SCP-1442-JP

登録日:2019/09/07 Sat 16:01:41
更新日:2025/04/21 Mon 13:58:38
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SCP-1442-JPは、SCP Foundationに登場するオブジェクトのひとつ。
オブジェクトクラスはEuclid。
項目名は「限りある命」。

まずは特別収容プロトコルから。
SCP-1442-JPは5m×5m×5mの収容室に収容されており、入室するにはレベル4以上の職員の許可が必要である。
現在はこのオブジェクトを用いた実験は禁止されている。

エージェント・時田(以下:時田)は3m×3m×3mの独房内に拘束され、常に昏睡状態を維持されている。そのため、食事ではなく1日3回の点滴を行っている。
担当職員は収容室内で発言する際、変声器を用いることが義務付けられており、時田の目隠しを外したり、拘束を解くことは禁じられている。

ただのエージェントをこうまでして拘束しなければならない理由は説明を読めばわかるだろう。

このオブジェクトはと言うと、4cm×4cm×0.5cmの装置であり、前面には小型モニターが付いている。例によって非常に高い耐久性を持っており、構成物質の精密な検査は行われていない。

このオブジェクトの異常性は、オブジェクトを中心とした直径5mの円の中で人間が死亡した際に現れる。
なんとこの円の中で死んだ人物は、これ以降、死亡して3秒後に蘇生してしまう能力を得てしまうのだ。
体の一部が欠損していても、6秒後には元通りである。
この異常性は回数無制限であると思われていた

このオブジェクトは以前、破壊耐性以外の異常性を見つけられなかったことからAnomalousアイテムとして保管されていたが、時田があるSCPに殺害されたとき、たまたまオブジェクトの効果範囲内にいたため、異常性が発現、時田は蘇生した。この事案によってSafeクラスとして扱われるようになった。

それ以降、時田は危険なオブジェクトの収容の担当を、実験を兼ねて行ってほしいと希望してきた。財団はこの申請を許可した。

斯くして時田は危険なオブジェクトの収容に携わり、そして命を落とすことになったが、そのたびに蘇生していった。
溺れても液体から引きずり出せば生き返るし、捕食されても、吐き出した肉片から10秒後にはきれいさっぱり元通りである。

7回死亡した時点で、ある博士が時田に対し、インタビューを行った。

<記録開始>

██博士: それでは開始します。

エージェント・時田: よろしくお願いします。

██博士: 体の調子は如何でしょうか?

エージェント・時田: 意外といいです。

██博士: では、体に違和感などは?

エージェント・時田: 生き返った時は感じましたが、今はもう大丈夫です。

██博士: 辛くはありませんか?

エージェント・時田: (5秒間沈黙)まあ、辛くないと言えば嘘になります。でも……

██博士: でも?

エージェント・時田: きっとあれが、SCP-1442-JPが僕に勇気をくれるんです。

██博士: 勇気ですか。

エージェント・時田: はい。なんだか、ここ数年会っていない家族や友人が応援してくれている気がするんです。寄り添ってくれているような。

██博士: そうですか。

エージェント・時田: この前収容を行っている時に同僚が転んで、オブジェクトに襲われそうになったんです。その時も、「お前が助けずに誰が助けるんだ」と、親父の声が聞こえた気がして。

██博士: なるほど。他に言いたいことはありますか?

エージェント・時田: 僕は今のこの仕事に充実感を感じています。こんな僕がみんなの役に立てるのが嬉しいんです。これからもみんなの危険を減らせていけたら、と思っています。これからもよろしくお願いします。

██博士: 了解しました。では、これでインタビューを終了します。

<記録終了>

このインタビューの後も、時田を引き続き危険なオブジェクトの収容に携わることが決定された。

…さて、このSCP-1442-JP、ここまでみたらとても有用なオブジェクトである。
何しろどんなことをされて死亡しても蘇生できる。どこぞの付箋紙みたいにコピーを用いるわけでなく、正真正銘の本人である。
これならSafeどころかThaumielも視野に入ると思うだろう。

…だが、思い出してほしい。SCP-1442-JPの項目名を。そう、「限りある命」である。

このオブジェクトも、とんでもない異常性が隠されていたのである。

それはあるSCPによってまたしても時田が死亡し、蘇生した時のこと。SCP-1442-JPのモニターに以下の文章が表示された。

時田様にお知らせ
⚠️残機が半分消費されました⚠️
使いすぎには十分ご注意を。
※残機の確認は[住所]にて直接ご確認ください。残機はあなたにとって大切な人でも代用が可能です。

この文章を見た財団は、この住所に機動部隊を派遣した。その住所には、建造物はなかったものの、地下室に通ずる扉が見つかった。
機動部隊が突入したところ、20名以上の男女が機械によって拘束された状態で死亡、残り20名以上が機械によって拘束されるも生存している状態で発見された。
死亡した人の死因は溺死、失血死など様々であったが、共通点として、この機械につながれている人物たちは全員、時田の家族や友人たちであることが判明した。
それも、時田が初めて死亡した時から行方不明になっていたのだ。
死亡している人物の機械は拘束を外すことができたが、生存している人物の機械は解除されておらず、破壊も不可能であることが確認された。
生存者は総じて放心状態にあり、意思疎通には成功していない。

ここまでくればもうお分かりだろう。
このオブジェクトは、当該人物の家族や友人を「残機」として消費して蘇生させていたのである。
そこ、ブライト博士はお帰りください。

当然、このような事態を看過するわけにもいかず、財団はこのオブジェクトを用いた実験を無期限に禁止した。

後日、時田にこの事実が伝えられたのだが…

<記録開始>

██博士: こんにちは。

エージェント・時田: こんにちは。どうしたんですか?今日は?僕の勘が当たっていれば……僕の家族のことでしょうか?

