サイバー海馬

登録日:2025/04/22 Tue 08:29:46
更新日:2025/04/27 Sun 07:47:16
所要時間:約 3 分で読めます




「オマエに兄サマの代わりなんかできるものか!」

「俺は海馬であって海馬以上、そう。ハイパー海馬とでも呼んでもらおうか」
サイバー海馬はこう言った。



サイバー海馬とは、小説版遊戯王に登場したキャラクターである。
決してサイバー流に目覚めた社長ではない。また語感がカイザー海馬と似ているが彼とも関係ない。
この項目には小説遊戯王のネタバレが含まれています


【概要】

小説版オリジナルエピソードに登場したキャラクター。
海馬コーポレーション社長「海馬瀬人」に何かがあった時の為に作られた、即ち海馬のコピーロボットである。
さらに厳密にいえばその後ろの部屋にあるスーパーコンピューターが本体であり、ロボットの方はその端末である。

どうにも仕掛け人は海馬コーポレーションの重役らしい。BIG5のことかと思われるが詳細不明。
その海馬がDEATH-Tにて武藤遊戯に敗れてマインドクラッシュされ一時的に廃人になった事で起動した。
だが機械である為か頭脳は海馬以上であり、その知略は油断ならない。

とここまでなら単なる海馬の代わりであるが、このサイバー海馬くん、海馬瀬人本人よりも傲慢である。
冒頭の海馬モクバとの台詞がその事を語っており、本物以上の存在と自負する。
しかしその割にはどこかやることがみみっちい。
本人はそれを知能指数が向上したがための策略と思っていたが、遊戯王…もとい闇遊戯にはその臆病な魂胆を見抜かれていた。
そして何よりも「ハイパー海馬」と名乗った直後に「サイバー海馬」と地の文で切り捨てられるのもなお滑稽であった。*1
恐らくは瀬人本人が目的の為なら何でもする危険な男だったが為に、サイバーの方は守りを考える性格設定にされたのだろう。

作中の扱いは小物ではあり、遊戯王(闇遊戯はこの小説内ではこう呼ばれているし、自ら名乗る)にも多彩な罵倒を受けていた。
だが自負するだけあり知略に関しては優れており難敵である。
正直な話、遊戯も海馬瀬人という人物を理解していなければ危なかっただろう。


【来歴】

遊戯はDEATH-Tでの戦いを終え、一時の休息を得ていた。
そんなある日、復活した海馬からのリベンジを申し込まれる。
マインドクラッシュされ、心のピースを組み上げているはずの海馬は、しかし元々の傲慢さが治っていなかった。
遊戯は急いで彼の元に向かう。一枚、気になったカード《未知の卵》もポケットに入れて……。

あの頃と変わらないように見える海馬は、今回のデュエルでは「ビンゴ」というルールを指定した。
デュエル前に互いにカードを指定し、そのカードを引いた場合は墓地に送らなければならないというルールだ。
海馬の特徴であった暴君ではあったが王者としての誇りを感じられないビンゴルール。
相手から破滅的な美しさの欠片も感じられないことから、遊戯は眼の前のそれが海馬を模して作られたロボットと気づく。

そもそもビンゴというルールを指定したのも、海馬本人ではない為に《青眼の白龍》を所有しておらず、それを誤魔化すためでもあった。
実際遊戯は《青眼の白龍》を指定して、結果的に空振りとなっている。
だがその行動自体が自分の正体を看破される一因となる。
何故なら海馬であれば《青眼の白龍》を持って遊戯にリベンジをしにくるはずだからだ。

しかしサイバー海馬もそう簡単にやられる男ではない。
彼は魔法攻撃の通じない《機械仕掛けの巨人》を多数の装備カードで強化する戦法を取り、遊戯を苦戦させる。
遊戯側の対抗策であった《デーモンの召喚》もビンゴで落とされて万事休す。
このデュエルの結末は…是非とも小説版を見てもらいたい。


なお、海馬本人はこのハイパー海馬のことを激しく嫌っている。
例えそれがマインドクラッシュされた状態であったとしても…。


【使用デッキ】

海馬のデッキから《青眼の白龍》を抜き*2、その代わりに新たな切り札とした《機械仕掛けの巨人》を採用し、切り札の強化のために多数の装備カードを投入している。
《ドラゴンスレイヤー》*3というカードを《ルード・カイザー》に装備させていたことから巨人専用の装備カード以外も確認できる。

