通天教主

登録日:2020/12/31 Thu 11:00:00
更新日:2024/04/03 Wed 16:21:09
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通天教主とは、中国の民間説話を基にした小説「封神演義」の登場人物。
縁の深い霊宝天尊、および通天教主の率いる截教(せっきょう)についても記述する。




【概要】

「封神演義」における仙界を形成する二大宗派の一角、截教(せっきょう)の教主。
天地開闢の折から存在していた上古の大仙で、「混元大羅金仙」という最高ランクの仙人の一人。
鴻鈞老祖(混沌氏)の弟子となってタオを学び成仙を遂げた。太上老君元始天尊は鴻鈞老祖門下の兄弟弟子である。
なお、通天教主は截教を、元始天尊は対応する闡教(せんきょう)を組織したが、もう一人の太上老君はあまりの厳しさからか、ほとんど弟子はいない。
両教の特徴としては闡教は弟子入りの審査が厳しく、截教は弟子の審査が緩いためか仙骨が無く素質がないものも仙人と名乗れるのが特徴となっている。そのせいか数は多いが質は低く、闡教の崑崙十二大師に匹敵するものは少ない。
(ただし実力者がいないのではない。後述)


普段は東海にある「金鰲島(きんごうとう)」の「碧游宮(へきゆうぐう)」に居して道場を開き、截教門下の仙人・道士を導いている。
所有する宝貝は「青萍剣(せいへいけん)」「紫電鎚」など。「奎牛(けいぎゅう)」という霊獣に乗る。
またちょっとした経緯から「誅仙四宝剣」というモノも持っている。
しかし「封神演義」の仙界大戦にて、多くの弟子たちを殺され、教団を壊滅させられてしまった。

性格は弟子思いで、天命も理解した人格者である。
初登場時点では、封神榜成立経緯を語って弟子たちを抑制し、言うことを聞かない弟子たちには叱責を飛ばした。

しかし、戦争が起きてからの流れとは言え弟子たちの憤慨の念を抑えきることはできず、そもそも闡教が截教を「左道傍門」と蔑視していた事実が截教門徒にも知れ渡っていたことで、両者の関係は最初から悪かった。
その上戦争の行きがかりで截教徒に死者が大勢出たことで、通天教主も戦線に巻き込まれることとなる。
さらに誅仙陣と万仙陣では太上老君から酷い罵倒を散々に浴びせられ、通天教主も闡教への怒りに取り込まれ、話し合いでの解決は不可能となった。
(一方で元始天尊と太上老君の罵倒や蔑視もますます激しくなっていき、終盤にはほとんど差別的なほど)

弟子たちは「師匠への侮辱に怒る」という場面が多く、慕われていたことは間違いないが、謹慎命令には従わない場面も多々見られた。


【作中の活躍】

「封神演義」の舞台は殷朝末期。
三皇五帝の時代、天界、仙界、人界と互いの境界を侵さず平和な時代を気付いていた。
しかし、殷朝末期末期には仙界では修行不足の仙人、人間でありながら仙術を会得している者が増えて人界と仙界の境界線が曖昧になり秩序が乱れていた。
そこで天界から仙界に天命が下り新たに神界を作り、そうした者たちを一度殺し神に封じようというのだ。
崑崙十二大仙は天帝(昊天上帝)から臣下になるのが約束されている身であり仙界としてはその約定を破るわけにはいかない。

また仙界では、闡教の教主・元始天尊門下の崑崙十二大仙が更に高位の神仙となる為の千五百年に一度の逃れられぬ劫として、「殺業」が問題となっていた。
闡教は本来克服するべき三尸*1を断ち切ることができず、千五百年にわたり殺業の命数が溜まりに溜まっている。その業を満たさねばならない。

教主達は天界からの天命、崑崙十二大仙の「殺業」問題を解決する為に人界の易姓革命を利用することにした。
時の王朝は。これが滅び、戦争の末にの王朝が代われば大規模な戦いが起こり大量の死者が出る。
計画は崑崙十二大仙の「殺業」を果たした上で戦争に乗じて神に封じられるべき者達365人を殺そうというものだ。


ここに、闡教の元始天尊、截教の通天教主、闡教の太上老君が連名で、「封神榜」に署名した。
殷朝(成湯、商)が滅亡し、周が興隆するこの時に当たって、また神仙も殺されるであろうが、截闡二教の門下、および散仙(両教に属さない仙人)、そして戦死する将軍たちを「封神榜」に記録して留め、その者たちの魂を神に封じて、諸々の神々として存続させよう、と。
その実行役は、元始天尊門下の姜子牙に決まった。



通天教主はことの成り行き上、截教門下の仙人・道士たちの多くが封神榜に記録されると知っており、それゆえ一門の弟子たちに布告し、警告を発していた。
「封神榜に乗せられたくなければ、すべからく謹慎しておくべきである」「洞門をきつく閉ざし、静かに黄庭経三巻を呼んでおれよ」と。

しかしいざ戦乱が始まり、同門の学友たちが殺されていく中で、截教には不満の声が高まっていくのは避けられなかった。
さらに截教は単純に数が多かったうえ、截教出身者で殷朝に仕えている人物が大勢いたことで、彼らが昔の縁故を頼って截教に応援を求める事例が多発(その典型例こそが太師聞仲である)。
結果として多くの截教門下が、周とそれを支援する闡教門下に殺されていくことになった。

対する闡教側ももともと截教を軽蔑していたため、その言動が戦争という場で露骨となり、ますます両教の関係が悪化する。
十天君のひとり趙天君を捕まえると殺すのではなく旗竿に縛り付けて晒し者にし、十天君が全滅してから殺したり、倒した余元を縄で縛った上に鉄の箱に閉じ込めて海に流したりと、ただ殺業を満たすと言うだけではない行動も見せた*2


