チルドレン(小説)

登録日:2019/12/08(日) 02:43:34
更新日:2019/12/28 Sat 19:38:31
所要時間:約 10 分で読めます




「俺たちは奇跡を起こすんだ」



チルドレン』は『小説現代』(講談社)に2002年4月号~2004年3月号にかけて掲載され、2004年5月に出版された伊坂幸太郎の小説。

名目上は短編集という形を取っているものの、作者が「短編集のふりをした長編小説」と述べているように、全編に陣内という男が登場する連作短編である。
そして、各章異なる語り手の目線で彼の行動を追う形式を取っている。
時系列的には陣内と友人たちが大学生時代の出来事を書いた「バンク」「レトリーバー」「イン」、
陣内が家裁調査官をしている「チルドレン」「チルドレンII」に分かれている。
ただし、「レトリーバー」は社会人になった語り手が学生時代の出来事を回想している描写から始まるため、正確な時代は「チルドレン」「チルドレンII」に近いと思われる。
舞台はおなじみ宮城県仙台市

2006年に『CHiLDREN チルドレン』のタイトルでドラマ化され、WOWOWにて放送された後、11月に単館上映された。
内容は「チルドレン」をベースにしつつ、「バンク」「チルドレンII」の一部と、オリジナル要素として武藤と人質になった女性との恋愛模様が追加されている。

2016年に続編の長編小説『サブマリン』が出版されている。


【あらすじ】


「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々ーー。何気ない日常に起こった5つの物語が、1つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。
(「BOOK」データベースより引用)


【各章のあらすじ】

バンク
陣内と共に銀行を訪れた鴨居は、銀行強盗に遭遇し人質にされてしまう。同じく人質になった盲目の青年・永瀬は、強盗についてある仮説を立てる。

チルドレン
スランプ中の家裁調査官・武藤は、万引きをした少年・木原史朗の担当になるが、史朗と付き添いで訪れた父親の態度に違和感を覚える。

レトリーバー
永瀬と優子に失恋の愚痴をこぼしていた陣内が、突如「失恋した俺のために、今、この場所は時間が止まっている」と言い出す。

チルドレンII
家事事件担当に移動した陣内は、子供の親権を争う大和夫妻の担当になる。一方陣内は、丸川明という少年を珍しく「試験観察」にしていた。

イン
アルバイト中の陣内の様子を見にデパートの屋上広場にやって来た永瀬と優子。しかし、現れた陣内の様子がいつもと違っており・・・。


【主要人物】

(陣内、永瀬、武藤の名前はドラマ版より)

〇陣内達也(演:大森南朋)
本作の主人公。
傍若無人でいつも周囲を自分のペースに巻き込むが、独自の正義感を持っておりどこか憎めない性格。
父親との間に確執がある。そのためか大人の男性によく食って掛かる。
歌とギターが趣味で、ボブ・ディランやビートルズをロックアレンジして弾く。劇中での評判はかなりいい。
「レトリーバー」では家裁調査官を目指しており、「チルドレン」「チルドレンII」時代では型破りな家裁調査官になっている。
上司に対し熱い演説をかましたかと思えば、10分もしない内に真逆の発言をするなど相変わらずだが、担当した子供達からは非常に慕われている。
また、中年男性で結成されたロックバンドに所属している。
ちなみに彼のする嫌な予言は結構な確率で当たる

〇鴨居
陣内の友人で「バンク」の語り手。
路上でギターを弾いていた陣内を見かけ、感想を聞かれたのがきっかけで友人になる。
陣内の行動に振り回されながらもツッコミを入れる冷静な大学生。・・・なのだが、陣内の影響か妙な喩え話をするようになった。
周りから「陣内と仲がいい」と言われると不満がるものの、ギターを弾いている時の陣内の恰好良さは認めている。
続編の「サブマリン」において主要キャラの中で唯一登場しなかったこと、陣内の「友を亡くしたことがある」という旨の発言から死亡説が挙がっている。

