SCP-001-JP > k-calの提言

登録日:2019/02/10 Sun 08:41:57
更新日:2025/07/19 Sat 05:38:18
所要時間:約 10 分で読めます




まずは本件担当者への就任を心よりお祝いする。君のような有望な人間が私の後を継いでくれることをとてもうれしく思うよ。
さて、さっそく業務内容の説明を行いたいところだが、君には本件に対する知識が少し不足しているように思える。したがって、まずは下の資料を読んでほしい。これは引き継ぎ文書の代わりだと思ってくれ。


天秤の片方に重いものを乗せたら大きく傾いた。
地面に当たり砕け散り、破片はただのゴミとなった。

SCP-001-JP

『天秤』



k-calの提言とは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの1つであり、SCP-001-JPに関する提言枠。
オブジェクトクラスは堂々のThaumiel。

概要

SCP-001-JPは、既存製品のどれとも構造が一致しない、異常なノートパソコンである。
付属するコンセントを指すと起動し、モニタに釣り合った状態の天秤のイラストと二つのテキストボックスが縦に並んで表示される。

ここからがオブジェクトのキモなのだが、上のテキストボックス(以降、上テキストとする)に、天秤が吊り合っているときに文字を入力することができる。入力した文字列が世間一般に理解できる言語で記され、さらに特定の状況、物体、願望を示している時、モニターの左上から手のAAが出現し、天秤の左の皿をグイッと押し下げ、天秤が左に傾く。

んで、下のテキストボックス(以降、下テキストとする)は普段は入力できない。
が、天秤が左に傾いている時に限り入力可能になる。こちらにはなんらかの存在を表す文字列を入力した際、画面に「:)」の顔文字がデデンと映されることがある。この顔文字が出現した場合、異常現象が発生し、上テキストに入力したものが実現する代償として、下テキストのものが何かしらの負の影響を受けてしまう。
この一連を「願望の達成」と呼称し、願望が達成された時手のAAが消失、天秤が今度は右側に大きく傾き、1週間かけてまた吊り合った状態に戻る。

わかりやすく言うと、上テキストに願い事、下テキストに代償を入力すると、願い事が代償に見合ったものの時に叶い、1週間のクールタイムの後に再利用できると言う代物。

この文書からはいくつかの情報が削除されている。削除したのは私だ。削除した部分は読んでも理解できないし、理解しても意味のない部分だ。

読むかどうかくらい自分の選択に任せてほしいと思っただろうが、より良い仕事をより効率よくこなすためには、無駄な選択肢をあらかじめ省いておくことが重要なのだよ。これをしっかり覚えておいてくれ。

願望の達成について

基本的に、願望の達成には上テキストに対し下テキストが同等以上の価値があるとみなされないといけない。財団がDクラスを使った実験では、「発声障害の回復」という願望に対して、代償にされた15名のDクラス職員が受けた影響は、「声帯を突き破ってキジバトが飛び出す」と言うもの。代償がデカイ上に絵面がシュールすぎる

また、「人間一人を50m移動させる」と言う願いを叶えた結果、サイト-██は壊滅的被害を受けたため、SCP-001-JPの使用は緊急時にのみ、厳重な監視の下にのみ使用許可が起きるようになった。当然ちゃあ当然だが。

なお、SCP-001-JPの使用履歴のうち最新5件は自動で報告書に追記されることになっている。

O5評議会からの通達

ある日、SCP-███-JPによる大規模収容違反が発生。連鎖的に収容違反が全国で多発し、UK-クラス世界終焉シナリオ(Unclassified K-Class Scenario)が発生。Thaumielクラスオブジェクトを含む全ての機密が解除され、総力を持って事態収拾に当たることとなった。


さて、ここでこのオブジェクトの使用履歴を引用してみる。


使用履歴(自動更新)
日付: 19██/█/█
上方テキストボックス: 全ての異常存在の消滅
下方テキストボックス: Dクラス職員
結果: 無反応

日付: 19██/█/█
上方テキストボックス: 全ての異常存在の消滅
下方テキストボックス:すべての収監されている犯罪者
結果: 無反応

日付: 19██/█/█
上方テキストボックス: 全ての異常存在の消滅
下方テキストボックス: 財団の経済的資源すべて
結果: :(

日付: 19██/█/█
上方テキストボックス: 全ての異常存在の消滅
下方テキストボックス: O5
結果: :-P

日付: 19██/█/█
上方テキストボックス: 全ての異常存在の消滅
下方テキストボックス: すべての財団職員
結果: :)


