ツァトゥグァ

登録日:2016/08/12 Fri 00:06:11
更新日:2024/12/09 Mon 23:48:01
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それが少し身動ぎして、このうえもない怠惰なやり方で、巨大な蟾蜍染みた頭部を前に突き出した。

――――――七つの呪い


ツァトゥグァ(Tsathoggua)は、クトゥルフ神話に登場する旧支配者の一柱。発初は作家、クラーク・アシュトン・スミスの作品である。四大元素では地に該当する。
クトゥルフ神話の神格の例によって、この「ツァトゥグァ」という名前は解読・発音不能の呼称を人間の言語に直したものであり、ツァトゥグァの他にゾタクア、サドグイ等の名称が用いられる場合も多い。
本項目では恐らく一番有名だと思われる「ツァトゥグァ」の名称で扱う事にする。

この神のルーツは神々の総帥にして万物の魔王、アザトースまで遡る。
まずアザトースの落とし子、両性具有の神格 サクサクルース (クグサクスクルスとも)が単為生殖により、 ギズグス フジウルクォイグムンズハー という神を産み落とした。
その後、 イクナグンニスススズ と呼ばれる存在が女神 ズスティルゼムグニ を産み落とし、 ギズグス ズスティルゼムグニ の交配の末にこの神 ツァトゥグァ が誕生したとされる。
…正直滅茶苦茶分かりづらい。これらの神について家計図はこのように設定されているが、一部を除いて詳しい詳細が書かれていない。
初心者の方はとりあえずアザトースの曾孫にあたる神性、と覚えておけばよいだろう。


この神は元々サイクラノーシュ(土星)に存在していたのだが地球が誕生して以降はそちらに移り住み、太古の地球においてはハイパーボリアのヴーアミタドレス山の地下洞窟を根城とし、現代の地球では暗黒が広がる地下世界ン・カイの黒い入り江に棲むとされている。


■この神の姿形や特徴について
ツァトゥグァの本質は不定形であり、可塑性の体を持つと言われている。
一般的?には、黒い毛皮に覆われたでっぷりと丸く太った体型に、ヒキガエルのような頭部と蝙蝠のような耳を有する姿であるとされる。
幅広く裂けた口からは舌がべろりと垂れ下がっており、目は常に眠そうにしている。地球で似た動物としてはナマケモノとカエルに近い。要するにトトロである。


非常に温厚で怠惰な性格であり、基本的に塒と定めた場所からは一切動こうとせず一日中惰眠を貪っている。
一応食事も行うようではあるが、自分から獲物を取る気や他の種族と争う気は更々ないようで、数少ない崇拝者が生贄を献上してくるのを待っている。


このように見かけこそ間抜けであるが、旧支配者の中でも相当な力を要する存在であり、彼を崇拝した者は天地創造以前の凄絶な魔術の知識と力を欲しいままに授けられ振るう事が出来るとされている。


……さて、このツァトゥグァ神であるが他の神格にはあまり見られない特徴を持っている。それは




温厚で、優しい(クトゥルフ神話の中では)。




クトゥルフ神話における神格は、基本的に人間含む下位の存在など路上の小石程度にも思っていないか、弄くり回した時の反応が面白い玩具程度の認識をしているのが大半である。
それらの中においてツァトゥグァは信徒の事をそれなりに気をかけてくれる神であり、ある程度安全に見返りを期待する事が出来る数少ない存在なのである。

クトゥルフ作品の一つとして『七つの呪い』と呼ばれる物がある。
この話は魔術師の儀式を妨害してしまった一人の人間が、その魔術師に呪いをかけられ恐ろしく冒涜的な生物の間をたらい回し市中引き回しにされるというコメディホラー作品であるが、その中にこのツァトゥグァが登場する。

魔術師エズダゴルに呪いをかけられた主人公、ラリバル・ウーズは自らの身体を魔境ヴーアミタドレス山の地下洞窟に住まうツァトゥグァに生贄として捧げる事を強制されてしまう。苦難の果てにラリバル・ウーズはツァトゥグァ神の御前まで辿り付き、自らが魔術師に遣わされた生贄であると宣言する。これに対するツァトゥグァの返答がこれである。




「この捧げ物を送ってきたエズダゴルには感謝する。されど、世はたっぷりと血を含んだ生贄を食らったばかりであり、今は捧げ物は欲しくない。しかし、他の旧支配者の中には餓えや渇きをかこっている者がいるかもしれぬ。お前は呪いの案内でここに来たのだから、別の呪いの案内なくしてはどこにも行けぬだろう」




「したがって余が新たな呪いをかけよう。お前は洞窟を下り、アトラク=ナクアが住まう深遠に行き、そやつにこう呼びかけるのだ。『私はツァトゥグァから遣わされた贈物でございます』と」





…このように必要のない場合は殺傷を行わず、生贄が送られてきたとしてもそれを 隣人へとお裾分けする 優しさと器の広さも有しているのだ。本当に優しいのなら家に帰してくれてもいいような感じはあるが

また、彼は自分を崇拝してくれる信徒に対しては凄まじく 優しい
大体にして生贄が送られてきて真っ先に出た言葉が信者への感謝である。
彼の代表的な信奉者にして、伝説的な魔術師エイボンが登場する話『魔術師エイボン』でもそれはうかがえる。

ツァトゥグァ信仰が邪教とされ、厳しく弾圧された世であってもツァトァグァに関する知識を深め、定められた生贄と祈りを延々と捧げ続けた魔術師エイボンはツァトゥグァから膨大な魔術の力と知識の他に、ある一枚の金属板を授かる。
この金属板は人間の存在する宇宙よりも上位の宇宙に属する物質を用いて作り出された物品であり、覗き込む事で次元と通じ一方通行ではあるが、自らの住んでいた土星へと一瞬で渡る事の出来る特性を備えている。
作中ではこの板をツァトゥグァがエイボンが緊急時に逃げるか、土星へと移住する時のために渡すのだが
一方通行である事を含めて使用時のリスクをきっちりと教え土星と地球の生活環境の違いを叩き込みツァトゥグァの親であり土星で一番強大な存在であるフジウルクォイグムンズハーの名と発音方法までも、土星で生活するに当たってそれらが役に立つだろうとエイボンに教授している。

これがどっかの無貌の神ならここまで手厚いカバーはしてくれないだろう。むしろ最後にデストラップを仕掛けてくる可能性もあったに違いない。このような事情もあって最後までエイボンとツァトゥグァの関係は良好であったようだ。

このようにクトゥルフ神話の神の中ではツァトゥグァは珍しい善神の部類といってもいいだろう。信仰するメリットも充分にあるし、人間味があるといってもいい。
ただし、他の神格と同じように無益な喧嘩をふっかけたり、とてつもない無礼を働いたりしてしまった場合は恐らくただでは済まないだろう。

日本人作家の作品だと、友成純一の短編小説『地の底の哄笑』などに登場。



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最終更新:2024年12月09日 23:48