SCP-1723-JP

登録日:2019/10/22 (火曜日) 05:49:18
更新日:2025/04/06 Sun 15:11:25
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あなたの過去は有限。この階段は無限。なら、気になることがありませんか?


SCP-1723-JPはシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスSafe
メタタイトルは「逆行階段」。

概要

SCP-1723-JPは愛媛県今治市にあるもう営業していないホテルの扉から行くことができる謎の螺旋階段である。
SCPで階段と言うとSCP-087が有名だが、あちらが暗闇の下り無限階段なのに対してこちらは普通に明るい上り無限階段であり、一番上の存在はいまだに確かめられていない。吹き抜けがあるタイプで、スタート地点である一番下から見上げるとずっと上まで階段が続いているのがわかる。
また階段の見た目としてはホテルの内装らしい白塗りの壁に木の手すりといった感じだが、何十年もたつのに経年劣化していないらしい。

その異常性はやはりというか、人間(以下被験者)がこの階段を上ることで発現する。
このとき、被験者は不定な頻度で過去の体験を映像として想起することになる。これがいつの体験なのかと被験者が何段上ったかに相関性があり、(上った段数)日前のものを想起していると判明している。7段上ったなら一週間前の、365段上ったなら一年前の体験を思い浮かべるわけだ。

また、この螺旋階段に繋がる扉の外に凹面鏡が設置されている。この鏡はSCP-1723-JP-aに分類されており、扉に固定されていて取り外せなかった。
そして、この鏡は中にいる被験者が過去の体験を想起するとき、それと同じ映像を映し出す。これにより外部の人間が被験者の過去を知ることができるのだ。

ここまでだと087より平和じゃんと思うかもしれないが、全くそんなことはない。
あちらは散々下ってからでも引き返すことができたが、この階段はそれを許さない。
この階段を下ることで引き返そうとした場合、身体がガン細胞じみた異常増殖を始め20段下ったあたりで死ぬ。
中央の吹き抜けからはしごで下れば…具体的に書いていないので詳細は分からないが、それをやった人間は心身に致命的な害を負った。この階段を20段以上上った場合、現状生還不可能ということだ。上り続けるしかない。
おまけに、この階段には生きた人間は一人しか存在できない。前回入った人間が死ぬまで扉が開かないし、誰か入ったら勝手に扉が閉じるし、二人同時に入れたら二人とも消失した。
ここに入ったら、たった一人死ぬまで階段を上り続けるしかない。087より階段は明るいが、ステップを踏む人間の未来は無限の闇に閉ざされる。

事案記録

ここまでだと非情で危険な階段に見えるが、もちろん本質はそこではなく想起される過去の体験の方である。
どうやらただ脳内の過去の記憶をフラッシュバックさせているわけではないようなのだ。

とあるDクラスが階段を上っていると、過去に曝露したオブジェクトのミームの影響を再発症した。
これは外科的な記憶処理によって物理的に抹消されているはずだったのだが、それでも否応なしに再曝露させられたということだろうか。この階段が読み取っているのは記憶ではなく、人生そのものと言えるのかもしれない。
この事案ののち、この階段を過去にミーム的なオブジェクトに接触したことがある人員が上ることは禁じられた。

実験記録

この階段をできるだけ上り、あわよくば最上階を発見しようという実験がなされた。
被験者D-14520(29歳)は映像だけを撮る無線ビデオカメラ・無線通信の受信機・終了用の電撃首輪を装備しており、体験想起が始まったら終わるまでその場に留まるように指示されている。
また、凹面鏡に映し出される彼の体験は撮影されており、その内容は念のためDクラス職員に見せて危険のないことを確かめてから記録されている。
以下では想起が起きた段数とその内容を示す。
では、彼の過去を見て行こう。

  • 4段目
被験者がDクラス職員用宿舎で夕食を取っている。
  • 9段目
被験者が宿舎で他のDクラス職員と会話を行っている。

(おそらく)普通のDクラスの日常だろう。実際の被験者の様子も特に変わりない。


  • 17段目
被験者の下半身がSCP-███-JPによって[削除済]される。次の瞬間、被験者は独房と思われる部屋で目を覚ます。
  • 20段目
SCP-███-JPの収容室で、被験者とD-9866がオブジェクトに[編集済]を行うよう指示される。D-9866の不適切な行動によりオブジェクトは[削除済]。D-9866は死亡する。

…これもDクラスの日常。たぶん。階段の被験者は動揺しているけども。


  • 26段目
サイト-81██の講堂で被験者が他のDクラス職員と共にオリエンテーションを受けている。
  • 28段目
拘置所の1室と思われる場所で、被験者がエージェント・高居と対話を行っている。おそらく被験者に対して雇用の提案が行われている場面であり、被験者は提案に同意したように見える。

彼はどうやら重罪人出身の採用されたてホヤホヤのDクラスだったようだ。貴重な人材である。
被験者は自嘲的に笑っていた。「ひと月働けば解放される」みたいな典型的な勧誘をされて来てみればこんなザマだ、という感じだろうか。


  • 53段目
拘置所と思われる場所に拘留されている。
  • 61段目
最高裁法廷で██裁判官が判旨を読み上げている。被験者は被告人席に座っており、判旨に反応する様子は見せていない。
  • 88段目
留置場と思われる施設に拘留されている。
(中略)
  • 2322段目
東京地裁法廷で███判事が判旨を読み上げている。被検者は動揺した様子を見せる。

6年前、彼は動揺するような判決を受けていた。死刑だったのだろうか。それは分からないが、少なくとも6年間最高裁まで争って最終的にDクラスに勧誘されるような判決が下ったのは確かだ。
段数が増えてきたので、これ以降はその体験時点での被験者の年齢を付記する。


