エリミネーター(バイク)

登録日:2015/08/08 (土) 22:18:28
更新日:2025/05/24 Sat 18:04:10
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エリミネーターとは、のカワサキが販売していたドラッガースタイルのバイク。排気量別に数種類が製造されていたが、現在は全て絶版となっている。


エリミネーター900 (ZL900)

1985年発売の記念すべきファーストエリミネーター。他のメーカーがアワレにもハーレーまがいのクルーザー(アメリカン)を発売する中、
個性を追求する(癖が強い)漢カワサキのエンジニア達は、アメリカにおけるハーレーの牙城を本気で崩すべく、全く新しいクルーザーを考案していた。

「でもやっぱハーレーが王道すぎて分からねぇな」
「GPZ900Rのエンジンそのままつけちゃうか」
「そ れ だ !」
「ハーレーなんか余裕でぶち抜けるなwwww」
「名前はどうしよう?」
「……ちょっと良いか?ずっと心に決めていた名前がある」
「ん?なんだよ」
ELIMINATOR。文字通り、ハーレーを排除するものだ

こうして出来上がったのが、エリミネーター。そのスタイルはクルーザーながらネイキッドとも取れる、独特なもの。
で、GPZ900Rというのは何なのかというと、同じく漢のカワサキが製造販売していたスポーツツアラーである。当時世界最高、最速と名高い名車。

スポーツツアラーで、当時世界最高、最速。※ここ大事なとこ。

これがどういうことなのか説明すると、クルーザータイプのバイクというのはのんびり、ゆったりな走りを楽しむものであり、あまりスピードを追求するものではない。
そんなスタイルのバイクにスポーツタイプのバイクエンジンを、ちょっと設定いじっただけでそのまんま載せるとかいうのをやって販売したのがエリミネーターである。

いわゆるゼロヨン(0-400m)のスピードを競う、ドラッグレースを意識して開発されたバイクであり、最高馬力はなんと105psである。
規制が強まる2015年現在の同クラスの同タイプと比べても高い数値を誇っている。

以上のエリミネーター900が輸出車としてデビューし、国内版は当時750cc(ナナハン)までしか造れなかったので、エリミネーター750が同年デビュー。最高馬力は77ps。
更に1987年には名こそ冠していないものの、最強のエリミネーターという位置づけでZL1000が登場し、これまた最高馬力110psの化け物クルーザー。

この3台を究極のマシーンとして、ハーレーよ!これが日本のクルーザーだ!



と、満を持して登場したものの……実は2年ほどで3台とも製造が終了。面白い挑戦ではあったのだが、やはりハーレーがあまりにも強すぎた。
更に実はこのエリミネーターと似たようなコンセプトを持ったバイクが、既に1983年に登場していたのである。それが……。

技術のホンダ、世界初の水冷V型4気筒のVFシリーズの流れを汲むVF1100C。またの名をV65-Magna

そう、マグナである。こちらも1986年には製造が終わっているバイクではあるのだが、その人気は2015年現在でもパーツが豊富で、海外のアマゾンやらオークションで簡単に手に入るというもの。
しかも先ほどGPZ900Rが当時世界最速と記述したが、それは総合的な面で見ての評価である。このVF1100Cというのは最高速という面だけで見れば、GPZ900Rよりも速く、なんとギネスで最も速い市販二輪車と認定されていた。最高馬力は116ps。


これだけでも痛いのだがなんともう一台、エリミネーターはおろかマグナの立場まで追いやった、やはり同コンセプトのバイクが同時期に誕生していたのである。それこそが……

芸術のヤマハ、本場ハーレー乗りがクールとして唯一認めるVMAX

もはやここまで読んでいる方は、かなりのバイク好きと思われるので説明は省く……というか当該項目を見ていただきたいのだが、こんなスーパーバイクが世に出てしまったのである。これはもうどうしようもない。

これでエリミネーターという漢カワサキの魂がこめられた名車は、短命に終わってしまうのか……と思われた。

エリミネーター400 (ZL400)

1986年発売。エリミネーター900がGPZ900Rのエンジンを搭載していたように、この400もまたGPZ400Rのエンジンを搭載している。
先の900、750、1000が持っていたドラッガーというスタイルもそのままであり、最高馬力は54ps。同排気量のネイキッドと同等レベル。
数字は同じ400ccかもしれんが、現代の見てくれだけのクルーザー(アメリカン)と違い、このエリミネーター400は馬力が違う!加速が違う!ステップ位置が違う!魂が違う!(言いたかっただけで今のクルーザーだってカッコいいです)

1988年には黒を基調とし、ビキニカウルとキャストホイールの「SPORTS EDITION」ことエリミネーター400SE、落ち着いたカラーリングでメッキパーツとスポークホイールの「LUXURY EDITION」ことエリミネーター400LXの2つに分かれた。

1994年にはSEとLXの統合が行われ、エリミネーター400Dとして販売。これが400の最終仕様となった。
また、この400をベースに海外向けモデルとしてエリミネーター600・500が販売された。600は少数だが日本にも存在している。