とどめとなったのが、広成子の挑発である。
闡教の大仙である広成子が、周軍を苦しめる截教の大仙女である火霊聖母を撃ち殺した後、彼女の宝貝である金霞冠の返却と事情の説明に碧游宮に訪れた。
通天教主は納得したのだが、弟子達はその行為を挑発と受け取って広成子を殺害しようとする。その場は通天教主が収め事なきを得たが、積み重なっていた截教の不満が頂点に達した。

截教の一番弟子・多宝道人(火霊聖母の師父でもあった)は通天教主に、闡教たちが截教を「左道傍門」「禽獣の輩」と蔑視していることをぶち上げ、全面戦争を呼びかけるなど截教門下の憤慨の念はもはや収められず、闡教との戦いを決意。
殷と周のあいだにある「五関一城」の一つ「界牌関(かいはいかん)」に「誅仙陣」を敷いて、元始天尊・太上老君と交戦するが、
元始天尊は太上老君に加えて、インドの准提道人・接引道人も引き連れて連携して誅仙陣を破り、さらに太上老君は扁拐で、准提道人は加持杵で、それぞれ通天教主を殴りつけた。

組織も自身も大いに痛めつけられた通天教主は、いったん金鰲島に引き上げたが、今度は「六魂幡」という宝貝を作り、老子、元始天尊、接引道人、准提道人、姫発、姜子牙の六人をまとめて打破する計画を練った。

そして隣潼関(りんとうかん)を前にして「万仙陣」を敷き、「六魂幡」を切り札として截闡の最終決戦に挑んだが、
肝心の六魂幡を授けた「長耳定光仙」が、土壇場で截教を裏切って闡教側に逃げてしまったため、逆転の目が亡くなってしまう。
(戦闘後に鹵獲された六魂幡では四教主を殺傷できなかったので逆転は不可能かと思われる)
さらに截教の門弟たちは大勢が殺され、わずかな生き残りも捕虜となり、截教側として生き残ることができたのは無当聖母以下、ごくわずかでしかなかった。

敗れて落ち延びた通天教主は屈辱と憤怒、そして弟子たちの無念を抑えられないでいたが、そこに老師である鴻鈞老祖が出現。
鴻鈞老祖は「封神榜」に同意し署名したにもかかわらず弟子の讒言を真に受け「万仙陣」を敷いた通天教主を叱責し、三人に赤い丸薬を飲ませた。
この丸薬は毒であり、再び三人が直接争えばたちまち毒効を発揮して命を奪うことを告げたうえで、元始天尊と太上老君にはそれぞれの洞府で修行の再開を命じ、通天教主は鴻鈞老祖の紫霄宮(ししょうぐう)にて謹慎せよと命じた。


封神演義における通天教主の活動はここで終わる。
これにより周の東征を阻んでいた截教門下の妨害がなくなり、周軍に所属していない闡教の仙人達も出番を終えることになる。


【能力】

最終的には袋叩きにされた挙句に敗れたが、截教の主というだけあり、やはり最高位の仙人である。
修行を積み重ねたその肉体は「万劫(ばんごう)不壊(ふえ)」すなわちいかなる年月が経とうと壊れもせず傷つきもしない完全なる不老不死であり、その法力も地水火風の四元素を自在に操り、世界の境界をも変えるという。

保有する宝貝も質・量ともに極めて高い。
本人が使用したものとしては「誅仙四宝剣」「青萍剣」「漁鼓」「紫電鎚」「穿心鎖」などがあり、
その他にも多くの宝貝を保有し、請求によって弟子たちに分配することがある。
また「六魂幡」に至っては、誅仙陣で敗れてから突貫で作り出している。
なお「六魂幡」は「長耳定光仙」が投降した後に接引道人の提案で武王と姜子牙の名前を外して使用されたが呪い殺されるはずの
元始天尊、太上老君、接引道人、準提道人は効果が無い、万仙陣で老子に放った「紫電鎚」はあっさり動きを止められる、「青萍剣」は準提道人の「七宝妙樹」に破壊されるなど他の教主と比べると格下感が強い。

一方で、封印された余元を解放するなど、仙術を見せる場面もある。

  • 誅仙四宝剣
誅仙剣・戮仙剣・陷仙剣・絶仙剣の四本の宝剣の総称。誅仙陣と組み合わせて使用する。
かつて鴻鈞老祖が所有し、須弥山(しゅみせん)に鎮座していたものだが、通天教主に譲られた。
その材質は銅でも鉄でも鋼でもなく、いかなる年月が経とうとも痛まず、水にも火にも変化しない。
いかなる相手も切断でき、通天教主を含む「大羅神仙」でも喰らえば命はないという。

使用する場合は「誅仙陣」として利用する。この誅仙陣は一種の符陣(道術が仕込まれた陣地)で、通天教主に挑もうとする侵入者はたちまち飛びだす四宝剣に断ち切られる。
この剣を制圧するには通天教主と同等の仙人が四人必要になる。元始天尊は自身と太上老君、それにインドの接引道人・准提道人を動員して制圧した。

誅仙陣の突破後は元始天尊が所有。
なお元始天尊らは「そんな誅・戮・陷・絶など、悪意を込めた名前の魔剣を使うなんて」と通天教主を非難したが、それが自分たちの手元に来ると嬉々として使った
多分こういう描写が安能版の元ネタである