〇永瀬政人(演:加瀬亮)
盲目の青年。「イン」の語り手。
「バンク」において陣内、鳥居らと共に人質になったのがきっかけで友人になる。
先天性の全盲だが視力以外の感覚が非常に鋭く、足音から知り合いかどうかを判別したり、声の調子から感情を読み取るなど常人離れしている
ぶっちゃけ陣内&武藤より家裁調査官に向いてね?
整った顔立ちと落ち着いた雰囲気もあってか、パッと見では盲目と分からないレベル。
さらに頭の回転も早く、「バンク」「レトリーバー」「イン」における探偵役を担当する。

〇ベス
永瀬が飼っている盲導犬。黒い毛並みが優雅なラブラドールレトリーバー。
非常に賢く、永瀬の合図に忠実に従うだけでなく人の言葉を理解しているかのような仕草を見せることもある。
しかしON、OFFの差が激しく、ハーネスを外している時は盲導犬らしさが全く無い。

〇優子
永瀬の恋人で「レトリーバー」の語り手。回想の中では女子大学生だが、現在はシステムエンジニアをしている。
目の見えない永瀬に様々なことを教える。ノリが良く、陣内が起こす騒ぎを永瀬と共に楽しんでいる節がある。
また、少々嫉妬深く、永瀬との付き合いがわずかに長いベスに対抗心を燃やす。

〇武藤俊介(演:坂口憲二)
陣内の後輩にあたる家裁調査官。「チルドレン」「チルドレンII」の語り手。
まじめな性格ゆえ少年らに騙されることが多く、家裁調査官としての自信を失いつつある。
「チルドレンII」では少年事件担当から家事事件担当に移動しているが、陣内との交流は続いている。
永瀬ほどの推理力はないものの、「チルドレン」「チルドレンII」における探偵役を担当する。

ドラマ版では「バンク」も調査官時代の出来事になっているため、鴨居の代わりに陣内と共に人質になる。
プライベートや恋愛パートが追加され、実質的な主人公扱い。


【その他の登場人物】


〇木原史朗(演:三浦春馬)
「チルドレン」にて武藤が担当している少年。
漫画を万引きした今時の男子高校生で、暗い訳ではないものの口数が少ない。仲良くなるとJKを紹介してくれる。

〇木原周五郎(演:國村隼)
史朗の父。息子に対してどこかよそよそしく高圧的。

〇大和修次
「チルドレンII」にて武藤が担当している夫婦の夫。離婚後の娘の親権を妻と争っている。
大学教授で、あらゆることを「正解」「不正解」のみで判断しているような口振りをしている。
そのため口では娘のことを大切に想っていると言うものの、イマイチ気持ちが伝わってこない。

〇大和三代子
大和修次の現妻。夫とは対照的に感情的で、親権に関しても夫への対抗心で争っている節がある。

〇丸川明(演:武田航平)
「チルドレンII」にて陣内が担当している少年。
公務員の父親が頭を下げている姿をからかわれて以降非行に走る。高校退学後は居酒屋でアルバイトをしている。

〇陣内の父
表向きは厳格な父親、なのだが・・・実は援助交際の常習犯

〇青木美春(演:小西真奈美)
ドラマ版オリジナルの登場人物。銀行強盗の人質にされた際、武藤が一目惚れした女性。
叔父の本屋で働いているが、万引きに気付いても何故か見て見ぬ振りをしている。


【余談】


「バンク」内で、関東で出没する4人組の銀行強盗の話が出てくる。

伊坂幸太郎作品の『砂漠』に登場する西嶋が、「万引きで捕まった時、変わった調査官に文庫本を渡され更生できた」と語るシーンがあるが、関連性は不明。




「駄目な項目はどうやったって駄目なんだよ。それこそ奇跡みたいなもんだな」

「それだ。俺たちの仕事はそれだよ。追記とか、修正とか、どうでもいいんだ。俺たちの目的は、奇跡を起こすこと、それだ」

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