SCP-1596-JP

登録日:2020/07/18 Sat 19:07:11
更新日:2023/06/15 Thu 19:13:01
所要時間:約 8 分で読めます




SCP-1596-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「おかしな夜勤の特別報酬と文句の一つも言わないから味を占めていると思われる雇い主側」。……なんか昨今のラノベにありそうな長い項目名である。
オブジェクトクラスは「Euclid」。JPのコードが示す通り日本支部の管轄にある。

概要

SCP-1596-JPとは、大阪府のとある地区後述の特性からして、西成っぽい感はあるの廃工場に存在するアルミ製の扉である。
財団はカバーストーリー「老朽化により立ち入り禁止」を展開して、一般人の侵入を阻止している。

で、この扉だが、 異世界に繋がっている 。……まぁそれぐらいなら財団的にはよくあることである。

ぶっちゃけ単なる異世界行きの扉なら、カバーストーリーで一般人の侵入は完全に阻止できているのでオブジェクトクラスはSafeだろう。
コイツがEuclidに指定されているのは、もう一つちょっと厄介な特性を抱えているためである。

アルバイト先は異世界?

SCP-1596-JP周辺の半径2キロ圏内には突然手書きのチラシが出現することがある。出現形態は、壁に貼られていたり、電柱に貼られていたり様々。
チラシそのものはごく一般的な紙であり、普通に剥がすことも破壊することも可能。

チラシの内容は、SCP-1596-JPの場所、募集人員、作業内容、予定される作業時間、日当……
要するに求人広告である
ただし、報酬は具体的な金額には触れられておらず、「満腹」「おやつ」「遊ぶ金」など曖昧な文言しか書かれていない。

そんな怪しさ満点の求人広告だが、ノコノコ連れられてSCP-1596-JPをくぐると、なんとそこは 昔夢見たメルヘンな世界そのもの 。以下SCP-1596-JP-Aと呼称する。

床はブドウ糖でできており、建物はお菓子製、しかも空気にはメントールが微量含まれており、呼吸するとちょっと爽快。
あと温度変化・湿度変化が地球に比べて乏しく、概ね気温10~15℃、湿度50%前後を保っている。また一日の長さは大体10時間。

で、そんなメルヘンな場所に連れられてきた人々の前に現れるむくつけき現場監督SCP-1596-JP-B(仮称)

このSCP-1596-JP-Bだが、 「寺」と書かれたヘルメットをかぶった、中年のアジア人男性で、流暢な広東語及び訛りの強い日本語と英語を話す というメルヘンな雰囲気に全くかみ合わない中年そのものな姿をしている。

そんな世界観をガン無視した現場監督に連れられて、「本日の作業場所」にたどり着くと、人々は「作業」を指示される。
作業内容は以下のようなものが確認されている。


作業名 作業内容
運搬 素手或いは焼き菓子及び飴で作られた猫車を用いて、巨大な麩菓子や棒状の飴、粉砂糖やチョコチップ等を指定された位置まで運ぶ。SCP-1596-JP内に最初に入った対象や他の作業が不得手であると見なされた対象が回される。
塀組み ガムベースを塗布した床面に立方体状の飴・チョコレート等を隙間なく並べた後上面にガムベースを塗る行為を指定された高さまで繰り返す。
塗装 焼き菓子製のコテを用いてアイシング・チョコレート・マシュマロ等の素材を壁面や上記の作業により制作した塀に塗り広げる。
壁練り立て 柱状の菓子に絡ませた飴を練りながら均一の厚さになるよう引き延ばす。
屋根作り 焼き菓子を格子状に並べた上にチョコレートを塗り広げる、マシュマロを分厚く平坦に盛る、粉砂糖を塗した上から熱した飴を塗る等のバリエーションが確認されている。

まぁ要するに、一般的な土木作業員の作業をお菓子に置き換えたようなものである。

土木作業と言うと昔から3Kなどと言われてキツイ仕事のイメージがあるが、SCP-1596-JP-Aでの仕事内容は割かしホワイト。
午前中(仮)の作業は約250分(=4時間)で、その後は50分程度の昼食(仮)休憩があり、その際の食事及び飲み物(お菓子だが)も支給される。
で、午後(仮)の作業は約140分(=約2時間)で、その後は後述の日当を受け取って終わり。
作業中の休憩は任意で取っても黙認されるが、10分以上取っていると怒られる。
また、作業中の飲酒及び喫煙も認められている。普通、喫煙はともかく、飲酒を認めている現場ってそうないだろうが……。ただし吸い殻や空き瓶は地面(お菓子だが)に埋めるよう指示される。

大体6時間の作業を終えると日当を受け取ってSCP-1596-JP-A外部に退出することになるのだが、その日当は以下のようなものが確認されている。
  • 旧500円玉が内部に封入されたメダルチョコ8~14枚
  • 煙草の箱を模した飴細工と煙草を模したガム入りの飴6組
  • 350mlのビールが内部に封入された缶を模したチョコレート6本
  • 敷紙に5000円札紙幣を用いたカステラ
  • 金属製の鍋と同等の耐久性を有する焼き菓子製の鍋
  • 1円玉が封入された塩味の飴5個。作業に著しく不真面目な態度を取ったDクラス職員にのみ支給された。

現金が受け取れるかはランダムみたいだが、現金じゃなくても概ねそれなりに有用そうなものをくれるみたいである。なお、日当に関する交渉を受け付けるかは不明。

どうやら、この扉の存在はこの地区の住民及び路上生活者に「食うに困らない方法」として認知されていたようである。

入念な調査の結果、どうも1980年代からこの扉は存在しており、わかっているだけで600人以上の労働者が存在していたことが判明。
財団は記憶処理及び前述のカバーストーリーの展開を行い、現在は「張り紙が出現したら即座に張り紙を回収し、職員をSCP-1596-JP-A内部に派遣して作業させること」というプロトコルを定めている。

まぁ、日当がランダムとはいえ、作業内容そのものは概ね常識の範疇であるし、さほど危険性はないオブジェクトであると言えるだろう。

































2000年代のある日、SCP-1596-JPの継続調査のために14回に渡ってSCP-1596-JP-Aに行っており、SCP-1596-JP-Bから一定の信頼を得ていたと考えられるエージェント・塩原の部屋に一通の張り紙が出現した。
この張り紙は、時間のみが掲載され、さらに発見の1時間後には同量の炭素に変換され、消失してしまった。どうも普段の求人広告とは勝手が違うようだが……?

以下は指定された時間にSCP-1596-JPをくぐったエージェント・塩原の服に装着されていたカメラにより撮影されていた映像記録である。










……


…………


………………


………………………うん、まぁ、その……






なお、後日エージェント・塩原からSCP-1596-JP-Bへのインタビューも試みられたが、 激しく狼狽し「知らない」「分からない」「その時会っていない」「仕事しろ」と拒絶された ため、以降のインタビューは断念されましたとさ。

また、それから2010年にかけて同様の事例が76回発生している。発生頻度も上昇気味らしく、探索部隊の設立が予定されているとか。
…………雇い主がお縄になる前に、足抜けしたほうがいいんじゃないだろうか

あと、自室内でも監視カメラを服に付けなきゃいけないエージェントのブラックな労働環境と、何気に手際が良すぎるエージェント・塩原の前職が気になるところ



追記・修正はブラックな労働環境にめげずにお願いします。



CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1596-jp - おかしな夜勤の特別報酬と文句の一つも言わないから味を占めていると思われる雇い主側
by ShicolorkiNaN
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1596-jp

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最終更新:2023年06月15日 19:13