  • 万仙大陣
截教はもともと「万仙来朝」といわれるほど門徒が多い。その門徒を総動員した符陣が「万仙大陣」で、通天教主の独創とされる。
万仙陣の内部には「太極陣」「両儀陣」「四象陣」の三つの符陣があり、万仙陣に参加した截教門徒が法力を集中することで符陣の力も増す。截教門徒は数が多いため、まさに「数は力」を体現した大符陣である。
対する元始天尊たちも闡教門下を投入し、截教門下を片っ端から皆殺しにして数を減らしてしまった。
なお、万仙陣には何千人という截教派の道士が集結するが、実際に法力を集中するのは全員ではなく、「九曜星官」「二十八星宿」「三十六天罡」「七十二地煞」を初めとする150人ぐらい。それでも多いが。


【霊宝天尊】

通天教主は本来、封神演義における登場人物である。
その名前は道教の古典籍には見られず、むしろ西遊記の成立過程で現れた「通天大聖」という聖者から名前を流用したとも言われている。

しかし、明代における封神演義の流行が道教に影響をもたらし、通天教主も関与するに至った。

封神演義の通天教主は、太上老君や元始天尊と並ぶ大仙となっている。
このことから、元から道教で太上老君・元始天尊と並んで尊崇されていた「霊宝天尊」が、通天教主と同一視されるようになったのである
比較的新しい道観(道教寺院)では、それこそ霊宝天尊が通天教主と呼ばれたり、はたまた鴻鈞老祖の像も祀られることもある。


その霊宝天尊とは、道教の「三清」の一角で第二位とされる、最高位の大仙。
正式には「太上玄皇高聖元気所成霊宝天尊上清妙有上帝玉晨大道君」。霊宝派では「太上玉晨玄皇大道君」。
略して「上清大帝」「太上道君」「玉晨道君」などとも呼ばれる。

霊宝天尊は道教にて「タオ」の化身とされ、元始天尊の弟子であり老子に道を教えた師でもある。
道教はその文字の通り、万物の根本法則である「タオ」を理解することこそが目的である。
そのため、タオそのものである霊宝天尊は道教において最も重要な存在といっても過言ではない。
ただ、同じく「真理の化身」とされるインド・ヒンドゥー教ブラフマーが、あまりインドでは人気がない(地味な扱いを受けている)ように、霊宝天尊もどちらかというと地味な認識らしい。
単独の逸話がほとんどなく師の元始天尊に付き従って行動する。

道観(道教寺院)の「三清殿」では、霊宝天尊の塑像は右位にあり、手には如意を持っていることが多い。



【安能版】

「金銭をことづけると減るが、言葉をことづけると枝葉がついて増えるものじゃ。噂を本気にするでない」

安能務師版の封神演義は、「(安能流)中華帝国論の布石」として扱われる。
そのため「権力の悪辣さ・理不尽さ」を敵味方双方の立場から余すことなく描かれており、場合によってはへこみかねない。

そんな安能版における通天教主および截教は「権力の被害者」という面が強く描かれる。


原作古典と同様、商周易姓革命に巻き込まれることを良しとせず、截教一門には洞府で自重せよと説いている。
しかし、天界からの天命が強調された原作古典に対して、「闡教側から妖怪仙人への強い人種差別」*3を強調したうえで、元始天尊たちが「目障りな截教を滅ぼすために、戦争を利用してわざと截教を挑発し、反撃してきたところを『天命に逆らった』として皆殺しにする」という計画を練っていたことと、その悪辣さに気付くのが遅れてしまったことにより、後手に回ってしまう。
また申公豹が「通天教主には残念ながら、毒を食らわば皿まで、という悪さがない」と分析したように、一切の手段を択ばず相手を皆殺しにするような決意を固められなかったのも逆風となる。

結果、悪逆非道なまでの闡教徒の謀略を防ぐこともいなすことも出来ず、さらに火霊聖母を惨殺されて激昂する門弟たちの勢いも止められず、ついには戦いを決意するが、誅仙陣や万仙陣で敗北し、弟子たちの大半が惨殺、生き残りも多くが捕えられ、失意のまま敗北する。


しかし権謀術数には疎い一方、個人としては立派な人格者である点が強調されており、むしろ悪辣この上ない元始天尊や冷酷無残な燃燈道人、偽善者ぶって無責任な武王姫発よりもずっと好感を抱ける老師となっている。


また、権力をいじらないゆえか、一介の仙人としての実力は元始天尊よりもさらに高い
実力を示す場面もあり、万仙陣の戦いでは、崑崙十二大仙でも最強を誇った広成子の番天印を指一本向けるだけで無力化し、さらに元始天尊と燃燈道人が投げつけた宝貝「如意玉」「定海珠」をもあっさり両手でつかみ取る

そして、元始天尊の法力の大半を注いで作られた如意玉と、太上老君の居城・玄都の鎮守である定海珠を持ったまま、「タオとの完全な合一」を遂げる「営鎮抱一」という究極奥義を発動させる。

+ 「営鎮抱一」とは!
もともと道教とは、タオを学んで体得することが教えである。

その「タオ」とは、「万物が存在する法則」といっていい。
あらゆる物質・現象・概念は、何かしらの「法則」によって存在している。
石ころは「硬くなる法則」「白くなる法則」「小さくなる法則」に拠って小さく白く硬い石となり、巨岩は「大きくなる法則」によって大きくなる。
繁栄する国家は「繁栄する法則」によって栄え、滅びる国は「滅亡する法則」によって滅亡する。
聖者は「聖者となる法則」によって尊く、囚人は「囚人となる法則」によって捕えられ、知者は「知者となる法則」によって賢く、狂人は「狂人となる法則」によって狂う。
地球はこの地上で最も大きい存在だが、その地球も自らを構成する「法則」によって大きく、豊かであれる。宇宙は広大無辺だが、それも「宇宙が広大である法則」によって大きくなっている。
もし地球や宇宙が「破裂する法則」に当てはまってしまえば、地球も宇宙も、たちまち破裂する。