██博士: ……何故それを?

エージェント・時田: 最近家族の声が聞こえなくなってしまったので、何かあったのかと。

██博士: 実は……あなたのご家族、ご友人の2█名が死亡した状態で発見されました。

エージェント・時田: (5秒間沈黙) なんで死んだんですか?

██博士: 彼らはあなたが今まで死んできた状態で死んでいました。恐らくは……

エージェント・時田: 本当ですか!

██博士: (驚く) 大丈夫ですか?

エージェント・時田: 大丈夫もなにも!僕は嬉しいですよ!まさか本当にみんなが支えてくれていたなんて!

██博士: 落ち着いてください。

エージェント・時田: これが落ち着いていられますか!みんな……みんなぁ!(何度も机に頭を打ち付ける)

██博士: 誰か!誰か来てください!

エージェント・時田: 嬉しい!嬉しい!嬉しい!嬉しい!嬉しい!

(職員3名が入室)

██博士: 取り押さえてください!

エージェント・時田: 離してくださいよ!(机に頭を打ち付ける)僕は嬉しいんです!僕は(意識を失う)

██博士: 記録を終了します!

<記録終了>

どうやらこのオブジェクト、当該人物の精神にも影響するらしく、死にたがりになってしまうことも発覚した。これにより、SCP-1442-JPの特別収容プロトコルを現在のものに改定され、オブジェクトクラスはEuclidに格上げされた。
このインタビューの後、時田は脳挫傷で死亡し、蘇生した後、独房に拘束されることになった。その後、時田の精神状態を確認するため、拘束状態でインタビューが行われることになったのだが…

<記録開始>

██博士: さて、エージェント・時田。あなたが先程言っていた「嬉しい」とはどういうことでしょうか?

エージェント・時田: そのままの意味ですよ!僕は嬉しいんです!

██博士: 家族や大切な人が死んだことがですか?

エージェント・時田: 彼らはただ死んだんじゃないんです!僕のために死んでくれたんですよ?そんなの嬉しいじゃないですか!もっと死にたいと思うじゃないですか!

██博士: ……あなたは家族や大切な人が行方不明になっていたことを知っていたのですか?

エージェント・時田: ええ。警察から連絡が来ましたから。

██博士: なぜ我々に報告をしなかったのですか?

エージェント・時田: え?だって、家族の声がするって言ったじゃないですか。だから問題ないかなーと思ったんです。僕にとってはここに居るも同然だったんですから。

██博士: ……そうですか。では、あなたが危険なオブジェクトの収容に携わりたいと言ったのは死にたかったからですか?

エージェント・時田: あの時は違いますよ。だってみんなが僕のために死んでくれているなんて知らなかったですし。ただ財団の役に立てたらと。それだけです。

██博士: 本当ですか?

エージェント・時田: そうですよ。そう……あれ?そう……です……よね?

██博士: エージェント・時田?

エージェント・時田: ……はい。大丈夫です。

██博士: 死ぬな、と言っても今のあなたには無理な相談でしょうね。

エージェント・時田: ええ。みんなのために死なないわけにはいきませんから。

██博士: そうですか……では、インタビューを終了……

エージェント・時田: ちょっと待ってください。

██博士: 何でしょうか?

エージェント・時田: あなたがSCP-1442-JPの、僕の収容責任者でしょうか?

██博士: …….そうですが?

エージェント・時田: (笑いを浮かべ)分かりました。これからもよろしくお願いします。

<記録終了>

このインタビューから1週間後、██博士が失踪してしまった。
SCP-1442及び時田との関連性が疑われたため、例の「残機」が拘束されている地下室に向かった。
するとそこには新たに、██博士が機械によって拘束されている状態で発見されたのだ。
このことから、自身と接触した、自身にとって重要な人物を新たに「残機」として獲得することが可能であることが発覚した。
これによって、時田に対する収容プロトコルが現在のように定められたのだ。

現在、時田は昏睡状態を保っている。だが、これで全て解決したわけではない。
生存者はまだ20名以上いる。
もし全ての「残機」を消費し、なおも死亡した場合、何が起こるのか。
現状、それを知る術はない。

追記・修正は「残機」の方々にお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1442-JP - 限りある命
by bamboon
http://ja.scp-wiki.net/scp-1442-jp

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最終更新:2025年04月21日 13:58