引っ込み思案な神鳥獣使い―プラネットイントルーダー・オンライン―

登録日:2020/09/15 Tue 01:00:00
更新日:2024/11/29 Fri 02:23:17
所要時間:約 9 分で読めます





それは、「再起」の物語


あらすじ

世帯数30余り、人よりも警備用の巡回ロボに遭うことの方が多い過疎の山村で生まれ育った少年、蘆名征司。
15歳の誕生日祝いに通信制高校でも使うVR機器を買ってもらったことで、征司はネットゲーム「プラネットイントルーダー」を始めることになる。
だがその「プラネットイントルーダー」、なんと一年前の事件が切っ掛けで過疎状態になり、その上開発も放置状態というありさまだった。
そんなゲームの中で引っ込み思案で他の人と余り接してこなかった征司は様々な人と交流を重ねていく。
一方で征司のログインを期に「プラネットイントルーダー」も改めて動きだし……。

概要

「引っ込み思案な神鳥獣使い―プラネットイントルーダー・オンライン―」は小説家になろうで掲載されている小説。作者は古波萩子。
TOブックスから書籍化がされており、既刊2巻。書籍のイラストはダンミル。藤屋いずこによるコミカライズも2巻刊行されている。

近年隆盛を遂げているVRMMOものではあるが、比較的リアルサイドにもある程度のウェイトを置きながら近未来の世界の様子を描いているのが特徴。

主要登場人物

リアルサイド

蘆名征司/ツカサ
人付き合いそのものが稀な山村で育った中学三年生の少年。
実際作中の描写からまともな接点のある人は片手の指で足り、ロボットを入れても両手の指で足りるという状態である。
そんな環境もあってか「外」に関心が向けられず、高校も特に深く考えずに通信制(=山村から出なくて済む)を選んでいたが、その状況を危惧した両親によってVR機器を与えられ、ネットゲームを勧められた。
そこでグラフィックの綺麗さに惹かれて「プラネットイントルーダー」を選んだことが、彼にとって転機となる。

話し方は丁寧で温厚な性格であるが、同時に親しい、親切な人との付き合いしかなかったために「悪意」に晒されると委縮してしまう面がある。
このため、無茶苦茶な理屈や強引な押し売りなどにそのまま押し切られてしまうことも。
その一方で自分の引っ込み思案な面を変えたいという意識もあり、頑張って積極的に行動できる部分も持ち合わせている。

ゲームにおいては「自分がPKではないとアピールしたいこと」「山の野鳥が好き」であることからヒーラーロールの神鳥獣使いを選択。
彼がゲームを始めた時は神鳥獣使いは「切り札となるスキルが実装されていないが故の不遇ジョブ」扱いであったのだが、この評価が転換していく過程に関わっていくことになる。

里見滋/無限わんデン
村に一軒だけあるコンビニのワンマンオーナー。
コンビニは自動化が我々の時代に比べて大幅に進んでおり、滋が留守の時は無人営業もできていることから一人で回している様子。
(一応警備用と思われるロボット犬がいる)
ネットにおいては元プロゲーマーにして人気ゲーム実況者「無限わんデン」として活動している。
FPSが最も得意だがDCGでも世界大会に出られるほどで、実質ゲームはなんでもござれ。
配信者としては登録者数72万の大手だが、活動休止期間もあったのでこれでも減った方。
2年前に様々なトラブルの結果としてそれまでの人間関係を断ち、この山村に移り住んできた。征司曰く「若くても世捨て人」。
ネットに関する先人として、何かと征司をサポートする。

北條カナ
山村における征司以外の唯一の就学年齢の子供。小学五年生。
いわゆる「おませ」な子であるが、征司も滋も着る物にさっぱり頓着していないのを横目にお洒落を語るなど、やはり小さくても女の子。
一方で山育ちの子らしく、虫なども全く苦手としない度胸も兼ね備えている。