逆に、いかなる現象もタオによれば起こしうる。
老いることも病むことも死ぬこともなく、火にも焼かれず水にも溺れず剣にも斬られない人間はいない。
しかしそれは「老病死を克服する方法を知らない」だけのことである。「老病死を克服する法則」を理解し、それを実行すれば、たちまちその人は不老不死不病を得る。
かつて人は、空を飛ぶ方法を知らなかったから、飛べなかった。しかしライト兄弟は人が飛ぶに必要な法則を見出したために飛べたのである。


タオはあらゆるものを構成し、あらゆるところに存在し、あらゆるものを生み出す。
人間のことはもとより、神々や鬼神、悪魔や妖怪も、あらゆるものがタオによって存在し、あらゆる行動がタオによって成り立つ。
しかもタオはそれ自体には意思はない。自らが選択し行動すると、タオが働いて結果をもたらす。


ところで仙人はこのタオを学び、死をも克服して完全な存在になろうとする者たちである。
その究極の目的は、やはり自分自身がタオそのものになることだ。いわば「梵我一如」の境地、いや、我を消して梵と一体になる「梵一如」というべきか。

その「タオそのものになる秘術」が、この「営鎮抱一」である。


肉体を超克してタオと一つになるとは、どういうことか。それはすなわち、肉体と魂魄が完全に「無」となることである。つまり、目に見える肉体が消え、魂も消えるのだ。
というとまるでを迎えるかのようだが、道教において「無」とは「ゼロ」のことではない

むしろその逆、肉体も魂(精神)も魄(生命エネルギー)も全てを以って「法則」と同化することで、いかなる攻撃にも害されず、地球や宇宙が崩壊してもびくともせず、いつどこにでも存在し、しかもどこにも存在しない状態となるのだ。

そもそも「営鎮抱一」の、「営」とは肉体を営むことで「動」「魂」「陽」を意味し、「鎮」とは制止することで「静」「魄」「陰」を意味する。
その営鎮の二つを「抱いて一にする」とは、使用者の全存在を究極の「一」に統一し、さらに宇宙の法則と合一させることである
自分自身を、精神も肉体も生命エネルギーも、髪の毛一本すら余さず「一」にまとめ、その状態で世界と融合する。

この術を果たした者は、無にして一なる、完全に永遠の存在となるのだ

(おそらく、フジリュー版封神演義で妲己が行った「地球との合一」がこれに近い。もっとも、あっちの妲己は地球が滅べば死んでしまうだろうが、こっちの通天教主は地球はもちろん宇宙が爆発しても存在する点が異なる。
 またついでに、スターウォーズで見られる「肉体を消滅させてフォースと一つになる」霊体化の秘術も、おそらくこれのようなものと思われる)

この秘術は「タオの化身である霊宝天尊が、通天教主と同視されている」ことに着想を得たものだろう。


ところでこの営鎮抱一は、ただそれだけなら通天教主が永遠の存在となるだけで、元始天尊への攻撃手段にはならない。
しかし元始天尊は真っ青になって恐慌をきたした。それは、先刻元始天尊と燃燈道人が投げつけた如意玉と定海珠を、通天教主が「持ったまま」だからだ。

まず定海珠は太上老君の住む玄都を安定させている秘宝で、これが消滅すれば玄都の霊脈は乱れ、最悪崩壊しかねない
そして如意玉は、元始天尊が法力の大半を注いで作り出した、宝貝というよりも「半身」に等しいものである。それが「無」に帰してしまえば、元始天尊は如意玉に注ぎ込んだ法力をごっそり失い、著しく弱体化してしまう

さりとて、外部からの仙術で、営鎮抱一を止めることはできない。なぜなら、全ての仙術は営鎮抱一に近づくために研究されている。営鎮抱一を乱すとか止めるとかは最初から考えに入れられていない。

それで元始天尊は青ざめ、さりとて打つ手がなく恐慌したのだが、そこに突如として太上老君が、鴻鈞老祖を伴って駆けつける。
いかな鴻鈞老祖でも仙術で営鎮抱一を止めることはできないが、彼は通天教主の師匠である。その彼が「やめなさい!」と叫んでは、通天教主も術を停止せざるを得なかった。

その後は、長耳仙の裏切りを確認して嘆息しつつも、残った弟子たちを率いて碧游宮に戻った。



【截教】

通天教主を長とする教団・宗派。元始天尊の率いる闡教、インドの仏教と並んで「三教」と呼ばれる。

本山は金鰲島(きんごうとう)紫芝(しし)(がい)にある碧游宮(へきゆうぐう)

闡教と異なり、入門を願うものは誰でも迎え入れるため、門下の数は三教のなかでももっとも多く、集結した際には「万仙来朝」と謳われる。
門下には禽獣・玉石・樹木の類が、修練によってタオを学んで変化の術を学んだもの、いわゆる妖怪上がりの仙人が大勢いる。
もちろん、人間出身の仙人・道士も数多い。
欠点として数の多さから仙人の審査が曖昧で修行の浅い者も自由に仙人と名乗れるのが特徴となっており、それが全体的なレベルの低下に繋がっている。
作中で簡単に死なないはずの截教の仙人が闡教の道士に殺されることが多いのはその為。

とはいえ実力者もかなり多く、何人かは崑崙十二大仙を圧倒したり、ごぼう抜きしたりもしている。
十二大仙が三人で包囲攻撃しても渡り合った金霊聖母、十二大仙を次々昏倒させた趙公明、そして十二大仙を一網打尽にした三霄娘娘などが特に強力。
未熟だったとはいえ竜王子も殺せる哪吒をボコボコにした石磯娘々、楊戩が手を出せなかった十天君など、脇役にも実力者は多い。

また作中での女性の仙人(仙女)は截教徒にしかいない。
(竜吉公主も闡教徒ではない。なお妲己三姉妹は截教徒ではない)