この400は短命であった750・900・1000の兄貴分たちとは違い、10年近く製造販売されたモデルであり、人気であったと言えるであろう。
それに現在では少なくなった400で4気筒のエンジンも面白い。


そして時を越えて2023年、復・活!
中身に関しては完全に別物で正式名も「エミリネーター」のみで数字はないが400cc。
2気筒となったものの、先代と同様のコンセプトは健在で、フルカウルタイプの車両Ninja400と同じエンジンを採用しており
クルーザーらしからぬスピード感を引き継いでいる。
Ninja400では高速走行時にアホみたいな振動があることが唯一の欠点と言われたりもするが、
こいつは新設計のおかげかそれも多少解消されておりしっかり乗り心地も強化。

現在400CCクラスほぼ唯一のクルーザータイプという立ち位置のため、予約開始の段階で一瞬で在庫が消え失せ、
発売から2年経った現在も新車を注文した場合納車がいつになるかわからないレベルの人気車種となっている。
そのせいもあり、納車待ちの間にマイナーチェンジが発表され、予約したカラーや車種が絶版になり変更を迫られるというトンデモ現象が多発していたりもする。

エリミネーター250 (EL250)

1987年発売。兄貴分たちと同じくGPZ250R……ではなく発展型であるGPX250Rのエンジンを使用している。
ドラッグマシンというスタイルをこいつもバッチリ受け継いでおり、最高馬力は40ps。エンジンが完調であれば時速160kmも出すことができ、400ccのクルーザーなんぞ余裕でぶち抜くことが可能(最高速はサーキットで試しましょう)。
ただし、兄貴分たちとは違ってエンジンが2気筒なので高速走行中は振動が凄まじい。このパルス感が絶妙ではあるのだが、長時間乗ると手が痺れてしまうことも。

1988年に400と同じく、エリミネーター250SEエリミネーター250LXに分離。大体一緒なのだが、SEはアンダーカウルが追加、LXは販売期間が長いのでカラーリングが豊富。

SEはカウルでドラッグマシンを強調させ、ちょっとワルなイメージ。LXはドラッグマシンにクラシカルな要素を入れ、メッキで豪華。この2つの分け方が良い方向に働いたのであろう。初代・SE・LXと合わせて10年以上も販売されたモデルであり、人気があった。

そして……。

エリミネーター250V

1997年発売。250のフルモデルチェンジ。ステップ位置がやや前、並列からV型エンジンとちょっぴりハーレーのようなクルーザーになった。
カワサキにはバルカンというクルーザーも存在しており、そちらはもともとV型エンジン。ん?じゃあバルカン250として出せば良かったんじゃね?
否。断じて否。高回転型のエンジン、最高馬力38ps(後に35ps。同クラスのライバル車たちは30ps未満)とドラッガーというコンセプトをこいつはしっかり受け継いでいるのだ。

2007年の排ガス規制までの10年間製造販売された。規制さえなければ……と思わざるを得ない。

エリミネーター125

1997年発売。末っ子である。外見は250V兄ちゃんとそっくりで、兄弟唯一の単気筒エンジン。
最高馬力は13.1psと中々ではあるが、規制規制アンド規制により最終モデルでは半分近くの7.3psとなっていた。規制さえ(ry
小型2輪で珍しいMT車だったために、小型2輪の教習車で使っていた教習所もあるのだとか。

V兄ちゃんの後を追うかのように、2008年の排ガス規制で製造終了した。規制(ry




以上がカワサキの名車、エリミネーターたちの全てである。現在ではこいつに乗るために免許を……!という人は少ないかもしれない。
カワサキか・・で有名なカワサキのバイクであり、しかもVと125以外はかなり古いモデルというダブルコンボでもある。

それでも乗っていてかなり楽しいバイクであることは確か。根強い人気もあり、好きな人は大好きなマシン。
エンジンがGPZ系=ニンジャのために流用できるパーツも多いし、2015年現在でも整備にはそこまで困らない。それにVや125なら余裕だろう。

腕の良いバイク屋さんを見つければ、まだまだなんとかなるし乗れるバイク。この記事を見た方が少しでも興味を持てば……と思う。
というかシリーズの復活を願うばかりである。





そしてなんと2015年。エリミネーターを受け継ぐマシンが誕生した。

バルカンS

排気量650cc。最高馬力61ps。メーカーはもちろん漢カワサキ……ってバルカンじゃねーか!?と思われただろう。ところが!
V型エンジンだったバルカンシリーズなのに並列エンジン。しかも流用元はNinja650。そうエリミネーターの元と同じ系譜(GPZ=Ninja)なのだ。
フォルムもマッチョなこのバイク。このスタイルが受けてNinja H2のエンジンを積んだクルーザーが出ないかと期待が高まるばかりである。
しかし残念なことに、2022年を以て販売停止……したと思っていたら2025年にマイナーチェンジし謎の復活を遂げた。
販売模様がよくわからない挙動をしているがミドルクラスのほどよいクルーザーがほしいならオススメ。


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最終更新:2025年05月24日 18:04