コントロール・ノスタルジック(松名ミルカ/黒原イズミ)
高い人気を誇っていた女性二人組の音楽ユニット。松名がボーカル、黒原がキーボード担当。
「雨no歌」が作詞作曲する幻想的な民族調の音楽+女の子の日常を描いたポップな歌詞がうけ、人気を博していた。
しかし年末の音楽番組で黒原がいわゆる「エアキーボード」であったことが発覚し、活動休止となった。
その後黒原は解雇、松名はソロでデビューすることになる。

正木洋介
「プラネットイントルーダー」の制作者。
目力の強い風貌から「ハシビロコウ」に例えられることもある。
ある種の偏執的な運営でユーザーには有名であり、掲示板の会話からその辺りを垣間見ることができる。
ちなみにインディーズ制作で彼一人(+ゲーム開発・運営AI)で回している。
AIは我々の世界に比べると大幅に発展しており、こんな芸当も可能になっている模様。(もちろん、正木の才能もあるのだが)
ただし「音楽の製作だけはまだ難しい」と言う事になっており、特に完全にAIに製作を任せた生産時BGM等は「人類には早すぎる」と言われている。

ゲームサイド

和泉
ネクロアイギス王国でツカサが出会ったゲームを始めたばかりの少女。
当初は兄のアカウントのキャラである「アメノカ」でログインしていたが、ツカサと継続して遊ぶために自分のアカウントで「和泉」というキャラを作り直し、以降ツカサと共に「プラネットイントルーダー」の世界を歩んでいくことになる。
キャラとしてはタンクロールの騎士がメイン。
ツカサ以上のあがり症+対人関係の不得手を抱えているが、それをなんとか克服したいと頑張っている。
廃人同然のプレイ時間に加え、直近で酷い「炎上」を経験しているようであるが。

雨月
ツカサの最初のフレンド。ツカサは黄色ネーム(PVPプレイヤー)だと思い、困っていることを聞こうと思って自分から話しかけたことがフレンドとなる切っ掛けとなった。
実は「覇王」と呼ばれる有名PKであり、名前も黄色ではなく黄金(【脱獄覇王】という称号持ちだけの特殊色)。
「赤は確実に、黄色もついでに、青も気まぐれに」キルしていく動く災害のような扱いを他のプレイヤーからは受けている。
とは言えツカサにとっては頼もしい、頼りになる先輩プレイヤーという位置づけであり、また雨月からツカサに伝えられた情報が、ゲーム内の「神鳥獣使い」の状態を変えていくことになる。

NPC
ゲームのNPC……ではなく、「NPC」という名前のプレイヤー。
NPCのフリをして種人(低身長の種族で、男性も女性的な可愛らしい顔立ち)をストーキングする変質者。
よりによってツカサが最初に遭遇した他のプレイヤーである。

掲示板の愉快な仲間たち

VRMMOものにつきものの「掲示板」だが、「プラネットイントルーダー」ではチャットの代わりという側面からプレイヤー名が出る仕様になっており、またツカサ自身が廃プレイヤーではないことから掲示板回でしか分からないような情報もかなり多数出てくる。
そして何より異常にキャラが濃い。ここでは彼らの一部を取り上げる。

アリカ
我らが「義憤ニキ」。
クソを連呼して常に何かに怒っているイメージだが、基本的に理不尽な怒り方をすることはない。沸点は低いが。
また、自分が悪いと思えば素直に謝罪できる人間でもある。
プレイヤーとしては純正ヒーラーの白魔樹使いであり、キャラ能力、プレイヤースキル共高水準の辣腕ヒーラー。

影原
ロリコン。またやたらホモネタなどに食いつく。

クロにゃん
MAD動画などの作成者。正木とゴリラPの動画を「ゴリラvsハシビロコウ」として編集しアップした人間でもある。

ジョン
後述のソフィアとひたすら煽りあうタンクキャラ……だったのだが。
その実態は半運営側のPKK組織「ネクロラトリーガーディアン」のサブマスターであり、ソフィアとの罵り合いは完全にフェイク。実際は生真面目な性格であり、アドリブには弱いタチ。ソフィアのうっかりで起こった事態に動揺したため、誤って自分とソフィアの関係がバレる発言を総合掲示板でしてしまった。

