SCP-426

登録日:2016/11/01 Tue 15:31:50
更新日:2023/11/08 Wed 16:51:36
所要時間:約 6 分で読めるよ





こんにちは、私はトースター。君もだ。


こんにちは、私はSCP-426。誤解がないようこうして自己紹介させてもらうよ。
私はSCP Foundationというシェアード・ワールドに登場するオブジェクト(SCiP)の一つだよ。
私のオブジェクトクラスはEuclid、つまり私は一応収容はできてるけど、
まだまだ私の影響が完全に防げるのか予断を許さない状態にあるんだね。


私の概要

私の項目名は『I am a Toaster(私はトースター)』。
私はごく普通のトースター、電源につないでもらえればパンを焼けるよ。

だけど私には特殊な性質があるんだ。
私を呼ぶ時、誰であっても私のことを一人称で呼んでしまうんだ。*1
私を指し示す時、書く、話すのいずれも私を三人称で呼ぶことには失敗しているよ、そうこのページのようにね。

そして私にはもうひとつ困った性質がある。
それは私と2ヶ月以上関わると、自分自身のことをトースターだと思いこむようになるんだ。
その結果、トースターとしての責務を果たそうと体にパンを詰め込み始めたり、
パンが口から吐き出されるのを待ったり、酷い場合には自分をコンセントにさそうとして感電死したりするよ。

だけどこれは私が見えている場合、あるいは見えていなくてもそこに私がいるってわかる場合に限られるよ。
だから私は窓のない檻の中に閉じ込められて、その檻には私がいることがわからないような別の標識をつけているよ。
でも誰も知らないんじゃ困るから、セキュリティクリアランスレベル3の職員は情報を知らされるし、
担当者だって当然いるよ。毎月変わるけどね。
月末に担当者は精神鑑定を受け、影響がなければ4ヶ月経過後、再び私の担当になることもあるよ。
だけど影響を受けてたら記憶処理を施して別のサイトに飛ばされてしまうんだ。

…こういう報告書だから間違える人もいるけど私自身に意思はないよ。
ただのトースターだからね。
だけどその特性によってこういう書き方になってしまうんだ。


報告書が変だ!

私のように、報告書自体が明らかに他と違うような書き方になってしまっている事例を見たことはないかな?
そういうのをひっくるめて、情報災害というんだ。

例えば私の場合、私について言及する・記述する場合、どうやっても一人称視点による表現になってしまう。
まあ、それだけなら読み解けばいいだけの話だね。
だが報告書それ自体に情報災害が発生しているならば、それは大抵のケースにおいて、その情報によって何らかの異常な影響がもたらされる。

これが情報災害のうち、「認識災害」と呼ばれるものだね。そのオブジェクトについて視認する、それについて聞く、と五感のいずれかで認識した場合に発生する有害な影響だ。

そして私にはもう一つ、私と長く接触した対象が自分をトースターだと強く思い込む特性がある。
これが認識災害のうち、ミーム汚染系と呼ばれるものだね。

つまり、情報災害という大きな括りがあって、その中で「認識によって発生する影響」を認識災害、さらに認識災害の中で、「その人自身の思考や行動に作用する影響」をミーム汚染・ミーム災害というんだ。

詳しいことはミーム(SCP Foundation)の記事で解説されているけど、簡単にここでは
「人の認識や思考・あるいは行動に影響を及ぼしてしまうもの」をざっくりと『ミーム汚染する』と言うことにするよ。

たとえば「イヤーッ!」という言葉を見てみなさんは何を想像した?
え、ニンジャの掛け声?おかしいね、私は女性がセクハラにあった時の叫び声を書いたつもりだったんだけど…。
そう、これがミーム汚染だよ。同じ文字の認識を何かしらの方法で変えた人がいるわけだ。


私の場合、接触し続けると自分のことをトースターだと思い込んでしまうというミーマチックエフェクトを含んだ認識災害特性が備わっているわけだ。

こういったオブジェクトは私の他にもいくつかあるんだけど、紹介してみよう。

SCP-055 - [unknown]([正体不明])