(中略)
  • 3841段目(18歳)
被験者が警察官と思われる人物に拘束され、連行されている。

逮捕されたのはさらにその3年前、ギリギリ少年法にかからないタイミングだったようだ。
彼はここで足を止めた。この先に進めば、その少し前の体験を想起することになる。つまり、逮捕され、おそらく極刑を言い渡されるような何かの記憶を。
だがこれは実験。研究員によって促され、彼は再び登り始めた。


  • 3849段目(18歳)
生家と思われる場所で、被験者が自身の父親を刺殺している。被験者は死体を外に停められている自動車へ運び込もうとするが、その場面を通りすがりの少年に目撃され、これを殺害する。
  • 3978段目(18歳)
被験者が自身の父親と暴力的な争いを行っている。
  • 3990段目(18歳)
被験者が自身の父親と言い争いをしている。

…これは流石に辛い。階段の上の彼も散々な表情になっていた。
次に行くとしよう。


(中略)
  • 4427段目(16歳)
被験者が自身の母親の葬儀に出席している。
(中略)
  • 5172段目(14歳)
被験者の母親が被験者を叱りつけているように見える。父親がそれを宥め、被験者に笑いかける。
  • 5360段目(14歳)
学校の教室と思しき部屋の机で俯せになって眠っている。
  • 5400段目(14歳)
被験者が自身の祖母の葬儀に出席している。

ヒントが少ないので彼の家庭環境がどうだったのかは分からないが、祖母の死・そして母の死がその将来に繋がったのかもしれない。
ここで彼は疲労した様子だったのでしばらく休憩を取らせた。階段5000段というとスカイツリーに登って降りてくるくらいなので致し方なしだろう。


(中略)
  • 9116段目(4歳)
被験者の祖母が被験者に何かを語りかけている。
(中略)
  • 10901段目(0歳0ヶ月0日)
被験者が母親に抱きかかえられている。父親が被験者の手を取っている。

この時点で彼はその人生の最初に辿り着いた。



なのに、階段がまだ続いている。
















  • 10925段目(???*1)
ブラックアウトした映像が映し出される。
  • 11002段目(???*2)
同上。

おかしい。この段に当たる時点で彼はまだ生まれていない。なのに、真っ暗とはいえ映像が映し出されている。彼は、これを体験していた。
いや、真っ暗ならまだわかる。胎内の風景かもしれない。ごくたまに胎内の記憶があるって言う人は居るからね。






しかし、この次に映し出された光景は───










  • 11206段目(???*3)
SCP-1723-JPの最下部と酷似した場所を不定形の肉塊が這い回っている。その後肉塊が触手状の器官を外部に通じる扉へ伸ばす。触手がドアノブを掴み、扉が開かれる。

理解が追いつかない。
改めて言うが、これは彼の過去の体験なのだ。つまりこの肉塊は彼であり、生まれる前の姿だというのだ。
しかもそれがこのSCP-1723-JPらしき場所にいて、そこから出てきたことでこの世に生まれたことになる。
そもそもこの螺旋階段は一体何なんだ。SCP-1723-JPとは別なのか。
そんな疑問を抱く様子もなく、彼は階段を上り続ける。

そしてなぜか、ここにきて体験が想起されるタイミングが極端に短くなった。
毎段何かが映し出されるようになったのだ。







  • 11207段目(???)
胎児に類似した人型実体がSCP-1723-JPと酷似した階段を転がり降りている。やがて実体は最下部に到達する。

無論、これも彼である。なぜその胎児が不定形の肉塊になったのかは分からない。
推測するなら、”完成形”の人間が階段を下ったからだろうか。そう、現実のSCP-1723-JPを下ろうとした時のように。
なぜなら。




  • 11208段目(???)
頭部を欠損した6歳程度の男児のような人型実体が階段を下っている。


  • 11209段目(???)
頭部と左腕を欠損した10代の少年のような人型実体が階段を下っている。


  • 11210段目(???)
頭部、左腕、右足を欠損した成人男性のような人型実体が階段を這い降りている。生物の身体は被験者のものと酷似している。


  • 11211段目(???)
右腕と胴体のみの人型実体が階段を這い降りている。実体の年齢は50代を越えているように見える。

逆順に見ると、階段を下るにつれ体の部位が増えている。そして、若返って…逆行している。
まるで、組み立てられていくように。




そして突然、探していたものが現れた。





  • 11212段目(???)
階段の最上部と思しき場所を、著しく皺の寄った皮膚を持つ右腕が這い回っている。その後、右腕は指を使って階段を這い降り始める。

階段の一番上はあった。彼はそこから来た。

現実の彼が、何かつぶやいた。









  • 11213段目(???)
階段の最上部と思しき場所にある扉の映像が数秒間続く。ドアノブが独りでに動き、扉が開かれる。

彼は微笑んだ。








そして、駆け出した。










  • 11220段目(???)
[認識災害の危険により抹消]
















この時点で彼は数回の停止指示を受けるが無視したため電撃首輪で終了された。
認識災害情報もDクラスによる検査を挟んでいたため大事にはならなかっただろう。

記事の内容は以上。情報が少なく行間を読ませるタイプのため、考察の難易度は高い。
というかこの「生まれる前実はお前こんなだったんだぞ」という冒涜的な話をつきつけて心を動かすのが目的の可能性もあるので考察する意味がないかもしれない。SCP-087も想像の余地を残して怖がらせるタイプだったしアレと同じ本家シーズン1のノリで読むのが吉かも。
一応以下の折り畳みの中で考察してみるので、興味のある方は開いていただきたい。


追記・修正は階段を上りながらお願いします。

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最終更新:2025年04月06日 15:11

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