SCP-001-JP > chuukunnの提言

登録日:2019/04/05 Fri 14:41:09
更新日:2025/06/03 Tue 18:18:51
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もう一度、財団の理念を思い出せ。
そして自らの手で選ぶのだ。

命を護るか。理念を貫くか。
矛盾はどちらが勝つ?




chuukunnの提言とは、シェアード・ワールド、SCP Foundationに登場するオブジェクトの1つであり、SCP-001-JPに関する提言枠。
オブジェクトクラス未定



新着メールが5件届いています

解説に移る前に、この報告書は5つのメールより構成されている。
1つ目のメールはSCP-001-JPのオブジェクトクラスの決定について。
先日行われたO5会議での話し合いによって、オブジェクトクラスをSafeに決定するかThaumielに決定するか解決しなかったため、投票によって決定することとなった。そこでO5-13、メタ視点で言うならば読者である貴方に投票権が回ってきたという形になる。
2つ目のメールにはSCP-001-JPの概要が記述されている。それを含めた残り4つのメールを見て、オブジェクトクラスを決定するのだ。



君は、「確保、収容、保護」という財団の理念を覚えているか?

それでは改めて、SCP-001-JPは████枚の付箋紙である。この付箋に誰かの名前を書くことで異常性が発揮される。
その異常性とは、ズバリ人物の複製。
例として「兄尾 太郎」というWiki篭りの名前を書いたとしよう。するとどう見ても兄尾太郎にしか見えない人型実体(SCP-001-JP-A)が、元の人間が生存しているか死亡しているかどうかに関わらず、記入直前か死亡直前と同一の記憶を持って出現する。

ただし相違点もあり、元の人物かどうであれ、元々最も忠誠を誓っていた機関への忠誠度が跳ね上がることとなる。兄尾太郎の場合は多分アニヲタWikiかなんかになる。
財団によって生成されたSCP-001-JP-Aは今のところ財団のいかなる命令に背くことなく任務を遂行しており、「私は財団のために生まれてきた。どのような任務でも必ず遂行してみせる。」などと証言しているのである。

と、このように盲信的なまでの忠誠さえ除けば倫理的にはともかくかなり使えそうなオブジェクトである。そこで財団は実験を行い、任務遂行についてどの程度こなせるかなどを調査してみた。
美味い話には裏がある、財団ではお馴染みの光景なので調査は念を入れて行われたと思われる。

で、判明した事実が以下。
調査結果-1
・SCiPの探知/発見/管理能力の異常発達
・安全を重視して行われた収容違反時に対する迅速な対応と再収容
・自身がほぼ死亡すると確定している実験への参加
・元の人物を基調とし、攻撃性など財団の業務を妨げる性格の飛躍的改善
・元の人物の知識を完全に所有し、それを用いた業務が可能
・元の人物と出会った際、即座の「自分が偽物である」という発言

お、安全じゃね?
SCiP関連の能力が発達してるのは勿論素晴らしいとして、収容違反への対応もバッチリ、そしてどうしようもない時には進んで捨て駒になってくれるのも高く評価できる。
忠誠度は跳ね上がってる上に怠け癖だとかそういう不都合な性格は矯正されているし、知識の共有は完璧。
そして人間複製モノでよくある『本物はどっちか論争』は起きない——とめちゃくちゃ優秀なオブジェクトに見える。死亡した重要職員の代替品としても使えそうだし、Thaumielでもいいんじゃないかな?

しかし、その後の調査で新たに判明した事実がO5達の疑念の鎌首をもたげさせることとなった。

調査結果-2
日本生類創研内部でSCP-001-JPを使用していた痕跡
・当該施設は現在廃墟となっており、内部は酷く荒らされた状態である
・日本生類創研はSCP-001-JPの製造に関わっていない
・SCP-001-JP-A同士での会話における未知の言語の使用
・実際の人間との差異が見られず、本人の証言以外での区別が不可能である
・生成時に元の人物が死亡していたSCP-001-JP-Aの攻撃性の増加


あれっ、地味にヤバくね?
ニッソが関わってる上に壊滅しており、そのくせ製造には関わっていないときた。
そして未知の言語を使って意思疎通ができるし、何より元の人間が死んでいたら凶暴になるだって?
何がThaumielだ。ぱっと見安全に見える危険なオブジェクト、Safeじゃないか。


追い討ちをかけるかのように、調査結果-1に対しての反論となるような事実が調査によって更に明らかになった。

調査結果-1への反駁
・SCP-001-JP-Aが最も忠誠を誓うのは元となった人物である(命令の優先も同様)
・SCP-001-JPを用いた自己繁殖が可能であり、実験中のSCP-001-JP-Aが自己繁殖に対し喜ぶような様子を見せた
・SCP-001-JP-A同士の殺害およびSCP-001-JPの破棄を拒否