Skyダーク
ツカサの初めてのパーティ募集に応じたプレイヤー。
そしてツカサ&和泉の素人丸出しの動きに時間の無駄と無言落ちをした、いわゆる「効率厨」。
しかしその後ある理由からツカサに謝罪と忠告(という名の自己弁護)のメールを送ったことからツカサからは「丁寧な対応をしてくれた人」という印象になってしまっている。
(なお当然本人は気づいてない)
キツい物言いは目立つが、正直過疎期掲示板の住人としては平均レベル。
なぜかチョコにご執心の様子。

隻狼
荒い口調の人が多い掲示板で比較的穏やかに話す人物。
動物好きらしく、ツカサの連れている鳥がルリであることも一目で気づいた。

ソフィア
ジョンをやたら煽る毒舌幼女。
……というキャラ付け。その実態は半運営側のPKK組織「ネクロラトリーガーディアン」のマスターである。疲労などが蓄積しているところでうっかり目にしたコウテイペンギンの雛にやられ、ネクロラトリーガーディアン用のジョブを消して神鳥獣使いに変えてしまったためギルドマスター権限がジョンに移ってしまい、そこで焦ったジョンのせいで自分とジョンの正体がバレることになった。
ゲーム中でやけにあざとい媚び媚びのキャラを演じている。本人曰く「リアルにも二次元にもソフィアみたいなキャラがいないから自分がやっている」とのこと。なお中身はおっさん。

チョコ
基本的にあまり話さず、顔文字で反応を示すことが多い。
一度語ったところによれば色弱であり、そのため他の人と変わらない景色を見られるプラネに愛着を持ってるとのこと。
また、基本的に臨時PTこそ組むもののほぼソロで立ち回っていたプレーヤーだった為、ツカサがクランを立ち上げた際に秒で参加しに突撃した際には掲示板住人から非常に驚かれた。

猫丸
うさん臭い関西弁でしゃべるキャラ。
やたら「ハゲ」に反応するのは持ちネタなのかリアルでキテるのか。

まかろに
「色彩まかろん」という名前で活動しているイラストレーター。数少ないリアルが女性と判明している人物。

ミント
みんなのフリー素材。うるさい。

ムササビX
外部でなんらかのニュースがあった場合は、概ね彼がその情報を転載する。
それ以外の発言は比較的少ない。

陸奥
動画配信者。主にプラネのソロやり込み配信(例:レイドボスを8時間かけてソロ討伐)などをしている。なお「この間登録者100人のお祝いをした」という記述から、さしてメジャーなわけではない様子。
まあ登録者5万前後+過疎のプラネ専門ではね……。
リアルで無限わんデンの知り合いらしく、また育ちの良さをうかがわせる記述が随所にある。

ルート
ツカサの初めてのパーティ募集に応じたプレイヤー。
典型的なウェイ系陽キャ。
Skyダークが抜けた後もツカサに付き合う気であったが、覇王の登場で物理的に回線を切って逃げ出した。
直前にキルされていたゆえ、致し方なし。
掲示板でもキャラは変わらないが、そのテンションのまま煽ったりもするためアリカの怒りを買うこともしばしば。

