SCP-1377-JP

登録日:2020/02/29 (曜日) 23:56:00
更新日:2024/05/05 Sun 18:14:09
所要時間:約 11 分で読めます




SCP-1377-JPは、SCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)のひとつ。JPのコードが示す通り、日本支部で生まれたSCPである。
項目名は「ただいま」。
 オブジェクトクラスは「保留」とされており、報告書執筆時点では決められていないようだ。

元の記事を読めば分かるのだが、めちゃくちゃ短い。下手をしなくとも読了に一分も要らないほどだ。なので、 元の記事 を一度読んでみてから本稿を閲覧することを推奨する。


概要

それでは特別収容プロトコルから見てみよう。

"大石晃一の自宅アパートは封鎖されており、解放されるのは実験の時だけである。"

これだけ。特別収容プロトコルなのに、収容対象である筈のSCP-1377-JPには一切触れていないのである。

どういうことか?
その疑問は一旦置いておいてSCP-1377-JPの異常性について説明しよう。

SCP-1377-JPは、自身の情報について記憶・記録できなくさせるという異常性を持っているのではないか、と推測されている。
SCP-055をご存知だろうか? あのオブジェクトの特性は「反ミーム」と呼ばれるものだが(ミーム(SCP Foundation)を参照)、それと同じような性質を持っているようなのだ。
しかも、SCP-1377-JPはSCP-055よりも異常性が強力なようなのである。

SCP-1377-JPは「ある入出力の過程」とされ、実際の「入出力」の記録が報告書の半分以上を占めている。
入出力とだけ言われてもピンと来ない方も多いだろうから、以下に一部を記載する。

入力 出力
無し 腐敗臭、嘔吐臭
リンゴ 無し
辞書 歯形のついた辞書(付着した唾液が大石晃一氏と部分的に一致)
千円札 無し
1+1と描かれた紙 無し
生の牛肉 無し

こんな感じだ。
「あれ? SCP-1377-JPの情報は記憶・記録出来ないはずでは?」と思ったあなたは勘がいい。
その通り、この説明は先程の異常性と矛盾している。
SCP-1377-JPが本当にこの入出力の過程についてなら、あの特別収容プロトコルは何の意味も無い。とばっちりで自宅を閉鎖される大石氏が気の毒である。

しかし、財団はシリアスモードなら意味の無いことをしないので、当然ながらプロトコルに意味はある。
ならば、この入出力と大石氏のアパートにはなんらかの関係性があるはずだ。

順当に考えるのならば、大石氏のアパートは実験時にのみ解放されるのだから、この入出力は実験に関わりがあるはずだ。
なんなら、この入出力は実験結果そのものと言っても間違いではないだろう。

では、SCP-1377-JPの正体は何だろうか。
アパートそのものや入出力は記録出来ているため違う。それならば、アパートの中の何らかの存在こそが反ミーム的特性を持ったオブジェクトに違いない
財団はSCP-1377-JPそのものを記録出来ないため、代わりに実験結果をオブジェクトとは関係が無いものとして記録しているのだ。
オブジェクトクラスが「保留」なのも当然と言える。この入出力自体には異常性が無いのだから。

あくまで、オブジェクトの異常性はオブジェクトそのものを記憶・記録させないというものだ。推測すること自体は可能なのである。
よってアパートに対する実験は記録に残せるのだ。
つまり、この入出力は封鎖されているアパートに何かを入れて、出てくるものを記録しているだけなのである。

では、それを踏まえて入出力を一通り見てみよう。

入力 出力
無し 腐敗臭、嘔吐臭

どうやらアパートには悪臭が立ち込めているようだ。一体、中はどうなっているのだろう?

入力 出力
リンゴ 無し
辞書 歯形のついた辞書(付着した唾液のDNAが大石晃一氏と部分的に一致)
千円札 無し
1+1と描かれた紙 無し
生の牛肉 無し
生きたラット 歯形の付いたラット(付着した唾液のDNAが大石晃一氏と部分的に一致)

中に入れた食べ物は返ってこず、辞書も噛み付かれている。
どうやら、アパートには生き物が住んでいるようだ。ラットは噛み付いたものの食べられなかったか、逃げられてしまったのかもしれない。
更に、辞書やラットに付着した唾液はアパートの主である大石氏と部分的に一致しているらしい。
辞書は戻ってきたのに紙幣や紙片などが戻って来ないことを見ると、食べてしまったのだろうか?

