より多少暖かかった(とある一週間の平均気温-20℃)とはいえ、極寒のフィンランドに構築された塹壕陣地がそれこそ甲鈑のように硬化していたことも大きい。
言わばコッラー川周辺そのものが天然の要塞陣地と化していたのだから、そりゃあ攻めるのもキツいというものだ。
特に、ヘイヘを含むフィンランド兵わずか32人が赤軍4000人と相対してとある丘陵地を防衛し、露助の屍山血河を築いた戦闘はあまりにも有名。
この丘は俗に“殺戮の丘”と呼ばれ、コッラーの戦いにおける第12師団の敢闘は『コッラーの奇跡』として今なお語り継がれている。


戦後のアールネさん

コッラーの戦いを経て国民的英雄の一人となったアールネは終戦後に結婚し、コンティオラハティ駐屯地で教官の任に就く。
が、継続戦争が始まると戦列に復帰、第7師団第9歩兵連隊に属し戦場を駆け回る。
さらにラップランド戦争では大隊指揮官として戦うが、横紙破りで破天荒な言動から大尉以上には昇進できず、職業軍人にもなれなかった。

戦後は予備役として市民に戻るが、戦うことに人生のすべてを捧げた男が平和な世界に馴染めるはずもなかった。
結婚生活は破綻し、戦傷の痛みを酒でごまかすうちに溺れ、軍の兵站部から回してもらった仕事で細々と生計を立てた。
1976年10月28日、享年72歳にして病没。その存在を忘れ去られたかつての英雄の、あまりにも寂しい最後であった。
戦後も恩給で軽飛行機を買い、エアショーで無双しまくっていた弟とはエラい差である。


アールネさんの破天荒エピソード

基本的に戦争が三度の飯より大好きなウォーモンガーで、赤軍の砲撃降り注ぐ中でロッキングチェアにくつろぎつつ読書に興じる、
そのロッキングチェアに狙撃銃を持って座ってるところに釣られたソ連兵を手ずからカウンタースナイプする、
ピクニック気分ではしゃぎながら戦車5両撃破、対戦車砲2門を鹵獲しちゃうなど、世界に誇っていいのかちょっと迷うフィン軍のミスターやりたい放題。

ヘイヘの経歴を見て即座に狙撃手としての遊撃任務を与える、赤軍の砲撃にさらされる中で平然とクリスマスに興じるなどの破天荒なカリスマと部下の才能を見抜く眼力を併せ持っており、
部下たちからは「親父(パッパ)」と呼ばれ親しまれる豪快なオッサンだったようである。
なお、敵にとっては恐怖の対象だった模様。

その1 補給は強奪するもの

冬戦争開戦以前からフィン軍は物資の不足に悩まされていたが、アールネはそんなことを気にすらかけず「俺の兵士には完璧な装備が必要だ(だからよこせ)」と豪語。
他の部隊を押し退けてでも略d……もとい物資調達を強行した。
が、とうとう調達は行き詰まり、アールネのデスクには領収証や命令書、嘆願書などの各種書類が山をなし、補給担当もついに匙を投げてしまう。

が、諦めかけた補給担当に対し、我らがパッパはまさに親父のようにアドバイス。
「お前らが持ってるのは何だ、拳銃だろうが。それを使ってうまくやれ」
結果、第6中隊は装備の充実した状態で冬戦争に臨むことができた。当然非難轟々だったが、当人は何処吹く風。
曰く「戦争中は何やっても許されんだよ」、「お前ら、砲弾の欠片がデコに飛んできてようやく『ヘルメットかぶっときゃよかった』って後悔すんのか?」とのこと。
一応正論なんだけど、それを馬賊まがいに押し通すのはいかんでしょ……


その2 自由と義務

アールネと愉快な仲間達がアカども相手にブイブイ言わせていたある日、彼の中隊に補充兵2名がやってきた。
彼らはよりによってアールネに直接「良心に従い、武器を取ることを拒否する」と宣言。無茶しやがって……
ちょうどアフリカでの武勇伝を開陳していた時で機嫌が良かったのか、古参兵のwktkが止まらない視線をよそに、平然とパイプにたばこを詰め直し、プカリとふかして言い放った。

「ああ、武器を持てとは強制せんさ、個人の自由だからな。だが見張り番は公平に割り当てるぞ、これは兵士の義務だからな。当然、お前らにも見張りに立ってもらう。
なァに、露助どもが来たら雪球でもぶつけてやりゃァいいんだ。奴らを通さなけりゃそれでいい」

古参兵がコーヒー吹いたりむせたり爆笑してる中、身の程知らずな補充兵が「手ぶらじゃ無理ッス」と降参したため、アールネは分隊長の一人に案内を命じ、再び武勇伝を披露しだしたという。


その3 ヘイヘとアールネさん

ヘイヘは彼の部下であり、同時にその才能を見抜いて狙撃兵として運用した。つまりヘイヘの狙撃無双はだいたいこの人のせい。
従軍記者の取材に対しヘイヘの戦果を紹介し、世間に彼の名を広めるきっかけともなった。
また、ヘイヘが任務中に負傷・後送された際にはその重症から「さすがのアイツも死んじまったか?」と思っていたらしく、
生存報告を受けた際には飛び上がるほど喜んで祝宴を開き、ヘイヘに手紙を送るなど一際目をかけていた模様。


その4 ふたりはユーティライネン

常時気力限界突破&分身(成功率100%)発動中の聖戦士、エイノ・イルマリ・ユーティライネンは彼の実弟である。
イッルの自伝によると、アールネから第一次大戦の超エース、“レッドバロン”ことマンフレート・フォン・リヒトホーフェンの回顧録をプレゼントされ、
大空と航空機への憧れを強く抱いたことがパイロットを志すきっかけとなったらしい。
やっぱり貴方のせいですかアールネさん。




追記・修正はコッラー川を赤い暴風雨から守り抜いた人がお願いします。

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最終更新:2023年08月11日 23:55