ルシファー
直結厨。

作中の用語・ゲーム

プラネットイントルーダー・ジエンシェント→プラネットイントルーダー・オリジン

正木洋介個人開発のインディーズゲーム
元々は「プラネットダイアリー」という惑星開拓シミュレーションゲームを作成しており、その完成版を提供すると称してクラウドファンディングを募っていたのだが、結果として出てきたのがMMORPGのコレであったため、出資者と揉めたとかなんとか(なお和解済み)。
開発体制は開発・運営・音楽担当のAIが中心であり、それらのAIを正木が管理している形となる。
なお「作曲」はこの世界観においてもAIの苦手なことの一つであり、音楽担当AIの曲は「人類には早すぎる」と言われている。
ベータ版開始後まもなく、街中でPKが可能であることが判明したこととレアドロップに関するデマが広がったことから、契機となるPKされたプレイヤーの名を取って「5・5ブラディス事件」と呼ばれるPK集団による大量虐殺事件が発生。
一時的に全プレイヤーを監獄に収監し(なおこの時なぜか雨月が脱獄に成功し、【脱獄覇王】の称号を得ることとなった)街中のPK不可やPK自体の仕様変更によって事態を抑え込んだものの事件の余波は大きく一気に過疎化、運営側によるアップデートも行われなくなり掲示板も「身内回しのなれ合い」が常態化するようなレベルで廃れたゲームとなっていた。
過疎の理由はアップデートを行っていないだけで普通に遊べているのにこの世界のここやニコニコ大百科、pixiv百科事典と思わしき所の同ゲーム項目では何故か一律で「サービス終了」と記述されていた事も大きい。
また、それだけではなく「5・5ブラディス事件」も「最初の被害者の名前を取った」のではなく「最初にPKした犯人の名前を取った」と記述される等、やたら不正確なデマが蔓延していた状態であった。
しかし、征司が「ちょうど5万人目のプレイヤー」として登録したことから、再びプラネットイントルーダーは動き出すことになる。
5万人達成と同時にアップデートが始まるようにプログラムを仕掛けていた、一定期間の内に5万人の登録者を達成できなかったらそのままサービス終了させてた疑惑がある

ベータ期間中の名前は「プラネットイントルーダー・ジエンシェント」、正式版からの名前が「プラネットイントルーダー・オリジン」となっている。
正木本人の嗜好(同時接続ユーザーの多さから負担を軽減する為にサーバーを複数に分ける運営が好きではない)から、極力1つのサーバーの運営を維持し、負担は増設によって緩和していくスタイルを取る。
スペースデブリ鯖? なんのこったよ

神鳥獣使い

征司がメインとして使用している職業。
固定武器として使い魔となる鳥型の魔力塊を使用するヒーラー職なのだが、全3種あるヒーラー職で異様に神鳥獣使いだけ回復量が低い上にバフ量も少ない
上位の切り札となり得るスキルが神鳥獣使いだけ一切見つかっていなかった事から地雷職と言う評判が蔓延していた。

疑似細胞信号音

リアルな光景やにおいなどを感じさせるために必須の技術。その一方で「人体に悪影響がある」との意見もあり、ゲーム業界では全面的に自主規制を行っている。
「プラネットイントルーダー」はインディーズゲームのため業界の自主規制を無視してこの技術を使用している。(違法ではない)
しかし「視覚によって出力している訳ではない」事から視力に問題がある人でも健常者と同じ視界で楽しめる、と言う利点もある。

リザルト:リターン

FPS寄りのSFテーマのVRMO。
最強装備をガチャ課金装備で配る、今日で言うソーシャルゲーム的なゲームバランスのゲーム。
ただ、どうやら初期はそうではなかったらしく、今のプロデューサーに代わってからの方針のようである。*4
今のプロデューサー、通称「ゴリラP」は正木と確執があり、そのため「プラネットイントルーダー」を目の敵にしていると噂されている。
少なくとも正木は「ゲームで遊ばず課金してゲーム内最前線の装備を手に入れるのって、何が楽しいんですか?」と考えるタイプである事から水と油なのは間違いなさそうである。


追記・修正は無意味に《祈り》スキルを使ってからお願いします。

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最終更新:2024年11月29日 02:23

*1 ご丁寧に上位スキルの習得方法が「他ゲーム経験のある人」からは割とスルーされやすい「チュートリアル施設に戻って対象キャラに話しかける」がトリガーだったりする

*2 攻略wiki等を考えても明らかに「書く」のではなく「読んで参考にする」層しか気付けない形になっていた

*3 突然出くわした瞬間物理的に回線切断して逃亡したと語っても他プレイヤーから一切非難の声が上がらない、街中に突然現れたら大パニックが発生して全員(昔からのプレイヤーはガチでビビって、新規プレイヤーは訳が分からないながらもノリで付いて行ったり「先輩達が逃げ出すのだから危険かも」と判断しての違いこそあるが)蜘蛛の子を散らすように逃げ出すレベル

*4 後に作中で無限わんデンがゲーム紹介案件を受けた際に初期に触っていた彼が「こうではなかった」と語るシーンがある