対する闡教側からは簡単に仙人と名乗れる気風や実力不足者が多いこと、そして妖怪仙人が多いことから嫌われる要因となっている。
戦争終盤には「あんなどうせ修行しても無駄な連中をよくぞかき集めやがって」とまで発言している。
それもあってか闡教側で人間以外の出身とされているのは鶴の化身である白鶴童子だけである。
(火の精である陸圧道人は、じつは闡教徒ではない。というか本人曰く仙人ではない)

通天教主は本来「封神榜」の制定者の一人であり、したがって弟子たちの多くが封神榜に記載されたことや、商周の戦争に巻き込まれる危険などを、よく知っていた。そのため、弟子たちには何度もブレーキを掛けようとしている。
しかし、截教出身者である聞仲の要請による巻き込まれ、闡教出身者だが姜子牙への敵意で暴走する申公豹の挑発、そして筆頭弟子である多宝道人を初めとする弟子たちの憤怒を抑えきれないまま、ついには通天教主まで戦争に引き込まれ、教団ごと壊滅する結果となった。



【截教門徒】

◆主要幹部

  • 多宝道人
通天教主の一番弟子
彼自身は火霊聖母を弟子に取っており、彼女が闡教の幹部・広成子に殺されたことで激怒、通天教主に戦いを強要した。
立ち位置としては元始天尊の南極仙爺や太上老君の玄都大法師に相当する。
師父から四宝剣を授かって誅仙陣の設営に携わる。
戦闘中には、弟子の仇である広成子と交戦するが、怨敵の操る番天印を食らって死にはしなかったが打ち倒され、そのまま太上老君に捕縛されてしまった。
なお、のちの多宝如来という設定である。

安能版では申公豹と親交があったが、申公豹との問答で大喧嘩に発展した。
また闡教側には捕えられておらず、最後まで通天教主と行動を共にし、戦後も彼に従って碧遊宮に引き上げている。


  • 金霊聖母
通天教主の直弟子。また彼女の弟子には聞仲と余元がいた。
通天教主門下でも飛びぬけた実力者で、仙女たちの中でも別格の一人。その実力は闡教の十二仙にも勝る。
万仙陣の戦いでは、序盤に昊天上帝(天帝・玉帝)と瑶池金母の娘である竜吉公主とその夫・洪錦打ち倒す
さらに戦争終盤には、文殊広法天尊・普賢真人・慈航道人の三人に包囲されながらも奮闘*4
「七香車」に乗って「龍虎玉如意」を振り回し、「四象塔」「飛金剣」を駆使して三対一の不利を跳ね除けるほどの戦いぶりを見せるが、
その戦いのさなかに燃燈道人が定海珠で不意打ちを掛け、ついに戦死する。


  • 無当聖母
通天教主の直弟子。
万仙陣の戦いをかろうじて生き延び、截教門下の幹部で数少ない生き残り・まとめ役となった。

実は「驪山老母」という、中国界では有名な仙女が原型らしい。さらに「黎山聖母」という仙女も関連もあるらしく、これらの関連から「截教の元ネタでは」という分析もあるのだとか。

安能版では「武当聖母」という名前で登場。


  • 亀霊聖母
通天教主の直弟子。名前の通り、黒い亀が仙女となったもの。
三皇五帝の一角、炎帝の時代に得道した霊亀。一万年前、創頡(そうけつ)氏が文字を作った際に、彼女の甲羅を借りて文字を刻んだという。

通天教主直弟子というだけあってしっかりと修行を積み、法力も強いのだが、なにぶん直情気質の激情家のため、仲間たちが大勢殺されていく状況に激怒。
広成子が火霊聖母殺害の件で碧游宮に参拝した際には彼を殺そうとしたが、広成子が投げつけた番天印におそれて亀の原型を晒されてしまっている。
その場では通天教主の叱責を受けて謹慎を命じられたが、誅仙陣・万仙陣では再登場。
四象陣にて闡教十二仙・惧留孫に挑むが、敗れて捕縛され、またも原型を顕わにされる。
本来はそのままインドに拉致されるはずだったが、運び役だった白蓮童子が誤って大量の蚊が封印されていた箱を開放してしまい、亀霊聖母はその虫どもに食い殺されてしまう。


安能版では「四象八卦衣」「乾坤日月珠」という、いずれも碧遊宮の秘宝といわれる宝貝を着込み、番天印も襲えないほどの実力を見せるが、
元始天尊と接引道人がそれぞれの切り札宝貝を投げて乾坤日月珠を抑え込み、その隙に準提道人が奇襲を仕掛けるといういつものやり口で大亀に戻される。

それでも四象陣の中央に戻り、四象陣を起動させる四つの霊石に亀の四肢を置くことで完璧な籠城体制を取ったが、
そこに準提道人が封印した箱から大量の虻蚊を放ち、四象陣を埋め尽くす勢いで充満した虻蚊に全身の肉を食い千切られ、骨と甲羅だけになってしまった。
しかし万年を生きた亀霊聖母の死体は極上の臭いを発していたため虻蚊が戻らず、しかもそのまま四象陣は残り続けてしまう。

始末に困った闡教側は四象陣をとりあえず残し、その後万仙陣に集まっていた截教門徒たちを襲撃して、殺し損ねた分は四象陣に追い込んで逃げられなくしたあと、通天教主らを倒してから皆殺しにしようと謀ったが、
そのさなかに飛び込んだ申公豹が雷公鞭の一撃で四象陣を外から破り、四象陣に追い込まれていた道士たちを開放して逃がした。

