SCP-3422

登録日:2020/11/07 Sat 20:07:59
更新日:2025/03/02 Sun 11:15:04
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SCP-3422はシェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)である。
オブジェクトクラスはEuclid。


特別収容プロトコル

本オブジェクトはサイト-10の冷凍保管庫に保存され、常に保安職員2名の警護下に置かれている。
本オブジェクト殺害事件に関する調査はいかなる場合であっても行われない。
対象の異常効果が活性化するのを防ぐために、SCP-3422割当の全職員は定期的にクラスB記憶処理を行う。
SCP-3422殺人事件に関する全ての情報は公的記録から削除され、自動車事故死についてのカバーストーリーが流布され、
記憶を修正するため、殺人事件の知識を持つSCP-3422の近親者および友人にはクラスC記憶処理を施している。

……というわけだが、つまりSCP-3422は殺人事件の被害者であることは容易に察することができただろう。

ということで本題である。

概要

SCP-3422さんは2011/01/09に誰かによって自宅で射殺されたポール・ヘンダーソン(35歳)さん、より正確に言えばその遺体である。
ポール・ヘンダーソンさんの異常性質は、誰が殺したクックロb…じゃなくてポール・ヘンダーソンさんを殺した犯人を探そうとすると発現する。
これは証拠品を集める行為、目撃者の捜索、及び単に殺人事件について「誰が殺ったんだ…?」と思案する行為を含む。

この特性の発現時、SCP-3422は一時的に存在していた場所から喪失し、代わりに生きたSCP-3422……つまりポール・ヘンダーソンさんの生きたクローンが出現。
なおこの出現数は制限はなく、また出現範囲にすら制限がない。要は日本にポール・ヘンダーソンさんの死体を保管して、
ブラジルでポール・ヘンダーソンさんの殺人事件について『誰なんやろなあ』と思案してもそこにクローンが出現するわけである。
そしてそのポール・ヘンダーソンさんのクローンは、自分の殺人事件について犯人探しをしようとしたその人を追いかけ回す。
その間、ポール・ヘンダーソンさんのクローンは「いいんだよ」「放っておいてくれ」「もう終わったんだ」などと叫び続ける。

異常なクローンとはいえポール・ヘンダーソンさんのクローンの耐久性はオリジナルと一緒、
つまり普通に人間なので銃で撃ったり剣で斬ったりすれば殺すことは可能。
しかしいくら倒しても倒しても指数関数的に増大するため、いずれは追いつかれてしまう。
よく言われがちなことだが、生身の人間でも銃で止めるのは一苦労とされる。
まして指数関数的増大するんじゃどうしようもないよな……
ポール・ヘンダーソンさんに追いつかれ接触されるとその人は気を失う。
そして目覚めると殺人事件について、そしてポール・ヘンダーソンさんの遺体についての記憶を失う。
でもって対象が気絶するとポール・ヘンダーソンさんのクローンはすべて消えてしまう。

……とまあこれで異常性の説明は終了するのだが、ここで考えたいのはポール・ヘンダーソンさんのクローンの行動である。
そもそもポール・ヘンダーソンさんは殺人事件の被害者である。かつ、ポール・ヘンダーソンさんを殺害した人は判明していない。
にもかかわらず、ポール・ヘンダーソンさんは犯人を特定しようとした人を妨害しようとする。
またそのセリフも犯人を特定しようとすることを避けてほしいようにすら見える。

つまるところ、ポール・ヘンダーソンさんは自分を殺害した犯人を庇っているようにすら見えるわけである。
……どういうことなんだ?そして誰が殺ったんだ……ってうわぁ!?


















警告: この補遺の内容に関する知識はSCP-3422の活性化を引き起こす可能性が高いため、職員は読了後に提供された記憶処理薬を服用することが推奨されます。この補遺は監督者のいる状況でのみ閲覧が認められます。



















さて、財団は実は殺人事件について、誰がポール・ヘンダーソンさんを殺害したかを突き止めてしまっている。
というか、推理の余地がないのだ。なにしろその犯人はポール・ヘンダーソンさんを殺害したあと、自首しているからである。
その犯人こそポール・ヘンダーソンさんの弟、アラン・ヘンダーソンさんである。

