崇神魔縁

登録日:2018/7/24 (火) 5:30:00
更新日:2024/06/29 Sat 23:33:15
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かつて



「王」という位が神そのものであった時代…そして、この国にまだ「王」がいた頃の神代の話。神話の一つ……

一人の王子があった。だが彼はなぜか親である父王から、叔父子と呼ばれていた

なぜか?それは王子の出生が禁忌に触れるものだったからである。王子は王妃と父王の祖父の間に出来た不義の子であったのだ



やがて王子は王となったが、すぐに父王の息子に追われ、やがて天下は二つの天を懐く大乱となった。だが、結果的に王は敗れ、辺境に流されることとなった

流刑に処された王は、王たる自分が私怨のために天下を乱したことを悔い、せめて来世で成仏したいと五部大乗経を写し都へ送ったが……

国を憂う王の贖罪は呪いの言葉であると決めつけられ、一歩も都に入れず突き返されてしまった……



遂に王は怒り、宿命・因果・血筋への憤激と未練と恨みと妄執と悲哀と怨嗟とありとあらゆる物への絶望、それら全てを込め

返された経典に自らの血で呪詛の願文を書き、自らを魔王とする為、写経とその身を魔道に堕としたという




















余は全てを許し、全てを殺そう。全ての律と全ての境と全ての人間を殺そう。……許した後にな



崇神魔縁(すがみまえん)とは漫画『屍姫』の登場人物の一人である。
大群(おおぜいのけがれ)」の頂点であり、それは単なる象徴ではなく大群の力の源となる闇の太陽。最大最強の怨霊神。人であった頃の名は既に捨てているが、その正体は保元の乱で有名な崇徳上皇その人。
彼の没後、朝廷に相次いで不幸が起こった為に菅原道真・平将門と共に日本三大怨霊と称されている。一方で彼の齎す崇りを鎮めるためその魂は「御霊」の名の元に神として祀られている。

大群「教主」の一人、計都は生前からの臣下であり、かつての名は源為朝(みなもとのためとも)である(魔縁と異なり名を捨ててはいないが、彼の復活までは自らその名を封じている)。

物語の開始から900年前に当時の光言宗大僧正とカガセオの手で地に封印されたが、大群、赤紗、ロギアらの手で現代に復活し人界にその猛威を振るうことになる。






◆能力

「玉音」。
神格・崇神魔縁の持つ言葉で万象を支配する力。己が意で森羅万象に干渉する神通力の一種。
"撓め"、"爆ぜよ"、"砕け"、"廻れ"、"弾け"、"鎮まれ"、"拉げ"といった言葉を対象に投げかけその通り実現する。
これらはリオンの「十の死」でも防げない。
変わり種では部下らを自分の後方に飛ばす"下がれ"、隕石に干渉し軌道を曲げる"星よ"、自分と教主らの衣装を新調させた"成れ"など。

神格を捨てその身を屍へと変質させてからは「呪言」により地獄を現世に顕現させる効果に変化した。汎用性は下がったが、質量・暴力という意味ではこちらが上回る。
属性の変更により屍を対象とした光言宗の術法が十全に効果を発揮するようになったが、その身は屍であると同時に地獄を統括する「現象的存在」と化している。
そのため魔縁の打倒には物理を超えた因果や性に到達する一撃が必要。

…だが魔縁の持つ根源的な力は言霊や不死性等ではなく、何人たりとも到達できない強大なる憎悪にこそある。





◆活躍

赤紗の集めた28の棺、魔縁が生前書き写し穢した五部大乗経典、5人の「教主」…計都、ミラム・バルドゥ、リオン・リン、ディフロト・アイギス、七星狭間(本来は北斗が担当する予定だったが彼女の代理として参加)、アイギスが持参した骨をロギアの手で復元させた「大神殺し*1」。
これら入念な準備を整えた上での儀式により、一定陣地内ではあるが限定的に復活した。*2

赤紗は魔縁の身体を完全とするために「死の国」の興国を提言する。それには前提として強力な忌土地…人間で言う霊地・聖地に相当する場所を必要とするが、現状存在しないそれを創るべく強力な霊地を反転、つまり光言宗本山直下である山磨市の地脈を穢し乗っ取るということであった。
作戦「御霊封神」を退けミラムの身を犠牲にした源泉穢しにより時間制限付きで陣地を出ることに成功。日本の地脈の中心「玉室」を奪うべく「教主」らと共に山魔市への侵攻を開始する。
殺された死体が未練を持って屍となり、その屍がまた未練ある死体を生み出す。本来屍となる素養のない死体までが屍となって人を襲う…そして最後には死者と生者は入れ替わり、山磨市は「死の国」へと死に変わる。

そして玉室にて魔縁は今代の大僧正・神生真世とかつての自分を封じた片割れ・カガセオに相対する。
両者の戦いは同じ神通力の使い手同士、力は拮抗しどちらが先に倒れるかの削り合いの様相になる。