しかしこの雷公鞭の衝撃で虻蚊たちが亀霊聖母の甲羅から離れ、しかも四象陣も敗れたため、中国全土に虻蚊が放たれ、大繁殖する結果を招いてしまった。


◆随侍七仙

万仙陣に登場した、通天教主の弟子たち。上記の多宝道人ら四幹部には劣るが、やはり実力者ぞろい。
  • 烏雲仙(ううんせん)
原型は金須鰲魚(巨大な海亀)。七仙でも最高位の法力を持ち、筆頭とされる。
宝貝「混元錘」を以って「太極陣」で挑んだが、広成子と赤精子に敗れ、原型を晒されたうえで西方に拉致された。

  • 金箍仙(きんこせん)
本名は馬遂。孫悟空が頭に嵌められた金箍と同じものを持っており、相手の頭に投げつけ、締め付けて苦しませることができる。
金箍は複数持っている模様。
闡教十二大仙では外せないほど強力で、元始天尊がやっと外せたほど。
截教幹部として最後まで生き残り、戦後も通天教主に従った。

  • 毘蘆(ひろ)(せん)
目立った活躍はない。後の毘盧遮那仏
無当聖母や金箍仙とともに数少ない截教幹部の生き残りとなる。

  • 虬首仙(きゅうしゅせん)
原型は青毛の獅子。
太極陣で戦ったが、文殊広法天尊に敗れ、原型を暴かれてその乗騎にされてしまう。
文殊広法天尊とはのちの文殊菩薩であり、その乗騎が青毛獅子であることに由来する。

  • 霊牙仙
原型は白象。
両儀陣で戦ったが、普賢真人に敗れ、原型を暴かれてその乗騎にされてしまう。
こちらも、普賢真人=普賢菩薩であり、その乗騎が白い象であることから。

  • 金光仙
原型は金毛犼(オオカミのような獣)。
四象陣にて慈航道人に敗れ、原型を晒されてその乗騎にされる。
文殊と普賢はともかく、慈航って? というと、それは観音菩薩。しかし観音菩薩の乗騎といってもあまりピンとこない。
ちなみに十天君の紅一点、金光聖母とは関係がない。

  • 長耳定光仙
通天教主から切り札の六魂幡を預かっておきながら、闡教の格差に慄いて裏切ったとんでもないやつ。
インドに逃げてからは定光歓喜仏になったとか。


◆その他の門下

  • 火霊聖母
多宝道人の弟子。彼女にも胡雷という弟子がいる。
胡雷が殺されたことから戦いに参加し、金霞冠という姿を消す冠で姜子牙を半殺しにしたが、広成子に殺される。
彼女の死が、聞仲戦と並ぶ截闡の殺し合いのきっかけとなる。

安能版では、多宝道人の弟子ではなく通天教主の直弟子にして主要幹部の一員となり、亀霊聖母や金霊聖母や武当聖母とは友人。
また広成子の悪辣さが増しており、弟子・胡雷の仇である姜子牙を討ち取ろうと猛追を掛ける火霊聖母の前に現れ制止することまでは原作通りだが、
いちおう矛を収めた彼女に「話が分かるね火霊。しかしオレは話が分からないんだ」と不意打ちで番天印を投げつけ撲殺するという外道殺法を取った。
そのうえ、碧游宮に行けばどうなるかを計算のうえでわざと挑発に行くなど、闡教の悪辣さが分かりやすくなっている。


  • 「九曜星官」「二十八星宿」「三十六天罡」「七十二地煞」
万仙陣で戦死した道士たち。名前のみの登場。


  • 聞仲
金霊聖母の元弟子。吉立、余慶という弟子がいる。
墨麒麟に乗り、雌雄一対の蛟龍金鞭を使う。
殷の太師として忠誠を誓い、軍部の元帥として周の討伐に赴くが、周軍に所属する闡教道士に対抗するために古巣の截教に助けを求めたことが、截教敗戦のきっかけとなる。
ただ、下界の地位は高いが一人の道士としては能力はあまり高くなく、仙界の序列も低い。
安能版では乗騎は黒麒麟となっている。……ただ中国の資料でもたまに黒麒麟表記があったりする。

  • 九竜島四聖
王魔、楊森、高友乾、李興覇の四名。九竜島に在住。
王魔は狴犴(へいかん)(巨大な犬)に乗り開天珠を、楊森は狻猊(さんげい)(獅子)に乗り辟地珠、高友乾は花斑豹(かはんひょう)(花模様の豹)に乗り混元珠、李興覇は狰狞(そうどう)(一角と五尾の豹)に乗り拌黄珠を、それぞれ用いる。

  • 魔家四将
青雲剣の使い手・魔礼青、碧玉琵琶の魔礼海、混元傘の魔礼紅、花狐貂を操る魔礼寿、の四兄弟。
強力な宝貝で武装するうえ、銅骨鉄身の秘術により鋼のような肉体も持つ。しかも身長は二丈四尺=約7m弱という怪物。
しかしあまりの重装備と巨体故に馬に乗れず、もっぱら走って移動する。
普段は殷朝に仕え、佳夢関の鎮守をしている。その都合上、聞仲は上司に当たる。

  • 菡芝仙(かんしせん)
風袋という、その名の通り風を操る宝貝を持つ。女性
聞仲とは親しい友人同士。
安能版ではなんと男口調の仙女となっている。

  • 彩雲仙子
戮目珠という、目つぶし用の宝珠を操る。彼女も仙女で、菡芝仙とは友人。

  • 十天君
天絶陣の秦完、地烈陣の趙江、風吼陣の董全、寒氷陣の袁角、金光陣の金光聖母、化血陣の孫良、烈焔陣の白礼、落魂陣の姚賓、紅水陣の王奕、紅砂陣の張紹、の十人の道士。
テキストによって王奕が王変、姚賓が姚斌という場合もある。

ちなみにフジリュー版では金鰲島の運営幹部となっているが、原作古典および安能版では平道士のサークルのようなものであり、截教の幹部ではない。
しかしそれだけにというか、フジリュー版とは違って聞仲・十天君・趙公明一家は皆仲がいい。

