林檎裁判

登録日:2018/04/23 (月) 22:42:15
更新日:2018/04/24 Tue 19:06:13
所要時間:約 8 分で読めます






赤ずきんはおばあさんのためにおつかいに行きました

赤ずきんは狼さんに食べられてしまいました




林檎裁判とは岩葉純希による漫画作品。
フルカラー電子コミック会社である「COMIC維新」が発行しており、
各所の電子書籍サイトで購入が可能。

一昔前は例の広告にもよく顔を覗かせていた存在であり、
エロあり、グロあり、ホラーあり、胸糞展開も満載等々、
電子書籍作品にありがちな要素もたっぷりであり、正直言うと一般人には勧めにくい作品ではあるものの、
起承転結はしっかりしており作品自体もきちんとした形で完結済であり、
主人公とその相棒による復讐劇とダークな世界観に興味を持った方は、一度読んでみてはいかがだろうか?


◆あらすじ


2年前に親友と共にレイプ被害に遭い、その親友を見捨てて逃げ出してしまった過去を持つ女子高生、星観夜宵。
決して拭えぬ心の傷を抱える彼女の前に突如現れたのは、何と自意識を持つ一つ目の不気味な林檎。

世界的に有名な童話、赤ずきんの少女その人だと語るその林檎の名はメイジー。
夜宵と同じく狼さん……男に対して大きな傷を付けられたメイジーはある契約を持ちかける。


――私と一緒に狼さんを殺しましょう。


2人の少女の男たちへの残虐なる復讐劇が幕を開ける……


◆登場人物(ネタバレ含む)

  • 星観夜宵(ほしみやよい)
本作の主人公。
前述したように2年前の過去に親友の須藤沙也加と共にレイ撮なるレイプ動画撮影集団に襲われた過去を持つ。
それによって極度の男嫌い且つ暗い性格になってしまい、学校でも浮いた存在であった。
メイジーとの出会い、レイ撮との再会、そして沙也加が既に殺されていたという事実を知り、
メイジーと契約を結ぶことでレイ撮の男たちに制裁を加える。

それ以降メイジーに操られるままに多くの男たちとその欲に飲まれる少女たちと接触し、制裁行為を続けていく内に、
時にはメイジーですら戦慄を覚えるほどに闇に染まっていくことになる。

だが、自身と同じような過去を持つ男である朝日との出会いをきっかけに、ある大きな選択を迫られることになる……


  • メイジー
本作のもう一人の主人公とも呼べる存在。フルネームはメイジー・ブランシェット。
おとぎ話に登場する赤ずきんその人であり、話の中に登場する狼というのは実際には欲に塗れた男たちのことだったと語る。
そういった過去を持つ関係から男という存在に異常なまでの憎しみを抱いており、復讐のために夜宵を含めた様々な少女たちへと契約を持ちかける。

普段は一つ目の林檎の姿を取っているが、己の力を振るう時のみ契約者の肉体を器とした金髪の赤ずきんの少女の姿を現す。
そして童話や物語に見立てた異質の世界で欲に塗れた男たちに制裁を下す不思議な力を持つ。
が、契約者である普通の人間にとってメイジーの力は身体に亀裂を生み寿命を縮める程に強力なものである。
しかも契約時に敢えてその事実を伏せるなど、どこぞの白いセールスマンもビックリの極悪ぶりである。

上記のような性格故に夜宵のことも当初は単なる利用する対象でしかなかったのだが、
共にいる時間が増えるごとに段々と信頼が生まれてきていたのだが……

嘗てはとある貴族の娘として生まれたのだが、女では跡継ぎになれないという理由で乳母のサリアと共に地方の別荘へと追放されてしまう。
そんな中で絵描きを目指す少年マルコスと出会い恋心を抱くのだが、
両親の借金返済と夢のために悪徳貴族に脅されたマルコスに裏切られてその身を売られ、男の欲を満たすだけの肉人形同然の身に落ちた挙句、
乳母のサリアの首を目の前で見せ付けられるという仕打ちまで受けて完全に錯乱。
たまたま転がっていたナイフで男たちを惨殺し、駆けつけたマルコスの目の前で首を掻き斬り自殺。

その怨念は死後も決して癒えることなく、男たちへの復讐のために彷徨い続けることになる。


  • 星観夕昏(ほしみゆうこ)
夜宵の母親。
嘗て水商売で稼いでいた時に付き纏われた迷惑な客から助けてもらったことをきっかけに、
今の旦那、つまりは夜宵の父親と付き合い始めるも、
その旦那もまた女を道具同然に扱う身勝手極まる最低の男であった。

にも関わらず依存心が異常に強く、ロクに家に帰らずに遊び呆けている旦那の帰りを待ち続けるほどに精神は不安定。
時には娘である夜宵と共に心中を図ろうとする場面もあったほど。

そして運悪く夜宵と居合わせ、メイジーの力によって旦那が制裁されたことをきっかけに精神は更に不安定になり、
終盤では隔離病棟に入れられるほどに悪化の一途を辿っていたが、その時に夜宵へとかけた一本の電話が夜宵にある決意をさせることに。


  • 蒼樹朝日(あおきあさひ)
作中中盤に転校してきた男子高校生。
普段は爽やかイケメンな普通の男子なのだが、夜は女装をしてクラブでアルバイトをしている。
実の母親を事故で亡くし、父親の再婚相手たちに弄ばれ、小中学校時代も自身に性的な言動を向けてくる女子ばかりと触れ合ってきた結果、
大の女性嫌いになっており、女装をして女子たちと自然な形で触れ合うという処世術を身に付けるに至った。