まぁ同族殺しに対しては嫌悪感を覚えるのも無理はない。だが財団への完全な忠誠ではないのだ。
前述した通り、SCP-001-JP-Aは未知の言語を用いて意思疎通ができる。
もしも彼らが悪意を持っていたとして、財団のコントロールを離れて大量に増殖し反乱を起こされたら?財団が抱える大量のKeterオブジェクト達を収容違反させられたら?
彼らは基礎能力が跳ね上がっているのだから、対処に苦しむ羽目になるかもしれない。

Thaumielとして活用するのではなく、Safeとして安全に収容すべきなのでは?そう考えたわけである。

だがそこに更なる反論が舞い込んできた。

調査結果-2への反駁
・当該施設内部および周辺でSCP-001-JP-Aが発見されていない
・SCP-001-JPの使用は週に1回程度であり、重大な事故に至る可能性は極めて低い
・SCP-001-JP-Aの監視記録より、積極的にSCP-001-JP-A同士で会話をする様子が見られない

ここでの当該施設というのは例のニッソの施設のことを指す。
つまり、荒廃したニッソの施設の付近に複製された人間がいないのだから、あの荒れ具合はこのオブジェクトとは関係ないし問題ないという意見が出たわけである。
そもそも、意思疎通だか未知の言語だか知らないが一緒に引き合わせなければ会話の一つも出来ないわけで。
攻撃性が増加するのも忠誠を誓う人がいないが故の感情なのだから、別に比較的忠誠度の高いはずの財団へ反乱を起こすわけないだろうと。
悪意だなんてとんでもない。我々に対してどこまでも有効で有用で有能なオブジェクトなんじゃないか?

更に言うならば、多少危険性があろうとも便利で有益な要素が大きいのならば積極的に使っていくべきではないのか?
わかりやすい例を出すならば、SCP-1233-JPなど残された地球にとってはたまったものではないが、重要人物を乗せて脱出できる滋賀県は途轍もなく有用なためにThaumiel指定になっている。SCP-001-JPも変わらないのではないだろうか?


とまぁこのようにO5達はこのオブジェクトのクラス決定に大揉めに揉めたわけである。
事態を打破するきっかけ作りになるとでも考えたのか、SCP-001-JP-A本人へのインタビューを行うことになった。
なお、このSCP-001-JP-AはEクラスの記憶処理を施したDクラス職員を元にして作られている。

インタビュアー: ██博士、███博士

<録音開始>


██博士:
それでは、インタビューを開始します。まずは███博士からですね。

███博士:
では、SCP-001-JP-A-1。まず、あなたの来歴について述べてください。

SCP-001-JP-A-1:
はい。私はあの付箋紙から生まれました。██ ██様によって捲られたのが先週のことです。

███博士:
なるほど。他の付箋紙との関係はあるのですか?

SCP-001-JP-A-1:
関係……ですか?生まれる前には意識などはなかったので、他の付箋紙との意思疎通は図れていませんでした。

███博士:
そうですか。では、現在他のSCP-001-JP-A個体と何を話しているのかを教えてください。

SCP-001-JP-A-1:
そ、それは……黙秘、は出来ませんよね。

███博士:
貴方には話す義務があります。

SCP-001-JP-A-1:
は、はい。あれは、危険因子の排除のために行なっているのです。私たちの中には稀に危険な思想を持つものが存在するため、早い段階で考え方を修正していくのです。

███博士:
……もし、話し合いができなかった場合は、どうなりますか?

SCP-001-JP-A-1:
………しょ、しょぶ……[嗚咽]

███博士:
分かりました。それでは、続きの質問は██博士が担当します。

██博士:
はい。まず、あなた方が財団に忠誠を誓う理由を教えてください。

SCP-001-JP-A-1:
は…はい。私たちは、元となった存在が最も忠誠を誓っていたもののために行動します。ですので、会社員であれば会社に、教師であれば学校に、そして財団職員であれば財団に対して忠誠を誓うのです。

██博士:
そうですか。では、それに反するような行動は起こさないのですね?

SCP-001-JP-A-1:
はい!私共は、たとえ火の中水の中、誠心誠意、財団のために行動することを誓います!