  • 趙公明
峨嵋山の羅浮洞に在住。
三皇時代から修行を続けてきた古参の実力派仙人。
黒い虎に乗り、鉄鞭を駆使し、さらに「縛竜索」「定海神珠」といった強力な宝貝を持つ。
殷の太師・聞仲とは友人であり、また闡教側の截教門徒への殺戮、そして金鰲十天君のひとり趙天君を生きたまま吊るして晒し者にするという闡教の悪辣な真似に怒り、出陣した。
闡教十二大仙を一網打尽にするほどの実力者で、押されていた截教の実力を示したが、ふらりとやって来た陸圧道人の呪詛によって暗殺される。
彼の弟子には陳九公、姚少司という二人がいるが、これといって活躍はない。

  • 三霄娘娘
雲霄・瓊霄・碧霄の三姉妹で、趙公明の妹。姉妹揃って三仙島に居住し、修行を積んでいた。
金蛟剪、混元金斗という強力な宝貝を所持し、その法力も極めて強かったが、師の教えに従い干渉しない方針だった。
特に長女・雲霄の道術修行は深く、多くの闡教門徒が果たせなかった三尸の厄を完全に克服し、燃灯道人も一目置いていた。
しかし兄の頼みで金蛟剪を貸さざるを得なくなり、さらに兄が呪殺されたことで彼女らまで戦争に巻き込まれる。
それでも、金蛟剪や混元金斗、さらにそれと組み合わせる九曲黄河陣を駆使して十二大仙を捕えたが、殺すこともできず引っ込みがつかなくなる。
最後は元始天尊自らが太上老君を連れて出陣し、彼女らを皆殺しにしてしまった。

安能版では「仙女というとすぐ美女というイメージがあるけど、本当の美貌の仙女というとこの三姉妹ぐらい」という記述がある。
というかあまり美貌がすぎると、男の道士はどうしても欲情するし道姑(女の道士)は意識しまくるしで、正直あまり入門してほしくないんだとか。
ただ三霄娘娘は姉妹なので僻みもなく、三人いるので比べあう修行にも身が入るため、例外のようになったのだとか。

フジリュー版では…詳しくはコチラを参照。

  • 石磯(せっき)娘娘
骷髅山の白骨洞に住む仙女。
哪吒がイタズラで使った弓矢が宝貝であったため、長距離を飛んだ矢が運悪く彼女の弟子に直撃し、殺害してしまう。
激怒した石磯はすぐさま哪吒に襲い掛かり、未熟だった哪吒を圧倒したが、そこに現れた太乙真人に殺害される。
保有する宝貝は、鉄柱も切り裂く「太阿剣」、黄巾力士を呼び寄せる鉢巻「八卦雲光帕」、投げて相手を縛り上げる布「八卦竜須帕」。また青鸞に騎乗する。

封神演義より以前、元代に民間の神々の記録をまとめた書物「三教搜神大全」に名前が見え、以前から存在していた神の模様。

  • 呂岳
四聖と同じく九竜島にて在住。金眼駝に乗る巨漢で三つ目の道士。
「疫病」を研究した道士で、「列瘟印」「瘟疫鐘」「形瘟幡」「止瘟剣」「瘟㾮傘」といったいずれも毒々しい宝貝を開発、ついには「瘟㾮陣」という符陣まで敷く。
弟子に周信、李奇、朱天麟、楊文輝の四名がおり、それぞれに「頭疼磬」「発躁幡」「昏迷剣」「散瘟鞭」というやはり毒系の宝貝を与えている。

  • 羅宣
火竜島に在住。赤烟駒という馬の霊獣に乗る。
「焰中仙」の名を持つ火炎使いで、法宝の照天印・五竜輪・万鴉壺・万里起雲烟・飛烟剣、とことごとくが炎系の武器。
友人には劉乾という道士がいて、こちらも焔使い。

  • 余元
金霊聖母の弟子で聞仲とは同門であり力のある仙人。蓬莱島に住み、「一気仙」という道号も持つ。
さらに彼の弟子には余化という人物がおり、最初は汜水関の武将だったが、黄飛虎を捕えようとしたところ哪吒に半殺しにされ、一度逃亡。
その後、余化は師父の余元から「化血神刀」を受け取り哪吒や雷震子を半殺しにした。
この「化血神刀」は毒が用いられており、その威力は玉鼎真人でも治癒できないほどのものだったが、楊戩に解毒剤を盗まれてしまい殺された。
弟子が殺された余元はその仇討ちと、さらに解毒剤を盗んだことに激怒して周軍に戦いを挑むが助っ人に来た懼留孫に敗れる。
しかし、周軍に彼を処刑できるものはおらず対応に困っているうちに逃亡に成功し、通天教主から新たな宝貝を借り懼留孫に再戦したが再び敗れるが、捕えても殺すことができず、陸圧道人の「斬仙飛刀」によってようやく死亡する。

  • 余徳
万仙陣に参戦した烏雲仙の弟子。毒痘を用いて周軍を壊滅寸前にしたが、油断したため解毒剤を擁戦に調達されてしまう。




フジリュー版


CV:真砂勝美(ゲーム版)/堀秀行(覇穹 封神演義)

ドラキュラ伯爵を思わせる中年男性として登場。多宝道人・金霊聖母たちが登場しないため、十天君が組織幹部となり、聞仲が直弟子となっている。
実は楊戩の実父だが、通天教主自身も妖怪出身なのか人間出身なのかは不明。
元始天尊と同等の力を持ち、聞仲も尊敬する実力者で、さらに弟子の千年狐(妲己)・趙公明・聞仲たちをスーパー宝貝をも使いこなすほどに鍛えた優秀な指導者でもあった。