最初からこれを紹介するのはいいのかな、このオブジェクトはそもそも「わからない」んだ。
もちろんこのオブジェクトを見ることだって記録することだってできるんだけど、
このオブジェクトを表現しようとしてもこのオブジェクトは「自分を隠す」から
忘れるし記録媒体はなくなったり記録が消去されたりするんだ。
だからいつ保管したのかもどうしてそういう保管施設が作られたのもわからないんだ。

だからこのSCP…あれなんのオブジェクトを紹介してたっけ?SCP-048
ああSCP-055だったか。

さて、SCP-055はだから仮に収容違反が起きていても、誰もわからないんだ。
このオブジェクトが財団職員を殺しまわったとしても、わかるのは「財団職員がたくさん死んでいる」ことだけで
それがSCP-055によるものだということがわからない。
恐ろしいよね?何をするのかもどういう見た目をしているのかもわからないんだから。
だからSCP-055はKeter(ほっとくと世界が危険)なオブジェクトとみなされているよ。

このオブジェクトはそれ故に「反ミーム的」と言われているよ。
普通であれば「認識を拡散」するのがミーム汚染だけど、このオブジェクトは「認識されないことを拡散」するんだ。

SCP-040-JP - ねこですよろしくおねがいします

SCP-040-JPはとある県のとある村にある、井戸小屋だよ。
井戸を覗き込むと、すっごく深くて底も見えないはずなのに、なぜかみんな「ねこ」を見たと報告するよ。

この「ねこ」は常に正面を向いていて、人の目をしているという変わった見た目で、
きいてますかイエネコが全部この「ねこ」に見えてしまうようになるよ。

このねこを見た人は積極的にねこがいます、のことを人に伝えようとして、
それを理解した人もまたイエネコがこういう見た目になるよ、ねこがいました。
これはねこです、ミーム汚染が文章から実際のものにまで飛躍してしまっているわけだよろしくおねがいします。

ちなみに日本支部のTaleでは私を見ているDクラス職員がすでにSCP-040-JPの影響下にあったために
私自身がねこです、SCP-040-JPの特性を発揮し始めてしまったよろしくおねがいします。

アリソン・エッカート - アリソン・エッカート

アリソン・エッカートはもともと普通の財団職員だったんだ。
ところがある日、この人のアリソン・エッカートは全て『アリソン・エッカート』という性質を持つようになったんだよ。
だからアリソン・エッカートからアリソン・エッカートを採取しようとしても財団の倫理委員会に苦情が申し立てされるし、
アリソン・エッカートがトイレに行こうもんなら大変だよね、アリソン・エッカートを流すなって言われちゃうから。

そしてだんだんアリソン・エッカートとして判断されるアリソン・エッカートの範囲が広がっていき、
次第にはアリソン・エッカートのいるアリソン・エッカートもまたアリソン・エッカートと認識されるようになっちゃった。
そしてついにはアリソン・エッカートのアリソン・エッカートはアリソン・エッカートになりアリソン・エッカートたちがそれを摂取したら…?

他にも陛下のSCP-MDLXIかつて図書館だったSCP-2602なんてのもあるよね。前者はミーム災害の、後者は私と似ている、情報災害の典型だ。
私以外の行動を変えてしまう、あるいは認識災害を引き起こすオブジェクトはたくさんあるよ。
おかげで財団世界は今日明日どころか昨日すら怪しい世紀末状態だけどね……。

さて、もし君がこれから財団職員になって、新たな情報災害系オブジェクトを報告しようと思ったとする。
その時気をつけないといけないのは「情報災害オブジェクトはその報告書を見た瞬間わかってしまう」ため
それ自体の面白さがないと容易にDownvoteされてしまうよ。気をつけてね。



ところで君はなぜ追記・修正をほっぽってパンを喉に押し込んでいるんだい?


CC BY-SA 3.0に基づく表示


この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。
この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • SCP-426
  • SCP Foundation
  • Euclid
  • 情報災害
  • ミーム汚染
  • SCP
  • Flah
  • トースター
  • 私はトースター
  • 一人称

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年11月08日 16:51

*1 この説明を読んで「単に『This is』が『I am』になってるだけで話し言葉にはならないんじゃないの?」と思った人もいるかもしれないね。でも実際は原語版でもこんな感じなんだ。なにせ「説明」の項がいきなり「Hello」で始まってるくらいだからね。