「殪す―――…!!このまま…この目で見た900年前のあの黄昏の日のように…」

「王よ!!この国の天地全ての力を振り絞り…そなたを殪すぞ―――!!!」




「玉室からあの人形に無尽蔵ともいえる霊力が流れ込んでいるのがわかる…この神通力を支えているのは―――…地脈によって集められたこの国の力……」

「この国…因果…理…光言宗…何より…それほど、それほどまでに―――……」


「それほどまでに余を排したいか!!我が国よ―――!!!」




魔縁はカガセオではなく玉室そのものを壊すことでカガセオへの力の流れを断とうとしたが、玉室の破壊を為したとき、外に広がっていたのは晴天であった。
つまり真世は戦闘と並行して玉室の機能を使うことで天候を操り、魔縁顕現の為に降っていた穢れの黒き雨を消し去っていたのだった。
理に従い、加護を失ったその身は滅びるはずだったが…
魔縁は回想する。900年前のあの日の屈辱を、あの時の誓いを…


「(王として生まれた)」

「(その天命を受諾し責務を全うしようとした。義をもって行えば善いものが巡って来ると信じた)」

「(だが裏切られた…愛しき者たちと引き離され、持っていたものは全て奪われた…)」

「(だがそれを許した。今生の幸福の全てを捨てさせられた…だがそれを許した。それが天を二つに裂いた罰だというのなら…―――だが)」


「だが、許さぬ!!!」


「(今生の罪は今生で贖われるものではないのか…!来世の救いを願って書写した経までをも貶める理由とはなんだ…!?)」

「呪おうぞ…俗世の欲にかられ余を追い落とした者ども……」

「余は恨みとなろう。怨嗟を敷き憎しみを施そう。魔縁となって死の国を興そう。それがお前たちの望みだというのなら……!!」

「罪を贖う為に書写した大乗経を突き返してきたのはお前たちだ。余に五度生まれ変わっても救われぬ生をと望んだのはお前たちだ」

「ならばそう成ろう。余は神を捨て、魔道の者と成り果てよう」



因果と理は全ての者に対して絶対である。たとえそれが神であっても…否、神だからこそ、その因果と理はより深くその存在に絡みつく。
因果と理に拒絶された魔縁は、神であるがゆえにその身を黒き雨の中でしか顕現できず、本来その身は崩されるはずであった…
だが、魔縁はその身を神から変質させることでその理から逃れる。世界の理から外れただ純粋なる屍へと―――…!!
屍となった魔縁は真世を打倒し、光言宗は、山磨市は陥落する。ここに「死の国」の建国は成ったのだった。







それから数日後、光言宗最後の作戦「光言陣」を地獄を以て迎え撃ち、神器「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」を携え己を討ちに参じた轟旗神佳を殺害。
だが神剣の「なぞり」により神性を得て復活した神佳に両断され、獄炎で国の滅却にかかる魔縁を黄泉路の石という役割を担う神佳がその身諸共封印に成功する。

神佳と魔縁の死出の道に現れた高峰とそして、もう一人。



「僧侶よ答えよ。そなたが余の侍者をするというのか?」

「いや、私ではそれは足らぬらしい。何しろ、それを未練として今日まで現世に残り、今またそこまで追ってきた者がいるんだからな」



高峰が指した先にいたのは、眼を固く閉じ魔縁に跪く彼の第一の忠臣…源為朝であった。




「陛下!どうか!どうか私めをお連れ下さい!決して…二度とお傍を離れはしません!!私めの随従を……!!」


「(―――ついて来るか、まだあった実体を捨ててまで…余に忠義を示すか……)」

「(供も連れもなく…ただ因果の元、醒めぬ夢に再び引き戻されるだけだと思ったら…なるほど中々これも…面白い)」

「ふ…くくく…愚か者が。だが良い、許すぞ為朝。ならば余のあとについて来い。現世かお前かが終わるまでついて来い」


「!! はッ!!全身全霊をもって!!!」


「ふん…まあ良かろう。我が性は人にもたとえ天津神たちにも消せぬ」


「せいぜい苦心せよ。せめて二度と余と巡り合わせることのないよう黄泉の閂をしっかりかけてな。くくく……」



どこか満足気な笑みを浮かべ、魔縁と従者はこの世から消えていった。










物語からは退場したが、後のマキナらと黒白の最終決戦にてアイギスに呼ばれ一時的に顕現。
神の力を行使する黒白を神通力で封じ彼らに助力した。














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最終更新:2024年06月29日 23:33

*1 ギリシャ神話などに稀に出現する特殊な性質を持つ女。元となった個体を超える個体を生み出せる能力を持っており、本来なら何百世代も経なければならない生物の進化を、わずか一世代で行なうことができる

*2 最上を求めるなら星の巡りも利用するべきだったが、光言宗に儀式を邪魔されない事を優先し彼らの予想外の時分に強行した