そして財団は、Dクラス職員を使っての実験を始める。

入力 出力
D-31874 D-31874のものではない高音の絶叫、D-31874、頭部以外の肉が残っていない大石氏の妻の死体(付着した唾液のDNAが大石晃一氏と部分的に一致)

投入されたDクラスは36歳男性のD-31874。
謎の絶叫が観測されたが、彼は無事にアパートから帰還できた。
オブジェクトの異常性によりアパート内部でのことは記憶できないが、何と彼は大石氏の妻の人骨を持ち帰ったのである。遺骸からは頭蓋骨骨折と脳挫傷血腫、及び頬を中心とした痣が確認された。
大石氏はこれに対し、妻の死や遺体の存在を知らなかったと答えた。

更に実験は続く。

入力 出力
D-31875 服の腹部に涙の染みが着いたD-31875、「食べ物」と書かれたメモ
リンゴ3個 無し
D-31875、リンゴ10個 D-31875

次に投入されたD-31875は23歳女性。
今回は絶叫が無く、前回と同じように無事に生還できた。
更に、D-31875は「食べ物」とのメモ書き*1を持ち帰ったのである。どうやら、アパートの中の生き物は食べ物を必要としているらしい。

そしてメモ書き通りに食べ物がアパートに入れられ、加えて追加のリンゴを持たせたD-31875をもう一度進入させた。

果たして、D-31875は再び無事に帰ってきた。
アパート内の生物が某クソトカゲのような凶暴な存在ではないこともこれではっきりした。

入力 出力
大石晃一 大石のものでない高音の絶叫、服装の変わった大石

家主である大石氏(36歳男性)が本人の希望によりアパートに進入。
しかし、男性のDクラスが入った時のように甲高い叫び声が観測され、更に何故か大石氏は服装を変えてアパートから出てきた。

入力 出力
生きたラット 生きたラット
リンゴ3個 無し
D-31875 服の腹部に涙の染みが着いたD-31875
リンゴ5個 無し
D-31874 D-31874
大石晃一、研究員 大石晃一、研究員

実験は何事も無く続く。
D-31874や大石氏、研究員(28歳男性)が進入しても絶叫は観測されなくなるが、D-31875には再び涙が付着している。

そして報告書に掲載されている入出力記録は中略され、最後に一回の入出力が掲載されている。

入力 出力
D-31875 D-31875、小さな人骨

D-31875はなんと再び人骨を持ち帰ったのだ。
この人骨にも唾液が付着しており、検査の結果、人骨と唾液のDNAは別人のものだったが、どちらも大石氏と部分的に一致した。

以上が、SCP-1377-JP報告書の全てである。


真相

アパートの中の生き物は何なのか?
大石氏は何故着替えたのか?
最後の人骨は誰のものなのか?

もう気付いているかもしれないが、それらを解説していこう。
あくまで以下の解説は解釈・考察・推測の一つであり、読者があれこれ想像するのが記事の楽しみ方なので、それを味わいたい方には閲覧を推奨しない。



+ 一つの考察
結論から言うと、アパート内の生物は若い女性だ。
女性と言うよりも少女と形容した方が近いかもしれない。
23歳であるD-31875の腹部に涙が付いていたということは、D-31875の腹部が少女の頭の高さと言うことだ。
唾液や絶叫も彼女のものである。

何故大石氏の自宅に彼女が居たかというと、彼女が大石氏の娘だからに他ならない
唾液が大石氏と部分的に一致というのがそれを示している。


まず、遺体にあった頰の痣から、大石氏は妻を殴ったことが推測される。
一家三人でアパートに住んでいることから、決して裕福な家庭でないことは容易に想像できるだろう。
少女(娘)が辞書に齧り付いたことから、もしかしたらロクな教育も受けさせていないのかもしれない。
そして、大石氏は己の妻を何らかの理由で殺害し、逃亡した。

この時、少女が一緒に殺されなかった理由は不明だが、この時点で恐らく反ミーム的異常性が発現した。
異常性が少女のものかアパート内部の空間かは分からないが(少女のDNA情報を記録できているため、アパートの可能性が高い)、その理由が父に恐怖を抱いた少女ないし娘を守ろうとした母にあることは想像に難くない。

そして数日が経ち、アパート内の食料備蓄は無くなり、少女は空腹に苦しんだ。
アパートから出るという選択肢は少女には無かっただろうから、死んだ母親の遺体を食べる他に無かった。

その後暫くして、どういう経緯かは分からないが(行方不明になった母親が切っ掛けだと思われる)、アパートは財団の目に留まった。
そして、実験が始まった訳だ。
大石氏も同じ時期に財団に捕捉されたと思われる。

財団が実験で少女に食べ物を供給したため、彼女は生き存えることができた。
男性のDクラスに悲鳴を上げたのは、父親のせいで男性に恐怖心を抱いてしまったからだろう。
女性のDクラスに泣き付くのも、彼女の苦労を考えれば当然である。

そして、何も知らない財団は大石氏の進入を認めてしまった。
大石氏は出てきた時に着替えていた。つまり、内部で着替えなきゃいけないようなことをしでかしやがったのだ。
最後の実験記録で、Dクラス職員は新たな死骸を持ち帰った。その死骸は小さく、大石氏とも少女とも部分的にDNAが一致した。

もうお分かりだろう。
大石氏は実の娘をレ█プしやがったのだ。
少女は父との子を宿し、流産し(あるいは、産んだものの死なせてしまい)、その死骸を食べた。

その後のことは語られていないが、大石氏が財団にDクラス職員として雇用されることを期待してしまうのは、無理のないことだろう。

SCP-1377-JP
ただいま

帰ってこなければ、良かったのに。


追記・修正は少女の幸せを願いつつお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示
SCP-1377-JP - ただいま
by KanKan
http://ja.scp-wiki.net/scp-1377-jp
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最終更新:2024年05月05日 18:14

*1 このメモはD-31875が書いたもの