██博士:
良い元気ですね。忠誠心が見られます。では次に、日本生類創研について知っている事を述べてください。

SCP-001-JP-A-1:
は、はい……あれは、確か、研究員の一人が、特殊な、ほ、芳香を放つ植物の研究中に、じ、事故が起きて、それで……

██博士:
落ち着いてください。分かりました。それではあれはあなたたちのせいではないということでよろし——

███博士:
[遮って]待ってください。なぜ、あなたは日本生類創研について知っているのですか?先ほどの質問で、他の個体と意思疎通は図れていないと述べていたはずですが。

SCP-001-JP-A-1:
え、あれ、な、何ででしょう?なんというか、日本生類創研という名前を聞いたら、自然にその事件が思い浮かんできたんです。

███博士:
どうにも不自然ですね。追加調査を要求します。

<録音終了>


貴方はこのインタビューを読んでどう感じるだろうか?
彼らは作り出されたSCP-001-JP-A全固体と記憶の共有が可能であり、少しのことならば未知の言語とやらを用いずとも意思疎通が可能だと判明した。

もしも彼らがSCP-001-JPを取り戻そうとしてきたら?忠実さには裏があるとしたら?ニッソが崩壊した理由は嘘であり、口裏合わせのためにテレパシーを使っていた結果どもっていたとしたら?

もしこの仮定が事実だとしたら、迂闊にコピーなんて取れやしない。知識は引き継がれ、テレパシーで共有され、反乱の材料にされてしまう。
そして更なる懸念として、もしニッソで大繁殖した結果あんな風に荒れ果てていたとしたら、間違いなく全員がどこか遠いところへ逃げ去っている可能性が高い。その上で誰かのコピーを取り、テレパシーで情報交換された場合、外部への情報漏洩、ひいては収容違反となりうるのだ。

だが、こんな妄想は彼らに悪意がなければただの杞憂だ。

彼らは財団へ忠誠を誓う、本当に安全なオブジェクトなのだろうか。
それとも人から複製された肉体を元に、悪意によって財団へ反旗を翻す、潜在的に危険なオブジェクトなのだろうか。



ここで、メールの3,4枚目である2人の博士の提言を引用させていただく。
片方は██博士、インタビュアーの1人であり調査結果-1の担当でもあった博士の提言。


私は、このSCPを使用するべきであると進言します。
思い出してください。私たち財団が、今まで異常物品の「確保、収容、保護」のために犠牲となった人々の事です。
Safeクラスオブジェクトの異常性の調査のため、何人の命が犠牲となったのでしょうか。
Euclidクラスオブジェクトの回収のため、何組の回収部隊が犠牲となったのでしょうか。
Keterクラスオブジェクトの収容違反のため、いくつのサイトと人命が奪われたのでしょうか。
当然、SCP-001-JP-Aを財団の業務すべてに利用することはできません。しかし、小規模な、例えばインタビューやSCPの観察、Dクラス職員としての使用であれば、財団は危険性を即座に認知し、収容違反を未然に防ぐことが可能です。もしSCP-001-JP-Aが組織的な収容違反を起こし、Kクラスシナリオを引き起こす引き金となる可能性があれば、即座に使用を停止します。SCP-001-JP-Aは支配者にはなれません。
私の同僚であり、親友であった██ █という職員をご存知でしょうか。彼は、ようやく研究員という地位に就き、これからの業務を何よりも楽しみにしていました。世界を救うために活動できることの喜びを噛み締めていたのです。
彼は、亡くなりました。SCP-███-JPとの接触中に発生した収容違反によって。
彼がSCP-███-JPのインタビューをしている最中に、何か事件があったのでしょう。
SCP-███-JPは発狂し、彼を引き裂きながら収容室を出て、警備員2名を殺害し、そのままエージェント・██、█博士など数十名を殺害したのです。彼らの命と引き換えに得られたものは、たった180秒の会話ログです。どう見ても釣り合わないでしょう。
もし、この実験をSCP-001-JP-Aが実行したとしたらどうでしょうか。SCP-001-JP-Aならば、オブジェクトの危険性に素早く気づき、実験の即時中止を要求し、このような事態を避けることができたでしょう。また、たとえ失敗したとしても殺されるのはSCP-001-JP-Aです。私たちのたった一つの命は守られるのです。これは「リスク」ではなく「進歩」なのです。
即刻、SCP-001-JPの業務上使用許可を申請します。 - ██博士


もう片方は███博士、インタビュアーのもう1人であり調査結果-2の担当でもあった博士の提言。


私は、このSCPを使用するべきでないと進言します。
SCP-001-JP-Aの危険性は未知数であり、全員が同時に反乱を起こしても不思議ではありません。「SCP-001-JP-A」と「元となった人物」の判別法は存在せず、何らかの理由で入れ替わる危険性があります。さらに、SCP-001-JP-AがSCP-001-JPの異常性を認知していることより、自己増殖によるSK-クラス:支配シフトシナリオの危険性が存在します。探検など限定的な場合のみ使用するとしても、そのリスクは見過ごせるものではありません。
よく考えてください。我々は世界のために異常物質を確保し、収容し、保護しているのです。
決して、個人の命が軽いと言っているわけではありません。しかし、世界の価値と比べれば、数十人、数百人の命のためにそのリスクを受け入れるのはあまりにも非合理的です。
我々は、個人の命よりも、何よりも、世界の安全のために活動しているのです。
リスクを受け入れる必要はありません。これだけで十分な理由たり得ます。
即刻SCP-001-JP-A個体を処分し、Safeクラスオブジェクトとして収容するべきです。 - ███博士