自分の鏡写しのような朝日との出会いは夜宵にとっても彼自身にとっても運命的なものであり、
男たちへの復讐のために精神をすり減らしていた夜宵の支えになっていったのだが……


  • 国美亜里子(くによしありす)
常に白いウサギのぬいぐるみをその手に抱える女子高生。
10歳の誕生日にウサギのぬいぐるみを貰った直後に両親を事故で亡くし、
その心の傷を埋めるために、以来ずっと白いウサギのぬいぐるみにシロと名づけ親友と称して話し続けている。
(所謂イマジナリーフレンド)

しかし、傲慢な教師である川田に目を付けられてシロを取り上げられてしまい、
挙句に返してほしければ誠意を見せろとレイプ紛いの行為を要求された挙句に、
それでも尚シロとの会話を続けた為に、目の前でシロをズタズタに引き裂かれてしまう。

それがスイッチとなりメイジーと契約を交わすことによって川田に制裁を下すも、
代償としてシロや他の人形と共に一生空想の世界に閉じこもることになってしまった。


  • 神埼マユ
仕事で多忙な両親の代わりに献身的に接してくれる祖母と共に暮らす女子高生。
しかし、両親の会社の社長がいじめグループのリーダーである畑山の父親という繋がりで目を付けられてしまい、
凄惨極まるいじめを受け続けながらも祖母には笑顔で振舞うという辛い日々を過ごしていた。

そんな中で精神が限界へと近づき、祖母にすらキツく当たって後悔した矢先に自宅の場所を畑山たちに知られてしまい、
逃げ出して戻ってきたら、畑山がポイ捨てしたタバコが原因で最愛の祖母諸共自宅が火事になっている現場を目撃してしまう。

それがスイッチとなりメイジーと契約し、畑山たちいじめグループの男子たちを制裁するも、
祖母を失った悲しみは拭えないばかりか、契約の代償によって味覚を失ってしまった。


  • 小百合
気弱で物静かな女子小学生。同じ学校の蓮次という男子に淡い思いを寄せている。
バレンタインの日に友人の蘭子の協力の下で手作りチョコと共に蓮次に告白しようとするも、
蘭子のヘマによって蓮次が気持ちを素直に明かせずにフラれてしまう形になり、
しかもそれが蘭子が自分が蓮次に告白するために意図してやったことだということを知ってしまい動揺。

そして夜宵の精神誘導によって悪いのは蘭子ではなく簡単に気持ちをそそのかされた蓮次であると思ってしまい、
メイジーとの契約を結ぶことによって蓮次に制裁を下してしまう。
その事実を知った彼女は絶望のまま蘭子の目の前で学校の屋上から飛び降りてしまった。

以下、クライマックスのネタバレ





















同じ傷を抱える者同士惹かれあった夜宵と朝日は恋仲になり、
彼とならやり直せるかもしれないと夜宵は彼へと信頼を寄せる。

しかし、男という存在そのものを憎むメイジーにとってはそれは耐え難い裏切りでしかなく、
夜宵の下から姿を消し、新たな器としてマユに憑依する形に。

夜宵はそのことを察した上に、自分が嘗て朝日の父親をメイジーの力で制裁した事実まで知ってしまい、
朝日とメイジーとの間で揺れ動くことになるのだが、
更にメイジーの力で生きながらえていた為に、彼女が離れたことにより瀕死の身となってしまう。

どうしようもない袋小路に追い込まれてしまった夜宵であったが、
そんな中で電話をかけてきた母、夕昏の「自分の意思に従い自分の人生を生きて」という言葉で立ち直る。

朝日に自身が父親を殺した真実を明かした上で別れを伝え、
そして夜宵に裏切られた絶望のままに無差別に男たちを惨殺し始めていたメイジーの下へと赴く。



メイジーの向けてくる膨大な憎しみを全て真正面から受け止めた上で彼女を抱き止め、
「あなたはひとりじゃない」「あなたと友達になりたかった」という本心をぶつける。


……夜宵ちゃん……離れてよぉ……!

そっちが離さないくせに


夜宵の優しさに触れたことによってメイジーの憎しみは晴れていき、
男を殺していても憎しみも喜びも全て閉じた自分の世界の中で完結しなければいけなかったこと、
その内に同じような女の子の恨みを晴らしてあげたいために今のような化け物に成り果てたこと、
それでも本当に望んでいたのが何だったのか、憎しみの奥底にあった本心を明かしていく。

涙に濡れるメイジーの前で夜宵はメイジーと己自身を制裁するために力を発動。
尚も1人で逝こうとするメイジーの手を抱き止めつつ、共にどことも知れぬ闇の底へと落ちていく。

真にお互いを理解しあったメイジーと共に落ちていく最中、
夜宵は自身に笑顔で手を振る沙也加の姿を見るのであった。


赤ずきんはおばあさんのためにおつかいにいきました

赤ずきんは狼さんに食べられてしまいました

けれど狼を殺すため蘇った女の子は

永い永い時の中で彷徨い続け

逝ける友達(ばしょ)をようやく見つけて

まるで消えゆく燈火のように

お揃いの赤ずきんで闇に溶けていきました




……けれど物語は終わらないでしょう

新たな復讐劇の幕があがる……

いえ……幕が降りることはないのです

欲望は際限無く溢れ出て蠢き

その欲望が新たに憎悪を産み出す

そして憎悪は悲劇を産み出し……

悲劇はまた欲望と憎悪を呼ぶのです

そんな救いようのない世界で

今日もまた、どこかで復讐の音色が聞こえます



この世から、全ての男を消し去って―――











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