50年前、楊戩が金鰲島を訪れた時点までは健康である。
しかしここ20年、聞仲が下界の北海反乱の鎮圧で手を取られているあいだに、妲己の「魅惑の術」によって廃人とされ、妲己の駒である王天君に操られる存在となり果ててしまう。
(なお通天教主の異変の真相は王天君のほかは十天君さえも知らず、また通天教主の病臥には十天君が緘口令を敷いたため、一般には十天君の合議で運営されているように見られていた。
 黒幕の妲己と金鰲島首脳部のほかでこれを知っていたのは元始天尊のみで、この通天教主の異変を察知した元始天尊は、ついに太公望を動かし封神計画を始めることになる。
 この時点で聞仲はいまだ北海反乱鎮圧に掛かりきり。むしろ聞仲が北海遠征に没頭して、金鰲島を訪れなくなったあいだに、妲己が通天教主を廃人化したらしい)

仙界大戦時点でも意識は戻らず、王天君に操られるまま息子・楊戩まで敵とみなして襲撃するが、楊戩が通天教主に対して「妖怪として、通天教主の息子として、それでも崑崙の仲間たちと戦う」と表明したことがわずかに残った心に響き、暴走を開始。
金鰲島内部を破壊しつつも、かろうじて楊戩を六魂幡で守りながら死亡、封神される。


封神計画の企画者の一人でもあり、かねてより(600年前?)金鰲島から人間界に降りて享楽の限りを尽くしていた妲己が、夏王朝の時代に「歴史の道標」と手を組んで大幅なパワーアップを遂げていくに至り、彼女たちの危険性に気付く。
そして200年前、妲己が金鰲島に属する多くの道士を「誘惑の術」で支配下に置いたことから、彼女の脅威と、彼女らがまだ金鰲側を狙い続けると悟り、まだ赤子の楊戩を崑崙側に預けていた。これは楊戩の身を崑崙に守ってもらうとともに、一つには「楊戩を差し出すことで冷戦状態だった崑崙との関係を修復し、いずれ来る妲己に対抗する」という意味があった。

しかし息子楊戩にとって「捨てられた」という疑念を抱かせる結果になっており、一度は楊戩から「父と見ない」と遠回しに告げられていた。
また、楊戩と交換するかたちで送られた王奕に対しては投獄・監禁するという無茶苦茶な行いをしている
これは「妖怪仙人が人間の王奕を襲いかねないため、成人するまでの措置」だったのだが、結果として王奕を狂わせたうえ、妲己に奪われるという最悪の結果になった。

なお聞仲は最終的に金鰲を含めた仙界消滅を決意するのだが、実は「金鰲も消す」と決めたのは通天教主の廃人化を目の当たりにしてから。
「金鰲島ごと動かして十天君も通天教主も前線に引っ張り出す」とは最初の時点で考えてはいたようだが*5、金鰲をも見限ったのは通天教主の廃人化が決定打であった模様。
また、廃人になってからも聞仲は「通天教主さま」と敬称付きで呼んでいる。

ただし実際の封神計画は、元始天尊と燃燈道人が王奕と接触した2000年前にさかのぼる。また太上老君は関わっていないながらも、王奕と接触したかのような描かれ方をしている。
結果として通天教主は、仲間と思っていた元始天尊に操られ、裏切られていたとも見れるが、この点の詳細は不明である。

太上老君を放り出して元始天尊とふたりで何か密談をしていた描写もあり、
両者が一体どんな目論見で一体どういう結果を狙い何を相談したのか?
いったい彼は内心どういう狙いで(本来封神計画の重大な関係者であるはずの)王奕をトレードしたのか?
といった部分はかなり不明瞭かつ不可解な点が多いため、ここらへんの前後関係や企みは当の通天教主自身の思考も含め誰の意図がどう作用したのかは定かになっていない。
いやむしろ各勢力の中で「通天教主個人のスタンスや最終目標」が最も不鮮明なまま作品が終わってしまったとも言える。
作中登場時は既に廃人化していたこともあり、人格の掘り下げと言う意味ではかなり割を食った重要人物であるとも言えよう。



【その他作品】

原作古典および安能版、そしてフジリュー版では「敵にはなったが悪人ではない」という描かれ方をしているが、
敵の大幹部ながら悪人ではないというのは分かりにくくて描きにくいためか、近年の作品(ゲームなど)ではやたら悪人属性をつけられることも多い。
この点はギリシャ神話のハデスに近いものを感じる。

  • コーエー版封神演義
安能版やフジリュー版とは似ても似つかないさわやか太公望が主人公のこのゲーム、通天教主は分かりやすい悪人として登場。
また截教や金鰲島は字が難しいためか、教団が九竜派という名称になっている。

  • 千年戦争アイギス
完全ヴィランとしか思えないすさまじい悪人ヅラ。どう見ても暴走している。






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 やたらに立項することははばかられるが、情報不足を克服するためにはやむをえない。
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最終更新:2024年04月03日 16:21

*1 体内に宿る三種類の害虫で、人間に欲望を起こさせる。

*2 前者は趙公明、後者は通天教主がそれぞれ「あまりにひどい」と憤慨している。

*3 原作古典でも妖怪出身の仙人・仙女をやたらと原型に絡めて嘲笑・罵倒する場面が多いので、これは原作通りである。

*4 余談ながら、闡教側の戦い方は「一人の敵に対して三人以上で包囲して襲い掛かる」「包囲戦のさなかに不意打ちを掛けて確実に殺す」というやり方がほぼ徹底されている。フジリュー版の太公望はまだフェアネス精神のある方である。

*5 通天教主謁見直後、まだ判断材料が足らずいったん殷に戻ると告げる場面でもう「作戦がある」といっている。