SCP-452-JP

登録日:2021/03/27 (土) 04:00:19
更新日:2024/09/28 Sat 15:32:46
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私、気づいたの。自分がお菓子の家にいることに!


SCP-452-JPは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つである。
項目名は「お菓子な世界」。
オブジェクトクラスは「Safe」。


概要

このオブジェクトが何かというと、食べた人間に異常性を与える飴玉である。
組成については【水飴、香料、色素】と、何の変哲もない飴玉と同じであり、
なぜ異常性を持っているのかは不明となっている。割といつものことだが。
当初は32粒が収容され、実験で使用されて減少した結果、現在は26粒が収容されている。

SCP-452-JP自体は舐めた人曰く「とろけるように甘い」と称される程に美味しいらしいのだが、
これを一粒すべて舐め終わってしまった場合に、その人に異常性が発現する。
異常性の発現してしまった人間を、財団ではSCP-452-JP-1と指定している。

では、その異常性について。
まず、SCP-452-JP-1となった人間の眼球は飴玉になる。
普通そんなことになれば失明不可避なのだが、なぜか視力は失われない。

次に、SCP-452-JP-1となった人間は、全てのものがお菓子で出来ていると認識するようになり、
実際に認識したお菓子と同様にあらゆるものを扱うことができるようになる。
例えば、SCP-452-JP-1となった人が、「鉄板」を「チョコレート」だと認識したとしよう。
その場合、まるでチョコレートを割るがごとく鉄板を素手で簡単に割ることが出来る。
もちろん、認識しているのは当の本人だけなので、周りから観察してみれば
素手でバキバキと鉄板を割っている光景を拝めることだろう。

また、単に扱えるだけではなく、食べてしまうこともできる。というよりもそちらがメイン。
先に挙げた鉄板はおろか、シアン化カリウム(青酸カリ)溶液のようなあからさまな毒物や、
小型爆弾といったものまで、お菓子と認識したならば美味しく頂いてしまう。
財団の研究の結果、SCP-452-JP-1となった人間の体内に入った瞬間、
あらゆる物質がお菓子と同じ組成となってしまうことが分かっている。
この為、毒物を食べた所で本人の身体には異常が起きることはない。

認識対象の価値についてもお菓子と同程度に認識されてしまう為、
彼らにとっては一万円札だろうが希少な宝石だろうが、単なる甘いお菓子の一つに過ぎない。
SCP-452-JP-1となった者は周囲のものを積極的に食べようとするため、
そういった物を置いておいては食われるだけである。
ただ、SCP-452-JP-1が一度口に含んだものでも、吐き出されれば元の物質に戻る。汚いけど。

そして、SCPでは少々珍しいことなのだが、この与えられた異常性は不可逆的ではない。
飴玉と化してしまった眼球を外科的に取り除いてしまうことで、異常性を失わせることが可能である。
だが、SCP-452-JP-1の「体内に入ったものをお菓子に変える」特異性の為、これは現実的ではない。
経口摂取でなくともお菓子(正確に言えば糖分など)に変えてしまう為、
麻酔薬などの医薬品を投与しても意味が無い。
麻酔無しの眼球摘出手術などという、拷問そのものな行為をすることになる。

更に言えば、多くの場合、SCP-452-JP-1は虫歯、糖尿病、肥満、栄養失調などに
苦しめられることとなるが、先述のように医薬品による治療はほぼ不可能。そのまま死に至ってしまう。

・・・とはいえ、その辺りに目をつぶれば、小型爆弾であろうと食べてしまう特異性である。
実験を担当した博士の分析では「上手く用いれば、危険物処理に使えるかもしれない」と書かれているし、
実際、そのように利用すれば有用ではあっただろう。














『生物』が対象に含まれていなかったなら。
















財団における8回目の実験記録において、その危険性が示唆されている。
その際には、SCP-452-JP-1として収容されていた人間に「実験用マウス」を与えてみたのだが、
彼(性別は不明なので仮にこう呼ぶ)はそのマウスを見て「精巧な和菓子」だと感激し、
躊躇もなくマウスにかじりついた。半分はかじったとのことなので、
その躊躇の無さが窺い知れるというものである。当然、そんなことをされたマウスは激しく出血したのだが、
その血液を彼は「ベリー系のソース」だと認識していたという。

これはつまり、「人間」とて彼らにかかれば「お菓子」として認識される可能性があるということである。
そして、価値もお菓子と同程度の認識とされ、お菓子のように容易に扱われ、
出血しようとも気にも留めないとなれば、もし彼らに襲われた場合、一般人はなすすべもないだろう。

この為に財団の特別収容プロトコルには、SCP-452-JP-1となった人間が発見された場合、
機動部隊を派遣して対象を取り押さえ、サイトに収容すること。収容室は常に警備員二人によって監視し、
脱走が企てられた場合には実弾を用いて無力化することが明記されている。



補遺


報告書の補遺には、SCP-452-JPの回収の経緯と、インタビューログが載せられている。

編集されている為、正確な日付は分からないのだが、
ある少女と少年の姉弟(年齢はこちらも編集されているが、どちらも一桁台と思われる)が
失踪する事件が起きた。姉が通っている小学校の教員が、彼女が登校していないことを不審に思い警察に通報。
通報から半日後に近隣の森の中にある廃屋の中で、姉である少女は発見されたのだが、弟は発見されなかった。
彼女は廃屋を食べてすごしていたと証言し、警察官の目の前で床を手で引きはがして食べ始めたという。

この異常な出来事が財団に報告され、廃屋内に置いてあったSCP-452-JPが回収されたのだった。
少女も最初のSCP-452-JP-1と指定を受け、サイトに収容されることとなった。
そして関係者にはカバーストーリーとして"哀れな誘拐事件"が適応され、少女の両親や、警察官、
通報をした小学校教員に対してはBクラス記憶処理が施された。

と、これが回収の経緯である。

インタビューログは、この少女に対して中山博士がインタビューを行ったものであるが、
インタビューによれば、姉弟は二人でかくれんぼをしているうちに廃屋に偶然迷い込み、
SCP-452-JPを見つけてしまったという。

しかし、SCP-452-JPを食べたのは姉である彼女だけだった。

彼女はこんなことを述べている。



でも他のよりもずっとおいしいケーキがあったの。甘くて、やわらかくて、幸せで、私泣いちゃった。

あれはいったいなんだったのかな。



『弟は発見されなかった』。『SCP-452-JPを食べたのは姉だけ』。
この二つの事実から、彼女の言う『おいしいケーキ』が何であったのか、想像するのは難しくないだろう。
中山博士もすぐに気づいたのか、彼女の問いに対して数秒沈黙してしまっている。

結局のところ、彼女はその後、約三年間サイトにて収容され、死亡した。
インタビューの中で、彼女は「ママに会いたい」と言っていたのだが、
それが叶ったのかどうかは不明である。

しかし、推測ではあるが、それは叶わなかったであろう。
単に彼女の両親に既に記憶処理を施しているから、という理由もあるだろうが・・・


インタビューの最後。
「言う事を聞いていればママに会える」と言われて、彼女はこう述べているからだ。





ほんと!?とっても楽しみ!







私、今ならママに大好きって言える気がするの!




追記・修正は、弟と両親が『おいしいケーキ』に見える方にお願いします。


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最終更新:2024年09月28日 15:32