SCP-018-JP

登録日:2020/07/13 Mon 11:10:15
更新日:2023/10/31 Tue 15:43:45
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彼女の涙は永遠の氷の中に

SCP-018-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「(たお)れし女王の時計」。JPのコードが示す通り日本支部の管轄にある。
オブジェクトクラスは堂々の「Keter」で、世界滅亡を引き起こしかねないオブジェクトである。

概要

このオブジェクトはフランスのブレゲ社製の懐中時計である。報告書ではおよそ数百年前にとある人物のために贈られたものであると書かれているが、その人物が誰なのかは意図的に伏せられている。なお、その人物はSCP-018-JP(の前身である懐中時計)を受け取る前に亡くなったらしい。
非常に精巧な作りをした美しい機械時計だが、現在は時計としては機能していない。右上の縁には血痕が付着しており、これが異常性の主因となっている。
物品系オブジェクト定番の破壊耐性はしっかり完備しており、破壊する実験は現在のところ全て失敗している。

元々は「定期的に血痕の形状が変動する懐中時計」としてAnomalousアイテムに登録されていたのだが、後述のヤバい異常性が明らかになってからは改めてオブジェクトとして登録されている。
SCP-018-JPの血痕は3月20日から9月22日(以下「上半期」)と9月23日から3月19日(以下「下半期」)の区間でそれぞれ変化する。変化のパターンに特に法則性はないとおもわれていたが……(後述)

で、keterクラスの非常にヤバいオブジェクトなのだが、本体の特別収容プロトコルは非常に簡素。鍵のかかるロッカーに放り込んでおけ、血痕の形は常に記録しておけ、血痕の画像は最重要機密にしておけ、とこれだけである。
というのもこのオブジェクトのヤバさは時計本体とは関係ないところで発生するからだ。

北極圏で起きていた異常

財団が北極圏に存在するとある名前で呼称される海氷(原文では黒塗りで表現されているが、読みづらいので以下「海氷-A」とここでは仮に呼ぶ)の形状を記録していたところ、なんと それぞれの半期における海氷-Aの最大面積時の形状と、SCP-018-JPのそれぞれの半期における形状が完全に一致している ことが判明。
しかも、 血痕及び海氷-Aの平均面積は拡大傾向にある ことがわかった。

要するに、各半期内では形状は変化しているものの、平均的に見れば海氷-Aは 常に拡大し続けている のだ。恐らくはSCP-018-JPが異常性を獲得したその時からずっと。
全体的に、下半期で拡大を重ねる傾向が見られており、現在の最大面積は削除済みになっているが かなりヤバい ことになっていることが推測される。

財団は海氷-Aの破壊及び融解を試みたが、一応破壊することはできたものの、海氷-Aが半期の終わりに 即座にその半期での最大面積で復元する という再生能力を備えていたことから失敗。

このままでは、拡大し続ける海氷-Aの低温領域による大規模な気候変動が予想されることから、財団は徹底的な情報管制を敷いており、海氷-A周辺の立ち入り制限や、目撃者への記憶処理、あらゆる専門書の検閲と執筆者への記憶処理を行っている。
しかしそれだけでは間に合わないので、仕方なく 海氷-A以外の北極圏の氷を融かしていく対処措置を行い、それが地球温暖化によるものであるとするカバーストーリーを展開して誤魔化している
……え?北極圏の氷を融かしている犯人って二酸化炭素じゃなくて財団だったの?

しかも、これらも結局対処療法に過ぎず、根本的な海氷-Aの面積拡大への対策はできていないのが実情である。

要はSCP-018-JPの異常性は、 無尽蔵に拡大する北極圏そのもの 。そりゃ納得のKeterである。

時計が贈られたのは……

なお、財団は実験の一環としてSCP-018-JPの針を手動で動かす実験も行っている。
その結果、以下の異常性が現れ、 以降SCP-018-JPを手動で動かす全ての実験は無条件で却下される ことになった。

  • 血痕の急速な拡大
  • 「女性の悲鳴のようだ」と形容されたゼンマイの摩擦音の発生
  • 実験の作業従事者への涙腺刺激
  • 各針の一時的な著しい変形
  • 裏面空白部に4分間だけ出現した、血痕によるメッセージ。この血痕は海氷-Aに影響を与えなかった
  • 12時15分への各針の固定

なお、現れたメッセージを翻訳したのが以下である。

彼女の死を憐れみたまえ
凍えるまでの涙を、捧げ続けたまえ
哀悼せよ、最期の一欠片まで



……さて。ここまでのヒントを読み解けば、時計を贈った「彼」と贈られた「彼女」の正体に勘のいいひとならば気づくだろう。
ブレゲ社を贔屓にしていた、錠前弄りが趣味だった「彼」。
12時15分に断頭台の露と消えた「彼女」。


ここではあえて正解は載せない。


……「彼」は「彼女」の死が嘲られ続けることに、我慢がならなかったのだろうか?
だから、「彼女」に捧げられた涙が世界を覆いつくすまで、凍てついた棺が広がり続けることは止まらないのだろうか?




追記・修正お願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-018-JP - 斃れし女王の時計
by locker
http://scp-jp.wikidot.com/scp-018-jp

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最終更新:2023年10月31日 15:43