さあ、決めてくれ。

貴方は冒頭説明した通りO5-13であり、貴方はこのオブジェクトのクラスを決定する権限を持っている。
この5つ目のメールにSafeかThaumielのどちらかに投票すると返信することで貴方の意思を示すことができるのだ。

もしもオブジェクトクラスが「Safe」となった場合、SCP-001-JPは利用されることなく、サイト-8181の金庫内で収容され続ける。
もしもオブジェクトクラスが「Thaumiel」となった場合、一定の試用期間を通した後に十分に利用できると認められたのならば、本格的に財団で扱われることになるだろう。財団内部の人物、あるいはDクラス職員などの複製などが予定されている。







































































通信中です…
                    
                    
                    
                    
                    
                    



                    

通信が完了しました。


それでも財団は世界を救う

O5評議会内の投票により、SCP-001-JPはSafeに決定された。(Safe7票、Thaumiel6票)
今後は決定されたオブジェクトクラスに基づいた特別収容プロトコルが構築されるだろう。
SCP-001-JP-A個体の処分については次回の会議で検討される。



O5-1からのコメント
結果として、SCP-001-JPはSafeクラスに割り当てられることになった。
これは当然のことであると言わせてもらおう。
財団とは、確保、収容、保護の根底の上に成り立っている。
たとえ我が身を犠牲にしても、我々には世界を守るという大事な使命がある。
このSCPに頼る必要はない。我々は、我々の力で業務を遂行するのみだ。
私からは以上だ。



O5-2からのコメント
私は、Thaumiel側に投票しました。
全体の意向ではSafeと相成りましたが、それは当然の結果であるとは思っています。
我々は文字通り「命」を賭けています。時には失ってしまうこともあるでしょう。
失ったらもう戻ってはきません。悲しいですが、それも運命なのです。
しかし、その「命」で、他の「命」がいくつも救えると考えれば、決して無駄ではないと、私は思います。
そう思うからこそ、我々は世界の平和のために戦い続けるのです。その最期の時まで。






































































通信中です…
                    
                    
                    
                    
                    
                    



                    

通信が完了しました。


世界とは、誰のためにあるのだろう

O5評議会内の投票により、SCP-001-JPはThaumielに決定された。(Safe6票、Thaumiel7票)
今後は決定されたオブジェクトクラスに基づいた特別収容プロトコルが構築されるだろう。
SCP-001-JP-Aの詳細な使用方法は次回の会議で検討される。



O5-1からのコメント
率直に言おう。私は、この結果に驚いている。
SCP-001-JPを使うなど、今までの私には考えられなかった。
世界滅亡のリスクを背負わなくともやっていける。当然Safeになるだろうと思っていたのだ。
結果は違った。我々のうち7人が、「命」を選んだ。
財団のためなら命を投げ捨てるというのは、私の思い過ごしだったのだろうか。
あるいは……私が「高みの見物」をしていただけなのだろうか。



O5-2からのコメント
正直、Thaumielに投票したのは私だけだと思っていました。
世界にたった1つしかない大切な命を守ろうとする。
そんな姿勢は、この財団内にはもうなくなっているのではないかと。
だからこそ、私はささやかな反抗としてThaumielに投票したのです。
しかし、今考えてみれば、その理由はよくわかりました。
1つの命には、1つの世界がある。それだけのことだったのですね。





































































メールが削除されました。


命か、世界か、選ばれるのは

この後どうなったかは明らかにされていない。
Safeに指定されて永遠に彼らの意識は収容されたままなのか、Thaumielに指定されて活用され、その結果彼らが団結し反乱が起きてしまったのか。それとも何事も起こらずただ便利なオブジェクトなだけだったのか。

ただ一つわかるのは、これは読者である貴方が決めた結果であり、貴方が決める未来なのだ。

1つの命に、1つの世界。
自分の命を大事にすることが命よりも大事なことであるのか。

1つの世界に、1つの命。
世界を守るためには自分の命を守ることが二の次になっても仕方がないのか。


これが本当に正しいことなのか。間違っていることなのか。


それを決めるのは、



SCP-001-JP

『二者択一』



やはり、貴方なのだ。

追記・修正はどちらを先に行うか決定してからお願いします。

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最終更新:2025年06月03日 18:18