前述の通り、当時は終焉シナリオが発生中であり、全Thaumielオブジェクトは責任者によってその異常性を発揮し始めた。このSCP-001-JPも例外ではない。
なので、担当職員たちはこのオブジェクトを用いて事態の収拾をつけようとした。



だが、それはあまりにも悪手としか思えないものであった。



なるほど確かに、世界終焉シナリオは全てのSCiPごと綺麗さっぱり消え去った。人類の脅威は無くなったのである。しかし、“異常なもの”は無くなった訳ではない。

財団職員そのものが、収容すべき“異常”と化してしまったからだ。

彼らがどうなってしまったのか?ここに一つの短いレポートがある。


酷いものでした。彼らは施設を徘徊し、"いつもどおり"職務をこなしていました。彼らは厳重な装備に身を包んで、厳重にロックされた部屋に入ります——その部屋の中は空っぽだというのに。
あるとき、部屋に入っていた彼らのうち一人が突然呻きだしました。彼は自分の体を何度も壁に打ち付け、喉が張り裂けるような叫び声をあげて、自身の指を噛みちぎり、目を抉り出して倒れました。しかしそこには、彼らが"異常存在"と呼ぶものなどいませんでした。彼は、彼らの頭の中にだけ存在する想像上の異常存在に殺されたのです。
彼の体は霊安室に運ばれました。しかしすぐに、彼は霊安室から何事もなかったかのように抜け出したのです。抉りだした目もちぎられた指も元通りでした。彼はその後、もともとの彼とは別の"新人職員"として研修を受け始めました。そうしてその横では、死ぬ前の彼の同僚たちが、彼の死に涙を流していました——
彼らはずっと繰り返しています。彼らの日常という地獄を、朽ちることのない体で。そうして永遠にその苦しみは続くのかもしれません。今も彼らのデータベースには、空想上の怪物たちが、彼らを痛めつけるために実際に存在するものとして追加され続けています。それも、彼ら自身の手で——


UK-クラス世界終焉シナリオ終結後、国連と各国の意思により、財団の存在が世界に明かされることとなった。もはや収容すべき異常存在は財団以外にないからである。

その後、各国では財団職員たちを保護する措置がとられ始めた。
上のレポートを見ればわかる通り、基本的に彼らは不老不死となってしまっている。さらに、施設から外に出ることができない。だが、まるで普通の人間のような感覚を持っていてしまっているのだ。

例えば、長い間食事をとっていないと彼らが判断すれば、彼らは酷い飢餓に見舞われ、苦しみ、そして死ぬ。
死んだらまた蘇り、新人職員として再雇用され、また飢餓に陥り、やはり死ぬ。その他の行動や設備についても同じであり、設備が不調であれば空想上の異常存在がが脱走し、彼らは空想の異常存在に殺され、復活する。それを無限に繰り返す。

だからこそ、己らを犠牲に世界を救った英雄に対する敬意を示すために、国連及び各国は保護と称して施設を維持し、彼らへ物資を提供した。しかし、これには少しばかり問題があった。


ズバリ、金がかかる。


█国の大統領███が発表した声明には、SCP財団と言う機関が存在し、世界を救ったと言う説が事実無根の迷信だと断定し、国内のSCP財団関連の施設の全破壊を始めるとの宣言があった。
これをきっかけにSCP財団への資金援助に対する批判が活発化、「わけのわからない気の狂った集団ではなく、将来を担う若い世代に財源を回すべきだ」という意見も出るほどとなった。



こうして、SCP財団は終焉を迎え、世界を救った英雄は、異常存在へと姿を変えてしまったのである。

野蛮だと思うかい? きっとそう思うだろう。だからこそ君はこの仕事の担当者に選ばれたのだ。
さて、そろそろ君も自分が一体どんな仕事を任されるのか気になってきたところだろう。なに、仕事といっても簡単だ。君はこのページから、彼らが出した物資の要求を確認することができる(彼らは君を財団の会計部門の人間だと思っているはずだ)。そうして物資を支給するならば"承認"を、そうでないならば"却下"を選択するんだ。仮に承認を選んだ場合は、要求が上に届いて、さらに検討されることになる。もしそこでOKが出れば物資は支給されるし、逆であれば君は"承認"を"却下"に変えるだけだ。
実にしっかりしたシステムだろう? 少なくとも君は、自分の国が"財団"といういわば金食い虫の英雄に敬意を払い、慎重な話し合いの上に適切な支援を続けていることを誇っていいはずだ。私もそれを誇っている。この仕事を始めたとき、私は真剣に頭を悩ませ、彼らに必要な物資を選りすぐったものだよ。
さて、ちょうど申請が届いているだろう。ここで実際の仕事をしてみようか。


追記・修正は代償に見合うか考えてからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年07月19日 05:38