だが、モンスターカードのパワーや素質をストレートに使いこなし罠による強烈な一撃を仕掛ける海馬と違い、
装備カードでどれもこれも乱雑に強化するサイバー海馬の戦いは「いびつ」とまで断じられ、これもまた正体を見破られる要素となってしまった。
一応、海馬本人も「魔法カードの使い方に難あり」と双六に評されたことはあるが、それを差し引いても遊戯王が疑問に抱くくらいには「その場しのぎ」と感じさせるプレイングである。
なんというか闇遊戯の海馬への感情が重い。

また、《デーモンの召喚》対策に原作でも登場した《海月―ジェリーフィッシュ》のような雷攻撃メタやそれを上回る攻撃力モンスターを入れるのではなく、「ビンゴルール」で封じるというセコさもある。
《機械仕掛けの巨人》のページに詳しいが、サイバー海馬の戦法はこの切り札「のみ」に終始している上に、明らかにカードの強さを過信しすぎている。
更に言うと彼の戦術の最終目的が《機械仕掛けの巨人》の完成で止まっており、ライフやリソースを大量に削りゴテゴテに強化したそれで「デュエルに勝つ」事を忘れているという、要するに目的と手段が入れ替わっているのだ。
遊戯に暗にそれを告げられても「コンボを使うなら当たり前のことだろうが」と、その歪さに気付いてもいない。

ある意味では《青眼の白龍》に執着しすぎた初期の海馬のコピーらしい性格と言えるが、
《青眼の白龍》はそのステータスと(当時のルールでは)出しやすさから「出すこと=ほぼ勝利」であるために終着点に出すだけの価値のあるカード。
であるが《機械仕掛けの巨人》はその高みに行くには時間が掛かっていた。
なんせ、作中で多数のカードとライフを犠牲にしてやっと《青眼の白龍》に並ぶレベルである。
「どうしてそのモンスターを出すのか」「出した後でどうやって勝つのか」それを考えられなかった時点で、やはり作中の評価である「海馬の劣化コピー」以上にはなれないのだろう……。

【余談】

小説版には高橋和希先生の挿絵があるが、そこに写るサイバー海馬のロボットの姿は海馬本人にシルエットはそっくりである。

「海馬」のコピー、といえば本作の2年半程後に遊戯王DMに登場した電脳世界の乃亜・剛三郎親子が想起される。
ただし、サイバー海馬は自分を瀬人と別の存在と認識しているのに対し、乃亜たちは電脳に移植された本人という自意識を持っているのが異なる。
モクバは乃亜にアンドロイドの体について言及しているため、DMの世界でもサイバー海馬並みのロボットは造れるのだろう。

また遊戯王VRAINSに出てくるイグニスとの関連性も見られる。
特に光のイグニスとは色々とそっくりである。
他にも「堕ちたトップの代わりを演じさせる」という意味では偽ジャックも思い出させる。
彼もまた「ジャック・アトラス」であろうとし、オリジナルを否定し高みを目指そうとしていた。
作者の千葉克彦氏は東映版遊戯王の脚本を務めていたのだが、だからこそ「遊戯王らしさ」を知り尽くしており、結果的に後の展開を先取りすることとなったのだろう。

生まれた時から誰かの代わりとしての宿命を義務付けられ、別人になろうとしたら全ての人間から否定された彼はどこか哀れな存在である。
だが遊戯たちが彼を否定した主な理由は元になった瀬人を侮辱するような言動の数々なので、もし彼がオリジナルを尊重し、彼のために復讐を果たそうとしていたら、遊戯達の扱いもマシになっていただろう。
海馬以上の存在になりたいという傲慢さをコピーロボットに組み込まれた理由は不明だが、ある意味では彼を作った重役達の「社長になりかわりたい」という欲望が顕に出てしまった感じだろうか。
結局、重役達のサイバー海馬は失敗し、彼らは次の手を打つこととなるが、それはまた別の話である。









俺のwikiはアニヲタwikiであってアニヲタwiki以上、そう、ハイパーアニヲタwikiとでも呼んでもらおうか!
サイバーアニヲタwikiは追記・編集された。


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最終更新:2025年04月27日 07:47

*1 一応補足しておくとハイパーを名乗る前にサイバー海馬自身が「(重役たちが)サイバー海馬を作ろうとした」と告げその後「サイバー海馬」と地の文で表記されているので、その流れでバッサリ切り捨てられたように見えるだけである。まぁ名乗った名前を頑なに使われないのもインパクトはあるが

*2 遊戯王の推測によればそもそも所持してないため

*3 竜族モンスターとの戦闘時に装備したモンスター攻撃力を1000アップ。地の文曰く手に武器を持つモンスター専用