しかしその記録は警察には残っていない。また、アラン・ヘンダーソンさんもまたこの記憶を今は保持しておらず、
自分が兄を殺害したことも忘れているし、兄が殺害されたことも自動車事故死のカバーストーリーの適用によって知らない。
なぜなら、財団が警察とアラン・ヘンダーソンさんに記憶処理と偽情報の植え付けを行ったからである。
なにしろ、アラン・ヘンダーソンさんが自首したその日にポール・ヘンダーソンさんの異常性が発現し、
警察署の周りをポール・ヘンダーソンさんのクローンが取り囲んでいたのを財団が通報を受けたのがこのオブジェクトの発見経緯だからである。

<インタビュー開始>

エージェント ジョーンズ: 何が起きたかを、あなた自身の言葉で正確に教えて頂けますか、ヘンダーソンさん? 記録のためです。

(ヘンダーソンが頷く。)

ヘンダーソン: 俺はあまり金回りが良くなかった。一度も羽振りが良かったことは無い。ポール… ポールはいつも俺を助けてくれた。多分、だから俺はああも金遣いが荒かったんだと思う — 兄貴ならヤバい事になったら普通に金を出してくれるだろうって。 (沈黙) 違う。違う、何もかも俺が悪かったんだ。

エージェント ジョーンズ: それで、あの夜も金銭問題で彼を訪ねたのですか?

ヘンダーソン: いや、その前の晩だ。またスッカラカンになって、兄貴の家に行った。いつも俺を気遣ってくれてたんだ。ガキの頃からずっと、俺をもめ事から庇ってくれた。でも兄貴は助けにはなれないと言った。自分もトラブルを抱えているから、今は助けてやれないんだって。泊まっていくなら歓迎するって言ったが、俺はただ家を飛び出した。まともに考える事ができなかった。
アラン・ヘンダーソンさんはまともな収入を得ていないにもかかわらず金遣いが荒い人であった。
そしてそんなアラン・ヘンダーソンさんを、ポール・ヘンダーソンさんはいつも助けていた。
どう見てもアラン・ヘンダーソンさんはダメなやつなのだが、兄としては弟を放ってはおけなかったんだろう。

しかしその晩はお金を貸すことができなかった。アラン・ヘンダーソンさんはパニックになり、翌日とんでもない行動に出る。

エージェント ジョーンズ: そして翌日の夜に戻ったのですね。

ヘンダーソン: ああ。銃を持ってな。 (沈黙) 誓って言う、俺はあれを使う気は無かった、ただ… 脅したかっただけだ、そうすれば兄貴は俺が欲しがってるものを渡すはずだと考えた。兄貴は手を上げた。俺たちは金庫に向かって歩いていって、それで、それで、もう分からない。何かが床に転がってたんだと思う、何だか知らないが、とにかく俺はそいつを踏ん付けて躓いた。そして指で… 引金を引いた。

アラン・ヘンダーソンさんは、銃を持ってあろうことか兄を脅迫する。
そして一緒に金庫まで行くのだが、その途中アラン・ヘンダーソンさんはコケた。
そしてコケた際に引き金を引いてしまった。

当然ポール・ヘンダーソンさんは致命傷を負う。

(沈黙)

ヘンダーソン: 兄貴は床に倒れてた。身体に穴が開いて、そこが血塗みれで、それが… それが身体中に広がってて俺はどうしていいか分からなかった。俺は、俺はもう… 頭が真っ白になってた。兄貴は俺を見上げた、でも全然怒ったりしてるようには見えなかった。口から血が溢れてたけど、怒ってなかった、兄貴はただ… 大丈夫って、そう言ったんだ。大丈夫だって。

(沈黙)

ヘンダーソン: そして、死んだ。

<インタビュー終了>

ポール・ヘンダーソンさんはいつも、弟アラン・ヘンダーソンさんが揉め事にあうと助けた。
そして、ポール・ヘンダーソンさんは今回も、弟を助けようとした。

結果弟は財団の介入により殺人事件の犯人ではなくなった。
記憶処理と偽情報の適用により、罪悪感を覚えることもなく、また犯人として追及されることもなくなった。

結果ポール・ヘンダーソンさん殺人事件の犯人は不在となった。














SCP-3422

A Culpritless Crime(犯人不在犯罪)








追記・修正は放っておかないでください。



SCP-3422 - A Culpritless Crime
by Tanhony
https://www.scp-wiki.net/scp-3422
http://ja.scp-wiki.net/scp-3422(翻訳)
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最終更新:2025年03月02日 11:15